闇影の軌跡   作: 黒兎

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単純な繋ぎ回。
短い尺で済ませるつもりが、6,000文字を超えてた………えっ、少ない?先日投稿したRー18版の方が長いって?ありゃ、一週間は掛かりましたからね、簡単には超えれないですよww

言い忘れてましたが、Rー18版とコッチ側が繋がる仕組みに先日、組ませて頂きました。故に、コッチ単体では歪に見えるかも知れませんが、ご了承下さい。

これからもよろしくお願いしますm(__)m









実習二日目 

 

 

 意識は目覚め、ベットから身体を起こす。

 身体に襲う疲労が少なくないことを嫌でも察してしまい、昨晩にあったことが事実だった事を裏付けている様だった。

 黒髪紫眼の少年、ゼダス・アインフェイトは辺りに視線を落とす。すると、右側にはラウラが、そして、左側にはフィーが。それぞれに制服の裾を掴んで離さない。寝ているというのに凄まじい執着心だ。

 

「(恋が分かんねぇのに愛される………本当、よく分かんない話だよなぁ………)」

 

 寝息を立てている二人の頭をポンポンと撫で、ゼダスは一人、飯を作ろうと階下に向かう。

 

「お、マキアス。用は済んだのか?」

 

 宿である遊撃士協会帝国支部の一階に居たのは、昨晩「用がある」と言って、夜の帝都に消えたマキアスだった。その様子は、まるで自分を見つめ直したかの様だった。

 

「ああ、実家に帰って来た」

「で、どうだったんだ?久しぶりの実家は」

「………良くも悪くも、自分を認識し直した気がするよ」

 

 そう言うマキアスにゼダスは、

 

「唐突で悪いが、マキアス。ちょいとコーヒー淹れてくれないか?」

 

 と言い、マキアスが手にしている袋を指差す。多分、中に入っているのはコーヒー豆なのだろう。と察しての言葉だった。

 

「君は………何時もいきなりだな」

「良いから良いから………あ、俺はブラックな。俺の意識を覚ますには「苦い」って言わせる程の味が良いしさ。で、淹れてくれれば、お礼にお兄さんが話を聞いてあげよう」

 

 笑みを浮かべ言うゼダス。それを一瞥し、マキアスは、

 

「………分かった。とことんまで付き合ってもらうからな」

「了解」

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 注がれた熱く苦いコーヒーをゼダスは喉に通す。

 マキアスが持ち掛けてきた話。それは己の悩み………貴族嫌悪の由縁だった。

 どうやら、マキアスには約六年前まで姉がいたそうなのだ。とはいえ、実際は父親のカール・レーグニッツの姪………つまり、マキアスから見れば、従姉。

だが、物心ついた頃には母と死別していて、父子家庭で育って来たマキアスにとって、その姉は母親の様な存在だった。父親も職業故に多忙だし、従姉とは言え血縁関係者。幼き頃のマキアスが彼女に懐くのは当然の話とも思えた。

 

 そして、姉は若くして命を落とした。事故でも事件でも無く、自殺という形で。

 

「“彼”は–––––帝都庁に勤める父さんの部下にあたる青年だった。だが、身分階位は平民では無く、貴族。しかも、伯爵家の跡継ぎという正真正銘のサラブレッドだった」

 

 いわゆる、貴族のボンボン臭が激しく漂う中、続くマキアスの言葉にゼダスはその考えを否定を掛けた。

 

「しかし、彼には貴族特有の傲慢さや尊大さの欠片も無く、表すなら“誠実”の二文字が似合っていたよ」

 

 だからだろう。平民であるマキアスの従姉と貴族である“彼”が、互いに惹かれ合ったのは。

 その“彼”は、上司であるカールに紹介され、身分を超えた………一般的には、良くは思われない愛に発展した訳だ。

彼女に懐いていた幼少期マキアスから見れば、面白い話では無かったが、従姉の事を思い、祝福したそうだ。まぁ、話を聞く限りはお似合いの二人だったらしいが。

 そして、カールが仲人に立つ形で二人は結婚。これでHappy end。幸せに包まれ、二人は幸せに暮らしたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

