闇影の軌跡   作: 黒兎

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今回は本筋に入るつもりが何か普段と変わらないような………?
冒頭部分はだいぶグダッていますが、気にせんとって下さいm(__)m


力の一端 強大過ぎる力は封じられるべきっ‼︎

 五月某日、夕暮れの教室にて。

 

「(はぁ………何でこんなことになってるんだろうな)」

 

 俺は椅子では無く、机に座ってそう思っていた。

 俺自身は特に気にしていないが、とある確執が発生していたのだ。先月の特別実習の時から。

 内容は、偽りの身分。

 対象は、リィンとマキアス。

 そして、原因はーー

 

ーー(ゼダス)だ。

 

 どうやら、Ⅶ組用の特別オリエンテーリングの時に、リィンは「高貴な血は流れていない」と言った為、マキアスはリィンの事を平民と見ていたらしいが、俺が見事に身分を看破してしまったから、この二人の関係に亀裂が生まれたそうなのだ。特別実習であった事は、包み隠さず報告したのも俺だし。

 そんな、喧嘩?中の二人を原因である俺がこの事態の収束に収束に当たる事を、サラ教官が提案。学級裁判で満場一致。という訳でー

 

「嘘を吐く人間を信用出来ない。ただ、それだけだ」

「マキアス………」

 

 絶賛、面を向かって話合わせているが、もう少しで一時間が経過しそうなんですけど。

 リィンは必死に謝るが、マキアスは折れない。俺が口を挟もうと思ったが、何か話が拗れて尚更厄介になりそうなので、無言を貫いていた。膠着状態が続き、時間だけが過ぎていく中、俺は無言を破り、口を開く。

 

「今回の件は確かにリィンが悪い。はぐらかす様な言い方をしてたらしいし」

「そうだろうっ‼︎だから、もう信用出来ないんだっ‼︎」

「一気に怒りを爆発させんな、秀才メガネ。てめぇも悪いわっ‼︎こんだけ謝ってるリィンに免じて許してやれよ」

 

 と言ったものの多分、そう簡単な話じゃないと思う。

 マキアスの家庭事情は知ったこっちゃ無いが、ここまで貴族を排斥するのは何らかの事情があったのでは無いか、と察せる。それが原因なら、多分俺にはどうする事も出来無い。簡単に考えて、その事情と同等の経験をさせて、ようやく貴族嫌いを克服出来る訳だし、そんな事滅多に出来る訳ない。

 と言う訳で、全く解決の糸口が見つからないまま、今日のところの話し合いは終わった。

 

―――*―――*―――

 

 

 翌朝、毎日の日課に組み込まれてしまった事を実行する。それは、街道でラウラの修行に付き合う事。まぁ、先月の特別実習後からリィンも巻き込んでいるのだが。

 

「おいおい、どうしたっ⁉︎鈍いぞ、お前ら」

 

 多方向から降りかかる斬撃の雨を回避しながら俺は叫ぶ。

 戦術リンクも駆使しながらの連携攻撃。ラウラ一人の時の攻撃に比べ、だいぶ多彩なパターンが増えた気がするが、未だに一撃ももらってない。リィンの太刀の素早い斬り裂きに、ラウラが回避の間を縫う様に一撃を加えてくる。俺はそれをも避けていたが、その中、リィンをジッと見つめてみた。

 動きが若干、いつもより鈍い。

 俺はそう感じていると、背後に回ったラウラが、

 

「これで勝ちだっ‼︎」

 

 上段からの叩き付け。意識をリィンの方に向けていたから、反応に遅れた。俺は、これは避けきれないな、と判断した瞬間、リィンの制服の襟を掴んだ。ほぼ腕力だけで、リィンを振り回し、ラウラに打つける。盛大に吹っ飛んでいった二人に俺は、

 

「お前ら大丈夫か〜」

「ゼダスっ‼︎今のは幾ら何でも卑怯であろう⁉︎」

「戦場にある物は何でも利用する。それが戦いだぜ。常識だろ。まぁ、ラウラは着実に強くなってきたな。俺の戦い方を見てきたからか、癖みたいな物も掴めてきたんじゃね?それに比べ、リィン。何だ、あれ。全く気持ちが入ってなかったぞ」

