闇影の軌跡   作: 黒兎

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解き放つ力

 

 

「何、泣かしてんだ」

 

 呆れ口調で言うゼダス。その言葉にリィンは軽く俯きがち。

 何故、こんな事になったかを追想がてら纏めると、リィンの義妹であるエリゼは「人目が付く」という理由で、会話する場所を学院の屋上に変更したのだ。

 その移動中に複数のⅦ組メンバーと合流したが、その会話の内容は聞いていない。流石に兄妹間の会話を横で聞くなんて、空気の読めない行動を取る訳が無いからだ。

 だが、遠くからは見守っていたのだが………ふとした瞬間にエリゼがダッシュで逃げてた。目に涙を浮かべて、だ。

 どこから見ても、意見の食い違いがあったかの様な感じだった。

 しかし、それを黙って見過ごす様なⅦ組では無く、早急に捜索を開始した。

 学院内は思った以上に広く、迷われると探すのが大変なのだ。

 まぁ、捜索の方は他のメンバーに任せて、ゼダスは事情聴取に専念するとする。

 

「で、何があった訳だ?」

「それは–––………」

 

 弁解前に差し出される手紙。

 朝に見せられた手紙とは別の筆跡………多分、リィンの物だろう。それを覗き込み、読んでいく。

 そして、最後の方の文が問題で喧嘩?になったらしい。その内容は–––

 

『卒業後は軍に行く可能性が高いし、そうでなくても家を出るつもりだ。その前に父さんと母さんには親孝行したいと思っているから相談に乗ってくれ』

 

 という物だ。

 エリゼは、その文中の『そうでなくても家を出る』と言う所の真意を問いに来たらしいのだ。まさか、家を継ぐ気は無いのか?と言うのも尋ねに。

 それにリィンは『家を継ぐ気は無い』と答えたそうなのだ。

 リィンとしては、血の繋がっていない為、シュバルツァー男爵家の養子であり、家を引き継ぐべきでは無いからと言う理由に加え、エリゼが将来、婿を取って男爵家を継ぐのが筋だと言ったそうだ。

 至極、真っ当な意見だ。

 その対抗意見としてエリゼは、男爵家の長男は–––血が繋がっていないとはいえ–––リィンただ一人。その上、帝国法にも養子の家督継承が認められていると言うのだ。

 こちらも真っ当な意見だ。

 そこからは、家督について色々とあった後に話が拗れ、いつの間にかリィンが家族の気持ちが分かって無いという話になり–––

 

 

「–––今に至るって訳か」

「ああ。でも、これ以上実家に迷惑を掛けたくないんだ。なのに………」

「本当にお前は馬鹿なんだな」

「?」

 

 分からず首を傾げるリィンにゼダスは遠慮無く意見を述べる。

 

「お前はシュバルツァー男爵に雪山で拾われたのは、理解した。それで“浮浪児”扱いされ、家の見られ方が悪くなったもの理解した。でもな………多分、人が人である間なら、そういうシチュエーションで助けないって手段は取らないと思うんだ」

「………」

「シュバルツァー男爵は、それが他の貴族から悲観される事も理解していた筈だ。だが、それを考慮してでも助けるべきだと判断したんだぜ」

「………っ⁉︎」

 

 何かに至ったかの様なリィンだが、気にせず言葉を紡ぐ。

 

「なら今更、迷惑云々の話をされてもなぁ〜。超今更だろ、それ」

 

 気楽そうにヘラッと言う。

 

「それでも迷惑を掛けたくないんなら、せめて妹ちゃんであるエリゼを追いかけてやれ。今なら、まだ追いつけるだろうしさ」

「………分かった。ありがとう、ゼダス」

「別に礼を言われる様な事はしてねぇよ」

 

 走って追いかけ始めるリィンの背中に、ゼダスは掌をヒラヒラとしながら、エールを送った。

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

「《輝く環(オーリオール)》、起きろ」

 

 変わらず屋上で、ゼダスは《輝く環》に語り掛ける。人気も無いし、呼び出しても問題無いだろう。

 

 

 

–––うーん………何?

 

 

「話は聞いてたな?」

 

 

–––………ウウン。ゼンゼンキイテナカッタヨ?