–––––などと言う、甘ったれた話では無かった。表すなら、ただの“end”………いや、この場合は“Bad end”か。

 

 

「相手の実家––––––伯爵家が露骨の潰しにかかってきたんだ。どうやら、急に《四大名門》のカイエン公爵家との縁談が持ち上がったらしくてね………」

 

 《四大名門》の一つ、西のカイエン公爵家。

確か、主な都市は海都オルディス。ゼダスから見れば………輝かしくも、苦々しい過去の残滓が残っている所だ。

そして、カイエン公爵家と言えば、露骨なまでの血統主義家。だから、貴族が平民を娶るなど、許されなかったのだろう。

 そこから、嫌がらせは始まった。父親であるカールが、帝都庁で重要な役割を担っていたから、露骨な手を出す事は無かったそうだが、まともに機能する証拠を残さない様に、陰湿な嫌がらせを加えられたらしい。

 だが、女で一つで男所帯を世話する様な性格のマキアスの従姉だ。周りの事を考え、誰にも相談せずに己の内に溜め続けた。そして–––––自殺。

 ストレスを溜め込んだ末に自殺というのは、珍しい話では無い。寧ろ、自殺要因としては数多い物とも言える。しかし、当時幼かったマキアスにとっては、激しい程の重圧だっただろう。

 だから、貴族が嫌い。結局は………古い社会制度に囚われ続ける貴族が憎い。

 

「その一件から、父さんは今まで以上に実績を積み重ねた。そして、盟友であるオズボーン宰相と協力する形で帝都庁の貴族派を押し退け………四年前に帝都知事の座に就いた。これがレーグニッツ家の事情で………僕が貴族嫌いな理由だ」

「なるほどなぁ〜〜………そりゃ、大変だった事で」

 

 再度、ブラックコーヒーを飲むゼダスは、そう言う。

意識が冴え渡り、思考を働かせる。こういう奴に掛ける言葉は––––––………………

 

「––––––ま、別に嫌いで良いんじゃね」

「君は………まともな慰めの言葉も知らないのか?」

「心外だなぁ〜〜………まぁ、最後まで話を聞こうぜ」

 

 コーヒーカップを卓に置き、ゼダスは一度咳払い。そして、真剣な面持ちで感想を述べる。

 

「マキアスは、そんな事があったから、貴族が嫌いになったんだろ。んじゃあ、その一件が無くて、従姉が幸せにしてたら、貴族嫌いじゃなかったか?」

「それは………」

 

 否定出来る筈の問いにマキアスは口詰まる。全く訳が分からず、問い掛けた本人であるゼダスの紫眼を覗き見るが………真意が分からない。

 

「多分、お前は遅かれ早かれ、貴族嫌いになってたと思う。だって、貴族派と真っ向から対抗する革新派の重役の息子だぜ。影響されない可能性を模索する方が難しいだろ」

「あ………」

「あくまで、従姉の件は早かった切っ掛けだっただけ。しかも、俺は嫌いで良いって事を証明出来る」

「………本当か?」

「ああ………と言っても、学年一の秀才を納得させる物かは分からないけどな」

「君が一位を掻っ攫って行ったのは、まだ忘れていないぞ」

 

 半眼で睨むマキアスにゼダスは僅かながら視線を泳がせる。だが、こんな状況が続いても意味無い事に気付き、ゼダスは証明を立てる。

 

「お前はユーシスと戦術リンクが結べただろ」

 

 戦術リンクは、使用者の心と心を繋ぎ、以心伝心を擬似的に作り出す物だ。そんな機能を確立させるには、互いの心を隅々まで把握する必要がある。ゼダスみたいに心を偽り続け、相手すらも欺き続け無い限りは。