 

 その言葉に、立ち上がったリィンは、無言で硬直していた。

 多分、今のリィンは、本気を出せきれてない。色々な要因は考えられるが、最近起きているマキアスとの問題も例外では無いだろう。

 

「ラウラ。さっさと戻って飯を仕上げといてくれねぇか?リィンは、もうちょっと付き合ってもらうぞ。その太刀に気持ちが入るまでな」

 

 そう言って、リィンとの立ち合いだけを延長した。

 ムキになって放たれる八葉一刀流の技。威力は高くても、そんな雑念混じりの攻撃が当たる訳が無い。俺は攻撃を回避しながら大剣を納刀した。その行動にリィンは、

 

「試合を降りるのか?」

「んな訳ないだろ。今から打つ一撃を止めて見せろ。そうしたら今日の特訓は終了、な」

「えっ………」

 

 いきなりの特訓切り上げの宣言にリィンは若干、困惑の色を見せるが、その気が緩んだ瞬間に、一気に距離を縮める。彼我の距離差、数リジュ。俺は目にも止まらぬ速さで正拳突き。しかも、ただの正拳突きじゃなく、

 

「聖扉戦術 武の型 魂圧」

 

 流派の技だった。

 リィンの腹部を穿った正拳突きは、空中に紫の軌跡を描き、リィンの身体を吹き飛ばす。

 

「何で気を抜くんだよ。素手での一撃ぐらい止めろよ。はい、次行くぞ」

 

 リィンの答えの有無を言う合間も無く、もう一撃叩き込む。神速で駆け抜けていく俺に、リィンは為す術が無かった。俺がリィンを十数回吹き飛ばした頃に、言った。

 

「なぁ、木偶(リィン)。避ける気が無いなら、次は本気でぶち込むぞ。だからーー“本気”を見せてみろ。今なら俺しか見てねぇし、好都合だろ」

 

 今までのどの構え方よりも力を入れた構え。リィンはその構えから発せられる威圧に気圧されていた。足が文字通り棒になったかの様に身動きが取れないが、太刀を構える。俺は、リィンの瞳をジッと見つめて、

 

「まだ振り切れてないみたいだが、及第点くらいか。んじゃ、行くぞっ‼︎」

 

 あらゆる速さを超えた動き。一直線に突っ切るだけなのに、その姿は物理限界の最頂点に達している様に見えた。濃い闇を纏った拳をリィンは太刀を使い、いなそうとする。

 だが、そんな小細工で止めれる訳が無い。いなされた拳を力任せに軌道を変え、リィンの方に向かう。

 しかし、俺の拳が当たる寸前で想定外の事が起きる。目の前にいたリィンが消えた。

 

 

「オオオオオオオォォォォォォ!!!!」

 

 

 凄まじい速さで背後に回られていたリィンは普段の黒髪から白髪になっていた。

 荒ぶる力から放たれる八葉一刀流、二の型《疾風》。敵よりも速く動き、先手を取る為の技に俺は面白そうに笑って、

 

「それがお前の底に眠る“力”か。中々楽しめそうだがーー」

「ッシャアアァァァァ!!!!」

「制御しきれてないのか。自分の事ぐらい自分で管理しろよなっ‼︎」

 

 リィンの圧倒的な力を体現しているのか、太刀が禍々しいオーラを纏っていたが、素手で思いっきり挟み、威力を落とす。流石に素手で完全に防ぎ切れる訳も無く、俺の腹部をバスっと引き裂いた。鮮血が宙を舞う中、痛みを感じていないかの様に叫びながら俺は大剣を引き抜く。

 力の限り、足を踏ん張り、身体を一気に回転させる。独楽(こま)の様な回転斬りの乱撃。自我を失っているリィンに防ぎ切れるはずも無く、無数の切り傷を刻んでいく。そして、俺は締めに遠心力を利用し、真上に斬り上げる。その威力にリィンは耐えきれずに紙切れのように吹き飛ばされる。

 

「聖扉戦術 武の型 乱薙」

 

