闇影の軌跡   作: 黒兎

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ミストルティンがミストルティンでミストルティンにミストr(以下略)





新たな“力”

「親父さん、居る?」

 

 店のドアを開けながら言う銀髪少女。

 

「何だ?」

「買い物に来た」

「何を?」

「材料を」

「何の?」

「このやり取り何時まで続けるの?」

 

 銀髪少女は半眼で親父さんと呼んだ店主を見る。

 ここは近郊都市トリスタの裏路地にひっそりと店を構えている質屋《ミヒュト》。銀髪少女はとある用でここに来たのだ。

 

「コレを」

 

 差し出すはメモ。それに目を通した店主は、

 

「なぁ………一体、何に使うんだ、コレ」

 

 と困惑気味に言う。書いてある内容を見れば、そうも言いたくなる。

 何故なら、その全ては違法スレスレの薬物や材料なのだから。

 

「………ヒミツ」

 

 小悪魔的な笑みを浮かべて答える銀髪少女。これ以上話すつもりも無さそうな感じを醸し出しているからか、店主は溜息を吐きながら、折れる。

 

「分かった。店にある分なら、買っていっても良いが、値は張るぞ」

「百も承知。チャンスの為なら、少しくらいの対価は許容範囲内」

「いつも面倒くさそうにしてるお前さんが珍しいくらいにやる気だな………でも、使い方は守れよ。最悪、手の付かない事になるからな」

「分かってる。効果とかは完全に把握してる」

 

 その言葉を半信半疑で受け取った店主は、メモに書かれた物を掘り出すべく店の奥へと姿を消す。

 銀髪少女は、それを確認して一息。

 

 ここで断られたら、“作戦”が初っ端から頓挫していたが、この様子なら大丈夫だろう。

 この作戦に至るまで、長い時間が必要だった。

 彼の行動パターンを読み–––まぁ、奇想天外の動きをする事があり、まともに推測する事は出来なかったが。

 今回、街から離れてくれたのは正直、ありがたい。多分、彼とすれ違うだけで看破されるだろう。彼の観察眼は危険な物には敏感な筈だし。

 しかし、この作戦に少女は全身全霊を賭ける必要がある。それによって、別の関係全てが破綻しても構わない。

 だから–––何が何でも成功させる。そうすれば–––………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鳴り響く金属音。

 片や黒髪紫眼の少年は白銀の刀身を持つ直剣を振るい、もう片や薄若葉色の髪に緑眼の少女–––というか幼女は同じく白銀の刀身を持つ長槍を振るう。

 何処からどう見ても青年が幼女に暴力を振るっている様に見えない事は無いが、実際は逆。

 

「ほらほら、どうした?汝の力はそんなものか?」

 

 平然を突き通す幼女–––ミストルティンの魂に少年–––ゼダスは、

 

「んな訳無いだろ。まだまだウォーミングアップさ」

 

 と平静を取り繕い、返すが痩せ我慢に過ぎない。

 兎に角、ミストルティンの魂の外見からは想像出来ない程の手練れなのだ。

 身のこなし方も達人級。手にする槍の技も達人級。そして–––勝負に対する心構えも達人級。他も然り。

 さっきの「臆病」発言は撤回しなくてはならない。ミストルティンの魂(こいつ)は–––紛れもなく、幾多の戦場を駆け抜けた武器だ。今は亡きレーヴァティンに死徒の寄生木が合わさって出来ただけある。

 内心で感心していると、ある疑問に打つかった。

 

「なぁ、少し聞いていいかな?」

「劣勢だというのに余裕じゃな………良いぞ、何だ?」

「お前がミストルティンの魂ってのは分かるんだけど、なんで剣じゃなくて槍を使うんだ?剣の魂なんだろ」

「ごもっともな疑問じゃ。剣の道に通ずる汝なら分かるのではないか?」

「何をだよ」

「剣が剣に於ける弱点を」

「………そういう事か」

 

 すなわち、ミストルティンの魂が言いたいのは、間合いだ。

 どれだけ優れた業物の剣で一撃必殺の能力、火力を持とうが当たらなければ意味を成さない。

 絶対的に定められたリーチを拡張するには、それこそ特殊機構を加えないと不可能だ。

 それを考慮しての槍。槍なら剣の間合いの外から一方的に攻撃が可能。ここから導き出される結論は–––何が何でも渡したくないのだろう。どれだけ意地っ張りなんだ………

 

