追記:今話が今年最後の投稿となります(この作品の)
守護騎士。またの名をドミニオン。
その実態は、ゼムリア大陸で最大規模を誇る《
『封聖省』とは、教会が表沙汰に出来ない様な事を–––詳しく言うと、
『星杯騎士団』は、古代遺物の回収と管理をするには訳がある。
それは–––古代遺物の決して無視出来ない規模の力故だった。
古代遺物は、その名の通り、古き時から出土して、大半が機能を停止しているのだが、そんな中、例外は存在していて、稀に機能を保ったまま出土するのだ。その顕著な例が、ゼダスが取り込んだ《
そんな強大な古代遺物を教会は「早過ぎた女神の贈り物」と位置付け、回収に当たっているという訳だ。
そして、『星杯騎士団』には、もう一つの仕事も請け負っている。
それは、古代遺物の悪用や女神に仇なす行為などを度を超えて行った者たち–––教会側は『外法』と称している–––の抹殺だ。そんな汚れ仕事を担っている為、『教会の狗』と揶揄される事も多々ある。
また、『星杯騎士団』とゼダスの属する結社《
例えば、使徒が一柱の性格悪い方にぶっ壊れの糞《白面》が塩漬けされたり………まぁ、実力があったとはいえ、糞だったから、別に失っても、痛くも痒くも無いが。
ま、その犠牲におかげで、結社は目的だった《輝く環》を手に入れれたので、問題無い気がする。
––––さて、ここまで説明が入ると、読者の諸君は察せてしまうのでは無いか?
そう、
―――*―――*―――
「なぁ、そろそろ終わりにしね?」
ゼダスは呆れながらそう呟く。
目の前には、負けを積まれまくって、心身共にボロボロになっているアリサがいた。
「気を落とさないで下さい、アリサさん」
エマからの慰めの言葉も今のアリサにとっては苦痛でしかない。それを気付かず言葉をかけるエマさんマジパネェっす。
何でアリサがこんな事になったかと言うと、全ては列車内での暇潰しが原因だった。
行うゲームを変えながら、暇を潰していたのだが………結局、全てでゼダスに負けたのだ。別に最下位になり続けた訳では無いのだが、アリサとしてはゼダスに負けた事が問題なのだ。
「そうだ、アリサ。別に勝ち負けが重要な訳では無い」
「ガイウスの言う通りだ。少しは冷静になったらどうだ?」
男子勢からの言葉をアリサは聞き入れたのか、ううと唸りながらゲームを降りた。
「何でゼダスはそんなに強いのよっ⁉︎」
「さぁ?」
ゼダスは惚けた様に対応する。
「アリサの運が悪いだけだ。俺自身がどうこうした訳じゃ無い」
「嘘よっ‼︎」
「何を根拠に?」
正論艦隊にアリサは、またもや撃沈する。流石に哀れになってきた。
「そろそろ、ルーレ駅だ。荷物をまとめておこう」
リィンが、話題を変えるという助け舟を出したおかげで、この件は一旦終着した。
―――*―――*―――
ルーレ駅に到着した列車を降り、Ⅶ組A班は目的の軍用列車のあるホームに向かっていた。遠出という事もあり、各々が大量の荷物を持っている。正直、重そう。
そんな中、ゼダスが口を開く。
「なぁ」
「何だ、ゼダス。珍しい物でも見つけたのか?」
「いや。そうじゃ無いんだが………ちょっと先行っててくれるか?買い足しておきたい物がある」
「買い足しておきたい物?」
リィンの問いにゼダスは、バツが悪そうに答える。
「ああ。ちょっと………な」
その答え方に全員が疑問を隠せないでいたが、敢えて聞かずに、
「分かった。でも、早く戻ってこいよ。列車に乗り遅れるとかはするなよ」
「分かってるよ。さっさと戻ってくる」
ゼダスは荷物を持つ手に若干の力を入れ、Ⅶ組A班から一時的に離れる事にした。
―――*―――*―――
