闇影の軌跡   作: 黒兎

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一日で二話分を書き上げ、満足な『 黒人』です。文字数は若干、少ないけど内容は濃い………はずです。
最近、Fateにハマりすぎてツラいですが、その片鱗が若干含まれた一話。分かる人には分かる………と思いたい一話になると良いです。







割れた関係に対峙する過去

 

「ハァハァ………………」

 

 肩で息をするゼダス。紫の瞳は若干、濁っている様に見えた。

 もう、身体の限界を超えた。出来る事なら動きたく無いのだが、そういう訳にも行かない。今、やるべき事は–––

 

「おい、ゼダス‼︎何をするのだ⁉︎」

 

 ゼダスはラウラの襟首を掴み、引っ張る。ラウラの抗論に全く、ゼダスは耳を傾けなかった。そして、討伐したビッグドローメの元へと引き摺って行く。それに加え、フィーも掴んでいき、壁際まで行く。

 その光景にエリオットとマキアスは「一体何をするのだろう?」と首を傾げるが、次の瞬間、止めに入ろうかとした。それもそのはず。ゼダスは–––ラウラとフィーを壁に向かって、オーバースイングで投げ付けたのだ。

 壁にぶつかり、ヘタヘタと地に座りこむラウラとフィー。そして、投げ付けられた張本人。ゼダスの方を見るのだが–––戦慄を覚えた。

 ゼダスの瞳に宿るは“怒り”。

 ユーシスとマキアスの時の激昂とは違う、静かな怒り。だが、それでも宿る怒りの焔は変わらなかった。そして–––

 

 

「お前ら………………やる気あんのか?」

 

 

 その言葉は地下道に冷たく響く。背筋が凍る様な感覚に、全員が血の気が僅かながらに引いていた。

 

「………無い訳無い。じゃなきゃ、戦う訳無い」

「そうだ。あるに決まってるだろう」

「–––それじゃあ、あの体たらくは何だよ」

 

 別に語尾が荒げている訳では無い。だが、ラウラとフィーは身を竦める。

 

「ラウラは周りを顧みらずの大技を放って、味方に損害を与え掛けた」

「………ッ」

「フィーはまともにタイミングを合わせようとせずに、自分の気分で突っ込もうとしたな」

「………」

「結論だけ述べると、お前ら………本当にやる気無いだろ。その程度の連携も出来ないなら、もう戦闘に参加しなくていい。正直、邪魔だ」

「ゼ、ゼダス‼︎それは流石に言い過ぎだよっ⁉︎」

 

 険悪なムードの中、エリオットが慌てて止めに入る。よく、この状況で口を挟もうと思ったものだ。それも正直さ故の賜物だろうか?だが、前も述べた通り、正直は武器ともなるし、毒ともなる。この場合は確実に毒だ。

 

「嗚呼、そうだよなぁ。ラウラとフィーは、こんなのでも性能“だけ”は良いもんな。それが戦闘から外れるのは痛い………か。んじゃあ、打開策で手を打とう」

 

 さっきの雰囲気とは一転。気味悪い程の笑みを浮かべながら、ゼダスは打開策を提示する。

 

「–––俺が実習から外れれば、何も問題は無いしな。だから、後は好きにしろ。俺は知らん」

 

 その言葉にエリオットとラウラは目を見開く。

 この手段は–––最初の特別実習。ケルディックの時と同じ方法。まさか、解決する方法があるんじゃあ………と期待をしている様に見える表情に、ゼダスは先読みしたかの様に言葉を紡ぐ。

 

「さっきも言った通り、俺は知らんからな。解決策があるとは思うなよ」

 

 少し考えれば、当然の事だった。

 解決策があるのなら、実行しているだろう。しかも、策が無いからエリオットにも相談していたのだから。

 ゼダスはそれを証明し、地下道を引き返そうと一人歩き始める。が、

 

「………待って」

 

 掠れ掠れのフィーの声が耳に届く。それにゼダスは少し足を止める。

 

「何?」

「ゼダスが離れちゃダメ。一応、学院の実習だよ………?」

 

 制服の裾を掴まれた。普段なら、別に気にしないのだが–––

 

