闇影の軌跡   作: 黒兎

29 / 83
二学期の考査があらかた片付いてホッとしている 黒人です。
撮り貯めていた秋アニメを見ながら小説を書いてたんですけど、ちょっと気になる事が。
学戦都市アスタリスクの天霧遥が閃の軌跡のエマにしか見えないww






俺だけっすかね………








実習中の不祥事

 バリアハートでの特別実習の一日目が終わりを告げようとしていた。

 ゼダス以外のⅦ組のメンバーは今頃、気不味い雰囲気の中、食卓を囲んでいる–––––まぁ、囲めるとは思わないが、夕飯にありついている頃だろう。

 

「………くそっ、間違えた。どうして俺がわざわざ新しい亀裂を生み出してるんだよ………」

 

 ゼダスはⅦ組の泊まるホテルの一室でそう呟いた。今回は、大貴族であるユーシスが何とか説得したのか、男女別の部屋だった。

 不貞腐れつつ、ベットに顔を沈めるその姿は、普段のゼダスから連想し難い姿だった。そして–––

 

 

–––その普段と外れたゼダスの姿を覗いているフィーがいた

 

 

「ゼダス、ご飯」

「今、あいつらと面を向かって飯を食いたくない………っと」

 

 ゼダスが言い訳を言い切る前にフィーが何かを投げてきた。袋済みされたパン。フィーが気を効かせて、持って来てくれたのだろう。

 

「ありがとよ」

「どいたま」

 

 多分、どういたしましての略語だろう(あくまで予測)。

 ゼダスは袋済みされたパンを取り出し、齧る。しばらくの間、何も食べていなかった腹には美味しそうだった。

 フィーが想像してたよりも早く食べ終わるゼダスは、

 

「何で部屋を訪ねたんだ?俺に飯を持って来てくれた事は素直に有り難かったけどさ」

「居づらかった。ユーシスとマキアスがギスギスしてたから。でも、それより–––」

「–––俺に怯えてたんじゃないか?」

 

 ゼダスの指摘にフィーは少し躊躇ってから、小さく頷く。

 考えてみたら、この状況は狂乱の坩堝に嵌まり始めている気がする。

 ユーシスとマキアスの貴族平民の敵対関係に、リィンの身分詐称(?)によるリィンとマキアスの確執を、ゼダスが恐怖を記憶に擦り付け支配しているのだ。

 この状況は、面倒な状況に進んでいる。そう思考が辿り着くには十分すぎる結果だった。

 

「はぁ………明らかな失策だよ。ったく、これからどうするかな」

「気にしなくていい」

「………どういう事だ?」

「あの程度で戦線を乱す馬鹿たちの関係をゼダスが無理してまでに正す必要は無い。本来は本人たちで解決するべき問題」

「それはそうだが………そういう訳にもいかないだろ」

「確かに“見て見ぬふり”は駄目。でも–––」

 

 

 

 

「“見守る”なら問題無い」

 

 

 

 

 ゼダスはその言葉に引っかかりを覚えた。

 

「そんな風に言い切れるお前は楽観的だな。あの状況で“見守る”とか」

「だからって下手に手を出すと余計に拗れる。それだけは避けるべき」

「そうかも知れないが簡単に割り切れたら苦労しねぇんだよ」

 

 この状況では理想論の等しいフィーの意見をゼダスは納得しつつ、バッサリと否定する。

 

 そんな簡単に済めばこっちとしても楽だ、とゼダスが思うのには仕方無かった一幕だった。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

「さて、状況の説明を求める」

 

