闇影の軌跡   作: 黒兎

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アレ?思イノ外、進ムてんぽガ悪イゾ………










すれ違いの想い

 少年は倒れていた。

 白い天井(ソラ)に白い壁、白き床に囲われた牢獄の様な所に。

 普通なら、ここは何処だ?と思うのだろうが、少年の瞳には生気の片鱗すらも宿っておらず、とっくの昔に考える事を止めた様にも見える。

 

 

––––––ホント、悪かったね

 

 

 白い箱の様な部屋の窓際に座るオッドアイの少年。その表情には、楽しむ様な気配は一切無く、表せるだけの謝罪の念が篭っていた。

 しかし、暗闇を宿す瞳を持つ少年は応答する気配を見せなかった。だが、それにも構わず、オッドアイの少年は話を続ける。

 

 

––––––《輝く環(ボク)》が消滅しない為とは言え、君の仲間の前で勝手に起動したのは、本当に悪かったと思ってるよ

 

 

 顔の前で手を合わせて謝るオッドアイの少年。通称、《輝く環(オーリオール)》。

 

 

––––––だから、罪滅ぼしがてらにボクは、君に欲しい“真実”を伝えてあげようと思うんだ。どうだい?

 

 

 《輝く環》の提案に少年の気持ちは少なからず動く。しかし、それでも反応は見せない。

 

 

––––––君にとっては最高の提案なんだと思うんだけどなぁ〜〜。黙りとは………軽くショックだよ

 

 

 窓際から飛び降り、白い床に足を着ける《輝く環》。そのまま、トコトコと足を運び、端っこに取り付けられた扉に手を添える。

 

 

––––––でもね、君はもう知っても良いんだ。その資格もある。だから、心の準備が出来たら、呼んでくれ。その時は包み隠さずに全てを教える。君の–––––記憶とか、さ

 

 

 扉は勢いよく開き、虚空の彼方の闇が垣間見える。

 

 

––––––そんな中で一つ忠告しておくよ。君が知る時は必ず、一人で居ちゃダメだ。少なくとも、二人は居て欲しい。じゃないと………多分、君は自害するかも知れないからね

 

 

 その忠告を聞き届けた瞬間、少年の意識は現実へと引き戻される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………っ‼︎」

 

 勢いよく、身体を起こすゼダス。倒れていた白いベットにはベットリと汗が染み付いていた。多分、内装から察するに病棟の一室なのだろう。身体中から汗が流れている感覚にゼダスは吐き気を催すが耐える。そんな中、ゼダスの足にソッと白い手が添えられた。

 

「シャロン………」

 

 白い手の持ち主。それはシャロンだった。柔和な笑みを浮かべ、気持ちが少なからず落ち着きを取り戻す。その様子に本当にホッとしたのか、シャロンは口を開く。

 

「ゼダス様、だいぶ苦しそうでしたが、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。でも………………」

「結社の事を暴露した上に《輝く環》も使ってしまった、と言う事ですか?」

「………………本当にお前は全部知ってるんだな」

 

 溜息を吐きながら、ゼダスは思いの丈を露わにする。

 

「正直なところ、記憶はボンヤリとしてるんだ。修羅に堕ちた上、ミストルティンの『血塗れの覇王』の使用………その二つの所為か、記憶に靄が掛かってるが、《輝く環》が状況の全てを教えた。おかげで今、盛大に悩んでるよ」

「悩んでいる?」

「ああ。俺は………絶対に嫌われた。あんな力に身を染めて、壊れかけた。嫌われるだけの理由としては十分過ぎるだろ」

「そうですか………それで、どうされたいのですか?」

「仲直りはしたい。でも………今の俺にはそんな資格は無い」

 

 グッと拳を握り締め、布団のシーツにシワが出来る。

 

「あの異質な力を見せた。そんな最悪に場違いな奴が、元通りの関係性の中に戻るなんて事は無い。絶対に無い。力無き者に羨まがれ、尊ばれ、最終的には妬まれ、蔑まれ、殺される。それは自明の理だ。世界が正常に廻り続ける為には必須なんだ」

 

 その言葉が続くにつれ、声が震えていくのが分かった。その行動にシャロンは複数の気持ちが渦巻く。そして、今は病室に二人きり。感情を抑える必要は無い。

 