硬く冷たい駅の床を踏み締め、ゼダスは歩みを進める。
リィンに言った「買い足しておきたい物があるというのは、あくまで嘘。目的は別にある。
気配はしている。隠すつもりが無いらしい。
「なぁ、シャロン」
人混みの中、目の前に現れたメイドにゼダスは話しかける。
シャロンは、ドレススカートの端っこをちょこっと持ち上げ礼。
「お久しぶり………というよりか、朝以来ですわね」
「何故、列車で来た俺より早かったかは敢えて聞かないでおくが、今の仕事は護衛か?」
ゼダスがそう言うのには、明確な根拠がある。
シャロンの後ろに控えている人物。
このルーレ市を本拠地とする帝国最大規模の巨大重工業メーカー《ラインフォルト社》の代表であり、Ⅶ組のアリサの母親に加え、ルーファスと同じくトールズ士官学院の常任理事であるイリーナ・ラインフォルトが居るのだから。
「お久しぶりです。ラインフォルトの代表さん」
「ええ、お久しぶりね。《天帝》君」
ゼダスとイリーナは互いに微笑みを保っているが、間に何かを含んでいる様だった。
「それがシャロンの言ってた拳銃型戦術オーブメントね。こちら側のバックアップが有ったとはいえ、一人で完成させた技量。………まだ、こちら側に就くつもりは無いのかしら?」
「はい。俺は学生ですし、《執行者》だしと色々と職務を兼任しなきゃならないんで。というか、
とゼダスは問いつつもアンチ・ゴスペルをイリーナに放る。それを危なげなくキャッチし、
「流石ね。一切の無駄を省き、効率重視の最適化が施されている。これなら
「ただ最近は威力が少ない気がして、ちょっと足踏みしているんですよね〜」
「それに関しては、こちらから提案があるのだけど。シャロン、例の物を」
「かしこまりました」
そう答え、シャロンは背後からアタッシュケースを持ち出す。アタッシュケースはゼダスに渡された。
中に入っていたのは、砲身に加え、複数のオプションパーツ。
「これは一体………」
「“提供”の契約よ」
「契約は資材じゃなかったでしたけ?こんな付属品は対象外じゃ………」
「ちょっとしたオマケよ。その代わりと言っては何だけど、貴方にはこれから手を貸してもらう場合が増えるからね」
「ああ、そういうこと。なら、何時かは手を貸しますよ」
「よろしく頼むわ。行くわよ、シャロン」
「かしこまりました」
そして、イリーナとシャロンは歩き始める。多分、これからも仕事で明け暮れるのだろう。そんな中、よく
「そういえば、アリサには会っていかないんですか?」
背後から投げかける問いに、イリーナは、
「わざわざ会いに行く理由が無いでしょう」
「俺としては、よく実の娘にそこまで冷徹になれるのが、凄いと思いますわー」
「そうかしら?」
「そうですよ。だから–––俺が他人の家庭事情に口を出すのは野暮ですが–––少しはアリサの事を気にしてやって下さい。そして、アリサを“駒”として使おうとするな。あいつは–––仲間っすから」
言葉を紡ぐ間、若干荒くなりかけたが抑えて、何とか笑みを作る事にした。だいぶ、ぎこちなかったが。
返答の声は聞こえなかった。聞こえたのは足音のみ。それをどう取るかは、その人の主観的想像という事で………
―――*―――*―――
「悪いな。待たせちまって」
ゼダスはそう言いながら、Ⅶ組A班に合流した。
「ゼダス、遅かったな。それが………買い足しときたかった物か?」
リィンはゼダスが手にしたアタッシュケースを指す。
「………ああ、そうだ」
「ゼダス。少し話を聞かせなさい」
肯定の意を示すと、次はアリサが突っかかってくる。そして、アリサはゼダスの胸倉を掴みあげる。
「何のつもりだ?」
