色々、入れ込んだ一話。最近、シノブが一番ヒロインしている気がする。
「くそっ………」
旧遊撃士協会帝国支部………現Ⅶ組A班の宿に戻って来たゼダスが最初に口にした言葉だ。
時刻は日を跨ぎ、もう直ぐ太陽が昇る頃。今の今まで、逃げ去ったシノブを追っていたのだが、居そうな所に目星が付かず、遂に見つけるに叶わなかった。
よくよく考えれば、実習始まってから、マトモに身体を休めた記憶が無い。普通なら、衰弱し切って当然なのだが、ゼダスは倒れずに食い縛り続けていた。が、正直限界だ。
意識してしまい、足元が定まらなくなる。身体の体勢は崩れ、路上に倒れそうになるが、急に抱きかかえられ、何とか体勢を保てた。
「おいっ‼︎しっかりしろ、ゼダスっ‼︎」
ゼダスの紫眼を覗き込み、吼える青髪の少女。それが霞始める意識を少しばかり晴らしてくれた。
「………ラウラか」
「そなた………何で一晩中も戻って来なかったのだ?」
「仕事があってさ。想像以上に時間を掛ったよ」
「良かった………そなたの身に何かあったのかと思うと………」
震えた声でゼダスに語るラウラの瞳には涙が見えた。思っていたよりも心配させていた様だ。
「悪いな。でも、俺はお前らの前から勝手に消えたりはしないから、安心してくれ」
ポンポンとラウラの頭をゼダスは撫でると、ラウラは無言で頷いた。
―――*―――*―――
「よし、それじゃあ、実習最終日。張り切って行こーぜっ‼︎」
声を上げるゼダス。その姿はまるで疲労の片鱗すら見せていなかった。
「ゼダス………大丈夫?疲れてるでしょ」
心配そうに声を掛けるフィーにゼダスは答える。
「一時間も寝れば、一日は保つ‼︎」
「………」
「………」
「………」
「………スンマセンでした。痩せ我慢です」
瞬間芸の如く、土下座するゼダスに他のメンバーは半眼で見つめていた。
「ならば休んでいろ、ゼダス。今日ぐらいは私達で何とかして見せる」
「そうだよ。ゼダスはいつも頑張ってるんだから、少しは休んで」
愛してると言ってくれた二人からの言葉にゼダスは少し考えた後、言う。
「………分かったよ。それじゃあ、今日一日は俺抜きで頑張ってくれや。俺は宿で安静にしとくからさ」
と。
―――*―――*―――
結局、一人で宿である遊撃士協会帝国支部の中に戻って来たゼダス。無人の為、無言のみが流れ、若干寂しい気もするが、気にしない。
寝室に向かい、自分の荷物を漁るゼダス。A班には「休む」と言ったが、正直なところ、休んでは居られない。クレアが言うテロリストを警戒しなければならない一日な上、あの後見つける事が出来なかったシノブも探さねばならない。やるべき事が多過ぎて、実習をやってる暇が無かったから、実習を休めるのは有難いが。
「それにしても………何処から捜査するかなぁ」
ゼダスは鞄から出した帝都地図と睨めっこする。
何処から捜索するか。これは重要だ。と言っても、昨晩の内に粗方片付いているのが現状。これ以上、何をすれば良いのか………
そう思案に暮れていたが、不意に鳴り響く音に意識を戻される。ARCUSの着信音だ。
誰か分からない電話を取るのは危険と言う。果たして取るべきか否か。何ていう理屈は無視して、電話を取る。
「もしもし」
『おー、ゼダスか。ひっさしぶりだなぁ〜〜元気にしてたか?』
「………朝っぱらから何の用だ、レクター」
電話を掛けてきたのは、帝国軍情報局の特務大尉、レクター・アランドール。こいつが………こいつらがシノブを治療し、今も生かしている訳だ。
昨日、聞いた惨状を思い返すと、関わりたく無い奴だが、情報局ならば少しでも多くの情報が得られるはずだ。聞き出す一択だろう。と思っていると、
『情報。欲しいんだろ?』
