闇影の軌跡   作: 黒兎

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大波乱!?特科クラスⅦ組用特別オリエンテーリング

 歩みを進めた赤制服十人組は士官学院校舎裏手にある旧校舎へと到着する。この旧校舎で特別オリエンテーリングとやらを行うらしい。旧校舎を見てゼダスは一言

 

「お化け屋敷かよ・・・・・・」

 

 と率直な感想をポツリと呟いた。サラが鼻歌交じりに旧校舎の扉の鍵を開け、中に入る。それに続くように全員入っていく。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 サラは旧校舎一階の少し奥にあるステージの上に立ち、話しかけてきた。

 

「―サラ・バレスタイン。今日から君たち特科クラス《Ⅶ組》の担任を務めさせてもらうわ。よろしくおねがいするわね」

 

 自己紹介兼ねて話しかけてくるが、ゼダスは一応話に耳を傾けながら、足元にある違和感を靴で確かめていた。

 

(地下に巨大な空洞・・・・・・・・・というよりは地下階層か?つーか、これ落とし穴か・・・・・・何か結末が見えてきたぞ)

 

 勝手に進んでいた話をまとめると本来この学院は貴族はⅠ、Ⅱ組、平民はⅢ~Ⅴ組と分かれていた。・・・・・・・・・去年までは。

今年は身分制度関係なしの特別で、特殊で、異例の《訳あり》のⅦ組が立ち上げられた訳だ。選考基準はサッパリ分かんねぇけど、多分あっさりと分かりそうな気がする。しかーーし、そんなことにも異議を挙げる輩もいる。例えば、そこにいる眼鏡男子とか

 

「―冗談じゃない!」

 

 その声を聞いてゼダスはため息ををつく。よくいるのだ、こういう決定事項にケチつける奴が。時間かかるだけで何の得もしねぇから大っ嫌いだ。

 みんなが「お前誰?」という視線を眼鏡男子に当てていたので(偏見だが)声を上げて名乗っていた。

 

「マキアス・レーグニッツだ!」

 

(レーグニッツ?あぁ・・・・・・帝都知事の息子か。親が貴族派に対立している革新派のお偉いさんだから貴族と同じクラスが嫌なのか。明らかに貴族風貌の金髪いるしなぁ・・・)

 

 とゼダスは目線を金髪の男子に向ける。その金髪の男子がマキアスの発言を聞き、

 

「フン・・・・・・」

 

(お、コイツ鼻で笑いやがった。いいぞいいぞ、もっと言ってやれ!)

 

と内心いい気味だと思っているとこの二人言い争い始めたよ・・・・・・。一番時間掛かるパターンじゃねぇか。

 この言い争いで分かったのは、金髪の男子はエレボニア帝国にある貴族の中でも《四大名門》の一角、翡翠の都バリアハートを拠点とするアルバレア家のご子息の「ユーシス・アルバレア」ということだ。

 貴族嫌いのマキアスに帝国トップクラスの貴族であるユーシス。勿論、相性最悪。もう、駄目じゃね?と執行者である俺でさえ思ってしまった。が、

 

「はいはい、そこまで。」

 

 とサラに止められた。時間が押しているみたいなので、

 

「それじゃ、オリエンテーリング始めるわよ。」

 

 と声と同時にポチッと何かを押す音がした。その瞬間、真下にある落とし穴が作動した。

 Ⅶ組メンバーの大半が滑り落ちていく中、俺と銀髪の少女は落ちなかった。俺はバックステップで範囲外へ、銀髪の少女は制服の袖に仕込んであったワイヤーを天井の支柱に引っ掛けぶら下がっていた。

 そんな二人にサラはジト目で睨み、

 

「アンタ達も行きなさい。オリエンテーリングにならないでしょうが。」

 

 と言われ、銀髪の少女は顔を見合わせる。ゼダスはフッと少し笑った後こう言った。

 

「面白ぇーな。お前、名前は?」

 

 柄にもなく、人に名前を聞いた。銀髪の少女は

 

「……フィー。フィー・クラウゼルだよ。あなたは?」

「ゼダス・アインフェイトだ。よろしくな、元《西風》。」

「「!!」」

 

 フィーとサラが驚いていた。《西風》。俺は猟兵団《西風の旅団》の事をそう呼ぶ。確か、フィーといえば、渾名が《西風の妖精》だったな。大分低年齢の猟兵なんだな。フィーは、

 

「その情報、どこで?」

 

 と問うが、

 

