「で、一体どういう訳か説明してもらおうか?」
真剣な面持ちで問うゼダス。その目の前には、大きな帽子を被ったオッドアイの少年風の《
バツが悪そうに頬を掻く《輝く環》。だが、ゼダスの真剣な面持ちが緩む事は無かった。
–––えへへ………あの〜何の事かなぁ?
「何の事って、しらばっくれるんじゃねぇ‼︎お前は俺に言っただろ。『俺の記憶を知っている』って。俺が知らない–––知りたい事を何でお前が知ってるんだっ‼︎」
–––あれれ?あくまでボクは『何が分かる』って聞かれて『君の記憶』とは答えたけどさ。『君の記憶を知っている』とは明言はしてなかったはずだよ
「んな、屁理屈はどうでもいいっ‼︎さっさとお前の知っている事を教えろっ‼︎」
–––何か、飯に待ちきれなくなった獣の雰囲気に近いねぇ〜。まぁ、教えて上げても良いよ
「さっさと吐けっ‼︎」
–––分かったから少し落ち着きなよ。えーっとね、ボクにもよく分からないんだけど、理解出来た範疇で説明するとね………君は–––………
《輝く環》の言葉が続く前に、意識が揺さぶられる。外部から揺らされる様なものでは無く、内部から無理矢理縛られる様なもの。《輝く環》の言葉は次第に聞こえなくなり、無意識の中で会話していたはずのゼダスは、何故か意識を失った。
―――*―――*―――
目を覚ますとそこはノルドの民の住居の中だった。朦朧とする意識の中、ゼダスは、
「………」
無言で自分の頬を殴る。あと少し、あと少しで自分の過去が分かりそうだったのに………。悔やんでも悔やみ切れないゼダスは、またもや自分を殴ろうとするが、
「お目覚めですか、ゼダス様」
と、ここに居てはならない奴の言葉に止まる。ゼダスは何故か居るシャロンに膝枕をされていた。そんな時、ゼダスの頭は、自己の記憶から状況判断にキッチリと切り替わる。
「あの–––何でシャロンが居るん?」
「一応、来ておこうかと。ゼダス様の大ピンチだった様でして」
「何でお前が苦戦した事を知っているかはさて置き、知ってる限りで良いから状況を教えてくれ」
訊ねるゼダスの声にシャロンは語り出す。
結局、リィン達はミリアムと協力し、実行犯たる猟兵崩れを追い詰め、制圧。だが、リーダー格を思われる–––《G》と名乗った男のみが逃走。そして、足止めの為に《G》は《降魔の笛》という名の–––いわゆる
猟兵崩れをゼンダー門に連行する際に、石切り場の入り口で倒れていたゼダスを回収。一件については片付いたものの、帝国と共和国の緊迫状態は解かれず、戦争の一歩手前まで事態が進行した時、帝国側からある刺客が到着した。
レクター・アランドール。《帝国軍情報局》の国外防諜担当の『第三課』に勤めている《
そんな凄腕外交官さんが介入したおかげで厄介な事態に陥らずに済み、Ⅶ組一同はノルドの集落に帰ってきて、最後の夜の晩餐に突入している訳だ。
「そうか………にしても、今回の件に関しては色々と綱渡りだったな。一歩でも踏み外せば、確実にアウトだったぞ」
「ええ、それにしても………思いっきり折りましたね」
「………滅相も無い」
ゼダスの傍らに置かれた魔剣レーヴァティンの残骸。今でも守護騎士であるアスルとの戦いの余韻は身体に染み付いている。
「ゼダス様は武器無しで戦えます?」
「んー正直、微妙だ。今のⅦ組メンバー相手に対等かどうかってところじゃないか?流石に執行者とかの相手は無理だからな。止めてくれよ、戦いを挑むとかはさ」
「そこら辺は弁えますよ。でも–––その状態では大変なのでは?」
「ああ………だから、《神器の創生者》に新たな武器を頼むとするよ」
「彼女を使うんですか?………気分屋で、何処にいるか全く不明ですが、大丈夫ですか?」
「そこだよな………なぁ、シャロン。あいつを探してくれないか?近付いて来たら、コッチから出向くし」
「愛するゼダス様からの御命令ですし、何としてでも探し出しますよ」
小悪魔顏でウインクするシャロンにゼダスは苦笑い。普通に会話しているが、今はまだ膝枕状態。しかし、ゼダスはそれを嫌がる事無く、受け入れている。拒む必要も無いし、今は身体を動かしたくない。《輝く環》で臓器を回復–––いや、再生させ元通りとはいえ、痛みまでは引いてないのだ。
「そこを了承してくれたのは、ありがとう。でも、何でここに居るんだ?会長の護衛じゃ………」
「ゼダス様は今回の件については、本当に深く関わっていないんですね」
「あー………うん。ずっと守護騎士相手にしか考えてなかった。で、何故に?」
「帝国軍側の監視塔を襲った迫撃砲がラインフォルト製だという情報が流れてきたので………後始末ですね」