「………よく御存じの様で」
『クレアの奴から聞いたぜ。『初恋の相手を助けて下さい』ってな。ホント、モテる男はツラいねぇ〜〜』
「ほっとけ………で、そうならサッサと情報を寄越せ」
『それが人に頼む態度かって言いたいが、お前には借りもあるしなぁ〜………今回は気にせずに情報を提供してやるぜ』
「借りって………あ、テメェっ‼︎まだ借金返し終わってねぇだろっ⁉︎早く返せよなっ‼︎」
『ああ、それなら大丈夫だぜ。クロスベルのカジノで大勝利したからなぁ』
「お、それなら期待………」
『でも、その後全部使っちった』
「レクターーーー‼︎お前、返す気ねぇだろっっ‼︎」
無人の宿で叫び疲れたゼダス。こんな光景を他人が見ていたら、確実に変質者の烙印を押されていたに違いない。
「………それで、早く情報を提供しろよ。借金は一割位は減らしてやるから」
『ラッキ〜〜。それじゃあ、提供してやるよ。まずはシノブの居場所からだ』
その言葉にゼダスはガタッと立ち上がる。一番聞きたいのを先に持ってきてくれるのは、非常にありがたい。
『あいつは中々、情に流されやすい性格だからなぁ〜〜。多分、地下水路でストレス発散に魔獣を乱獲してるんじゃねぇの、とは思うぜ』
「そんな曖昧な情報で借金を減らせると思ったか?」
『別にそれだけじゃねぇよ。お前が禁句に触れたのが原因なんだろ。なら、地下水路なら吐けるし。それにあいつはお前が探しに来るって思ってるだろうし………でも、早く見つかる訳にはいかない。だから、最深部付近にいるんじゃねぇか』
「………妙に説得力があるな、これ」
溜息混じりに言うゼダスに通話中のARCUSから笑いを堪えた声が聞こえる。
「何、笑ってるんだよ」
『ククク………いやさ。お前みたいな鈍感野郎が人を思って行動するなんてなぁ、と思ってさ』
「別に俺は人に危害を加えるべく動いてる様な悪人では無いんだが」
『それは悪の秘密結社に属する奴の言葉かよ』
「まぁ、否定はしないが、それを言ったら《
『げっ………クレアの野郎………アレは一応、国家機密だろうが。何バラしてんだよ………』
「と言っても、俺に隠す意味は無いんだけどな」
『ま、それもそうか。国家機密にも俺が構成員を集めたっつー
レクターの発した一言にゼダスはハァッと息を吐く。
《霞剣の叛団》はレクターによって集められた達人レベルの連中の集団、と
情報局の特務大尉とはいえ、レクターが達人レベルの連中を集めるのは苦労が伴う。その上、立場の関係で大幅に時間を割く事も出来ないのだ。
しかし、その事を考慮しても《霞剣の叛団》は存在している。つまり、構成員を集めて来れた、という事の証明となるのだ。
「俺の師匠からの細やかな
『………分かってるぜ。確かに扱い辛い奴らだが、実力面なら最強かもな』
「かも、じゃなくて、最強だよ。間違いなくな。俺だって至宝抜きなら、三人も相手出来ないと思うし」
『あの
「相性にもよるけどな。《密殺》辺りなら相性的には大丈夫だろうけど、《瞬閃》相手は………まぁ、キツい」
『ああ、あの《瞬閃》ちゃんか。確かに『霞剣の叛団』でも最強の剣技持ちだしなぁ〜〜。でも、それなら毒生成が可能な《密殺》の方が強いんじゃねぇの?』
「毒は至宝で瞬時回復出来る。その上、《密殺》の奴は面向かっての戦闘って出来ないだろ。剣士として戦うんなら、多分余裕だ。でも––––––………」
『でも?』
「《瞬閃》は無理だ。俺の戦闘スタイルに性格、癖に特徴………兎に角、バレてる情報が多いんでね。しかも、あいつの剣は二つ名通り《瞬閃》だろ。アレだけは眼で見えても、避け切れる自信が無い」
『へぇ〜、そういうモンかねぇ〜〜。その次元になると一般人風情は理解出来ねぇよな』