今、全員が思っている事をゼダスは代弁する。それの答えとしてアリサは、
「どういうつもり?」
「だから、何が?」
「何で貴方がラインフォルトのアタッシュケースを持っているかよ。それについての説明が欲しい」
ゼダスを掴む手が、僅かながら震えていたが、今は気にする事じゃ無い。
よく選び、ゼダスは言葉を紡ぐ。
「俺がラインフォルトと繋がっていた。それ以上もそれ以下でも無い。今日、会長であるお前の母親に会ったのも、このアタッシュケースが原因だ」
「何で………何で貴方がラインフォルトと繋がっているのよっ‼︎」
「繋がってちゃ悪いのか?まさか………逆ギレしてるんじゃないだろうな」
「……何を根拠に………………」
「お前の信じたゼダスという人物が、嫌っていた母親との連絡を取れる状態だった。そして、自分の行動を逐一報告されていたのではないか?という疑念から、この行動を結び付けるのは容易だろ」
「貴方ねっ………‼︎」
アリサは怒り心頭といった感じに、ゼダスに殴りかかろうとする。だが、エマはそれを許さない。
「ダメです、アリサさん‼︎」
エマが制動し、アリサは若干震えていたが止まった。
「貴方は信頼出来ると思ったのに………」
涙ぐんでそう言うアリサに、ゼダスは口を開く。
「はっ………“信頼”?何を根拠に?俺らは会って、まだ三ヶ月だ。たった三ヶ月だぞ。それだけで信頼なんて、だいぶ安いんだな」
この場面では、最悪の一手とも取れる「突き放す」という手で。
「二人とも、少しは落ち着け」
「ガイウスの言う通りだ。これ以上、話をややこしくしても意味ないだろ」
「別に止めろなんて頼んでねぇ」
吐き捨てるかの様に男性陣の制動の声を遮るゼダス。
このままでは、この実習の結果が悲惨になるのは、火を見るよりも明らかだが、それに更に油を注ぎ足す。
「実習の結果が悲惨になると感じれば、俺を外して実習してろ。別に俺に仲間は要らん」
「なっ………」
一同絶句。ゼダスの一言は、その四字熟語通りの状態を導いた。
実習に–––婉曲にだが–––参加しないという事は、評価に響きそうだが、それはゼダスとしては気にする点では無い。
戦術リンクがマトモに機能しない状態で巻き込みたく無い。それがゼダスが危惧している事だ。
確実にアリサとのリンクは繋がらない。そんな状態で戦闘なんぞ、どれだけストレスが溜まるか………
強敵なら尚更、ゼダスは周りを気にしてられなくなる。そんな中で、仲間を守りながら戦うなんて、出来ようはずも無い。
この険悪な関係が何時まで引き摺るかは分からないが、今の所は無理だろう、と割り切る事にした。
―――*―――*―――
「………」
「………」
結局、ゼダスとアリサは軍用列車内でも、全くと言っていい程に言葉を交わさなかった。それに胃を痛めるのは、他のメンバー。
出来る事なら、実習が始める前には仲直りして欲しいだろうが、互いにその意を示さない事から、諦めかけていた。
この重い空気の中、話しかけてきたのは車掌さんだった。
「何か重々しい雰囲気だが………なんかあったか?」
とガイウスに話しかける。
どうやら、この車掌さんは、入学にこの列車を使ったガイウスと面識があった様だ。
「ああ、ちょっとした喧嘩だ」
「ふーん。そりゃ大変だなぁ。………にしても、お前さんがあの名門校の学生だったとはなぁ。中々、似合ってるぜ」
「そう言ってもらえるとありがたい」
その後も、この空気を遠ざけるべく、他愛も無い世間話をしていたが、ゼダスとアリサは無言を貫く。
そんな中、突如車両の扉が開かれる。そこにいたのは、ボロボロのマントを身に纏い、フードを目深に被られている人物だった。