 だが、そんな高等テクニックを使えるメンバーはゼダスが把握している限りは知らない。なら、戦術リンクを満足行く形で繋ぐには、本心である必要がある。そんな中、本当に貴族嫌いな奴が『如何にも貴族です』のユーシスと繋げるか?答えはNo。考察するだけ虚しい。

 しかし、それをぶっつけ本番で成功させたのだ。そんな荒技を成せる奴が、本当に貴族嫌いな訳が無い。

 

「“嫌い”って思えるって事は、感情を抱けるって事だ。人として、至極真っ当な反応だよ」

 

 見る者全てを落ち着かせる笑みを浮かべ、ゼダスは結論を述べる。

 

「でも、お前は“嫌い”な奴が相手でも妥協し、受け入れた。良いんだよ、それで。わざわざ好きになる必要は無い。寧ろ、好きになるなよ。委員長歓喜ルートしか見えないから」

「な、何でそこでエマ君の名前が出て来るんだっ⁉︎」

「あ、そっか………知らないのか………」

 

 思い出したく無い過去を開いてしまった気がして、ゼダスは頭を横に振り、思考を断つ。

 

「まぁ、そういう訳だ。だから、お前はお前で良いんだよ。貴族嫌いで勉学熱心で………俺らⅦ組の頼れる副委員長」

 

 座ってた椅子から立ち、空っぽになったコーヒーカップを眺めてから、ゼダスは言う。

 

「それがマキアスだ。その要素が一つでも欠ければ、それはお前に似た誰かだろ。そんなのはⅦ組が認めねぇからさ………勝手に変わるんじゃねぇ。良いか?」

「前言撤回………だな。君は人の心を慰めるのを得意としている様に見えるよ」

「んな、大層な話じゃないんだけど………それじゃあ、そろそろ実習を始めようぜ。余り時間を掛け過ぎても面倒なだけだしな。おーい、ラウラ、フィーッ‼︎さっさと目覚ませーーッ‼︎」

 

 上階に向かって、叫ぶゼダス。その姿にマキアスは、

 

「(ゼダスに話を聞いてもらったら、少しばかり、突っ掛かりが消えた様だ。本当に………君はお人好しだな)」

 

 と思ったり、思わなかったり………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた〜〜」

 

 息を切らし、地に座り込むエリオット。

 今居る場所は帝都の港、ヘイムダル港から続く地下水道。実習の課題に有った魔獣討伐に来ていた訳だ。

 たかが一戦程度で何へばっていると言いたくなる奴もいるかもしれないが、他のメンバーも似たり寄ったりの損耗具合だ。それには訳がある。

 指定されている所に居た鮫型の大型魔獣と小型の取り巻き。まさか、その個体数が鬼沸きしてたなんて、誰が予想出来た?しかも、昨日のドローメ種との戦闘とは違い、ボス格の大型までもが大量繁殖。最早、学生の手に負える物じゃなかったが………

 

「お疲れさん」

「何でゼダスは疲れてないの………」

「本当だ………」

 

 地下道に伏してるフィーとラウラ。額に汗が見え、疲れ度は凄い。だが、同じ前衛のゼダスは全く苦しげな表情を見せず、普段通り飄々としていた。

 何故こうなったか。これは鮫型魔獣特有の性質が関していた。

 鮫型魔獣は基本的に水属性に弱い体質である。つまり、乾燥している訳だ。人間程度の乾燥なら問題無いのだが、魔獣レベルの乾燥となれば、硬化が凄いのだ。少なくとも、柔な近接戦は苦労が溜まる。ゼダスとラウラは持ち前の火力の高さで貫通可能だが、双銃剣で相手を肉薄にする戦法を取るフィーはダメージを与え辛い。

 だが、近接戦が長引く相手にわざわざ近接戦をする必要は無い。だから、ゼダスはエリオットに、

 

『兎に角、水属性の導力魔法(オーバルアーツ)を叩き込め。威力第一に出来るだけド派手な奴、乱射で良いから』

 