「お前を一般人って言うには些か問題な気もするけどな」
『まぁ、ゼダスが《瞬閃》ちゃんと相性が悪いのは分かったぜ………………あ、電話変わってやろうか?今、本部で事務作業してるし』
その言葉にゼダスの思考は停止する。
話の中で出てきた《瞬閃》。《霞剣の叛団》でも最強の剣技使い。ゼダスでさえ、勝てるかどうかは不安。
だが、実力とか面倒くさい事を抜きにして、《瞬閃》とは話をしたくない。理由は至極単純。ゼダスと《瞬閃》は相性が非常に悪いから。戦闘スタイルが合わないとか言うものでは無い。何と言うか、その………苦手なのである。
「別に良いよ。今、話し掛けたら、レクターも串刺しにされかねん。どうせ、あいつに事務を押し付けてるんだろ」
『ぐっ………何故、バレてやがる』
「あいつは仕事が出来る良い奴だが、怠けている奴は極端に嫌うから。そして、レクターなら押し付ける可能性の方が高い。この二つから、レクターは刺されるって可能性が濃厚って訳だ」
『………分かったぜ。言わねぇでおいてやるから、サッサとシノブを追ってやれよ。時間食い過ぎだぜ』
「それもそうだな。んじゃあな、レクター。次、顔を見せる時にはキッチリと借金返済出来る様にしてろよ。じゃなきゃ、その首を撥ねるかもしれん」
返事を待たず、ゼダスはARCUSの通話状態を切る。言葉通り、次会った時に返済額が一ミラでも足らなかったら、首を撥ねるとまではいかなくても、ブン殴ろう、と心に決めて。
スッと立ち上がり、得物であるミストルティンを掴み、鞘ごと腰に差す。これで戦闘用意は出来た訳だ。
「シノブ………無事で居ろよ」
つぶやく一言にゼダスは宿屋を飛び出した。
―――*―――*―――
「–––––––はっ‼︎」
得物である小太刀を振るい、シノブは地下水路にて、魔獣を狩る。夜通し、魔獣を狩り続け、身体には疲労ばかりが残っていた。しかし、それでも狩り続けなければならない。止まってしまえば………酷い光景がまた見えてしまうから。
それを引き起こしたゼダスの一言。あの言葉に悪意は無いはずだ。何故なら、過去については一切、ゼダスには言っていないのだから。だから、ゼダスが悪いとは毛程も思っていない。
だが、あの状況では、ゼダスにイラつきを打つけて逃げる事しか思い浮かばなかった。それに関しては、ゼダスに悪いとは思っているが、今はまだ、会おうとは思えない。
しかし、心の奥では、『ゼダスは来てくれる』と思っている自分も居るのは確かだ、と思えている。ただ、頭を撫でられただけで、こんな感情を抱くのは間違っているかもしれない。でも………それでも、ゼダスは来る。何があろうとも来る。絶対的な根拠は無いが、言い切れてしまう。現に–––––––
「–––––––シノブ。ようやく見つけたぞ」
ゼイゼイと肩で息をするゼダスが後ろにいた。様子から察するに、だいぶ探したのだろう。
「………んだよ。一人にしろよ」
「そういう訳にはいかないんだよ。俺が原因だってのは知ってる。知らずに踏み込んで悪かったな」
「オレ………ゼダスには、何にも話してねぇはずだが」
「クレアから聞いたよ。まぁ………勝手に聞いたのは悪かった」
耳に届いた言葉にシノブは拳を握り締める。
ここで怒っても意味が無い。何も知らせなかったのだから、ゼダスにとっては理不尽な対応、と取られても可笑しくない。だが、それでも––––––
「––––––––っ‼︎」
ゼダスに歩み寄り、シノブは思いっ切り殴る。背の差もあり、殴った場所はゼダスの腹部。しかし、ゼダスは何も言わずにただそこに立っていただけだった。その対応に心の怒りが加速し、更にゼダスを殴り付ける。
八つ当たりだ。自分でもハッキリと分かっている。
