闇影の軌跡   作: 黒兎

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前回、アンケをとって、今回武器の名を決定する事が出来ました‼︎
案をくれた方。本当にありがとうございます‼︎


突如現れた危険分子

「どういう訳だ………?」

 

 

 怒気を含んだラウラの問いに、俺とアリサはバツが悪そうに苦笑い。

 状況を簡単に整理すると、事の発端は勿論、昨日の夜に起きた事による。

 俺が、『アンチ・ゴスペル』と名付けられた拳銃型戦術オーブメントを組み立て+整備をしていた時に、俺の秘匿していた自己製魔法(ハンドメイドマジック)についてアリサが聞きに、俺の部屋を訪ねてきたのだが、その時に俺は、外部に情報が漏れるのを危惧し、空間を無理矢理切断。

 そこまでは良かったのだが、即席で繋ぎ直す手段を完全に忘れていたのだ。

 でも、アリサだけをベットで寝かして、俺は徹夜で作業しておけば大丈夫だろう、と考えた俺の考えは浅はかだったと言わざるを得ない。

 作業も案外早く終わってしまったし、フラフラだった俺を心配してアリサは起きてくるし。

 その後、色々あって、二人で使うには狭いベットで一緒に寝る事になったのだ。

 そして、朝を迎えた。

 いつも通り、朝練の為に俺を呼びに来たであろうラウラが俺の部屋を訪れた。

 ラウラ視点から見ると、ゼダス()とアリサが一緒のベットで寝ていたのだから、そう言う疑問が出てもおかしく無い。だから、良からぬ想像でもされたのだろう。全く、良い迷惑だ。

 でも、ここで厄介な言い回しをすると、後々に響く恐れがある。だから、当たり障りの無い言葉でーー

 

「………ラウラさん。ちょっと落ち着いて、俺の話を聞いてくれないか?」

 

 うん。これ、当たり障りの無い言葉じゃない。何か、正妻が浮気現場に突入してきて、絶賛修羅場中の時の言い訳みたいな気がする。

 そんな打つ手を間違えたかの様な不吉な事を思っていると、ラウラが俯いて、プルプルと震えているのに気付く。

 

「あの………ラウラさ––「問答無用っ‼︎」」

 

 ドンッと強い衝撃を受けて、俺は意識が揺れた。

 ラウラの全力の一撃。しかも、何も構えてない俺に大剣付きで。

 普通、死ぬだろ、おい!とボンヤリした頭で思っていたが、遂に耐えきれず、意識を手放し始める。

 倒れていく寸前に、俺はある物を垣間見た。ラウラの目尻に涙が溜まっているのが見えたのだ。

 それの意味を理解出来るぐらいの感情を持ち合わせていなかった俺は、素直に倒れる方を選んだ。

 

―――*―――*―――

 

 

 意識が戻ってきた俺は、制服を正して、学院に向かう。

 学院の廊下は静まり返っていた。

 それは考えてみたら当たり前の話で、もう授業は始まっているのだ。そんな状況で、騒いでる方がどうかしている。

 Ⅶ組の教室に到着した。

 遅刻している身としては、開けるのを躊躇う場面。でも、そんな事を考えても仕方無いと考え、教室の扉を開く。

 すると、教室内の全員が多種多様の形相でこちらを見てくる。

 リィンは、至って普通の笑顔。何処から見ても、いつも通り。

 エリオットは、苦笑。邪推の無い笑顔で若干、癒された………決して、そっち側の趣味では無いので悪しからず。

 ガイウスは、真面目な表情。リィンと同じでいつも通り。

 マキアスは、怪訝な表情。多分、俺の登場で、いきなり授業を中断されてイラっと来たのだろう。

 ユーシスは、いつも通り傲慢の表情。うん、何も変わってない。

 これが男性陣の形相。打って変わって女性陣に移る。

 エマは、柔和な表情をしている。何も問題無さそう(?)だ。

 フィーは、眠たそうな表情をしている。こいつは何時見ても眠そうだな。元猟兵の癖なのだろうか?寝れる時に寝るみたいな。

 それに加え、問題のアリサ&ラウラ(御二方)はというと–––

 

 御二方の片割れであるアリサは、俺を見た後、顔を若干、赤らめてからそっぽ向く。昨日の出来事があって気不味いのだろう。ここで俺も顔を赤くしたら、確実に誤解を招く。だから、心の中で表情を封じる。