 

 

「聞いてたんだな………なら、話は早い。エリゼは何処にいる?」

 

 

–––それを聞くって、ボクを便利な道具と勘違いしてない?

 

 

「勘違いしてない。便利な道具だろうが」

 

 

–––酷いっ‼︎酷過ぎるよ、ゼダス君‼︎

 

 

「良いから、さっさと答えを出せよ。お前の空間干渉能力を使えば余裕で探知が可能だろうが」

 

 

–––うう………分かったよ。彼女は学院裏手。君たちが俗に旧校舎と呼ぶ所に居る………っと、彼も到着したみたいだ

 

 

「彼って、リィンか。なら、問題無いよな」

 

 

 

 折角の兄妹の仲直りシーンに部外者が居合わせるのはよろしく無い。

 まぁ、問題が解決しそうなのだ。もう駆け付ける必要は無いだろう。

 そろそろ–––とはいえ、もう夕暮れだが、シャロンの手伝いに行こう。少しでも仕事を分けてもらわねば………

 屋上から校舎内に入り、階段を下る。が、

 

「っ⁉︎」

 

 急に身体を揺さぶられた様な感覚がし、階段を踏み外す。

 そのまま、階段から転げ落ち、階段が途切れる所まで落ちて行った。

 いきなりの出来事に対応し切れず、軽い打撲を数箇所に負ったが、さしたる問題では無い。通行人からは、クスクス笑われてる様な気もするが、気にする程度では無い。

所々痛む身体を無理矢理引き起こし、背後を確認する。

 誰もいない。

 まぁ、背後から押される位の事なら、気付く。シャロン並みの隠密技術でも無ければ、絶対に気付く。

 なら、何で階段を踏み外した?

 考え事をしていた?………そんな筈はない。仮に深い考え事をしていても、足を踏み外すなんて真似をする訳はない。

 そんな事を考えている中、転げ落ちた原因を模索するゼダスの脳裏にとある仮説が立てられる。

 

「まさか………」

 

 それがもし、本当なら面倒な話だ。だから、証明すべく足を運んでいく。

 この仮説を証明するには、少なくとも魔力に精通した者………《七の至宝(セプト=テリオン)》の一つである《輝く環》、《魔女の眷属(ヘクセンブリード)》と思われるエマ、それとも–––

 

「特化クラスⅦ組所属、ゼダス・アインフェイトです。シア・ヴァレン教官は居ますか?」

「はいなのですよ〜」

 

 相も変わらずホワホワした口調のシア。しかし、その口調とは裏腹に眼は本気だった。多分、ゼダスと同じ仮説に至っているからだろう。

 

「ちょっとお話したい事が………」

「奇遇なのですね〜。私からもお話したいと思っていたのですよ〜〜。まぁ、人目も多いですし、場所を変えますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––師匠も感じたのか?」

 

 体育倉庫でお話する事になった。

 ゼダスは本来の姿に戻ったシーナに話し掛ける。

 コロコロと笑いながらも、しっかりと答えてくれる。

 

「ええ、ウチも感じた………なんや、アレ」

 

 流石は第零柱。魔力感知もお手の物だ。

 

「空間が軋む。そんな事ってあるんですかね」

「無い–––とは、言い切れんやろ。世界は広いんやし」

 

 お互いが感じたのは、空間が歪んだ事だった。

 実の所、空間自体が歪む事は珍しくない。普段から、世界が整合性を保つ為に空間が歪むのだから。

 だが、《輝く環》に感化されたとは言え、足を踏み外す程の歪みは異常なのだ。少なくとも、こんな平和な学院で起こる歪みではない。

 だからこそ、怖いのだ。

 さっき、エリゼと別れた時を狙ったかの様なタイミングでの現象。連動性を考えない方が可笑しいだろう。

 嫌な感じがする。背筋に冷水を浴びせられた様な感じだ。

 

「師匠ならどう見るよ、コレ」

「んー、一般的に考えると、何らかの常軌を逸した奴が付近で顕現した、ってトコやろうな」

「常軌を逸した奴、か………そんな物が学院にあるのか?」

「単純な学院として、なら有り得んやろ。だが–––ここは、かのドライケルス大帝が成立させた学院や。何らかの物があっても、不思議じゃない」

「昔話かよ………でも、そんな物を隠す場所なんて–––って、あるじゃん」

「本当かいな?そないな場所………」

「学院裏手の旧校舎。あそこなら魔獣が出没するし、何か摩訶不思議な感じがしてた。しかも、空間の軋みは–––………」

「きっちり方角が合ってるって言いたいんか?」

「流石、師匠。御名答だ。しかも、その方角にはリィンと妹ちゃんが–––って、ヤベェ⁉︎それって、だいぶマズいパターンじゃねぇか⁉︎」

 

 危険があり過ぎる。

 武器を持っているリィン単体なら、どれだけ強大な力相手でも、多少は耐えれるだろう。

 でも、エリゼっつー丸腰の妹を守りながらなら、どうだ?

