闇影の軌跡   作: 黒兎

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ようやく本筋に足を突っ込む事が出来た………というか、この実習はほとんどオリジナル展開だらけな気が………



一触即発

 ゼダスがⅦ組A班に合流してから一晩が過ぎた。

 Ⅶ組が泊まっているノルドの民の家にて、多数の質問攻めを受けたが、ゼダスにとってはその程度の事は別に苦では無く、寧ろ狙撃手より逃げるよりは簡単過ぎて眠たくなるほどだった。比較対象がおかしい気がするが………

 そんなこんやで、一夜ですっかりと馴染んだゼダスは朝飯を食べながら、ガイウスの父親であるラガンとノルドの民の長老であるイヴンから、少々洒落にならない話を聞く。

 

「実習中の君達に言うかどうかは迷ったが………やはり、伝えておこう」

「つい先程、ゼンダー門から連絡があってな」

 

 その言葉にゼダスは、自分が無許可で療養中から逃げ出したから連れ戻されるのかと身構えたが別にそんな些細な事では無かった。

 どうやら、ノルド高原に建つ帝国監視塔のすぐ近くで正体不明の爆発事故が起きたそうなのだ。しかも、空中で。どこからどう見ても不可解な一件に、警戒の意を込めてノルドの民に連絡を入れたのだろう。

 

「へぇ………そりゃ、難儀な話だ。解決に手間が掛かりそうな事で………」

 

 ゼダスは昨日の疲れが抜け切って無いのか、生温い返事を返す。それにⅦ組一同は白い目を向けるが、アリサはその不可解さに引っ掛かり発言する。

 

「でも、おかしな話ではあるよね。空中で爆発事故………少なくとも、外部からの要因が無いと有り得ないわ」

「そうか………それじゃあ、ゼンダー門まで話を聞きに行くとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ………この話、何回目か分かんなくなってきたんだが、ここって広過ぎじゃね?」

 

 馬に乗ったゼダスの一言にアリサとガイウスは、

 

「確かにその内容の発言は多過ぎよ。何?そんなに広大な地が嫌い?」

「ここは故郷だから、そこまで広いとは思わない」

 

 マジっすか………ガイウスさん、ノルド高原を広く無いと申すか。流石というか何と言うか………

 

「別に嫌いって訳じゃねぇけどさ………でも、馬の良さを感じるには持ってこいの広さだよなぁ、とは思う」

 

 その言葉に他意は無い。

 昨日の生命の危機を感じながら歩いたのに比べれば、速度的にも気分的にも楽なのに変わりはない訳だ。馬に乗り慣れている訳ではないから、多少の筋肉痛は覚悟せにゃならんが、さしたる問題では無いのも事実。

 

「ほら、皆さん。そろそろ、到着ですよ。一応、軍の施設ですから私語を慎んだ方が良いかと」

 

 とのエマからの忠告にゼダスは、面倒だなぁと思い、ある案を思い付く。

 

「………あのさ。俺、ちょっと寄りたい所があるんだけど………」

「このタイミングでか?」

 

 リィンは、至極当然の事を訊ねる。そりゃ、このタイミングで、この提案は不審がられて当然。なら–––

 

「悪い」

 

 マトモに答えずに行動に移すが一番。馬を器用に乗りこなし、一気に草原を駆ける。その行動に、全員がポカンと口を開ける。が–––

 

「ゼダスっ‼︎何、勝手に独断先行してるのよっ⁉︎」

「悔しかったら、追いかけてみろよ‼︎」

 

 悪戯っぽく言い残すゼダスにアリサの堪忍袋の尾が盛大な音を立てて、切れる。

 

「〜〜〜っ‼︎待ちなさい、待ちなさいっ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––で、本当に追ってくるとは思わんかったよ」

 

