闇影の軌跡   作: 黒兎

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ようやく三章に入る事ができました。
これも読者の皆様のお陰でございます。本当にありがとうございますm(__)m
前回、締め切り予約していたオリキャラの性別ですが、男性にさせて頂くことになりました。票数自体は同数だったんですけどね。
理由としては、キャラ設定し易いし、このオリキャラから新しいオリキャラを生み出す事が出来そうだからですかね。
これからもよろしくお願いします。




第三章
学生の本分


 暦は六月を迎えていた。

 六月といえば、どっかの国の伝承で、この月に結婚すると生涯幸せになれるとかいうジューンブライドの季節だ。だが、学生にとっては全くと言っていい程関係が無い。というか、この時期になると雨の日が続く確率が高い。いわゆる『梅雨』だ。

 

–––この二つを一月に並べるって事は、雨の中で結婚したら幸せになるのだろうか?

 

などと考えながら、ゼダスは筆を奔らせていた。

 五月の特別実習が終わって約一ヶ月。

Ⅶ組は実戦訓練である実技テストや専用特別カリキュラムである特別実習などがあるが、れっきとした学生である。

 そして本来、学生の本分というのは、社会に出て恥ずかしくない程度の“常識”を学ぶ事にある。つまり、勉学だ。

 しかし、何で社会に出るのに“常識”が必要なのだろう?

 確かに職場的に必要になるかもしれない。だが、それを言うなら、逆に必要にならない職場も存在するはずだ。

 

「ゼダス、ここ分かるか?」

 

 ラウラからの問い。それにゼダスは、

 

「お前は俺に聞き過ぎだ。頭良い委員長にでも聞けよ」

 

 と煩わしそうに返す。

 その回答が意にそぐわなかったのか、若干拗ねたかの様な表情を浮かべるラウラに助け舟を出す声が、

 

「まあまあ、ラウラ。ゼダスはゼダスで忙しいんだよ、きっと」

 

 アリサだ。

 ゼダスは今、ラウラとアリサと一緒に教室で勉強して–––させられていた。

 あと、一週間もしない内に、学生では、ある種の壁ともなりえると言われる中間試験が迫っているのだ。それで勉強はしないとなぁ〜と思っていた矢先、ラウラとアリサに捕まった訳だ。

 一人でやる分にも、複数人でやるにも、そこまで効率は変わらないから、別に問題無かったのだが、男子一人に女子二人。文字通り、両手に花。他人から見たら「リア充爆ぜろ」と妬まれても仕方無いだろう。

 ゼダスが今、勉強している科目はあの厄介教師であるシア先生(本当はシーナだが、学院内だしこう呼ぶ事にする)の担当する「属性学」。他の教科を捨ててでも、この教科だけは満点を取らねばならない。万が一、いや億が一でも失点なんてヘマをこいたら、何の仕打ちが待ってるか知れたものじゃない。

 そんな感じの予測をしながら、勉強をし、試験当日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

「………疲れた」

 

 試験が終わって最初に吐いたゼダスの言葉だ。

 ここで試験結果の心配をするのが、学生なのだろうが、ゼダスは「やる事はやったし何とかなってるだろう」と割り切っていた。中々の自信家である。

 

「ゼダスっ‼︎最後のあの問題って一体何だったのよ⁉︎」

 

 アリサが問題用紙片手に、凄い剣幕で問い詰めてくる。

 試験最終日の最後の科目は「属性学」。そして、最後の最後で厄介な問題が出されたのだ。内容は、

 

『基本、導力魔法(オーバルアーツ)は性質上、現実世界に現象を留めておく事は出来ません。でも、ある裏技を使えば、それを成す事が出来ます。その方法について記しなさい』

 

 という物。

 それまでは、各導力魔法の導力配分量や、各属性の現象についてなどの基本的な物だったのに対し、この問題だけは絶対的な難易度を誇っており、中々骨のある問題だったとゼダスは思っていた。

 

「あの問題さ。アリサは何処から目を付けた?」

「何処って、その普通じゃ起こせない現象を起こす事を考えるんじゃないの?」

「そうだな。普通の問題ならそれが最も効率の良い方法だ。だが、今回ばかりは先生の方が上手だったな」

「焦らさないで早く言いなさいよっ‼︎」

「解けなかったからって気を荒くすんなよ」

 

 敢えて逆鱗に触れるゼダスにアリサは「ゼダス(こいつ)、吐く事吐いたら、一発殴ってやろうか」と思った。

 

「解く方法は何も正解から考える必要は無いんだよ」

 

 だが、その考えはこのゼダスの一言に霧散した。

 

「へっ?」

「だから、正解ルートから行くのが何時も正しいとは言えないって事だ。今回の問題は『本来、不可能な事を可能にする』問題だ。だから、大半の奴は、『どうすれば可能になるか』を考える。だが、先生はその正攻法を逆手に取った訳だ。つまり、『不可能を可能にする前に、何故不可能かを考え、その原因を正す』という認識をする必要がある。で、ここからは基本的な問題だ。何で導力魔法は現実に現象を留めて置けないんだっけ?」