 間違いなく無理だ。

 ゼダスがリィンに戦闘能力を手解きした事は数回あるが、その全ては対人戦闘用の物。それを応用すれば、魔獣相手にも通せる。が、護衛しながらでは、不可能だ。

 

「–––クソッタレがっ⁉︎」

 

 状況を早く理解し切ったゼダスは、会話場所だった体育倉庫を駆け出す。

 シーナに一言断っておくべきかと思ったが、今はそれどころじゃない。

 最悪は取り返しの付かない事になるのだから。

 学院を駆ける。全速力で、持てる全てを使って。

 全速力で駆ければ、ものの一分ちょっとで着いた。

 息を少しばかり切らしながら、人気の無い旧校舎の扉に手を掛ける。

 そう言えば、ここに来るのは随分久しい気がする。

 自由行動日の度にⅦ組は捜索してるらしいが、ゼダスはその全てを断ってきたのだから仕方無いだろう。

 それにしても、こんな場所を何回も捜索してて飽きないのだろうか?普通のボロ校舎だぜ、ココ。

 

「でも、一見何も無さそうな所に限って、厄介な物が埋まってるんだよなぁ………」

 

 思い付いた言葉を無意識に詠んでたが、誰にも聞かれてないので、良しとしよう。

 力を入れ、扉を開く。案の定、鍵は掛かっておらず、ギギッと懐疑音を立てながら、扉は口を開ける。すると–––

 

 

「………–––は?」

 

 

 ゼダスは奇妙な声を上げた。それもその筈。

 何故なら、旧校舎内部の構造が変わっているからだ。

 内装が変わったとかじゃなく、構造自体が前の面影を一切に残していない。最早、別の建物と揶揄されても文句は言えないだろう。

 それでも、止まってじっくり捜査する暇も無いのでサッサと進む。

 索敵もガンガンに掛けて探すが、少なくとも一階には居ない。なら、地下だ。

 地下へと続く階段を下っていくと、又もや頭を抱えたくなった。

 どうやら、旧校舎(ココ)は本当にお化け屋敷らしい。

 何処からどう見ても、階段の切れた先にあるのは円状の昇降盤–––すなわち、エレベーターなのだから。絶対に四月時には、こんな物は無かった。

 しかし、使える物なら使うとしよう。こういうパターンなら、最下層に居るだろうし。早急に向かえるなら、何の問題も無い。が、

 

「マジかよ⁉︎全部、古代文字で書かれてあるとか、虐めか⁉︎」

 

 コンソールや画面に表示されている文字が全て古代文字。何処の国の古代文字か分かれば、簡単–––では無いが、内容に目星が付く。まぁ、帝国の士官学院なのだし、帝国由来の古代文字なのだろうが、法則性や並びの規則性が全く分からない。今まで見た古代文字のどれとも合致しないのだ。

 

「解読は不可能、か………なら、技術面や動作面から読み解いて、動かすしか無いじゃねぇかよ」

 

 結局、力技かよ………と、ボヤきながら、ゼダスは弄くり回す。

 眼に見える範囲で分かる事は、糸などの物で繋がっていない事だ。となれば、魔力運用による古い昇降盤という位置付けが出来る訳だ。

 それなら、深く考える必要は無い。

 普通に動かすなら、コンソールを用いて、魔力操作をするのだろう。普通なら(・・・・)、だ。

 わざわざ説明書通りの動作で動かす必要は無い。どんな過程を経ようが、動けば問題無いのだから。という訳で–––

 

「《輝く環》起きろ」

 