勝手に人の心の闇に踏み込んで来て、その上で探しに来た。それにどういった意図があるかは分からない。勝手に聞いて謝りに来た?慰めに来た?それとも––––––………
一体、何回殴っただろう。数える気すら失せる回数をシノブは殴ったはずだが、全くゼダスは動かなかった。
殴り疲れ、力の入らなくなった拳を殴る要領でコツッとゼダスに打つける。
「………疲れたか?」
「………別に。疲れてねぇよ」
言葉とは反比例して、疲労が滲み出るシノブはゼダスに顔を埋める。今、表情を見られたら、色々と面倒だから。まさか、八つ当たりをし続けた所為で、感情に歯止めが効かなくなってるなんて。故に、今泣いてるなんて。
多分、ゼダスは気付いてるだろう。そう頭で理解していても、表情を見せたくない。こんな弱々しい姿を見せたくない。
「俺は勝手にシノブという奴の過去に踏み込んでしまった。聞かれたくない事だってあるだろうし、悪かったと思ってる」
ゼダスは腕を動かし、シノブの頭の上にソッと乗せる。
「でも、泣きたい時は泣いて良いんだ。でも、泣くのが恥ずかしいって言うんなら………俺が側に居てやるからよ。我慢するんじゃねぇよ」
「………–––––っ‼︎うっ………ううっ………………」
「それで良いんだ。落ち着くまではここに居てやるから………存分に泣いて良いぞ」
泣くシノブの頭をポンポンと撫でるゼダスの瞳には、穏やかな気持ちが宿っていた。
―――*―――*―――
「落ち着いたか?」
地下水路の壁に身を預けるゼダスはそう言う。
時間にして、約三十分は泣き続けたであろうシノブ。今はゼダスから離れているが、眼の近くには涙が乾いた跡が有った。
「………悪りぃな。こんな手間の掛かるガキで」
「別にまだ幼いんだから、手間の掛かるくらいが丁度良いんだよ………って、お前は17歳だったか。一応、俺と同い年だったんだな」
「それもクレア経由か?」
「ま、そんなとこだ」
落ち着きを取り戻し、普段通りのシノブに戻り、ゼダスは内心で安堵の息を吐く。
これで懸念していた問題の一つは解決した。あとは………テロリストだけだ。
そう言えば、皇族が出席するイベントは今日。クレアが伝えてくれた情報によると、例の《放蕩皇子》ことオリヴァルト皇子と《帝国の至宝》と呼ばれしアルフィン皇女。それに加え、アルフィンの双子の弟であるセトリック皇太子の三人が分かれて、帝都の施設を巡るという物らしい。
時間的には、そろそろ仕事に掛からないと不味い気もする。
「シノブ。悪いが、俺はもう行くぞ」
「………テロリストの件か?」
直ぐに戦闘者の雰囲気に変わるシノブ。仕事は何が何でもやり切るつもりだろう。
「勿論だ。でも、お前は休んでて良いぞ。まだ完全じゃないんだし」
「そんな理由で休んでられるかっ‼︎オレは戦えるぞ」
頑固。そう評しても問題無いシノブの態度にゼダスは苦笑してしまう。
クレアから伝え聞いたシノブの母親、アカネ・エンラ。その人物の実子という証明の如く、似てる様に感じた。
「分かった。でも、無茶はすんなよ。ヤバいって思ったら–––––………」
––––––––ドゴンッッッッッッ‼︎
地下水路に鳴り響く轟音。それにゼダスとシノブは咄嗟の判断で耳を塞ぐ。音から察するに爆薬。
「まさか………もう始まったのか」
落ち着きながらも驚くゼダス。それにシノブは、
「爆破地点は何処だよ⁉︎早く向かわねぇと………」
「焦るな、シノブ‼︎」
今すぐ駆け出しそうなシノブにゼダスは待ったを掛ける。
「帝都の地下に張り巡らされた地下水路だぞ、ここは。蜘蛛の巣の様に張り巡らされているんだから、音は複雑に反響するんだよ。爆破地点を割り出すのは容易じゃない」
「でも………だからって、ほっとけって言うのかっ⁉︎」