この列車を利用する人の数は高が知れている為、乗客はⅦ組以外は殆ど居ない。それに加え、如何にも不審者です、という風貌に車掌さんも不審に思ったのか、
「アンタ、乗車券は持っているのか?無いならここにいちゃ–––」
車掌さんの言葉が途切れたのは、ゼダスが即座に車掌さんとボロマントの間に割り込んだからだ。
ゼダスの手に握られているのは魔剣《レーヴァティン》。
何故戦闘体勢を取っているかというと、ゼダスには見えたのだ。ボロマントの懐に隠された黒い拳銃を。ゼダスの《アンチ・ゴスペル》なんていう、なんちゃって拳銃じゃなく、本物の、だ。
「………何者だ?」
短い問いにボロマントは無言を貫く。
–––不味い
ゼダスは内心、そうつぶやく。
このボロマント。一合も打ち合っていないのに、この隠れた殺意。相当の物だ。
「お前ら。今から、少し時間を稼ぐ。その間に、乗客を別の車両に退避させろ。良いな、一人も漏らすな。絶対だぞ‼︎」
ゼダスは叫び、魔剣でボロマントに斬りかかる。それをスルッと受け流す。が、
「吹き飛べ」
もう片手で構えたアンチ・ゴスペルの引き鉄を引く。
刹那の間に構築された魔法。慣性増加魔法。その名を『ショット・ベクトル』。
いきなり力が掛かり、ボロマントは紙屑の様に吹き飛ばされる。避難させている方とは真逆の方向に吹き飛ばされ、一時的に距離が空く。
「早くしろっ‼︎」
ゼダスの悲痛な叫びが全員の行動を強制させた。
男性陣の奮闘のおかげで、十数秒で避難が完了した様だが、ゼダスは忘れぬ内に言葉を付け足す。
「アリサっ‼︎」
「何よっ‼︎」
先程まで口を利かなかった二人が、緊急事態という事を考慮し、コミュニケーションを取る。
「これ、大事に持ってろよっ‼︎」
足元に落ちているアタッシュケースをゼダスは放り投げる。
関係を壊す原因となったアタッシュケース。アリサは、それを受け取るか、一瞬だけ迷ったが、ここで捨てる意味も無い事を理解するとしっかりと受け取る。
それを確認したゼダスは、心の中で礼を言う。それは、避難を迅速に終えた男性陣への物か、しっかりと受け取ってくれたアリサへかは分からない。分かる必要が無い。
そして、ゼダスは列車を駆け始める。あの“強者”を屠るべく。
―――*―――*―――
「これでイーブンだ」
ゼダスが再び、ボロマントと邂逅した時に言い放った言葉だ。
ゼダスはこれで背後を気にする必要が、当分無くなった。それを聞き入れたボロマントは、初めて声を出す。
「………ああ、これで、戦う、事が、出来る」
ボロマントの声は、だいぶ雲がかっていて、聞き取りずらかった。
「聞いていいかな。お前は何者だ?」
「ふふ、可笑しな、事を、言うのだな」
「………何が言いたい」
「忘れた、のか?《天帝》」
これではっきりした。
《天帝》の渾名を知る者は数少ない。少なくとも結社に与するものか、対するものの何処かに属している。それなら割り出し易い。
そして、ゼダスの頭の中で、一つの線が繋がる。根拠は無い。だが、確信はある。
「………守護騎士か」
ゼダスの言葉にボロマントは、
「ご明察、と言って、おこう」
肯定の意を示す。
このボロマントが、シーナが言っていた守護騎士か。
–––勝てるのか?
内心、訊ねる声が超常的な能力で聞こえたのか、ボロマントは、
「今の、お前には、勝てない」
「あ?」
挑発的な発言にゼダスは若干、怒りを覚えるが、戦闘では冷静が大事なのは理解している為、それ以上は何も思わない。
「全てを、忘れた、お前に、俺を、倒す事は、出来ない」
その言葉を聞いた瞬間、ゼダスは雷に打たれた様な感覚に襲われる。
–––こいつ………一体何なんだ………俺の何を知っている?