 ゼダスのから発せられた状況の請求。ゼダスがこう問うまで事の発端は、今日の朝に起きた。

 フィーとの一幕後、結局誰とも会話する事も無く、ベットで不貞寝したのだ。自分の行動に頭を抱えながら。でも、寝ている間は、イン・ザ・ドリームの彼方へと誘われていた。

 しかし、人は永遠に寝ていられる訳が無い。それが出来た時は死に触れた時のみだろう。

 普段の習慣が抜けずに、朝っぱらから寝ぼけつつも魔剣を手に、街道で素振りをしていた。

 リィンでも叩き起こして、立ち合いでもしてやろうか?とも考えたが、昨日の傷が–––“魔法”を使われたとはいえ––––一晩で治るとは考え難い。

 そんな感じで雑念を振り切ろうと、無我夢中で剣を振った。

 汗がベットリして動き難くなるまで剣を振ったゼダスは、ホテルに戻った。すると––––

 

 

 ユーシスとマキアスがいきなり頭を下げ、謝ってきたのだ。

 普段、互いに相反し、己の考えを曲げない二人がいきなり謝ってきたら、普通おかしく思うだろう。それを兼ねての問いなのだ。

 

「昨日は悪かった。僕がもう少し周りを見渡しておけば………」

「ゼダス。俺も悪かったな。手を焼かせてしまったな」

「何か丸くなってやがる………リィン。何があった?」

「それが………」

 

 リィンの口から発せられた事実。

 昨晩、目が冴えて眠れなかったユーシスがリィンに話しかけたそうだ。

 そして、互いに自分のことを言った。

 リィンは、良い両親に育てられた“養子”だという事を。

 そして、ユーシスは、自分の出自について。

 兄、ルーファスは歴としたアルバレア公爵と貴族の正妻の間に産まれた正真正銘の爵位継承者。それに対して、ユーシスは公爵と平民の妾の間に産まれた妾腹の息子。すなわち、純粋な貴族じゃない、いわゆる爵位対象外の人間。その為、実の父親であるアルバレア公爵には見向きもされていないらしい。

 そして、その事実を寝たふりしてマキアスが盗み聞きしていたのだ。

 それで朝になるとマキアスが『何としても戦術リンクを成功させるぞ』と言い、ユーシスが『昨日の話を聞いてたというところか?』と問いかけるとマキアスが語るに落ちたらしい。

 

「………なるほどな」

 

 合点に達したゼダスは、頷きながら、

 

「二人とも頭あげろ。つーか、俺も悪かったな。冷静さを忘れてた」

「そこで提案なのですが………ユーシスとマキアス(お二人)の戦術リンクを今日の課題として出ている手配魔獣で試してもいいのではと思ったんですが………」

 

 ゼダスの方をチラチラ見ながらのエマの提案に、

 

「私は賛成」

 

 フィーが乗っかってくる。ゼダスは、回答に困る素振りを見せながら、

 

「………別にいいよ。だが––––絶対成功させろ。次失敗して、誰かを窮地に陥れてみろ。その時は––––()()しとけよ」

 

 威圧感を纏いながら、了承する。それにユーシスとマキアスは身震いした気がするが気の所為だろう。

 いい感じにまとまってきたⅦ組。そんな中、ホテルの扉が開かれる。

 

「–––ユーシス様」

「アルノーか」

 

 アルノーと呼ばれた男性は、仕事の出来そうな執事さんだった。昨日、ルーファスに招かれた時に出てきた執事–––確かガレスといったか–––に比べてもなんら遜色ない貫禄を持っていた。

 

「父上付きのお前がどうしてこんな所に………」

「昨日はご挨拶も出来ずに失礼しました。今朝はユーシス様をお迎えに上がったのです」

「俺を迎えに………一体どういうつもりだ。士官学院の実習で戻ってきたのは知っているだろう」

「ですが今朝、公爵閣下よりユーシス様をお館に呼ぶ様に仰せつかってまして」

「………父上が?」

 

 このやり取りにゼダスは違和感を感じた。

 

「(ん?リィンが言うにはユーシスと父親である公爵は仲が悪いのでは無いのか?しかも、狙ったかの様なタイミング。これは–––)」

 

 そんな事を危惧していると、

 

「行って来たまえ。別に戦術リンクを試すのを急かす必要はないだろう」

「午前中は俺たちだけでやるからユーシスは実家に戻るといい」

「–––分かった。午後には合流する」

 