「生憎、情報元について話すつもりは無い。それで、俺が追い詰められるなんて状況になったら洒落にならねぇだろ?」

 

 と言い残し落とし穴の続く先、すなわち、旧校舎地下一階へと飛び込んだ。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 ゼダスが旧校舎地下一階へ降り立って、最初に耳にしたのは誰かの頬が叩かれる甲高い音だった。

 どうやら、先程駅前で会ったリィンが、落とし穴で落ちかけていた金髪の少女を助けようとしたらしい。そして、助けることは見事成功したそうだ。ただ、こういうのを神の悪戯と言うのだろうか?ベタなラブコメなら良くある話だ。リィンが金髪の少女の胸に顔を埋めてしまったそうで、リィンはその金髪少女に頬をぶっ叩かれたらしい。

 正直言うと全くリィンは悪くない。つーか、助けられた立場でぶっ叩くのはどうかと思うよ。

 さっきのマキアス&ユーシスといい、なんでこのクラスはギスギスする関係が顔合わせてすぐに生まれんの?サラはこうなると知ってて仕組んだの?などと考えていると突如、ピロロロとポケットの中に入れていたとあるオーブメントが鳴っていた。それはゼダスだけではなくⅦ組全員が起きた現象だった。その鳴り響く音を聞いて、オーブメントを取り出し開く。

 結社が解析してくれたおかげでこのオーブメントの名称、機能を知っているがゼダス以外の奴らはコイツに関してはチンプンカンプンだろう。開いたオーブメントからサラの声がした。

 

「このオーブメントはエプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した次世代の戦術オーブメントの一つよ。」

 

 その声を聴いた瞬間リィンをぶっ叩いた金髪の少女が小さくピクッと反応した気がするがそんなの通信で分かる筈も無く、サラは言葉を続ける。

 

「第五世代戦術オーブメント、《ARCUS》よ。」

 

 先程挙げられたエプスタイン財団とラインフォルト社は今は巨大な技術メーカーって解釈でいいだろ。そして、今、話の中心にある《ARCUS》だが、今はサラから説明は無いらしい。

 ゼダスの知っているオーブメントについての事を大雑把に説明すると、七耀石(セプチウム)と言われる鉱山から採掘される天然資源の結晶体の欠片、通称セピス。それを原料にして作られる結晶回廊(クオーツ)を戦術オーブメントに組み込む事で導力魔法(オーバルアーツ)を使用することができる。

 まぁ、こういうには本来専門家のほうが詳しいんだろうけどな。サラが俺たちに特別なクオーツをくれるらしく、旧校舎地下一階にある十つの台座に俺たちの武具と特別なクオーツが入っていると思われる紫色の箱が置いてあった。

 各自がこの状況を飲み込めない中、俺は一人無言で自分の大剣の置いてある台座に近寄る。迷わず俺は《ARCUS》を開き特別なクオーツ……マスタークオーツを中心部にセットする。

 俺のマスタークオーツの名は「オリジン」。始原の意味を持つマスタークオーツだ。属性は地、水、火、風、時、空、幻とある内の空属性だった。

 この特別オリエンテーリングはこの先の扉の奥にあるダンジョン区画を越え、さっきの旧校舎一階に戻れというものらしい。

 それを聞いてゼダスはⅦ組メンバーを置いて進み始めた。Ⅶ組メンバーは「待て」だの「止まれ」だのの意味の言葉を取り繕って俺に掛けて来るが俺自身は馴れ合うつもりは一切無いし、俺のペースを崩してまで人に合わせるのが嫌だからそんな言葉に耳を貸さずダンジョン区画へと足を踏み入れた。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 ゼダスは手中でARCUSを弄びながら、ダンジョン区画を歩いている。そして、ある問題に直面する。それは

 

「………また、道を間違えた…」

 

 そう、俺はゼダスは極端な方向音痴なのである………訳でもないが迷った。さっき、あれ程の静止の声を無視し進んできたのだ。今更、助けを乞うのはダサいしなぁ……。まぁ、別に誰に何と思われようとも構わないのだが。

 すると、ゼダスはとある気配に気づく。魔物だ。

 

「飛び猫5体とグラスドローメ3体か…別に問題無いな。」

 

 ゼダスは鞘から大剣、《魔剣レーヴァティン》を抜き、瞬く間に接近。そして、大剣で魔物をなぎ払う。結果、出会ってほんの数瞬で魔物は全滅していた。

 魔物から見たら、いきなり目の前に現れ一瞬で引き裂かれたようなもの。ある種の“悪魔”に等しいのでは無いのだろうか?俺は

 