 技を直撃したリィンは白髪から黒髪に戻って、意識を失しなっていた。荒ぶる力が収まったのだろう。それに安心した俺は、膝から地に伏せる。右手で腹部を押さえると真紅の血がベッタリと付いていた。この傷はさっさと手当しないとヤバい………気がする。体内時計が狂って無い事を前提に考えて、もう学院で授業は始まっている筈。ならーー

 

 

ーー多少、解き放っても問題無いな

 

 

 そう考えた俺は、制服のボタンを外す。街道で服を脱ぎだすのは変質者にしか見えないが、誰も見てないので別に問題無いだろう。左肩を露わにした俺は唱える。

 

空の女神(エイドス)よ。大いなる産物を宿しこの身を癒す清廉なる光の恩恵を与え給え」

 

 謎の言葉。しかし、それに反応したのか、左肩にすうっと刻印が現れる。刻印から幾何学模様の円が発生し、急激に回る。眩い光を放つそれは、俺の傷を時間を巻き戻すかの様に癒していく。これは何を隠そう輝く環(オーリオール)だ。流石、七の至宝(セプト=テリオン)が一対。これでも、まだ力の一端というのだからとんでもない性能である。

 傷のあった腹部を摩るとピリッと痛みが残っているが、傷口は全く残っていなかった。俺は制服に付いた泥などを払い、立ち上がる。そして、“予め”対策をして置く事にした。

 リィンに手を翳し、念じる。俺の魔力によって編み出された鎖はリィンの心臓部に深々と突き刺さる。と言っても、直接な攻撃では無い為、痛みは無い………筈。魔力の鎖が全てリィンに入りきった事を確認すると、念じるのを止めた。

 そして、意識を失っているリィンを持ち上げ、一旦寮に帰った。

 

―――*―――*―――

 

 

 普通は遅れてでも学院に向かうべきなのだろうが、被害者であるリィンは未だ眠ったままだし、当事者としてここは看病すべきパターンだろう。リィンの部屋で看病しつつ寛ぐ俺は、リィンを見つめて思う。

 

「(あれがリィンの恐れていた力か………。“鬼”の力かな?中々の力だが、制御できてないし、まだ“浅い”。実戦で使うには、リィンが乗り越えるべき障害がある。それは多種多様だろうが、それさえ乗り越えられれば、俺の封印は余裕で解除できるだろうな。)」

 

 リィンに加えた対策。それは俺の魔力を流し込み、内側に眠る力を封印する物だ。そんな複雑な魔力操作は魔女で無ければ出来ないだろうが、輝く環の補助があれば、俺でも出来る。

 これを講じた理由は、リィンが突発的な感情であの力を解放する事を避ける為だ。

 憎悪や、負の感情で奮う力はろくな結果を残さない。今回は俺の腹部が斬り裂かれただけで済んだ(普通なら致命傷)が、最悪の場合は一般人を巻き込んで、殺人を起こしかねない。それだけは避けるべきだろう。俺と違ってリィンには未来がある。その言葉にどんな意味があるかはまた後日という事で………

 

―――*―――*―――

 

 

「ん………」

「おう、起きたか。大丈夫か?一応、手を抜いたつもりだったんだが………」

「ゼダス。今、どういう状況だ?」

 

 昼。日が完全に昇りきっていて、そろそろ昼飯にありつく時間だ。腹が減っているが、リィンの質問に答えを放つ。

 

「リィンの底に眠る力を解放したから、俺が無理矢理鎮静。その後、意識を失ってたお前を、俺が責任を持って看病してるって状況だ。………って看病されるんなら、俺よりアリサとかの方が良かったか?連絡入れたら飛んでくると思うし」

 

 若干の嫌味を含んだその言葉にリィンは苦笑しながら、

 

「流石にそれは駄目だろ。学院で授業を受けているはずだ………って、あれ?まさかゼダスって今日、学院を休んだのか?」

「ああ。別に問題無いだろ。座学は基本、授業受けなくても出来るし。実技でも無ければ休んでも良いんじゃね」

「ほぼズル休みじゃないか………」

 

 リィンに疲労の気は思いの外、見えなかった。が、心配気にこちらに話しかけてくる。

 

「その………ゼダスの方は大丈夫だったのか?“あの力”を相手したんだろう。無傷って訳じゃあ無さそうなんだけど」

「それに関しては大丈夫だ。俺は自分で自分の治療ぐらいは出来る。戦術の裏技も有るしな」

 