 いつの間にかユーシスが一時的にメンバーから外れる事が決まってしまっていた。そして、ユーシスを見送った後、

 

「–––よし、それじゃあせいぜい頑張って依頼をこなしてユーシスを楽にさせてやるか」

 

 というリィンの一言で実習二日目の幕が開いた。

 

―――*―――*―――

 

 

 指定された依頼をこなす。ひたすら、こなす。

 そんな中、ゼダスが思っていた事はアルバレア公爵家の事だ。

 今朝の会話のおかげで、公爵家も一枚岩ではない事は確信した。

 公爵閣下が純粋な貴族じゃないユーシスを嫌っているのも分かっている。なのに、直々に呼び出しがかかった。何か裏があるのも確信した。なら、その裏はなんだ?

 用件は………分からない。明確な家庭状況でも分かれば予想は出来たかも知れないが。

 目的は何だ?実習中にも関わらずに急な呼び出し。まさかと思うが–––

 

 

 

–––公爵はⅦ組(俺たち)からユーシスを遠ざけるつもりか?

 

 

 

 だが、俺たちから遠ざけて何の得がある?確かにユーシスがこの都市内で顔が効く。だが、その特典を除いたぐらいで別に何の問題も無い。

 深く考え過ぎか、とゼダスは割り切ることにした。

 

 

―――*―――*―――

 

 植物型の手配魔獣を片付けたⅦ組は街道を歩み、バリアハートに戻ろうとしていた。

 植物型の手配魔獣は、女子が嫌いそうな多触手持ちで、エマもフィーも遠距離を徹していた。前衛はゼダスとリィンだけだったが、触手などの長物を振るう相手には低人数の前衛の方がやり易い。触手を薙ぎ払われでもしたら、全滅しかねないからだ。といっても、ゼダスに掛かれば魔剣でぶった斬られたのだが………

 

「ああいう敵も偶には悪くないなぁ〜。斬る所が多くて退屈しねぇな」

「よくそんなことが言えますね………」

「………身体中ヌルヌルベッタベタ。あいつ、次会ったら八つ裂きしてやるっ………‼︎」

 

 女性陣は、あの魔獣に敵意を覚えてしまった様だ。そして、男性陣は昨日のゼダスの恐怖に似た恐怖に駆られた。フィーの死神に似た殺意に対して。

 

「落ち着けよ。もうすぐユーシスと合流する時刻だろうし、部屋でシャワーでも浴びれば問題無いだろ」

 

 その恐怖を気にしていないのか、ゼダスはフィーの頭を撫でながら宥める。不機嫌そうなフィーは、撫でられていく内に猫の様になっていく。その変貌っぷりに他のメンバーは微笑みを浮かべていた。

 そんなこんなでバリアハートの門に辿り着いた。そして、何のためらいもなく踏み入れた。すると–––

 

「–––おい、お前たち!」

 

 と言いながら、近寄ってくるは、領邦軍の兵士の二人組。何の様だろう?と全員が首を傾げたくなった。

 

「《トールズ士官学院》の者だな」

「“実習”とやらでバリアハートに来たという」

「そうだが、何の様だ?待ち合わせがあるんでさっさと通してくれないかなぁ」

 

 ゼダスの細やかな反抗に取り合う素振りすらを見せずに、

 

「………間違いない。手配の写真とも一致する」

「案外早く見付かって良かったぜ」

 

 その言葉にゼダスは、気付いてしまった。

 

「まさか………」

 

 危惧していた事を口にしようとした瞬間、いきなり兵士の片割れが警笛を鳴らした。それに驚くⅦ組のメンバー。しかし、そんな事を意に介さずに兵士は言葉を紡ぐ。

 

「–––士官学院一年、マキアス・レーグニッツとゼダス・アインフェイトだな?」

「貴様達を逮捕する。大人しくしろよ」

「待って下さいっ‼︎」

 

 理不尽な逮捕命令に驚く中、一番行動が早かったのはリィンだった。

 