「ゼダス様。少しよろしいでしょうか?」

「何がだ………ってっ⁉︎」

 

 シャロンに急に抱き寄せられるゼダス。メイド服越しにシャロンの二つの膨らみが顔に押さえ付けられ、心臓の鼓動が早くなる。未だに“恋”が分からないとは言え、当然の反応だ。しかし、それに加え、シャロンはゼダスの頭を撫でる。

 

「苦しい時は泣いても良いんですよ。その時は私がゼダス様の拠り所になって差し上げます」

 

 穏やかな声にゼダスの涙腺は緩み始める。

 

「普段は強さを振り翳し、負ける事があっても、負け続ける事の一切を許さないが故の強者の印象(イメージ)。それがゼダス様の外面の根底にあるものです。だからこそ、弱音を吐く事は今の今まで許されていませんでした」

 

 溢れ出す涙が止まらない。

 

「でも、そんな弱々しいゼダス様を見れるのは私のみで良いのです。そうでなければ、ゼダス様はゼダス様で居られなくなる。だから、私には隠し事をせずに居て下さい。せめて、私を弱音の吐け口にして、少しでも気分を軽くして下さい。その為なら、私はずっとゼダス様の傍らに居て差し上げますから」

「うっ………ぐぐっ………………」

 

 遂に耐え切れなくなり、嗚咽を漏らすゼダス。それを落ち着ける為にシャロンはゆっくりと頭を撫で続けた。

 

「ほら、今の弱音を少しでも吐いて下さい。そうすれば、少しは落ち着きますよ」

「………………なあ、シャロン。俺は………………どうすれば良いんだ?」

 

 まだ、泣き止まず、それであって、ゼダスは話し始める。

 

「記憶が無い事以外の隠してきた事の全てをバラした。もう誤魔化しは効かないだろ。俺は………何から始めれば良いと思う?」

「こんな不肖な私めの持論でよろしければ、方法を教えますが」

「頼む。教えてくれ」

「まずは互いに話し合ってみては如何でしょう。そうすれば、少しは関係が戻るかもしれません」

 

 至極、真っ当な意見。まぁ、当然だ。

 

「………そんな簡単にいくか?」

「発案しておいてなんですが、そんな理想論が曲がり通るとは思っていません。ですから、少し布石を打ちたいのですが、よろしいですか?」

「布石? 一体、何の………」

 

 シャロンはゼダスを離す。身体を起こし、ゼダスはシャロンの瞳を覗くが、そこに秘められた真意は察するに叶わない程に複雑極まる物だった。

 

「布石の為に、少々ゼダス様から許可を頂きます。今からの質問にはい、か、いいえ、で答えて下さい」

 

 いきなりの質問許可にゼダスは呆然とするが、それに気にせずにシャロンは言葉を発する。

 

「まず、結社の事に関しては、私の方でⅦ組の皆様に御説明致します。それに関してはよろしいですか?」

「………まぁ、隠しても仕方無いし、別に良い、と思う。でも、お咎めを上から受けるかもしれないが良いのか?」

「生憎、今の私は結社から離れた存在ですので」

 

 シャロンは掴んでいたゼダスの手を離し、二つ目の質問に移る。

 

「次は、ゼダス様はⅦ組の皆様に己の事を包み隠さず話して差し上げれますか?これはゼダス様の為にも、彼らの為にも必要な事です」

「………………分かった。肚を括るよ。そろそろ、向かい合って、俺の事を話さなきゃいけないんだろうしな」

 

 そして、最後の質問に移る。

 

「最後に………Ⅶ組の皆様に私が直々に試練を課して良いですか? 本当にゼダス様の真実に立ち入るだけの実力があるか。それを試したいので」

 

 その言葉を発するシャロンにゼダスは待ったを掛けようとする。

 普段のシャロンがこう言ったとしても、大丈夫だろう、と任せる事が出来る。それぐらいには信頼を置いている。だが、今のシャロンの纏う氣は全くの別物だった。

 何時ものような、完璧超人の従者(メイド)の様な雰囲気では無く、完全に昔。すなわち、執行者に戻ったシャロン。今のシャロンなら、首を撥ねる事にさえ、躊躇いを持たないかもしれない。