 と指示。

 結果、エリオットは本当に遠慮無く、水属性の高位導力魔法であるクリスタルフラッドを乱射。

 氷床を広範囲に発生させ、一気に体力を削ぐ導力魔法だが、エリオットが会得………よもや、乱射出来るまでに成長しているとは思わなかった。これなら、最高位の水属性導力魔法のメイルシュトロームも使えるんじゃないか?とゼダスは錯覚してしまっていた。

 しかし、ここである問題が発生する。それは前衛の気の遠くなる程の苦労だった。

 それもそうだ。一気に広範囲に氷床を発生させるのだ。タイミングが合わなければ、巻き込まれる可能性がある。とは言え、前衛が魔獣の注意を惹かない訳にはいかない。惹かなければ、後衛に注意が向くからだ。

 そんな異界も真っ青な混沌とした空間で戦い続けたのだ。おかげでラウラとフィーは、こうして倒れている訳。

 

「それにしても、君がそこまで導力魔法の練度を上げているのなら、エマ君の導力魔法の練度はどうなってるんだ?」

 

 マキアスは問う。それに答えるは他の男子勢。

 

「んー、委員長は僕以上に努力してるから………多分、僕よりも凄いと思うよ」

「それは違うな、エリオット。お前と委員長は得意属性が違うだろ。エリオットは水属性と空属性。委員長は火属性と幻属性。得手としている分野が違うんだから、委員長に敵わないと思えば、他分野を伸ばせ。お前にしか出来ない事もある」

「………うん、ありがとう、ゼダス」

 

 はにかむエリオット。これが女子だったら、男子受け良いんだろうなぁと思った。つーか、今でも天使属性で女子受け良いんだったな、こいつとも思ったり。

 そんな思考を断ち切ったのは、ARCUSの着信音だった。ゼダスはそれに対応しようと、ARCUSを取り出す。帝都中なら通信可能なのは、本当にありがたい。

 

「もしもし、こちら、ゼダス・アインフェイト。何すかね、サラ教官」

 

 画面に表示されていた奴の名前を問う。それに連絡を掛けてきた張本人は、

 

『あーもしもし。アンタ達、今何処にいる?』

「何処って………ヘイムダル港の地下水道だけど。さっき魔獣討伐が終わったばっかだよ」

『ヘイムダル港って事は………時間的には十分ね。追加課題よ』

「えー面倒くせー。電話、切って良い?」

『何、力仕事じゃないから、甘んじて受けなさい。男子なら感極まる話だし』

「………嫌な予感がする」

『今日の午後五時。今は昼過ぎだから、数時間後ね。その時刻に『サンクト地区』にある『聖アストライア女学院』に班員全員で向かってちょうだい。帝都知事の許しは得てあるから』

 

 出てきた学院名にゼダスはふと思い出し、少し微笑む。

 確か、聖アストライア女学院って言ったら………シュバルツァー家のブラコン妹ことエリゼと超御転婆お姫様のアルフィンが居るはずだ。一応、帝都にいる間に顔を見せに行ってやろうかと思っていたが、わざわざ時間を割いてくれるなんて………本当、こういう所では運が回って来るな。と思うゼダス。

 

「了解した。用件はそれだけか?」

『うん………って、あと一個有ったわ。飛びっきりの悲報がね』

「ん?何?」

『アンタ、『ガルニア地区』って知ってるわよね』

「『ガルニア地区』って言ったら………帝都屈指の高級商業地区だよな?」

『ええ。そこにある宝石店で盗難事件が起こったわ』

「だから俺らが助太刀に行け、と」

『まぁ、そんな所ね。でも、アンタに頼みたいのはその先よ』

 

 遊撃士が執行者に「頼む」か………事情を知る者は奇異な目で見詰めるであろうその光景に苦笑しそうになるが、次に発せられた一言に表情が絞まる。

 

 

『犯人と思われる奴を捕まえろ、との事だって。相手は怪盗B………いや、怪盗紳士って言った方が正しいかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おるうぁぁぁぁぁッ‼︎ 待てや、クソ紳士ッ‼︎」