「いったい何の容疑で………何かの間違いじゃありませんか⁉︎」

「容疑は幾つもあるが………最大のものは、昨日の午後の《オーロックス砦》への侵入罪だ」

 

 オーロックス砦っていうのは、昨日フェイトスピナーと戦った街道の奥にある峡谷地帯の巨大な中世の城塞の事だ。

 アルバレア公爵家が管理しており、貨物路線が引き込まれ、大幅な改修を加えているため、軍事要塞としての姿を保っているのだ。

 本来、そんな戦力が集合する場所の警備は異常なまでに徹底されるのがセオリーで、並大抵の学生が侵入出来るところでは無い。ゼダスなら、学生としてでは無く執行者としてなら、遠慮無く正門から突っ切って、血の海へと変えていただろう。

 

「何かの間違いじゃないっすかね」

「容疑者の分際で戯言をほざくな」

「冗談じゃないっ⁉︎」

 

 そう猛烈に抗議したのは、ゼダスと同じ容疑者のマキアスだ。

 

「僕は仲間と一緒に行動していたんだぞ⁉︎どうして、僕とゼダスだけが疑われるんだ⁉︎」

「その事については俺たちが証明出来ます」

「それに………私たちの仲間である“ユーシス・アルバレア”さんも証明してくれると思います」

 

 リィンとエマの決死の助け舟に、兵士は、

 

「フン–––だからどうした?」

 

 その言動にゼダスは確信した。

 完全に俺とマキアスを狙った罠だったって訳だ。

 四大名門を始めとする《貴族派》にとっては、鉄血宰相を始めとする《革新派》は最大の障害。

 その《革新派》の重要人物であるマキアスの父親、カール・レーグニッツへの牽制がてらに息子であるマキアスを“逮捕”という名目で、捕らえる。

 それに加え、先月ケルディックで“色々”と引っ掻き回していた俺を一緒に捕らえようって算段か。

 その為には、何としてでも公爵家の–––純粋な貴族の血を継いでないとはいえ実の息子であるユーシスが面倒なはずだ。だから、公爵家に引き止めておいて貰う。

 分かってしまえば、簡単な話。だが、この策略は単純(シンプル)にして最強(ベスト)な手といえる。

 

「やっぱりそういうことか………」

 

 とゼダスがつぶやくが否や、警笛に呼ばれた兵士が集まってきて、Ⅶ組を取り囲む。

 

「………他勢に無勢か」

 

 悔し気なフィー。完全に打つ手無しだ。

 

「重要なのはそちらの彼らに複数の容疑がかかっており………そして、我々、領邦軍に取り調べる権利があるという事だ」

「抵抗しても無駄だ。大人しく拘束されるが良い」

 

 兵士達から手が伸びる。マキアスはすんなりと捕まるが、ゼダスは思いっきりバックステップして距離を取る。すると、兵士は逃亡の意があると認識されたのか、導力式のライフルを構える。すると、ゼダスは手を上げながら、

 

「やだなぁ〜。仲間に武器を持ってて貰おうと思っただけですよ。それとも、あんた達が持っててくれる?」

「………早く渡せ」

「りょーかい」

 

 能天気にそう言いながら、ゼダスは魔剣を投げる。兵士は数人がかりで持ち上げている所を見るに、相当の重量を秘めている事が分かる。魔剣の扱いに四苦八苦している兵士達。その合間を狙って、フィーに囁く。

 

「これ渡しとく」

「………何?」

「俺追跡用の発信機。牢獄にでも入れられたら起動させるから、辿ってこい」

了解(ヤー)

 

 同じ了解でも、込められた意味が違っている様に感じれた。

 

―――*―――*―――

 

 

 ゼダスとマキアスは、領邦軍の詰所の地下にある監房に入れられた。ゼダスは、これからどうするかについて考えていた。そんな中、

 

「悪いな。巻き込んでしまって」

 

 とマキアスが。自分の地位を理解した物言いだった。だが、

 

「気にすんな。俺も領邦軍相手に目を付けられる事をしたんだよなぁ〜」

「君は一体何をしたんだ………というか、よくそんなに呑気で居られるな」

「この程度の鉄格子なら余裕だ」

 