 呆れ返るゼダス。それには明確な理由がある。

 あの後、アリサが全速力で追いかけてきたのだ。馬が可哀想だ。あんなに一気に加速させられて………

 そして、適当に撒こうと努力に努力を重ねたのだが、結局追い付かれた。だが、普段から馬に乗らないゼダスとアリサは互いに筋肉痛を味わう事になるが、ゼダスは筋肉の運用方法を変えるだけで痛みを和らげる術を知っているが、アリサが知る訳もなく………その上、全力で追ってきた為、腰が砕けて立てなくなる始末。これは呆れる他無い。

 

「本当、馬鹿だな。立てなくなる(そこ)までして追い付こうするか?」

「う、うるさいわねっ‼︎別にいいでしょうが………」

 

 問いかけたつもりが逆ギレされ、話が滞る。しかし、話が進まないのならそこまで、と割り切り高原を歩き始めるゼダス。その光景にアリサは、

 

「何処に行くつもりよ………」

「んー………事件の推理でもしに?」

 

 その言葉にアリサは首を傾げる。

 事件の詳細な内容すら聞かされていないのに推理?そんな事、()()()()出来る訳が無い。そして、同時に思う。

 

 

–––ゼダス(こいつ)()()()()()()()()、と………

 

 

「–––なら、私も連れて行きなさいよっ‼︎」

「マトモに動けない奴を連れて行く余力は生憎、無くてな。そこで待ってろ」

「『何故、そなたはそうも孤独で在ろうとするのだっ⁉︎少しは我らを頼ってくれても良いだろう‼︎』」

「っ………‼︎」

 

 アリサらしからぬ口調で発された言葉。

 二ヶ月前の初めての特別実習時に、この様に事件を解決しようとした時にラウラに言われた言葉。確か、あの時も一人で解決しようとしていた。だが、それは一番効率が良い方法で、策としては何処も間違っていない。しかし、それを真正面から否定され、結局一人逃げる形でその場を切り抜けた。

 それを今回の件と照らし合わせて、アリサは言ったのだろう。前は逃げた–––すなわち、負けた。なら、どうする?また逃げて、敗北を重ねるか?それとも–––同じく正面から向き合う事で、勝利(チェック・メイト)とは言わなくても引き分け(ステイル・メイト)に持ち込むか?

 何が正しい手かは今なら分かっている。だから、それが非計算的と言われようが、何と言われようがここで()()()()()手を選ぶ。それが–––今、出来る最良の選択だ。

 

「はぁ………分かった。今回ばかりは頼る。だが、どうやって移動するんだ?」

「うっ………考えてなかった………」

「お前は何で後先考えずに決断を下すんだ?成績的には頭は良いだろ」

「貴方の方が成績は良いじゃない………嫌味?」

「んな訳ないだろ。所詮、学院側の物差しで測られた基準だぜ。そんなのに左右される訳が無い」

 

 このままじゃ、成績の話が続きそうになるので、話題を変える。

 

「で、お前はどう移動するんだ?つーか、筋肉痛ってどれくらい?」

「足が突っ張って動かし難い感じかな。でも、少し休めば–––って、ゼダス‼︎貴方、何してるのよっ⁉︎」

「えっ?何って、見ての通りだけど」

 

 見ての通り………それを文にして説明すると、アリサが座っている所にゼダスが近付き、足を触っている。具体的には太腿を。

 ゼダスとしては、筋肉痛の度合いを確かめる為に直に筋肉に触れ、探っているだけなのだが、アリサとしては、突然の事で気が動転している。それについては、事前に断っていないゼダスが悪いし、アリサがそう言うのも理解が及ぶ。

 

「ああ………そう言う事か。ゴメンな、勝手に触って」

「べ、別に………嫌じゃなかった………」

 

 ゼダスの謝罪にアリサは何かを言っていたが、言葉を紡いで行く程に声量が落ちていって、最後ら辺を上手く聞き取る事が出来なかった。

 

「ま、アリサの言う通り、そこまで重度な物ではない。とはいえ、馬に乗って悪化しても困るし、ここで無下に時間を浪費するのも困る。こうなったら………」

 

 ゼダスは無人の馬二頭に衝撃を与え、住処の方に返す。何方にせよ、使えない状況なのだから、有っても仕方ない。

 