 もう片割れであるラウラはというと、とんでもなく鋭い目線をぶつけて来た。精錬された鉄で作られた刀の様なその目線は、大抵の奴は尻込みしてしまうだろう。

 俺が誰とも目線を合わせずに、自分の席へと向かう。

 着席した直後に声が飛んでくる。

 

「ゼダス君。遅刻はいけませんのですよ〜」

「すんません、シア先生。どっかの誰かが、丸腰の俺を大剣でぶっ叩いてきて、気を失ってました」

「あ、あれはだな––––」

「はいはい、ゼダス君、ラウラさん。授業中ですよ〜」

 

 パンパンと手を鳴らして、俺とラウラの言い合いを止めたのは、背の低いおっとりした女性。

 眼鏡をかけ、金色の髪をたなびかせるこの女性はシア・ヴァレン先生。先日、この学院に配属された教官だ。担当教科は『属性学』。

 『属性学』というのは、文字通り、属性について学ぶ教科だ。

 この世を構成しているあらゆる属性について学べる為、個人的には楽しい授業である。自己製魔法を創り出す時にも、属性の事について知っておくのは重要となる。

 

「では、ゼダス君には遅刻の罰として、問題に答えてもらいますか。これ、分かります〜?」

 

 シア先生が黒板を指差すと、そこには問題が書かれてあった。といっても難しい物では無い。

『この世に存在する基本属性は?』

という内容の問題。だいぶ初歩的だな、と思い、答えを即座に言う。

 

「地、水、火、風です」

「それじゃあ、その各四属性が司る現象を述べてください〜」

 

 問題一つじゃ無いのかよ。内心、そう呟いた俺は態度を外に出さずに答える。

 

「地属性は、名の通り、土関係の魔法を行使する為に必要とされていて、人体には物理防御力の面で作用します。水属性も、水関係の魔法を行使する為に必要とされ、回復面で人体に作用します。火属性は、火関係の魔法。人体には、攻撃力………筋力に強く関係してますね。風属性も、風関係の魔法を使うのに使用され、機動力を高めるのに作用されるんですよね」

「文句無しの合格点なのですよ〜」

 

 と、遅刻については免除された………と思いたい。

 

―――*―――*―――

 

 

「と言う訳で、手伝ってもらうのですよ〜」

 

 遅刻の罰は、免除された訳が無かった。

 昼休み。俺は昼食中にシア先生に呼び出されていた。学院の敷地内の片隅にある倉庫で薬品の整理を手伝わされている。色んな色の薬品が瓶に入っていて、危険な雰囲気を醸し出している。物騒過ぎるだろ。

 

「この、如何にもヤバそうな色をしている薬品って何ですかね。一学生が扱っていい物では無いと思いますが」

「確かにそうなのですよ〜。でも、君なら安心ってサラ教官が言ってたのですよ〜」

「駄目教官が………何か恨みでもあんのかってんだ」

 

 思い当たる節が無い事は無いが、気にしても仕方無い。

 

「その薬品は………一概には言えませんが、“精霊”みたいな物ですよ〜。本来なら、セピスから供給される属性導力を気体状にして、瓶に詰める。それを普通に解放するだけでも、とても凄い威力なのですよ〜」

「“兵器”か。導力に命令式を入れるだけで、通常の導力魔法を優に超える力を放つって事か。流石の性能だな。で、密室な空間だし、盗み聞きされてる気もしないから、単刀直入に言わせてもらいます。」

 

 薄々感じていた違和感。

 士官学院とはいえ、この時期に配属とはおかしい。

 その上、前からヴィータに聞かされていた噂。

 “あの方”なら、完璧に騙して、欺いて、潜り込める。

 これだけの情報で決めつけるのは、馬鹿がする事だ。しかし、俺の頭の中で繋がってしまえば、普通だな、と割り切ることが出来た。

 

 

 

「“師匠”、このタイミングで何をしに来た」

 

 

 

チリンッ

 

 突如、鳴り響く鈴の音。それが耳に入った瞬間、前方に見えるシア先生の姿が陽炎に揺らされた様に歪む。

 低い背は伸びて、俺よりも少し高いぐらいに。

 着ていた教師服も、東洋の伝統衣服である着物に。

 そして、何よりも変化したのは、頭部。

 金髪をたなびかせているのは変わり無いのだが、狐耳が付いている。

 

「やっぱ、流石の洞察力やねぇ〜。何時から気づいとったんや?」

 