 と言ってゼダスは鉄格子の一本を掴む。

 腕に力が入っているのは分かるがゼダス自身は平然とした表情。

 掴み始めて数秒。鉄格子はグニャと捻じ曲がった。

 

「なぁっ………⁉︎」

「俺をこの程度の安っぽい“鉄”で止められるかよ」

「これなら脱走出来るんじゃあ………」

「でも、脱走しないぞ」

 

 と言い、鉄格子を真っ直ぐに直す。

 

「自分で“出る”んじゃ無くて他人に“出して貰う”事に意味があるんだよ。分かったか?」

 

 ゼダスのその言葉にマキアスは首を捻らずには入れなかった。

 だって、そうだろう。出てしまえば、こっちのものだ。武器は押収されているとはいえ、この独房の外に繋がる用水路を進んで逃げれば良いのだから。

 もし、追手が来たとしてもゼダスの体術なら、並の兵士相手に遅れを取るはずが無い。それなのに––––

 

「分からなさそうにしているマキアスに一言。この判断は損得の関係じゃない。個人的にこっちのシチュエーションの方が上がるからだ」

「⁉︎君は馬鹿か?この際、そんな拘りを持つ必要は無いはずだろう‼︎」

「フッフッフッ。甘いなマキアス君。拘りとは、貫き通すことに意味が有るんだよ」

 

 監房の中というのに気楽なゼダスにマキアスは溜め息を吐きたくなった。そんな中、突如、ガチャガチャと何かが落ちる音がする。

 

「悪りぃ。色々と落としちまった」

 

 そう言うゼダスにマキアスは音の原因を探るべく、ゼダスの方を見る。すると、そこに有ったのは、ARCUSに拳銃型戦術オーブメントである、アンチ・ゴスペル。

 

「何でそんな物を持ち込んでいるんだっ⁉︎監査の時に戦闘道具は押収されたはずだろう?」

「確かに魔剣とARCUSは渡したぜ。魔剣は複製出来ないとはいえ、ARCUSぐらいのレプリカは作れるからな。それを渡しとけば、本物を獲られる事は免れたって訳」

「とんでもない方法で乗り切ったのだけは分かるが、何故今取り出すんだ?」

「んーとだな。来たる時の為の魔法を編纂しようかな、と思ったんだよ」

 

 ゼダスは会話しながら、ARCUSとアンチ・ゴスペルを繋げる。そして、ARCUSのダイヤルを打ち込みながら、起動式を構築し始める。

 今回作る術式は、だいぶ複雑な物だ。

 本来、ゼダスの自己製魔法(ハンドメイドマジック)には複雑な現象を引き起こす魔法を組み上げる事が出来ない。現実に現象を引き起こさせるまでの工程(プロセス)が長ければ長いほど、発動までの時間がかかる上、失敗する危険(リスク)が存在するからだ。

 だが、工程さえ減らす事が出来れば、複雑な現象を引き起こす魔法を安全に行使する事も可能なのだ。具体的に工程を減らす、といえば–––輝く環(オーリオール)などから力を供給するか、今回行うつもりの“事前に術式を組み立てておく”などだ。

 この二つの方法には、メリットとデメリットがはっきりと現れる。

 輝く環から力を供給する方法は、自己製魔法を事前に準備する必要が無く、即座に魔法を行使出来る。それに加え、火力もブーストされ、大ダメージを期待する事も可能だ。

 しかし、デメリットとして、疲労度がとてつもない所が挙げられる。ゼダスは身体の中に輝く環を取り込んでおり、それを力として供給してしまうと、力の代償に全身に負荷が駆け巡る。あの《七の至宝(セプト=テリオン)》の一つから発せられる負荷といえば、想像を絶する物となる。

 そして、事前に術式を組み立てておく方法は、大した疲労度を感じせずに魔法を即座に使用出来る点にある。威力は前述の方法に比べ、落ちるとはいえ、その後の戦闘に支障が出ない事を考慮すれば、こちらの方法の方が良さそうに思うだろう。