「理解に至ったか………」

 

 ゼダスの思考を先読みしたかの様に言う。まさか、心を覗く能力なんて無いよな………

 しかし、分かってしまえば簡単だ。

 間合いの違いで武器を選ぶ………ああ、悪い手段じゃない。だが–––アウトレンジから一方的に攻撃が可能な槍にもアドバンテージがある様に、剣にもアドバンテージが存在する。というか、この場合なら、槍のバッドアドバンテージだが。

 それは–––剣の間合いに入れば、ほぼ勝ちが確定する事だ。

 槍はその膨大なリーチを利用して攻撃する武器だ。故に長い。しかし、その長いのが利点と言える事もあれば、損点とも言える場合がある。槍で対応し切れない懐に潜り込まれた場合だ。

 その場合なら、ロングリーチが動きを阻害し、対応し辛い。そして、一瞬でも動きが絡まれば、勝てる。勝負とは、一瞬で決する物なのだから。だが–––

 

 

「(………そのシチュエーションに持ち込むのが、無理じゃねぇか?)」

 

 

 強過ぎる。全く間合いに入らせない位に。

 アウトレンジから一方的に攻撃が繰り出されるが、その全てをミストルティンで叩き落としている。

 こんな防戦一方は腑に落ちないし、何時ミスをしでかすかは分からないから、出来るだけ早く攻勢に出たいが、防御が固い。とてもじゃないが、ノーリスクで攻めれる相手では無い。

 だからと言って、このまま防御に徹するのは嫌だ。なら–––

 

 

 

 

–––一撃………それに全てを乗せるしか無い………

 

 

 

 

 あらゆるリスクを一瞬に賭け、全力を一回に使い切る。それが導き出した答え。だが、これにも待ったが掛かる。

 それは、今のゼダスに特有の流派《聖扉戦術》で使える技が無いのだ。

 今まで使ってきたのは、魔剣レーヴァティンによる大剣技(・・・)

 しかし、今回必要なのは、ミストルティンによる片手剣技(・・・・)

 両手持ちに変えて使えば、大剣技でも再現は可能。でも、魔剣とは重量、重心、あらゆる条件が変わっている。そんな(なまくら)技で勝てる相手では無い。

 でも、全く型も無い攻撃が通るか?と聞かれれば、答えはNo。絶対に防がれ、反撃を貰う。

 それは嫌だ。だって、勝ちたいじゃん。最近は勝ってもギリギリだったりして、まともに勝利してない気がする。そろそろ、完全勝利を飾りたい。

 そんな願望塗れの事を考えていると、ある案が出て来た。

 この状況を打破出来る………かもしれない方法。これはこれで博打だ。でも、一番可能性がある。

 ゼダスは考えを纏めた後、ミストルティンを握り直す。

 そして、雰囲気が変わった事にいち早く察したミストルティンの魂。

 

「………目の色が変わったな。汝、我の攻略法でも思い付いたか?」

「まぁ、そんな感じ。それじゃあ–––行くぞっ‼︎」

 

 全力で地を蹴る。物理限界ギリギリの速さで迫るゼダスに、

 

「そんな安直な突進でどうにかなると思ったか、この馬鹿」

 

 身体の中心点を貫く様に放たれた長槍。それをゼダスはミストルティンの刀身で防御する。

 だが、防御した所が刀身の側面では無く、刃の部分。そこで防ぐと完全に防ぎ切るのは不可能。精々、長槍の軌道を逸らす事ぐらいしか出来ない。しかし、この選択をしたゼダスには迷いが無かった。

 白銀の刃同士が甲高い音を立てながら火花を上げて交錯する。この時、ミストルティンの魂はゼダスの思惑を察した。

 

「(こやつ………まさか、長槍を打たせて懐を空けさせるつもりだったのか。だが–––甘い)」

 

 理解したミストルティンの魂は、長槍を慣性無視で無理矢理引き戻す。その際にも火花を散らす。刃こぼれを起こすのでは無いか?と錯覚する量の火花の所為でゼダスの表情を確認する事は出来ない。だが、きっと悔しがっているだろう。思惑通りの筋書き(シナリオ)がいとも容易く脱線したのだから。