 そう思考が至り、止めに掛かるが–––––––––

 

「なっ………⁉︎」

 

 急に掛かった重圧にゼダスは動きを止められる。全身に巻き付くは夜である暗闇に映える銀閃。つまり、シャロンの得物である鋼糸の物だった。完全にゼダスとベットを繋ぎ留められ、身動きの一切を許さなかった。

 

「これに関しては答えを頂く訳にはいきません。それではゼダス様、少しは心を落ち着けて、お待ち頂けると有難いです」

「待てよ。待てって言ってるだろうが、シャロンッッッーーーーーーーーーーー‼︎」

 

 ゼダスの悲痛な叫びに耳を貸さず、シャロンは病室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼダスが居る………いや、収容されている重要検査人用の病棟から通常の病棟へと繋がる連絡路を一定の歩幅で歩くのは、シャロン。だが、従者(メイド)としての彼女しか知らない人から見れば、違和感を感じざるを得ない程にまでに雰囲気が変貌していた。それに加え、顔に宿る複雑そうな表情が更に違和感を加速させる。

 

「(ゼダス様………本当にお許し下さい)」

 

 内心、申し訳なさそうに謝っておく。それに偽りの気持ちの一切は無い。

 今から行おうとしている事は、Ⅶ組に結社の事を明かし、反応を伺うという物だ。下手をすれば、取り返しの付かない事になってしまう。それは十分に理解している。だからこそ、行う必要があるとも言える。

 結社という存在の大きな組織に与している上、その中でも最高クラスの実力者。そんな冠を表されるゼダスに対しての反応として考え得る可能性として、大まかに二パターンに分かれると考えられる。

 

 その内の一パターン目は、強過ぎるが故に非難され、蔑まれるというもの。もし、仮にこのパターンに当て嵌まってしまえば、それこそ、全てを捨ててでもゼダスの為を思い、あらゆる手を開放するだろう。例えば、話した事実以上にトラウマを刻み込む、とか、勝手に退学届を捏造し、ゼダスを学院から引き剥がす、とか。考えれば、考える程に色々な手段が頭を過る。

 

 そして、考え得る二つ目のパターン。これが一番望ましい事で、一番辛い道なのは理解している。そんな過酷な道を覚悟しなければならない内容は–––––––––全員がゼダスという存在を受け入れてくれる事、だ。このパターンに嵌れば、ゼダスは今まで通りの生活に戻る事は容易だろう。しかし、またもや障害が発生する。それは––––––––本当にゼダスという人物の核心に触れれるだけの実力の持ち主か、という事だ。

 あくまで推測だが、《輝く環》はゼダスに関する情報を、ゼダス本人よりも理解している。本人すらも抱える事を許されない様な情報だ。結社の実態に匹敵………否、超越するだけの内容を秘めているのだ。そして、過酷極まるものとなるだろう。

 だから、二つ目のパターンに嵌まった場合には、試練を課す。本当にゼダスの核心に触れるだけの資格があるのかを証明する為に。

 

「もう………着いたのですか」

 

 意識を奔らせていた為、目的の病室の前に気付かぬ内に到着していた事にシャロンは呆れながらに言う。こんな事なら、注意を怠っていたという事になる。

 

「(ここからが“私”の戦いです。ゼダス様、どうか見守って下さい)」

 

 そう心に誓い、シャロンは病室の扉を叩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼダス………お前は凄い所に居るんだな」

 

 これは、病室内に居たリィンが漏らした言葉だった。

 負傷したⅦ組A班にⅦ組B班がお見舞いに来ていた為、シャロンは包み隠さず、全てを話した。

 結社《身喰らう蛇(ウロボロス)》の存在。どういった内容の組織で、主に何をしているか。そんな基本的な内容から、組織編成なども事細かに説明した。その中で、どれだけゼダスが高位の存在で、どれだけの実力を持っているかも話した。その上、身体に宿した《七の至宝(セプト=テリオン)》の《輝く環》の存在に、持つ常軌を逸した能力に関しても全てを話した。

 正直、話している張本人であるシャロンでさえ、少しでも気を抜けば、畏怖を抱く未来は難くなかった。だから………驚いている。この結果に。

 

「………B班の皆様はこの事実を聞かされて、恐怖を抱かないのですか?」

 