「そういう事か………ここでラインフォルトの名が出ると厄介だもんなぁ。確か帝国軍が主流で使っていたのがラインフォルト製の兵器で、バレた際に自軍で勝手に起きた反逆罪と誤認させ、実行犯達が罪を被らない様にするって訳か。本当、面倒な問題だよ。学生として動くんだからさ」
「お疲れ様です」
シャロンの労いの言葉を聞くと、再び睡魔が襲って来る。件の顛末を理解し、さしたる問題じゃない事を理解する事により、緊張の糸が緩んだのだろう。今なら、よく眠れる気がする。
「ゼダス様、本当にお疲れ様です」
シャロンはゼダスを頭を優しく撫でる。それをゼダスは全く嫌がらず–––寧ろ、落ち着いてさえもいて、二人の間には穏やかな時間がゆっくりと流れる。
「本当だ。しばらく、動きたくないんだけどな」
「なら、このままの体勢でいますか?時間的には余裕もございますし」
「ああ、頼むわ。膝枕はちょっと恥ずかしいが、それに勝って動きたくない」
そう言い残し、ゼダスは再び寝始める。
何時ものゼダスからは連想も付かないが、寝顔だけ見れば女顔に見えない事はない。そんなゼダスの顔を眺め、シャロンは微笑む。
「やはり、貴方様は嫌いになれません………」
―――*―――*―――
「ゼダス、生きてる?」
すっかり睡眠の彼方へと誘われていたゼダスは、アリサの声で意識が覚醒する。
「–––………うん、生きてる」
頭は地に付いており、膝枕状態は解除された様で、ちょっと肌寒い感じもした。
ゼダスは身体を起こし、言葉をかける。
「よくこの件を解決したな。正直、驚いてるよ」
「みんなが頑張ったおかげだし、結局最後は帝国軍が締めを飾ったんだけどね」
皮肉げに言うアリサ。だが、ゼダスとしては、それでも出来が良いと取れた。
何せ、国家の思惑を掻き乱そうとする輩を一から探し出し、制圧。しかも、限られた時間内に。それがどれだけ大変な事かは、わざわざ口にしなくても理解出来る。
「ま、一件落着って事でいいだろ」
あれだけ寝たのに欠伸を掻くゼダス。それに呆れ気味に溜め息を吐くアリサ。
「そろそろ列車が行くそうだから、ゼンダー門に戻るわよ。さっさと荷物をまとめといてね」
「了解」
そう言い残し、ゼダスは傍らにある荷物をまとめ始める。色々な物を詰めていく中、ゼダスの脳裏には、とある言葉が浮かぶ。
「『知りたければ、這い上がって来い』か………俺は何処まで這い上がればいいんだよ………」
―――*―――*―――
–––同時刻 別所にて
「アスル兄さん、一体どうやって動くつもりなのですか?」
「うっ………気にしてなかった」
満天の星空の下、遺跡群に身体を寄せるアスルに言葉を掛けるシズク。
先の一戦で、義肢部分は焼け落ち、まともに移動する事さえ出来ない状況だったが、数少ない腕力でシズクが石切り場から引っ張り出したのだ。
しかし、その手立てで本拠地であるアルテリア法国に帰ろうものなら、数日–––いや、そこから飛躍して、数年はかかるに違いない。
流石にそんな阿呆らしい事をするつもりは無いが、だからと言って、それ以外の以外の手立てが思い付かないのも、また事実。守護騎士に支給される特殊作戦艇メルカバを使えば一っ飛びだが生憎、アスル達は作戦上使わずに来てしまった為、本国に連絡してもしばらくは野宿は確定。
「全く………アスル兄さんは、後先考えずに行動しますよね。作戦立案を根底からやり直さなきゃならないコッチの身にもなって下さい」
「それは面目無い………にしても、
「そうですね。アスル兄さんは相手が故郷を滅ぼされた相手だったのに、あんなに楽しそうだったなんて………正直、嬉しかったです。久しぶりに心の底から笑えてましたし」
「そう………かもな。俺ら兄妹にとっては憎むべき奴なのになぁ………本当に不思議な奴だよ」
アスルは身動きが取れない身体を倒しながら、笑っていた。
普通、負けたら悔しがるなり、もっと他の感情表現が有ってもいい筈なのに、笑う事を選ぶ。全力を賭して戦った証だろう。
「でもな、シズク」
「分かってますよ、アスル兄さん」
「「–––次は負けない(負けません)。絶対に勝つ(勝ちます)‼︎」」
さてと、三章が終わりました。個人的には節目なのですよ〜
色々と言いたいですが、章の終わりという事で、総括を活動報告欄にまとめるので、そこも一読していただけるとありがたいデス
あと、ゼダス君の新武器アンケートは次話までです(いきなりの締め切り催促ww)
それに加え、次話はちょっとオリキャラが出ますよ。どういう立ち回りをするのかは、必見(?)デス