「あんな事して良かったの?」

「別にいいだろ。それより、ちょいと準備するんで待ってて頂けます?」

 

 腰に携えてたアンチ・ゴスペルを引き抜く。マガジンを取り外し、制服の内ポケットから他マガジンを取り出しセット。その後、何かパーツを付けた。

 

「何付けたの?」

「ラインフォルト側から頂いたアンチ・ゴスペルの付属品。詳しい事は知らないが、確か《魔力収束モジュール》って書いてあった。多分、魔法を行使する際に発生する余分な魔力を収束させるんじゃないかな?それなら、無駄が省ける」

 

 今のゼダスは《輝く環》の影響を良い意味でも悪い意味でも受けていない。おかげで、常時に比べるとほとんど魔力が無いに等しい。だから、少しでも魔力残量に気を配る必要があるのだ。

 ゼダスはアンチ・ゴスペルの引き鉄を引き、魔法式を展開させる。《自己製魔法(ハンドメイドマジック)》特有の魔力抽出現象に若干、蹌踉めく。やはり、素で行使するのは、キツい。そして、魔法式が霧散し、術式の効果が現れる。

 身体が多少は軽くなり、筋力値も僅かながら上がったように感じる。

 行使したのは、幻属性主体 火、風属性補助 身体能力増加魔法の『インプルース・アップ』だ。

 

「よっこらせっと」

 

 身体能力の増加をしたゼダスはアリサを持ち上げる。というか、俗に言うお姫様抱っこ状態になっている。アリサは顔を真っ赤にして反論する。

 

「あああああ貴方ね‼︎い今、自分が何をしてるか、わわわ分かってるの⁉︎」

「言動が挙動不審だぞ。別に持ち上げただけじゃん。これの方が速いし………まぁ、別におんぶでも良かったけどさ。背中に色々と当たると面倒だし」

「面倒ってどういう事よ」

 

 実のところ、ゼダスに身体能力増加魔法をかける必要は一切無い。だが、念には念を入れておきたかったのだ。

 ゼダスを狙ってくる奴ら–––守護騎士は、多分まだ追ってくる。早急に片をつけたいが、戦力差的に不可能。一人でなら、昨日の様に《超感覚》を交えて逃げ切る自信はある。だが、二人。しかも、担いだままでは確実に脳天を撃ち抜かれ死ぬ可能性がある。そして、それにアリサを巻き込む可能性があるのだ。なら、万全を期しておこうと思ったのだ。

 

「ま、誰も見てないんだし、恥ずかしがらなくても良いだろ。流石に俺も人に見られてたら、こんな事はしないしさ」

 

 苦笑しながら言うゼダスにアリサは渋々了承する。それを確認したゼダスは、足に持てる全てを込め、疾駆する。

 向かうは例の監視塔。普通に徒歩で移動すれば、日が昇りきり、再び傾き始めるだろうが、今のステータスなら数十分もあれば十分だ。そこで読者の皆様は気づくのでは無いだろうか。何故、昨日の逃亡劇の際に『インプルース・アップ』を使わなかったのか?という事に。

 それには色々な問題点が挙げれるが、一番の問題は、反動である。

 この魔法は飛躍的に身体能力を増加及び拡張を可能にしている。だが、そんな性能の魔法がデメリット無く、使える訳が無い。そして、その反動というのが–––効果が切れた後の大幅な弱体化である。具体的には、上げた分を元の分から差し引かれる事になっている。すなわち、元のステータスを100とし、それを魔法で150まで増加させる。すると、効果が切れた瞬間、ステータスは50まで下落。そんなデメリットを背負って、逃げ切れるかって話な訳だ。

 そして、そんな事をズラズラと並べている中、アリサには別の考えがあった。

 

「(これが男の人の身体なんだ………ゼダスって細そうに見えて、思いの外筋肉質なんだ。無駄が無くて、洗練されてて………って、何を考えているのっ⁉︎)」

 