 だが、こちらにもしっかりとデメリットは存在する。それは組み立てた術式の維持、という点にある。発動後のイメージを留めたまま、発動する一歩手前で術式を維持する。これは、想像以上に集中力、精神を削られる為、お世辞にも効率の良い方法とは言えないのだ。

 

―――*―――*―――

 

 

 ゼダスが術式を組み終えた。

 時間はどれだけ経ったかは分からないが、ゼダスは早く術式を試したくてウズウズしている。そんな中、マキアスは不安に駆られていた。

 何時出れるか分からない恐怖。それに加え、監房の圧迫感が合わさり、青ざめていた。

 正直、このままにしておくと精神的に危ない。何とか、きっかけが作れると良いんだが………とゼダスが思ったその時。

 

 

–––––––ドゴッオオオオォォォォォォォォン‼︎‼︎‼︎

 

 

 という爆破音に何かが崩れ落ちる音。

 その音にゼダスとマキアスの両者は目を見開くが、早くも理解を始める。

 

「ったく、遅いんだよ。囚われの姫君を助ける勇者御一行はもうちょっと早くても良かったんじゃないか?」

「阿呆が。貴様らが姫君という柄か」

 

 ゼダスの冗談めいた言葉に答える傲慢不遜な声。聞き覚えのある声の主は、爆破の土煙の中から姿を現した。

 同じ真紅の制服。見間違うはずの無い金髪。

 

「………ユーシス・アルバレア」

 

 不意に漏れたであろうマキアスの声。

 その後に続いてくるリィン、エマ、フィー。これでⅦ組A班が全員揃った。

 フィーは監房の扉に鍵がかかっている事を確認すると、何かを付けた。すると、ボンっと音を立て、爆破する。爆破後には跡形も無く扉は吹き飛んでいた。マキアスは何か言いたげな素振りを見せていたが、

 

「それについてはまた、後ほどという事で………」

 

 とエマが言うので、この話題になりそうなフィーの行動については一旦区切られた。

 だが、こんな所で爆薬を二回も使うと流石に上にも響く訳で–––

 

「お、お前たちっ⁉︎」

「そこで一体何をしている?」

 

 巡回中の兵士に見つかった。ユーシスは、

 

「巡回ご苦労と––––」

 

 多分、『–––と言いたい所だが』と続けるつもりだったのだろう。だが、その台詞を遮って、ゼダスは一気に間合いを詰める。

 片手で一人ずつ、鳩尾を殴り片を付ける。そして、倒れた兵士の荷物を漁り始めた。

 

「マキアス、お前の愛銃(ショットガン)だぞ」

 

 とゼダスはショットガンをマキアスに投げつける。危ない様に思えるが、マキアスはしっかりと両手でキャッチする。

 

「あ、ありがとう」

「礼はここから出てからにしてくれ。リィン達は回れ右して脱出しろ」

「ゼダスはどうするんだ?」

「俺の愛剣を回収しに行くんだよ」

 

 と薄気味悪い笑顔をゼダスは浮かべていた。

 

「分かった」

 

 そう答えたのはフィー。そして、続いた言葉は、

 

「でも、回収したら早く戻ってきて。ゼダスが居ないと………本調子出ないから」

「了解。それじゃあ、お前らも気を付けろよ。大型魔獣の気配が感じるし、物凄い練度を秘めてそうだから、ばったり鉢合わせても冷静を保って戦えよ」

 

 ゼダスはそう言い残し、地上へと続く階段を駆け始めた。




さて、今回は全速力で実習を早めてますよ‼︎
あと一話でバリアハート編終了です。
次話はゼダス君が急遽編纂した魔法が猛威を奮います。文字通り“地獄”を味わってもらいましょうか、領邦軍には。


もうすぐ二章が終わるという事で、催促がてらに告知?
三章に出てくるオリキャラの性別投票が絶賛募集中です。
気軽にお答え下さいm(__)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。