 俺は一つ嘘を吐いた。

 確かに聖扉戦術には、回復する手段はある。しかし、その回復は、外傷を回復する物ではなく、体内。すなわち、精神を回復する物なのだ。

 例えば、傷を負ったとして、聖扉戦術の回復を使う。すると、精神のみを回復させ、外傷を回復する事は無い。精神を回復させる事によって、外傷の痛みの感覚を和らげる事は可能だが、外傷が治る訳では無いのだ。

 だからといって、輝く環のおかげだ、と言う訳にもいかない。リィンの理解の範疇を超える上、これは最終手段。そんな切り札を簡単に切ることは出来ない。

 

「………そうか」

「うん、気にすんな。で、そろそろ腹減らないか?昼飯適当に作るけど………要求(オーダー)はあるか?」

「いや、特に無いけど」

「なら、適当に作るから、後で降りてこいよ。」

 

 と言い残して、一階の厨房に向かった。

 そして、貯めてある食材を確認し、瞬時にレシピを組み立てる。

 俺は食材を用意した。

 ジャガイモと魔獣の白身を一口大に切る。

 そして、土鍋にお湯を浸し、調味料を入れる。

 切った材料に加え、米も入れて煮込み始める。

 じっくり待つ事、数分。

 いい感じになってきた頃に俺は火を消し、土鍋を引き上げる。

 完成したのはーー

 

「はいよ。俺特製何の変哲も無いミルク粥だ。冷めねぇ内に食べろよ」

「ネーミングセンスの欠片も無いな………いただきます」

 

 とミルク粥を食べ始めるリィン。俺はそれを眺めながら、ある事に気付く。

 

「(俺、朝も昼も飯食ってないよな。)」

 

 流石に二食抜きは堪える。何か飯………というか腹に何か入れたい。腹が鳴りそうなのを耐えつつ、食料庫を漁る。

 調理する気力も無くなってきて最悪、生野菜でも(かじ)っとくか、と思った矢先、とある物が目に入る。結社特製の非常食。現実世界でいうカップ麺。

 何でこんな物が有るかというと、学院に入る前に俺が持ち込んでいたのだ。ライフラインが断たれた時用に。そんな事はそうそう無いのだから、今食べても問題無いはず。

 

「(緊急事態(腹減り過ぎて死にそう)確認

第一条件(お湯有り)確認、肯定

第二条件(三分間の耐久)可能、肯定)」

 

 謎の論理を頭の中で展開した俺は、早速行動に移した。

 カップ麺の蓋を開け、お湯を注ぐ。その後、腹が減って死にそうになりながらも、何とか三分間の耐久レースを乗り越えた俺は完成したカップ麺にがっついた。

 空っぽの腹に麺やらスープやらが雪崩れ込み、至福のひとときだった。1分も掛からない内に食べ終えた俺にリィンは、

 

「どれだけ腹減ってたんだよ………」

 

 と呆れていた。

 

―――*―――*―――

 

 

 リィンの食べ終えた後の容器を洗い終わった俺は、早速夕食の支度にとりかかった。

 時間もたっぷり有るし(一応確認しておくが、学院はズル休み)、何を作ろうか?と思案に暮れていた時、頭の中である事に気付く。

 

ーー明日、実技テストじゃなかったっけ?

 

「(って事は、明日に響かない物がいいよな。麺類基調に、消化しにくい物を避ける。うん、パスタでいいや)」

 

 と俺は献立を決めた後、麺の製作に掛かった。

 

―――*―――*―――

 

 

「ゼダス。そなたは馬鹿なのか?」

 

 皿を洗いながら、ラウラはため息混じりにそう呟く。

 

「仕方ないだろ。時間有ると思って、麺から作ったら、思いの外、体力使うし時間も使う。正直、こんなに疲れるとは思わなかった」

 

 食堂の机にもたれかかって、脱力しきっているのが俺。さっき言った通り、とんでもなく疲れた。納得行くまで高めてたら、疲れたのだ。Ⅶ組メンバーからは好評だったが、もう作らない。俺は今回学んだ事を糧にそう思った。

 

 明日の実技テストに響かない事を切に願うばかりだ。




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