「現象を留めておくには、導力を絶えずに供給する必要があるけど、供給する側の導力に限りがあるからでしょ。人間の保有する魔力を導力に変換しても、限りがあって、何時かは尽きてしまう」

「なら、それを直す方法を探れば良い。具体的には–––というか、俺の回答は、空間内の魔力を吸収し導力に変換。そして、対象に流し込み続ける装置を作れば良いって訳だ」

「確かにそれなら可能になるわね。でも、それって–––」

「察しが良いな。この装置を作る事は、現在の技術を応用し切っても不可能だ。だから、ほとんど夢理論なんだよ」

 

 

 “表”社会の技術ではな、と付け加えたかったゼダスだが、それは押し留めた。

 

 

 多分、結社の第六柱ぐらいなら、作り上げそうなんだがな。

 

 

 とも思った。そんな中、サラ教官は、

 

「いやぁ〜、ホントにご苦労様だったわね」

 

 と労いの言葉をかける。そして、続けて、

 

「テスト明けに、丁度良い感じに雨も上がったし良かったわね。これも空の女神の粋な計らいかしらね」

「………また適当な事を」

 

 半眼でアリサは応じる。それに続くように、根を上げる奴が多かった。

 実戦とは違う疲労が座学には伴うのだろう。元猟兵のフィーは、数日間続きで戦闘しても疲れた素振りを滅多に見せないのに、この時に限っては疲れた表情をしていた。

 

「ま、明日は自由行動日だし、せいぜい鬱憤でも晴らしなさい。それに試験の結果は来週の水曜日に返却されるわ。そして、その日の午後に《実技テスト》も行うからね」

 

 マジですか。一日にセカンドインパクト喰らうとかマジですか。

 

「後、来週末にも《特別実習》に向かってもらうから。そういう意味でも羽を伸ばすといいわね」

「もうそんな時期かよ。先月の特別実習から、そんなに経ったっけか」

 

 とゼダスがつぶやく。

 

「えっ、何?老化が進んで、時間が正確に感じ取れなくなったの?良い医者紹介しようか?」

「黙れ私生活駄目教官。これからお出かけだからって、んな要らねぇ事を言うなよ」

「何故、バレてるし」

「謎に上機嫌なんだからな。良い人でも見つけたのか?」

 

 クレアから聞いた話だと、サラ教官の好みは初老辺りの男性らしい。だが、敢えてその事には触れなかった。

 

「………そういう訳だから、野暮用で明日の夜までは戻らないわ。寮の事は頼んだわよ」

 

 と言い残し、サラ教官は足早に去っていった。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 その後、Ⅶ組メンバーで寮に帰宅する事になった。具体的な面々は、ゼダスにリィン、ユーシスにマキアス、エリオット、アリサ、エマ、といったところだ。

 

「何て言うか解放感に満ちてるよねぇ。結果発表を考えるとちょっと憂鬱だけどさ」

 

 と話を切り出したのはエリオットだ。それに反応したのは、マキアスだった。

 

「フフン。悪いが僕は自信があるぞ。エマ君はどうだった?」

「そ、そうですね。………悪くは無いと思います」

「むむっ………」

 

 学年成績トップカーストの会話は何かを帯びていた。こういう座学のテストでは、満点を目指しているのだろう。

 このやり取りに横槍を入れたのはユーシスだ。

 

「やめておけ、見苦しい」

「それは同感だ。何も結果が全てじゃねぇんだからさ」

 

 ゼダスもユーシスの横槍に乗る。そして、

 

「そういうのも含めて、結果待ちって事ね」

 

 とアリサがまとめた。そして次に話の種を蒔いたのは、アリサだった。

 

「そういえば………サラ教官のあれってどう思う?」

「誰かに会うんだろうけどな。野暮用で明日の夜まで戻らないって言ってたし」

 

 とリィンが返す。それにエマが、

 

「うーん、ゼダスさんに言われて若干の戸惑いを見せてましたし、順当に考えれば、恋人とかに会うんでしょうか?」

 

 と推測を立てるが、ユーシス、マキアス、ゼダスの三人が真っ向からその考えを一刀両断する。

 

「………信じられんな。アレにそんなものがいるのか?」

「美人なのは認めるが、あの性格と生活態度を見ると………」

「ああ。あの酒乱かつ私生活壊滅女にそんなものが出来たら、相手が可哀想だ」

 

 それに苦笑したリィンは、

 

「好き放題言ってるな。………まあ、俺も同感だけど」

 

 と同意する。

 

「そういえば………明日も生徒会のお手伝いをするの?」

 

 唐突なアリサの問いに、リィンは、

 

「そのつもりだよ。試験勉強ばっかりで良い気分転換になりそうだし」

 

 と肯定の意を示す。

 リィンは、入学してから自由行動日には、あの小さな生徒会長であるトワが率いる生徒会のお手伝いをしているのだ。多種多様の依頼が回されてくるらしく、大変そうだが、やり甲斐のある仕事らしい。

 