 この抱かれている状況で走られている訳だから、ゼダスの身体が色々と当たるのだ。そんな中で、色々と感じてしまう。

 身体に宿る生命の灯火の揺らめきや胎動。そこから感じる力強さ。普段、男の人に触れることの無い………というか、そういう場面に陥らないアリサは新鮮さを感じ、そして羞恥に顔を染める。その感覚に苛まれる事、約数分、

 

「おい。おーいアリサさん?何、心ここに在らずみたいな表情で固まってるんだ?」

「へっ………」

 

 惚けるアリサに話しかけるゼダス。そりゃ不審がるだろう。凍らされた様に硬直されれば。

 

「監視塔に着いたのに、何固まってるんだよ」

「え………と、その………」

 

 パニック中のアリサは言い訳を構築しているが、そんな事をつゆ知らずゼダスは、

 

「もう筋肉痛が引いただろうし、降ろすぞ。さっさと事件の真意を探らなきゃならないんだからさ」

 

 と言いながら降ろし、証拠を集め出す。

 降ろされたアリサは若干の肌寒さを感じた後、ゼダスについて行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まとめると、昨日未明に何者かが監視塔を襲撃。だが、何らかの原因で失敗し、その事実が帝国・共和国両方に色々と拗れて伝わり、緊迫状態を迎えているって訳だな」

 

 ゼンダー門を経由して、合流したリィン達に情報を提示するゼダス。「寄りたい所がある」と言って勝手に飛び出し、結局ここに先回りされており、リィン達は頭を抱えたくなるが、そんな事をしている暇が無い、と思ったのか、言葉を紡ぐ。

 

「ゼンダー門で、この事件に関しての調査に二時間ちょっとの猶予を頂いたけど、それ以上は待てないそうだ」

「いや、この国際問題に発展しかねない件に二時間もくれた事に驚きだ。良くやったリィン。だが………正直、時間が足らないかもなぁ」

 

 ゼダスがそう言うのにも明確な訳がある。

 このノルド高原は、明確な国の領土ではないのだ。だから、隣接国は「自国の領土だ」と主張する。その中でも大型勢力なのがエレボニア帝国とカルバード共和国。ただでさえ仲が悪いというのに、この一件で尚更険悪ムードに突入する。

 帝国側は「自分達が共和国に襲われかけた」と主張し、共和国に責任を押し付ける。

 それに対抗する様に共和国側は「そう見せかける帝国側の陰謀」と反論する。

 どう考えても、和解する素振りはないから、最悪戦争も覚悟しなきゃならないこの状況。昨日までは睨めっこしてた両国が、いきなり問題を起こすか?これは、第三者が噛んでいるのは間違いない。だから、その第三者を引っ捕え、軍に差し出せば終わるのだが–––

 

「何故ですか?」

 

「時間が足らない」発言のゼダスに、原因の気になるエマが訊ねる。

 

「–––広過ぎる。設定されたエリアが広過ぎる。だって、事件が起きたのは昨日未明。そこから逃げられたら、何処にいるか見当が付かない。その上、その実行犯がまだ高原にいるとも限らないし、いたとしてもどの方角かは分からない。こちらに有利になる点が無い」

「でも、やるしか無いだろう」

 

 そう言うのはガイウス。故郷が危ういのだし、そう言うのを咎めるつもりは無い。ゼダスとしても、おずおずと引き下がる訳にはいかない。

 

「ああ、ガイウスの言う通りだ。この一件は何としてでも解決させるぞ」

「それは良いが、リィン。ちょっと提案が………」

「何だよ、ゼダス?」

「それはだな–––………」

 

 嫌ったらしい笑みを浮かべながらゼダスはリィンに耳打ちする。Ⅶ組の流儀とは外れるが、この件に限っては仕方ないだろう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、それじゃあ始めますか」

 