「フハハ‼︎ 麗しい宝石を盗むや否や、愛しの《天帝》に追われるとは………何たる至福ッ‼︎」

 

 帝都街の上を駆ける………いや、宙を舞う白き二人。

 片や、白い制服–––––夏服に黒髪紫眼。つまり、ゼダス。

 もう片や、白き貴族服–––––ゼダスとしては見慣れた執行者服に空色の髪と仮面。結社《身喰らう蛇(ウロボロス)》の執行者が一人。No.Ⅹ《怪盗紳士》ブルブラン。

 何故、こんな常軌を逸した鬼ごっこをしているか。理由は簡単だった。

 サラ教官から連絡を頂き、ゼダス達A班は盗難事件の発生した『ガルニア地区』へと向かった。そして、置き手紙の如く、置かれていた挑戦状に真っ向から挑み–––––などと言う正攻法を取る訳が無い。本人を捕まえれば終いだろという事で、ゼダス一人別行動でブルブランを追っている訳だ。

 

「さっ……さと返やがれッ‼︎」

「おっと、危ない危ない。捕まえられるところだったよ」

 

 ゼダスの手がブルブランの服の裾を掠める。悔しそうに歯嚙みするが、次に繋げようと思い直し、ゼダスは前を向く。が–––––

 

「執行者時代の君なら、私を今ので捕まえられたかも知れないな」

「………どういう事だ?」

「今の君は………護るべき者が出来た様に見える。故にキレが無い。全てを賭けるだけの覚悟が」

「何時も何時も、美ばっか五月蝿い奴の言うセリフには思えねぇな」

 

 再び、家屋の屋上を蹴り、ブルブランに迫る。

 

「ま、でも、確かにそうだよ。護るべき者は出来た」

 

 脳裏に浮かぶ二人の姿。青髪大剣士に銀髪双銃剣士。

 

「それで、俺が後ろを気にしなきゃならなくなって、弱くなったのは認めるよ。でも、彼奴らは、俺の強さに憧れてくれた。なら–––––こんな下らない争い程度で負ける訳にはいかねぇんだよッ‼︎」

「恋が分からないのに愛された《天帝》か………今までの《天帝》とは別格に美しいな。興味が唆られるよ」 

 

 突如、ブルブランは止まり、盗んだ宝石を投げて来る。加速を無理矢理止め、ゼダスは何とかキャッチする。

 

「お前………これ、盗んでいかないのか?」

「フッ………今回ばかりは、君の美しさに免じて返してやるとしよう」

「………礼は言わないからな」

「強情な君は可愛らしいの方が似合うな」

「止めろよ、気持ち悪い」

 

 軽口の叩き合いになりだったのをゼダスは断ち切る。それにブルブランは、

 

「では、そろそろ去るとしよう。恋い焦がれるうら若き少女達を待たせるのはどうかと思うしね」

「なら、盗みに来んなよな。つーか、良い機会だ。聞いておくぞ、ブルブラン」

「何だい?」

「彼奴は………シルフィードはどうしてる?」

 

 ゼダスの口から発せられた質問にブルブランは口元を緩め、素直に答える。

 

「彼女は心の牢獄に囚われたままだ。今も弟子として–––––そして、想い人として君を待っているよ」

「そうか………」

 

 眼を伏せ、ゼダスは手にした宝石をクルクルと掌で弄ぶ。それをピンッと弾き、しっかりと掴む。

 

「教えてくれてありがとな。そろそろ………過去(トラウマ)とも向き合わねぇと」

「君の決意を固めた顔は百年の美酒にも劣らんな」

「止めろや」

 

 先程までに声調は強くないゼダスの声。それにブルブランは微笑み、去る。無人になった帝都の空にゼダスは呟く。

 

 

 

 

「前は心に負けた。なら–––––次は勝つ。だから………付いて来てくれるって信じてるぜ」

 

 

 その場には居ない、自分を愛してくれた二人に信頼を託して–––––………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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