 勝手に魔力を流して、無理矢理動かす事にした。

 左肩が淡く光り、ゼダスは左腕をコンソールに翳す。

 膨大な空属性の魔力が流れ込んだのが、しっかりと理解出来る。中々の魔力量で、調整が難しいが、この程度で諦める様なタマではない。

 ギギギギと歯車の回る音がする。どうやら、動いてくれる様だ。だが–––

 

 

「えっ………マジかよ………」

 

 

 魔力を多く注ぎすぎて、昇降盤が暴走し一気に落ちた、という滑稽極まりない形だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落下時の凄い加速度に内心、ビビりまくりのゼダス。

 そりゃあ、足元の地面が急に落ちたら、ビビるだろう。ビビるなって言う方が無理がある。

 何処か掴む所が無いかと、焦りながら見渡すが、そんな所が親切にある筈もなく、目的地である最下層に轟音を立てて、不時着した。

 衝撃で舞った土煙が邪魔で、どう言った状況なのかは理解出来ないが、何やら凄い力があるのだけは感じられる。

 腰からミストルティンを抜刀する。

 気を引き締め、場合によっては瞬時制圧する必要もあるだろう。が、ゼダスは絶句した。

 土煙が薄れ、視界が回復したゼダスの前に飛び込んで来た光景がそうさせたのだ。

 そこに居たのは、リィンだ。そして、足元には気絶したエリゼと騎士甲冑の何か。

 別にここまでなら、問題無いのだが、それよりも–––

 

 

「グガアァァァアァァァアァ‼︎」

 

 

 名称するなら、リィンに眠る《鬼の力》が暴走していたのだ。

 しかし、アレは先々月ぐらいにゼダスが《輝く環》を使って、無理矢理封印していた筈だ。

 《七の至宝》の封印を破る………コレがどれだけ凄い事かは十分に理解している。だからこそ、面倒だ。少なくとも、人の手に負える物では無くなってきたのだから。

 そんな強大な力に流されるのは、周囲の被害が予測し切れない。しかも、足元にはエリゼ。どう見ても危ない。

 

「自分の力の管理ぐらいはしっかりしろよ、おい‼︎」

 

 昇降盤を蹴り、一気に距離を詰めようとするが、急制動し、止まる。

 このまま、戦闘に雪崩れ込むのは簡単だ。

 だが、このまま戦えばエリゼが危ない。どうにかして、剝がせれば–––と思ったが、どうやらリィンの方から仕掛けてくれる様だ。

 理屈や冷静さの微塵も感じさせないリィンの瞳は、しっかりとゼダスを見据えていた。そして、

 

「シャアァァァアアァァ‼︎」

 

 獣の様な雄叫びを上げて、飛び込んで来た。おかげで、エリゼから引き剥がす事が出来た。一安心………と思ったのだが、

 

「グッ………」

 

 普段のリィンでは考えられない程の攻撃力にビックリする。

 別に《鬼の力》を見誤った訳では無い。まぁ、《輝く環》の封印を破った事には驚いたが。

 しかし、何で《輝く環》の封印を破れたのだろう。

 人智を超えた英知の結晶たる《七の至宝》。それが発する力は、余波でも人が触れて良いものでは無い。

 それを破る事が出来る《鬼の力》………少なからず、何か裏がある。それこそ、面倒な奴らの介入を受けてる可能性も。

 何とかして暴きたいが、先ずは目の前の状況を対処する必要がある。すなわち、リィンの《鬼の力》鎮静を。

 

「–––って、カッコ良く啖呵切ったものの、本当に面倒な力だなっ⁉︎」

 

 乱暴に振られるリィンの太刀。それを受け流す様にミストルティンで掠めるゼダス。

 リーチでは、ほぼ同じの為、優劣は無い。だが、別の観点から見れば、どうだ?