 広大な高原に一人駆けるゼダス。

 ゼダスがリィンに申し出たのは、単独行動。これなら、一目は憚かる事無く、学生としてでは無く執行者としての技能を遺憾無く発揮出来る。

 「せめて、誰かを連れて行け」と言われたが、丁重にお断りした。それでもアリサは付いてこようとしたが、こちらの意を察してくれたのか、潔く下がってくれた。

 そして、向かう先は昨日発見した石像。常識的な手段が通らないなら非常識な手段を通すまで。チートだ卑怯だと言われようが関係無い。解決すれば問題無いのだから………

 

 そして、目的地の石像の元に辿り着く。石像に背中を預け、肩に手を当てる。

 

「おい《輝く環(オーリオール)》。ここなら出てこれるんだろ?」

 

 

–––んー、ボクが安眠中なのに起こすとは、人としてどうかと思うよ

 

 

「知った事か。今は時間が無いから簡潔に答えろ」

 

 

–––何時に無く、折半詰まってるね〜。何か有った?

 

 

「ちょいと国際問題に発展しかねない事件に会った。力と知恵を貸して欲しい」

 

 

–––君がボクに頼むなんて初めてじゃないかな?君も色々と育ったよね〜。ボクとしては嬉しい限りだよ

 

 

「お世辞は良いから、さっさと貸せ」

 

 

–––頼む側が命令形とは………ま、良いよ。で、何があった訳?

 

 

その問いにゼダスは状況を簡潔に説明する。それに《輝く環》は、

 

 

–––なるほど。それは確かに面倒な話だ。全く………人間ってのは厄介な人種だねぇ〜

 

 

「本当だ。ああいう奴らと同種なのは少しばかり鼻に付くよ。だから、その救いようも無い人間代表として神様に助けを乞うさ」

 

そう言い、ゼダスは石像に向かって膝を折り、両手を合わせ、よく教会で見るお祈りの姿勢を作る。

 

「神様、古代遺物(アーティファクト)様、《輝く環》様、俺達みたいな愚かな奴らに一度だけでも手を差し伸べてやって下さい」

 

 

–––ク、クックック………君が土下座‼︎ヤバい、これは実に滑稽だね‼︎こんなに面白い画は長い間、生きてる中で見た事無いよぉ〜

 

 

「………」

 

 

–––………あれ?まさか、これって………マジの奴?

 

 

「………」

 

 

–––………………分かった。さっきの暴言は謝罪する。で、ボクに何を望むの?

 

 

「………この高原全体の昨晩の履歴を漁って欲しい。そこからの情報精査はコッチが担当する」

 

 

–––了解。ほんの数瞬でカタをつけるから待って

 

 

 《輝く環》との連絡が切れ、ゼダスは溜息を吐く。

 苦し紛れの演技だ。だが、体内に潜む《輝く環》を騙すには、自分の心を本気で騙す必要がある。そんな事は、文面としても表す事が出来ても、実行するには大変な労力と多重な策がいる。が、今回の件に限っては造作も無い話だ。

 何故なら、ゼダスの先の発言は紛れも無く本心だからだ。助けて欲しい、と乞うという事は、自分の手では負えないという事の裏返し。それを曲げず、素直に認めるゼダスの強さは本物だ。

 

 

–––はい、いっちょ上がりっと。ゼダス君と感覚共有をするから、多大な情報に呑まれないようにね

 

 

 その警告にゼダスは身構える。が、一気に流れ込む情報に意識が持っていかれそうになる。

 

「うぐっ………」

 

 声にし辛い悲鳴を挙げるゼダス。頭を押さえ、少しでも負担を軽減させようと努力する。だが、その程度で留めれるなら苦労しない。

 様々な思考と情報が混在し、頭に流れてくる。指定した範囲の情報履歴を掘り返してきて………頭が割れそうな感覚に苛まれるが、その苦しみの中、ある情報に結び付く。

 

 

「………そう、いう………事かよ」

 

 

 ゼダスには全てが悟れた。

 事件の発端。この惨状に至るまでの過程。そして–––相手の位置も、この件の解決についても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書く事は特段と無いですね。
この三章がもう直ぐ終わること位でしょうか?

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