 いきなり、砕けた喋り方になった。

 でも、俺としては違和感が無くなって、寧ろありがたい。

 こいつ………この人の名はシーナ・ゼロ・フリスディア。

 そして、俺の所属している結社《身喰らう蛇(ウロボロス)》の使徒(アンギス)が一柱………というよりは、番外使徒(イレギュラーアンギス)である、第零柱の席を務めている人。

 結社内でも、有数の実力者で、噂によって存在が神格化されてるといっても良い人だ。

 

盟主(マスター)の次の実力者だが、姿を滅多に現さない』

 

 この内容の噂は、確かにシーナの実力を裏付けしているが、それと同時に性格も表していた。

 兎に角、この人は気分屋なのだ。

 結社の計画や盟主の命令よりも、自分の気持ち優先で行動する。

 ある時は、俺の稽古をつけてくれたり(滅茶苦茶しごかれました)、ある時は、放浪の旅をしてたし(色々なお土産をくれました)、そして今回は俺の通っている学院に教師としてやってきた。

 

「師匠が学院に来た頃かな。何か、普通の雰囲気じゃなかったんだよなぁ」

「思いの外、早い内から気付かれとったんやねぇ。ここまで看破力が上がってるとは思わんかったよ」

「御褒めに与り光栄です」

「そうやって急に敬語が出るのも変わっとらんなぁ」

 

 軽口の叩き合い。字面だけみたら、普通の会話にも見えない事は無いが、実際は空間内に緊張感が張り巡らされている。シーナは、髪の毛先を手で弄りつつ、

 

「で、学院はどうなんや?楽しいか?」

「最初の頃は、入れられた理由が分かんなかったからな。楽しいとか感じる前に結社の意向について考えてたけど、最近は楽しいと思えてきたよ。まだ、クラス内はギクシャクしてるけど」

「そこは仕方無いやろ。人間関係で、こうも明らかに歪み合えるのも、そんな頃の歳までやで。歳取ると、そう簡単に感情を表に出せんからなぁ」

「ああ、確か師匠って、年齢が5じゅ––」

「黙らっしゃい」

「痛ってぇーー‼︎」

 

 シーナの拳骨を直撃した俺。

 やはり女性に年齢の話をするべきでは無い。

 そう悟ってしまうには十分だった。

 

「………結局、師匠は何をしに来たんだよ」

「御主の学生姿を見に来た………………と行きたかったけど、盟主の要望(オーダー)や」

「はぁっ⁉︎何の冗談だ、それ。どう考えても、俺一人を学院に入れとくだけでも、結社的には痛手のはずなのに、さらに師匠までとか、馬鹿じゃねぇの‼︎」

「自意識過剰じゃ。確かにあんたは執行者内でも、一二を争う実力者や。でも、所詮はそこまで。輝く環(オーリオール)を取り込んでいる事を考慮外にしたら、三人ぐらいの執行者で隊を組まれたら、流石の御主でも勝てんじゃろ」

「んな事ねぇし」

「見栄張んな。勝てんやろ?」

「………………相手による」

「ほらな。ま、でも、御主が学院に放り込まれた理由はウチにも分からん。でも、ウチが入れられた理由は何気無く察しはついてる。多分、御主の監視だろうな。普段、冷静でも、何時御主の正体がバレるか分からんやろ。それ対策ちゃうか。番外使徒だし、最初っからウチの実力は計画に織り込まれておらんじゃろ」

 

 その言葉に俺は納得したが、同時にある疑問に気付く。

 盟主が計画にシーナの実力を織り込んでいない事には納得した。が、逆にシーナによって計画を狂わされる可能性は考慮しているのだろうか?

 シーナは第零柱として、最強も実力を持っている。魔術系統の技を得意としており、実力でいえば–––得意距離こそ違うが–––《鋼》をも凌駕する。現にその現場を目撃してしまっている。

 シーナの最大の強みは常時展開している魔術。通称、『月夜見(ツクヨミ)』にある。

 琥珀色の瞳を対象に絶えず掛かっている、その魔術は、認識対象の情報を解析する為の物である。物体の筋力や体力などの物理パラメーターから、思考までをも解析する事が可能。通常の攻撃は認識されてしまい、対抗魔術で落とされる。

 ならば、認識外–––すなわち、超遠距離からの攻撃、狙撃などは防ぎ切れないと思うが、それは素の認識能力と反射神経だけで避けきるという完璧ぶっ壊れ性能。それを何とかしない限りは、まともに触れる事さえ出来ない。