「忘れる?一体何の事だ?」
「それすらも、忘れた、のか。“事件”、の、事を」
事件。《天帝事件》の事か。
ゼダスの頭は一筋の事実で繋がった。
この守護騎士は、《天帝事件》の生き残り。どうやら、瀕死状態だったのだろうが、それがカギとなり守護騎士である証の《
そんな推測を立てていると、守護騎士は、
「忘れた、お前に、用は無い。消えろ」
フワッと浮いたかの様にバックステップを踏む。そして、腰に差してある拳銃を抜き、ゼダスに標準を合わせる。
そして、放たれた弾丸をゼダスは魔剣で一刀両断。
この瞬間、互いの命を削り合う戦闘が始まった。
―――*―――*―――
退避したⅦ組は自分達の非力さを痛感していた。
理由は簡単。あのボロマントには、まだまだ及ばない事を感じ取ったからだ。
確かに強くなった。入学前に比べれば、数倍強くなったとも言えるだろう。
しかし、それでも埋まらない実力の壁。実際、あの場に一人でも残っていたら、ゼダスは絶対に勝つ事が出来ないだろう。
ゼダスの声を荒げさせる程の手練れ。そんな化物相手にゼダスは仲間を庇いながら戦えるはずが無い。それを理解した上で、あの退避命令を受け取った。
リィンやガイウスなどの武に精通………いや。一度戦闘を味わった者に対する侮辱とも取れるその命令を聞き入れたく無かった。
「はぁ………俺もまだまだだな」
リィンは己の無力さに打ち拉がれて、そうボヤいていた。それに誰もが共感する。
あの場に立てない。あの
全ては己の実力が足らないからと理解していたも、そう思ってしまうのだ。
そんな中、アリサはゼダスから受け取ったアタッシュケースを凝視する。一体、この中身は何だろう、と思い、開けてみる。
そこにあったのは砲身と複数のパーツ。ゼダスの《アンチ・ゴスペル》用だろう。
そして、それを一回全て出し、空っぽになったアタッシュケースを再び眺める。
「あ、アリサさん?」
いきなり、大量のパーツを落としたアリサに問いかけるエマ。
だが、聞こえていないのか、アリサはアタッシュケースを弄り始める。すると、一枚の便箋が出て来た。その内容は––––
―――*―――*―――
ゼダスは飛来する銃弾の全てを叩き落としていた。
守護騎士の使っている銃は決して連射能力に優れた物では無いが、ゼダスは間合いを詰めなかった。
–––こいつは何かを隠してやがる。そう簡単に踏み込ませねぇ気だな
苦虫を噛み潰したかの様な気になり、ゼダスは焦る。
–––駅に止まる前に決着を付けないと色々と不味い。どうにかして、攻めたいところだが………
ゼダスは若干迷うが、切り出す事にした。
右足を思いっきり踏み込み、左手に持った魔剣を引き絞る。そして、矢の如く撃ち出された魔剣は、紅蓮の軌跡を残し、守護騎士へと襲う。
聖扉戦術 武の型《虚突》。
しかし、守護騎士は避けようと身を動かす。が、ここは列車内だ。座席もあり、内装も決して広いとは言えない。そんな中でこの刺突技を止める術は無い。
だが、守護騎士はゼダスの予想も軽く超える手を選ぶ。それは、列車の天井を突き破り、上への回避を可能にする事だった。
銃で天井を数発撃った後、人間離れした跳躍をし、鋭い蹴りを入れ、突き破り上に逃げる。
しかし、それをわざわざ見逃すゼダスでは無い。穿った穴を通り、ゼダスも上へと跳ぶ。
天井の上は、凄い風景だった。ビックスケールの山岳地帯を速いスピードで駆け抜けて、微風が気持ち良い。
だが、戦闘中であるが故、ゼダスが抱いた感想は全くの別物だった。
–––風が邪魔だ。
向かい風を受けてる状態で戦うのは、非常に面倒。飛び道具を使おうにも軌道がブレるし、近付こうにも体力を常時以上も食う。
そして、ある事に気付く。