 しかし、その考えを改める必要がある出来事が起きた。

 それは–––ゼダスの顔に現れていたのは「悔しい」などの感情では無く、「予定調和」を思わせる表情だったから。それにミストルティンの魂は息を呑む。そして生まれる若干の間隙。

 

「はあァァァァッ‼︎」

 

 鬼気迫る雄叫びを上げながら、ゼダスはミストルティンで長槍を跳ね上げる。天に長槍の切っ先が向いたのを確認し、ゼダスは剣を構え、上に跳ぶ。

 

 

「《聖扉戦術》 《複式》の型–––

 

 

 その言葉に傍らで傍観していたルナは目を見開く。

 ルナ自身は剣術に関しては、本に書いてある程度の知識しか無い。それでも言える事がある。ゼダスが放とうとしているあの技は–––

 

 

 

 

 

 

 

–––不知火(シラヌイ)(ホムラ)‼︎」

 

 

 

–––帝国に伝わる流派の一つ、アルゼイド流の鉄砕牙だ。

 

 

 ゼダスの手から放たれた空中からの上段斬り下ろし。槍を跳ね上げられた硬直の所為で避けれないミストルティンの魂は直撃した。

 

「汝………その技は………」

「さっき言っただろうが。《聖扉戦術》《複式》の型 不知火(シラヌイ)(ホムラ)だよ」

「嘘よっ‼︎」

 

 会話に横槍を入れるはルナ。

 

「何がだよ。嘘も何も技だろうが」

「違う、そこじゃない‼︎何で《聖扉戦術(・・・・)》って言っておいて、アルゼ(・・・)イド流(・・・)の技を使ってるのよ⁉︎」

「ああ、そこな。戦ってる最中に思い付いた。既存の《聖扉戦術》じゃ、ミストルティン(こいつ)が使える技って無いし」

「思い付いた⁉︎………でも、あの技は–––………」

 

 武に精通している者が見れば、誰もがアルゼイド流の剣と言うだろう。

 だが、厳密に言えば、放った技はゼダス専用の技だ。

 確かにアルゼイド流の鉄砕牙を元にはした。朝練でラウラが嫌ほど使ってくるし、癖と特徴は身体に染み付いている。

 だから、それをゼダス専用に改造(・・)した。

 腕の振り方に踏み出す時の呼吸法、技の特徴に剣の持ち方。その全てを最適化し、己の剣にする。

 つまり、それをゼダスは行ったのだ。戦闘中に、という文字が付く形で。

 

「まぁ、荒唐無稽も甚だしいがな」

「本当だよ〜まさか、戦闘中に技をリメイクするなんて………」

 

 このままではゼダスの性能(スペック)談義になってしまいそうなので、サッサと本題に移る。

 

「ほら、勝ってやったぞ」

 

 勝ち台詞と共に手を差し出すゼダス。しかし、ミストルティンの魂はその手を取らない。

 

「………くそ………」

 

 目を伏せている。その光景にゼダスは微笑み–––決してサドっ気がある訳ではない–––言う。

 

「何だ、ちゃんと悔しいって思えるんじゃねぇか」

「………」

「なら、それを忘れんなよ」

「………」

「それを忘れない限りは、強くなれる」

「………」

「だから、さ–––俺と一緒に来てくれよ。今は負けても、次は負けない為に」

 

 ゼダスの言葉にミストルティンの魂がどう思ったかは定かでは無い。ただ、ゼダスの手を掴み、目を伏せながら、力強く握り返す。

 

「次は………負けない。もう、誰が相手でも我は負けないっ‼︎」

「そう、それで良い。それでこそ、俺の武器–––いや、仲間だ‼︎」

 

 ミストルティンの魂は、ゼダスの手にある白銀の刀身を持つ長剣に吸い込まれていく。そして–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––空間が割れた。

 

 

 《輝く環(オーリオール)》に展開させていた空間が割れたのだ。外部からの干渉があったのか、《輝く環》自体が不必要と判断したのかは知らないが。

 周りを包んでいた眩い光が晴れ、元の森林部へと景色を戻す。

 