「知るか」

 

 それを振り払う。その行動にフィーは僅かに身じろぐ。しかし、全く気にしてないのはゼダス。

 

「俺は別に学院とか、どうでも良いし。最悪、退学でもOK。寧ろ、歓迎するさ。でもな–––」

 

 脳裏に浮かぶ苦い過去にゼダスは若干、歯嚙みしてから、叫ぶ様に言う。

 

 

「もうこれ以上–––迷惑を掛けんなよッ‼︎これ以上、迷惑掛けられたら………それこそ、俺が俺で居られなくなるだろうがッ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、ゼダスは一人、実習から離れた。

 正直、覚えている範囲の過去について語りそうになった事は反省すべきだ。まだ、悟られて良い時では無い。

 だが、それ以前に自分の行動に非があるのも事実。あんなに感情に制御が効かなくなったのは、そんなに多くなく、珍しかった。

 悪気があった訳では無いが、一応謝罪メールをエリオットとマキアスには送っておいた。帝都でARCUSの連絡機能が使えるのは、便利である。その謝罪メールの中に「しばらく、一人にしてくれ」という旨も付属しておいた為、探しに来る事は無いだろう。

 今、ゼダスが居るのは約半月前に武器たるミストルティンの作成を頼みに訪れた森林部の入り口。そこなら、魔獣は出てこないし、人の気配は薄いし、寛ぐには持って来いの場所だ。

 緩やかな丘に腰を下ろし、寝転がる。木陰から差す僅かな陽の光が、ゼダスを照らす。それを眩しそうに手で遮る。

 

「………それにしても、何でさっきはあんな物が見えたんだろうな?」

 

 ぶつかった一つの疑問。

 さっき、フィーが飲み込まれそうになった瞬間、昔の光景が垣間見えたのだ。昔と言っても、二年前だっただろうか?そういえば、その思い出の相手と初めて出会ったのも、こんな晴れの日だったはずだ。

 

 

–––忘れたい

 

 

 その願いは今も変わらず、心に深く刺さっている。

 ゼダスの最終目標は『自分の過去を思い出す』事だ。それを考えれば、『忘れたい』は相反する物だ。だが、そんな理屈以前に忘れれるはずが無いのだ。何故なら–––

 

 

「………」

 

 

 ゼダスは無言で、腰のミストルティンに手を当てる。

 

 

–––その思い出は、ゼダスの剣技。《聖扉戦術》が深く関わっているのだから。

 

 

 なら、ここは一つ思い出してみるとしよう。少しは、既存の過去とも向き合うべきだ。未存の過去を知るには………な………………。

 《聖扉戦術》。

 それはゼダスが自分の為に開いた流派だ。一般的に見れば、の話だが。

 確かに、ゼダスが己の過去を知る為の力を得る為に作り出したのは事実だが、実の所はもう一人、この流派の創始者がいたのだ。その、もう片割れの創始者たる少女と初めて会ったのは、今から丁度二年前の話だ。

折角だし、一度遡ってみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺に弟子、ですか?」

 

 ようやく結社にも馴染んできたゼダス。

 いつも通り、《盟主(グランドマスター)》に星辰の間(アストラルコード)に呼び出されたゼダスに発せられた言葉が、これだった。

 

 

『そろそろ馴染んできた頃でしょうし、弟子でも取ったらどうです?』

 

 

 こんな事を言うのもなんだが、馬鹿な話である。

 こちらとしては、自分の心に空いた記憶を探そうと躍起になって剣を奮っているというのに「弟子を取れ」と………。そんな事に割く時間なんてものは無い。

 まだ、前代の剣帝の戦技(クラフト)も半分しか自分の物にしかしてないのだ。こんなツマラナイ話をするだけの理由で呼び出したのなら、サッサと帰って《鋼》と戦いたい。まだ、一撃も加える事が出来てないのだ。そろそろ、一撃を加えてやりたい。

 執行者には、あらゆる自由が認められている。その気になれば、この場から逃げ出す事も出来るのだが、相手は《盟主》だ。命を救ってくれた恩人だ。そんな不敬を働く訳にも行かない。だが、断れる物は断る。だって、面倒なのだから。