「お前のフードさ。古代遺物か?顔を視認させないとは、よく出来たモンだよ」
「別に、隠すつもりは、無いのだがな。上、からの、命でな」
顔だけでも確認しておきたかったが、古代遺物相手に看破するのは、それこそ破壊しかない。
ゼダスはあらゆる雑念を捨てる。
風によるバットアドバンテージが何だ。奇襲によるアドバンテージが何だ。俺が負ける訳がない。そんな事は有ってはならないし、有らせる気もない。
「聖扉戦術 武の型《嵐撃》」
そう言うとゼダスは魔剣で一気に薙ぎ払う。
風の吹き荒れる列車の上では、跳躍回避は無謀過ぎる。その常識的な事を組み込んだ上での技の選択。ゼダスは、この手に非は無いと思っていた。実際、そうだった。が、何時の時代も作戦には不安分子が付き物。
ゼダスはその時、視界に入った。
物凄い距離のある山岳地帯から、小さな炎がバンッと言う音と共に発生した事を。
次の瞬間、ゼダスの肩にヒットした“銃弾”。前の守護騎士から放たれた訳では無い。横に連なる山岳地帯から放たれたのだ。
どれだけ楽観的に見積もっても2,000アージュ(2キロメートル)は存在する距離から放たれた。
ゼダスは肩にヒットした痛みと同時に魔剣を振る力も落ちた。そして、改めて考える。
–––この距離を掌握出来る銃器………狙撃銃か。どれだけの凄腕だよ。相手に回したくねぇわ。でも、これぐらいの傷なら《輝く環》で………
意外にも冷静に考えが回り、ゼダスは《輝く環》を起動させようとする。が、動かない。
「あ………れ?」
何で起動しない。何時もなら、支障が出る傷でさえ、一瞬で回復させる《輝く環》が起動しない。どういう事だ?と思案に暮れていると、目の前の守護騎士が声を出す。
「その、銃弾は、古代遺物阻害物質を、含んでいる。対《天帝》用、だったが、ここまでの、性能とはな」
その瞬間、ゼダスは血の気が引いていくのを感じた。
最終手段を封じられた上にここまで追い詰められた。どう見積もっても、勝ち目が無い。
そして、次の瞬間、守護騎士から放たれた踵落とし。ゼダスの頭部に直撃し、列車の天井をぶち抜いた。
その衝撃で、土煙が上がり、視界を暗くさせる。そして、ゼダスは意識を手放した。
―――*―――*―――
爆音が響き、Ⅶ組のメンバーは確認しに行くが、視界が悪く、まともに見る事が出来ないが、その土煙が止むと状況が見えた。
地に伏せている血塗れのゼダスにボロマントは平然と立っている。
「ぜ、ゼダスが負けた………」
リィン達はあり得ない物を見たかの様な言い方をするが、即座に戦闘状態に移行する。
当然だろう。あんな相手をこれ以上進ませたら、どれだけの命が犠牲となるか。
だが、彼我の実力差を考慮すれば、勝ち目が無いのは自明の理。生命の危険を感じたが–––
「シズク、か。………分かった、撤退、しよう」
ボロマントは、誰かと連絡を取っている様だ。
これを機に攻め入るべきなのだろうが、動けなかった。恐怖の所為で………
しかし、弱者に興味が無いのか、ボロマントは颯爽と列車から跳び降りる。
こうして、危険は一時的には去ったが、最大の戦力を失ったⅦ組にとっては、最悪の結果と言わざるを得なかった。
ゼダス君が負けました。
今回登場した守護騎士のモチーフ分かる人居るかな?
元のボロマントと拳銃持ちってところしか合わないけど………
これがアレになるんですから、大変っすよー
まだ、大晦日短編の主人公や作品へのメッセージや質問を募集中なので、どうぞご意見よろしくお願いします。
小説と関係無いですが、今期のアニメは豊作だった。
落第騎士の「一刀羅刹」VS「雷切」の一撃戦闘の演出と台詞は鳥肌モンっすわ………カッコよすぎ‼︎