 唯一の弱点といえば、単純だが魔力が枯渇してしまえば、通常の魔術も『月夜見(ツクヨミ)』も使用出来ない事だろう。

 それを瞬時に見抜いた《鋼》の使徒、アリアンロードはシーナと長期戦を繰り広げ、いい線まで行ってたが、遂には膝を折ったというのが、立ち合いの結果だった。

 《鋼》をも凌駕する性能の持ち主が、もたらす影響は大きいはずなのに–––

 

「おい、ゼダス。何をボーッとしている」

「ああ、悪い………ってあれ?何でラウラがここに?それにここは教室か」

 

 いきなり、場所が倉庫から教室に変わっていて、前にいるのもシーナからラウラに変わっている。

 何時の間にか、夕方に差し掛かっていて、教室が夕焼け色に染まっていた。ラウラは怪訝な表情で、

 

「何を言っている。昼からの授業を全部サボって、結局教室でボーッと座っておったのはそなたではないか」

 

 

–––ったく、やっぱり度肝を抜かれるな。

 

 

 俺はそう思った。

 多分、シーナお得意の認識操作魔術の類なのだろう。

 

「………そうだったな。んじゃあ、帰って飯でも作っときますか」

 

 鞄を持ち、椅子から立ち上がる。教室から出ようと足を進めると–––

 

「待てっ‼︎」

「………はぁ。何だよ」

「そなたから今朝の事について、納得のいく説明が、まだもらってないぞ。アリサも何気無く私を避け気味だし、ここで説明してもらうぞ」

「今朝、説明しようとした時に殴ってきたのはお前じゃねぇか」

「あれはっ‼︎………………ちょっと気が動転して………」

「何でラウラが動転するんだよ。そんなに関係ある話じゃないだろ」

「それはそうだが………(何故こうもゼダスは鈍感なのだ………)

「ん?何か言ったか?」

「何も言ってないっ‼︎」

 

 このままでは、埒があかないと思った俺は、昨日あった事を包み隠さず話した。

 俺が自室で新たな武器を作っていた事。その時にアリサが俺の自己製魔法について問いに来た事。それで、情報漏れを防ぐ為に、空間を隔離した事。それで止むを得ず、一緒に寝る事になった事。

 文字通り、全部話した。

 説明している途中で、ラウラが攻撃しようとしてたが、何とか押し留めた。

 

「–––と、こんな感じだ」

「………そうか。疚しいことは何もしてないのだな」

「それはお前が俺を信じるかによる」

「流石にここに来てまで、嘘だとは疑わないさ」

 

 無事(?)しがらみも無くなった様だ。

 俺はその事を察し、夕飯の支度をしに帰ろうと足を運ぶと、横にラウラが着いてくる。

 

「お前、部活は?」

「今日は休みだ」

 

 ラウラは水泳部に所属している。

 故郷に湖があったらしく、泳ぎは得意な様だ。ただ、武術関係の部活も無い事は無い(フェンシング部とか)のに、何故水泳部を選んだのだろう?俺は何気無くそう思い、足を止めずに問うてみる。

 

「ラウラは何で水泳部を選んだんだ?」

「昔、父に教えられたのだ。『時には剣から離れた方が見える物もある』と」

「帝国最強と謳われる《光の剣匠》らしい言葉だな」

 

 謎に説得力のある理由で俺は納得した。

 確かに、一つの物に固執せずに、広く色々な事を知る事で見える物もある。それが効率の良い方法かは置いとくとしての場合だが。

 ラウラとのしがらみも無くなり、俺たちは特別実習へと時を向けていく。




伏線も何も無い中、出てきた最強のお方。
イメージとしては巫女(ノーゲーム・ノーライフ)ですかね。
個人的にぶっ壊れの塊で、ゼダスでさえ太刀打ち出来ません(アリアンロードが太刀打ち出来ない時点で察して下さい)。

何か、本編が進まない気がしますが、次は進めますよ。
流石に二章で停滞したくない。三章の案が大量にあるし、さっさと実習終わらしてやるぜっ!!

ご意見・質問等々があれば、感想欄によろしくお願いしますm(__)m

追記:聖扉戦術の肩を一端、改変させてもらいました。理由は、このまま増やすと型が増えすぎて、収集付かなくなりそうだからです。個人的な考えでごめんなさいm(__)m
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