 単純な筋力なら、ゼダスは負ける。しかし、一回見直そう。勝負を決めるのは、単純な筋力か?勿論、否だ。

 どれだけ強い筋力持ちだろうが、相手に当てれず、宝の持ち腐れになれば意味を成さないのだから。

 なら、剣術はどうだ?これに関してはゼダスが一歩………いや、数百歩前を行っている。自我を失ったリィンの太刀は最早、剣術と呼ぶにはお粗末なものだ。本来の八葉一刀流など、見る影も無い。

 それに比べ、ゼダスは得意武器は違えど聖扉戦術を存分に使用、応用が出来る。なら–––

 

「勝てるっつー算段はあっても、これじゃあ近付けないな」

 

 兎に角、乱暴に振るリィンの太刀は触れるだけで手が痺れるのだ。そんな物をまともに受けろ?いや、無理だろ。

 この状況を打開するには、どうにかして力を制限する必要がある。だが、どうやって………と戦闘中に関わらず、思案に暮れるゼダス。

 焦りが焦りを加速させていく中、ゼダスの脳裏に浮かんだ手段。まともな剣戟戦では、邪道とも取れる手段だが、出し惜しみする訳にはいかない。

 ゼダスはミストルティンでリィンの太刀をいなしながら、誰にも聞こえない–––というか、誰も聞く奴居ないのだが–––声で唱えた。

 

「剣に宿りし魂よ………我が血で力を綴れ」

 

 それに呼応したのか、ミストルティンは反応。鍔を形成していた茨が無数に枝分かれし、剣を持っているゼダスの左腕に巻き付く。

 茨の棘は、ゼダスの腕を容赦無く突き通す。血管をも貫き、血が流れているのを実感する。

 そして、ゼダスの血がミストルティンの白銀の刀身に巡り、真紅の刀身に姿を変貌させる。

 単なる剣を超えたのを確認し、ゼダスは剣を掲げる。

 

「《聖扉戦術》《複式》の型–––舞風(マイカゼ)神楽(カグラ)

 

 放つ一撃。そこから、流れる様に繋がる無数の斬撃。剣戟と剣戟の間の繋ぎ目が一切、隙間無い。

 自我無しのリィンは本能だけで避けようとするが、そんな思慮の無い回避が曲がり通るとは思わない事だ。

 だが、ゼダスは全弾ヒットさせるが、その全てを殺傷能力の無い斬撃だ。第三者から見れば、情けを掛ける様な行為に見えるだろう。しかーし、ゼダスの思惑では全く情けを掛けるつもりは無いのだ。

 

「グガアァァ………」

 

 突如、切れるリィンの雄叫び。それもそのはず。何故なら–––

 

「流石はミストルティン。能力はピカイチだな」

 

 リィンの四肢を石化させたのだ。

 ミストルティンの能力の一つ………特異能力の付加。この剣の場合は、石化能力。“殺さず制圧する”という力は、こういう場面において真価を発揮するのだ。

 動きたくても動かせない。本能に従って、動いているリィンにとってはストレスマッハだろう。まぁ、そんな苦しみはサッサと解いてやる。

 動きが強制的に止められているリィンの胸にゼダスは拳を当てる。

 

「《輝く環》、彼の底に眠りし鬼の子を鎮めたまえ………」

 

 《輝く環》直通の魔力を一気に流し込む。

 前回の封印より、強固に複雑に。簡単に解けない様にした。

 《鬼の力》の鎮静化が完了すると、リィンは崩れ落ち、意識を失った。

 それを確認し、ゼダスはミストルティンを鞘に収める。すると、腕に巻き付いていた茨は再び絡まり鍔を形成した。

 ドクドクと血が流れている。一向に止まる気配が無いので、制服を包帯代わりに巻く。

 それにしても、ミストルティンの能力は凄いの一言でまとめる事が出来るが、それ相応の代償はある様だ。少なくとも、連続で使うのは無理だろう。

 能力についての個人的評価が出来た後、しばらくの間はゼダスは惚けていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 その後、他のⅦ組メンバーにサラ教官、二年の先輩が合流し、リィンとエリゼは無事に保護された。

 その際に腕に巻いてた包帯に、何故かラウラとフィーに叱責された。本当、何で怒られるんだろうな。コッチは殺さず頑張ったのに………

 そして、翌日にリィンとエリゼは仲直り。うんうん、良かった良かった。まぁ、その後に、

 

「そういえば、何でゼダスはエリゼと一緒に居たんだ?」

 

 と弱鬼気に迫る勢いに聞いてきたのには、改めて引いたのだが。

 コッチとしては、困ってた人を助けただけなのに………本当に勘違いとは面倒な話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、最後の締めは無理矢理という何時もの締めです。
しっかりとした締めが思いつく頭が欲しいのですよ。後、タイトルが思いつく頭も欲しいのですよ。

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