「やっぱり弱ぇえな。全くやりがいが無い……ん?そこの曲がり角……おい!誰かいるのか!?」

 

 人の気配を感じそう叫ぶ。そして出てきたのは、青髪の美少女を筆頭とした、女子三人組。………というか、青髪の美少女はさっき見たな。

 構成メンバーはさっき挙げた青髪の女子とリィンをぶっ叩いた金髪の女子、更に眼鏡を掛けた女子だ。青髪の女子は

 

「そなた、あれ程早く出発したのに我らと同じペースとはどうかしたのか?」

 

 と勝手に心配したように話しかけてくるが、

 

「あぁ……えーとなぁ……俺って極度の方向音痴なんだわ。さっきから進んでんのかわかんねぇんだよ。つーか、さっき名前聞いてる暇無かったから今聞いていいか?ちなみに俺はゼダス・アインフェイトだ。」

 

 自己紹介(嘘も孕む)も兼ね今の状況を説明した。

 この場合は女子達を利用すべきだとゼダスの思考が判断した。字面だけ見ると凄く最低な男に思えるのは気のせいだろう。そうだと思いたい。

 

「ラウラ・S・アルゼイド。レグラムの出身だ」

「アリサ・R。ルーレ市からやって来たわ。」

「エマです。エマ・ミルスティン。ちょっとした辺境出身で……奨学金頼りで入学しました。」

「へぇー。青髪女子がラウラで帝国最強って謳われる《光の剣匠》の娘で、金髪女子がアリサであのラインフォルト社の社長令嬢。眼鏡っこの女子がエマで入試トップなのか。」

 

 というか、入試なんて在ったんだな。受けた覚え無いんですけど…と思っているとアリサが

 

「え、何で私がラインフォルト社の社長令嬢って気づいたの!?」

「言動から察せるだろ。《ARCUS》でサラが連絡取ってきたとき一人不思議な反応をし、自己紹介ではルーレ出身のファミリーネームがR。流石にここまできたら分かっちまうだろ。でも、あえて偽名を使ってるんならばらすようなことはしないから安心しろ。」

 

 と種明かしをしたところにラウラは

 

「ゼダスはこれからどうするのだ?」

「一人で行くつもりだが………また迷いそうなんで連れてってくれるとありがたい。いいか?」

 

 ラウラとアリサ、エマは顔を見合わせ、エマが

 

「ええ、ゼダスさん。よろしくお願いします。」

 

 そんな場の流れで組んだ男女比の悪い即席パーティー。

 陣形はお互い大剣使いのゼダスとラウラが前衛を務め、弓持ちのアリサ、魔道杖持ちのエマが後衛を担当することとなった。

 しかし、ゼダスは先程の戦闘と違い力の大部分を抑えていた。あの力はあくまで“執行者”としての物だ。至って普通の“学生”を演じる必要があるからこういう手段を取ったんだろう。

 一人から四人にメンバーが増えたおかげで戦闘自体の負担はとても軽くなった。俺自身は要所要所で発生するボロを補うだけの簡単な作業だ。

 しかし、パーティーを組むということは、人とのコミュニケーションが発生するのである。俺はそれが苦手である。ラウラは執拗にゼダスの剣術「聖扉戦術」について聞いてくるし、アリサは俺が多少、導力学が理解できるって分かるとそれから色んなこと吹き込んでくるし(色々と有意義だった)、エマも色々な話題で話を振ってくる。勉学で。ゼダスが

 

(なんで戦闘よりコミュニケーションのほうが疲れるんだよ)

 

 と思っていると、ようやく最深部についたのか大広間に出る。奥には旧校舎一階に続く階段が見えていた。ラウラが

 

「あれが出口か。」

 

 と呟くとアリサとエマが

 

「「疲れた(ました)…」」

 

 とため息混じりに言い放つ。三人とも早く戻ろうと階段に近寄ろうとしていた時、俺は微かな殺気に気づき、

 

「三人とも!気をつけろ、まだ敵はいるぞ!」

 

 と叫ぶ。すると石像がまるで意思を持ったかのように俺たちと階段の間に立ち塞がる。エマは

 

「帝国の伝承の石の守護者(ガーゴイル)!?」

 

 と驚いていると、ゼダスは

 

「この特別オリエンテーリングのラスボスってとこか。三人とも行くぞ!」

 

 と呼びかけ石の守護者イグルードガルムとの戦闘が始まった。

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