「なるほどな」

「旧校舎の探索をする時はぜひ呼んで下さいね」

「ああ、今度は僕たちも君の力にならせてもらおう」

 

 と決意を表明したのは、ユーシスとエマ、マキアスだ。

 どうやら『旧校舎の探索』などという大剃れた物も存在するみたいだ。

 

「ゼダスはどうするんだ?」

 

 急に問われたゼダス。それに、

 

「あ、えっと………今回のはちょっと遠慮させてもらうわ」

 

 と詰まった答えを出す。

 

「分かった。気が向いたらまた声をかけてくれ」

 

 とリィンが断ってくれた為、あの答えに関する詮索は無かった。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 寮が見えてきた。

 中々、質素だが一部屋辺りの面積が広いので良しとしよう。そんな中、エリオットが何かに気付いた様子で、

 

「そういえば………ガイウス、どうしたんだろう?学院長に呼ばれたって言ってたけど………」

「学院長か。あいつって何か問題起こしたか?そんな奴には見えなかったんだがな」

「ゼダス。君は一体、何を勝手に決め付けてるんだ?」

「学院長の呼び出しだぜ。普通の案件じゃないだろうが」

 

 そのやり取りに呼応されたか、アリサが、

 

「内容は分からないわね………。そういえば、ラウラとフィーも先に教室を出ていったわね。折角だし、みんなで一緒に帰ろうと思ったんだけど………」

「そうですね………」

 

 とエマも同意する。リィンは、

 

「………気の所為かもしれないけどさ。この頃、ラウラとフィー、何処かぎこちなくないか?」

 

 と核心を突く。リィンとゼダスを抜いた男性陣は、気付いていなかった様子だが、アリサは、

 

「………気付いてたんだ」

「その、今月に入ってから何かあったみたいで………お互い避けあってる様な気がするんです」

 

 とエマが状況の補足をすると、言われてみれば、といった感じにユーシスは、

 

「どちらも細かい事を気にする様なタイプでは無いと思ったが」

 

 というと、女性陣は、

 

「うーん、そうなんだけど………」

「私たちもそれと無く探ってはいるのですけど………」

 

 と困った表情を浮かべる。

 すると、これまで考え込んでいたマキアスが、思い当たった節を見つけたのか、口を開く。

 

「特別実習での出来事をお互いの班で報告し合っただろう?………フィーが僕たちを助ける為に爆薬を使った事を含めて」

 

 実習後、フィーはⅦ組に自分の前歴を明かした。

 《猟兵団(イェーガー)》に所属していた猟兵。しかも、二つ名に《西風の妖精(シルフィード)》と付けられていた程の実力者。

 それを明かした時には、全員が驚いていたが、ラウラだけ反応が違っていた。嫌悪………とも違うし、敵対………とも違う。どういう感情かは分からないが、ラウラの中には別の感情が渦巻いている様に見えた。

 

「ま、あの二人は基本的に反りが合わないからな」

 

 方や、騎士道に真っ当な剣士。もう方や、騎士道?何それ美味しいの?みたいな猟兵。

 まず、経歴が全くの反対のこの二人がこういう感じになるのは、ゼダスとしては随分前から危惧していた。が、そこまで重度ではないので、安心したとも言えるが。

 

「フン、事情はそれぞれだろう。未だに家名を明かそうとしない人間もいるぐらいだからな」

 

 とユーシスが言うと、その家名を明かしていない人間であるアリサが反応する。

 

「ちょ、ちょっと………今ここでそれを言うの⁉︎」

「別に他意は無いが。まぁ、お前の家名には大体の予測がついているからな」

 

 ゼダスと同じく、ユーシスも気付いていたみたいだ。

 

「あ、あなたねぇ………」

 

 怒り心頭といった感じに吐くアリサに 、エマとリィンが宥める。

 

「まあまあ、アリサさん」

「アリサが話す気になるまでは余計な詮索はしないからさ。」

 

 との言葉にアリサはしどろもどろに答える。

 

「そ、その………勿体振ってる訳じゃ無いのよ。ただ、あまり周りに知られると面倒になるかなって………」

 

 とはぐらかした。そんな中、明後日の方向から謎の声がした。

 

「–––お嬢様。お帰りなさいませ」

「え–––」

 

 間抜けなアリサの声と共に全員が声の主の方を向く。そこにいたのは、美人のメイドさんだった。

 落ち着いた紫色の生地を基調とし、白いエプロンドレスを身につけていた。緩くカールさせた薄紫色のボブカットの髪に柔和な翡翠色の瞳を持つメイドさんを見た瞬間、アリサは叫ぶ。

 

 

 

 

 

「シャ、シャ、シャ………シャロン⁉︎」

 

 

 

 

 

 こうして、後に重要なピースとなる《死線》シャロン・クルーガーとの邂逅を果たしたのだった。




シャロンさんが登場しました。
家事全般可能なゼダスとシャロン。所属元も一緒。この二人の掛け合いに注目です(頑張って書こうと思います………)。
さてと、そろそろ伏線を張っていくとしますかぁ‼︎

感想・ご意見などがございましたら、よろしくお願いしますm(__)m


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