「ゼダス、おめでとう♪新武器だよ〜」

「ああ、良かったよ。にしても–––この剣、普通過ぎやしないか?なんか、レーヴァティンより劣ってる様な………」

「あ、ゼダス。それ禁句–––………」

 

 突如、剣がゼダスの手から離れ、襲ってきた。

 ゼダスは間一髪で避ける。それに剣は、

 

『貴様〜〜〜、何勝手に我を鈍扱いしておる‼︎』

「魂があるから、もしかしてとは思ってたけど、意思疎通可能なのかよっ‼︎悪口の一つも叩けねぇな、おい‼︎」

『まず、悪口を叩く癖を直さんか‼︎よりにもよって、こんな奴に倒されたかと思うとやるにもやりきれんだろう‼︎』

「知るかってんだ‼︎負けたのは変わんねぇだろ‼︎」

 

 何か喧嘩方向に向かって事態が進展している事を感じ取ったルナが横槍を刺す。

 

「はいはいお二人とも〜、一旦落ち着いて〜」

 

 その言葉に両者ともに押し黙る。

 それを確認して、ルナは話を進める。

 

「それじゃあ、その剣–––ミストルティンの説明を開始しま〜す♪魂ちゃんはもう分かってると思うけど、ゼダスは分かってないからね」

『そりゃ、我の方は理解しておる。自分の事じゃしな』

「で、何なんだよ。何か特殊技巧でもあるのか?」

「ミストルティンちゃん、やっちゃって♪」

 

 不気味なフレーズを言うルナ。それを聞き届けたのか、ミストルティンの鍔を形成している幾重にも巻かれた茨がバラバラになり、ゼダスの腕に巻き付く。

 

「なぁ………棘が刺さって滅茶苦茶痛いんだが」

 

 ゼダスの言う通り、鍔を形成している茨は確実に腕を多方向から突き刺している。

そして–––刀身が白銀から真紅に変わる。

 

「これがミストルティンの第一能力。特異属性付加だよ。ちなみに腕に茨を巻き付けているのみ発動。属性は–––振ってみたらいいんじゃないかな?」

 

 ルナの適当な解説にゼダスは怪訝な表情を浮かべるが、百聞は一見に如かず。振るだけ振ってみた。

 対象はそこら辺に生えてる木。真っ直ぐ見据え、横一文字に斬り裂く。鋭く刺さった刃は木を斬り裂いたが–––

 

「なっ………」

 

 切り口が“石化”していた。

 

『これが汝が求めた“殺さぬ力”だ。文句は無いだろう』

「………予定外の能力だが、文句はねぇよ。ただ–––この茨を手に巻いてる事が能力使用の条件じゃなく、俺の血を吸わせる事(・・・・・・・)が条件じゃないのか?」

『よくぞ至ったな………その通り、我は汝の血を吸う事により、力を発揮する。複数の力を保持しているが、その全ては血の供給が必要でな………使い所は見極めろよ。折角のタイミングで失血により能力が使用出来ないとか悲しい事になるなよ』

「分かった………で、次は何だ?」

「次はね………って行きたいところだけど〜、ゼダス的にも『聞くより使って覚えた』方がいいんじゃ無いかな〜って事で」

「素直に説明が面倒くさくなったって言えよ………」

 

 呆れているゼダスにルナは微笑む。

 微笑んでる顔が妙に可愛いのがまたイラつくのだ………

 

 

 そして、数日。

 六月が終わり、七月。

 ルナと別れたゼダスは新たな武器–––ミストルティンを携え、新たな流派の型–––《複式》の型を会得し、厄介な一月を迎える事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、新武器+新技入手ですよ〜

ここで一つ備考。
《複式》の型は、あくまでコピー+アレンジを加えたゼダス専用の技ではなく、オリジナル技の型です。今回、登場の不知火・焔は偶々、鉄砕牙に似てただけなんですよ〜………
《複式》の型のおかげで、サラっと今までの武の型を廃止してんですよね〜。まぁ、武の型は多方面にぶっ飛んで収集付かなくなって、武器変えた時に一旦変えれば良いんじゃね?と思ったんですよね………


後で、《複式》の型をまとめときます(でも、不知火だけですが………)



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