「別にそうは言ってないっ‼︎今から二手に分かれて、探し出すんだろうが‼︎だから………そっちは頼むぜっ‼︎」
早く言葉を繋ぎ、言い残すゼダス。シノブの返事を聞かず、ゼダスは地を蹴る。
―――*―――*―――
全力でゼダスは地下水路を掛けていた。殆ど整備されていない道の為、時々滑りそうになるが、転ける事はない。
湧く魔獣の全てをミストルティンで葬っていく中、不気味な音が聞こえる。
–––––––––ガアアアァァアアァァッッッッッッ‼︎
魔獣の咆哮だろうか。前方から聞こえるこの音に、ゼダスは不安に苛まれる。
約三百年前に帝国で起きた大規模な内戦、《獅子戦役》。
結社の情報網には、その当時に帝都にはある魔獣が居たと記されてあった様な………確か、名をゾロ・アグルーガ。暗黒竜の異名を持つ魔獣はドライケルス大帝に討たれたという話だった。
そして、テロリスト側が持っているとされる
だが、テロリストの計画は皇族の拉致。そんな切り札とも言える魔獣を使うまでも無い。でも、この咆哮がゾロ・アグルーガの物だとすると、何かしら計画に邪魔が入ったとしか考えられない。例えば、トールズ士官学院の特科クラスⅦ組とか。あいつらなら、突貫しかねん。だとしたら–––––––
「(………不味いな。暗黒竜相手に善戦は出来るだろうが、勝てる未来が見えない)」
そう予想立てたゼダスは足を速める。
思考を組み立てていた所為か、気付かなかった。真正面が穴だと言う事に。
自由落下をするゼダス。だが、視界に入った光景に目を疑った。そこにいたのは––––––––
「なっ………」
全身が骨となった屍竜。見間違うはずも無い、ゾロ・アグルーガ。その近くにいるメガネの野郎。笛を持っている事から、テロリストなのだろう。そして–––––傷だらけで倒れているⅦ組A班の姿だった。
空中で体勢を立て直し、ゾロ・アグルーガの目の前に着地するゼダス。
「ようやくお出ましか、《天帝》。随分と遅い登場だな」
メガネが話しかけて来るが、ゼダスは必要な情報を得ようと言葉を選ぶ。
「………お前か、俺の仲間をこんなにしたのは」
「そうだ。分不相応にも挑んで来て、返り討ち。非常に滑稽だったよ」
犯人の特定を完了。
ゼダスは足を運び、倒れているA班の元に向かう。
「お前ら………大丈夫か」
「正直………大丈夫じゃないな」
答えるはマキアス。
「………うん、僕も。もう動けない」
次にエリオット。そして––––––
「ゼダス、ごめん。負けた、よ」
「そなただけでも逃げろ。あの様な化け物………人の身で敵う物では無い」
愛してくれた二人であるフィーとラウラ。それにゼダスは言葉じゃなく、頭を撫でて返す。
「黙って見てろ。絶対に勝ってみせるから。だから………今は休んでろ」
穏やかに言うゼダス。だが、その言葉を聞いた者は、全員が背筋に冷水を浴びせられた気分になった。
完全に怒っている。
ユーシスとマキアスの時の様な荒々しい怒りでは無く、フィーとラウラの時の様な静かな怒りでも無い。
殺意が混じった本物の激昂。それを静かに心の中で燃やしているのだ。
「おい、そこのメガネ。名前は?」
「死に行く者に名乗る気も無いが………《G》とだけ言っておこう」
《G》と名乗ったその男。それを聞き届けたゼダスはミストルティンを構える。
「それじゃあ、《G》」
鍔から伸びた茨はゼダスの腕に巻き付き、ミストルティンの刀身を白銀から紅蓮へと染め上げる。
「ここが貴様の死地だ。死んで罪を償え」
この瞬間、先の運命を変える一戦が幕を開けた。
実習最終日を大量に削りました。おかげでもう直ぐ、四章も終わります。
怒りに身を纏ったゼダスはどうなるのか。次話必見です。
ああ、あとミストルティンの隠された最終能力も登場しますよ〜〜