 

「折角のご提案ですが、遠慮させて頂きます。俺にもやるべき事があります故」

「そうですか………残念です」

 

 本当にガッカリしているかの口調にペースが狂いそうになる。だが、ここで気遣おうものなら、確実に口車に乗せられるのは自明の理。平静を保ち、尋ねる。

 

「それにしても、なんで俺にその様なご提案を?俺みたいな新参者に教わりたい奴は居ないでしょう。まだ、俺は輝かしい功績を立てた訳でも無いですし」

 

 当然とも言える疑問だった。

 当時のゼダスは、まだ結社に入って三ヶ月経ったかどうかなのだ。そんな新米もいい所の奴に教わろうとする奴が何処にいる?

 確かに結社は個性の色が強い奴は多いが、流石にそこまで奇特な奴は居ない。故の疑問。それに《盟主》は、

 

「最近、《鉄機隊》の戦乙女の一人が執行者に昇格したのです」

 

 《鉄機隊》といえば、《鋼》の直属の実行部隊だ。忠誠だけでよく頑張れるな、と言いたくなるが言ったら《神速》に狙われかねないので、絶対に口にしないが。

 

「へぇ〜。よく分からないですけど、良かったんじゃないですか?戦力増強には持って来いの朗報じゃないですか」

 

 感心しながら、ゼダスは言う。

 執行者になれたという事は、一人でも戦える能力があると言う事だ。何も不利な話では無い。しかし、何故今、その話をするのだろう?関連性が見えて来ない。

 

「ええ、朗報ですよ。でも………親鳥から離れた子鳥が、普通に飛べると思いますか?」

「………嗚呼、成る程」

 

 合点がいったゼダスは、手をポンと叩く。

 つまり、《盟主》はその《鉄機隊》上がりの執行者を心配している訳だ。

 今までは、目標たる人の背中を追い続けて来たというのに、今では、自分で道を選び、進んで行かなければならない。それは慣れてなければ、不安な話だし、慣れるのには膨大な時間が掛かる。サッサと克服しろという方が無理だろう。

 

「それで、その子の監視役を頼もうと思ったんですけど………ダメですかね?」

「俺が《盟主》に頼まれて、断れない性格だと知っていての言動なら、多少はムカつきますが………まぁ、そういう事なら良いですよ。にしても––––監視役なんですね。世話役とかでは無く」

「ええ、監視役です。彼女はプライド高い人ですから」

「彼女って事は、性別は女ですか」

「嫌ですか?」

「別に問題無いですが………まぁ、同性じゃないから、勝手が効かないのは確かですね」

 

 その程度の障害は大した事無いのは、互いに共通の見解だった。

 

「それじゃあ、了承を貰った事ですし、入ってきてもらいましょう。入って来て下さい」

「了解しました」

 

 虚空から現れるのは金髪碧眼の少女。青いドレスに白銀の甲冑を纏うその姿はさしずめ《聖王》。

 

「自己紹介をお願いしますね」

「了解しました。お初にお目にかかる、ゼダス殿。私はシルフィード・アルトリア。これからはよろしく頼む」

 

 そう言って、シルフィードはお辞儀する。一つ一つの行動に高潔さが垣間見え、出自の良さを伺わせる。

 

「えーと、俺はゼダス・アインフェイトだ。何か成り行きで、一緒に行動する事になったが………これからはよろしくな」

 

 ゼダスは手を差し出す。それにシルフィードは、マジマジと見つめた後、

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 白銀の手甲にガッチリと掴まれる。

 これが後に《聖扉戦術》の創始者となる《天帝》ゼダス・アインフェイトと《聖王》シルフィード・アルトリアの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と、前書きで大層な事を書きましたが、引っかかった人は居るでしょうか?
ヒントとしてはオリキャラですかね。と言っても、まだ設定集には入れませんが(ちょっと早い。もう少し詳細が分からないと書けない)。
色々と語りたいですが、敢えて言わないでおきます。推測してみるのも、読む楽しみの一環かも?………でも、当てられたら、当てられたで凹むと思いますので………まぁ、自由にお任せします。
次話も過去のお話。新たなゼダスの一面が見えるかも?


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