 そう、B班のの面々の誰一人もゼダスを受け入れる………とまではいかないが、突き放す者は一人も居なかったのだ。シャロンの問いにB班のメンバーは口々に答える。

 

「まぁ、私は母様から大体の事情は聞いてたから。確証が取れたのは良かったわよ」

「ゼダスさんには日頃からお世話になってますから。それに規格外なのは、入学式の日から身で持って実感してましたので、今更な気がします」

「委員長の言う通りだ。別に俺たちがゼダスを蔑視する理由は無いだろう」

「別に結社とやらが存在していても不思議では無い。この程度で動じていては、貴族として名が廃る」

 

 無理無く、納得している姿にシャロンは安堵の息を吐きたくなるが、根本的な問題であるA班の方に意識を傾ける。こちらは文字通り、重傷に近かった。

 全員が軽傷から重傷を負っており、ベットに今も横たわった状態だ。男性陣で後衛組であるエリオットとマキアスはまだ軽傷だが、女性陣で前衛組のフィーとラウラは、少なくとも一週間は安静必須の状態だった。といった風に外傷もさる事ながら、問題は精神的な傷だった。

 悪魔の様な戦いっぷりを眼の前で繰り広げられたのだ。自我も失い、ただ冷徹に、冷酷に、人を喰らう“修羅”。そして、その力の方向性が変わってしまえば、自分達も生命を絶たれるかもしれないという明確な恐怖。それを肌を持って感じたのだ。だが、それでも、

 

「………うん。怖いけど………ゼダスは悪くないと思うなぁ〜〜」

「そうだ………彼は僕達を守ったんだからな………………」

 

 震え声で言う男性陣。何としてでも肯定しようとするその態度に色んな意味で敬意を表したくなるシャロン。しかし、それよりも深い傷を負っているのが、女性陣だ。

 他のメンバーから聞いた話によると、フィーとラウラはゼダスに対する好意を打ち明け、ゼダスはそれに応えたらしい。恋慕感情が分からないはずのゼダスが応えるなんて、方法としては少ないはずだが、今は考える時では無い。事態の収束の方が最優先だ。

 すなわち、愛し、愛された関係。恋人とも言える関係の人が、人外に堕ちた。絶望の淵で黄昏たくなる気持ちも分かる。だから、ベットから身を起こし、魂の抜けた骸の如き形相をしているフィーとラウラにも同情は出来る。

 

「(とは言え、ゼダス様と恋人関係になれたこの二人は、今のゼダス様にとって、一番心を許せる存在なのでしょう。何としてでも………ですが、手出しは無用。手出しは無用。手出しは………………………)」

 

 いつの間にか、自己暗示の様にシャロンは言葉を心の中で唱える。

 今のゼダスは大きく傷付いている。確かに口約束とは言え、己の事を包み隠さず話すという事を取り付けてはいる。これの真意は、ゼダスの負った心の傷から意識を背けさせる為のものだ。

 そして、フィーとラウラ。ゼダスの本心に迫ろうと足掻き、結果を残せた二人なら、心を癒し、同じ痛みを背負って、歩いて行けるだろう。

 だからこそ、この二人にはゼダスの元に来てもらう必要がある。しかし、この気分喪失状態では、向かおうとするはずが無い。

 

「(………無用。手出しは………………………)」

 

 シャロンは掌をグッと握り締める。爪が刺さり、痛いが気にならない。その痛みを超える程にまで、心の中にある感情が渦巻いているのを感じるが故。

 それは怒りだった。一度、口にしてしまえば、紡ぐ事を許さないだろう。しかし、ここで無下に時間を費やすのは悪手だとは理解している。

 

「(………手出しは………………………………)」

 

 心で思えば、思う程に行動が離反していく。そして、遂に––––––––シャロンは手を上げた。

 ––––––––パンッ‼︎

 シャロンは思いっ切り、フィーとラウラの頬を叩いた。叩かれた事に対し、呆然な表情を浮かべ、フィーとラウラはシャロンを見上げる。そのシャロンの表情は怒りを宿していた。

 

「………何で………………こんな所で油を売ってるんですか」

 

 意識では、咄嗟に叩いた事に悔いており、羞恥に染めたくなるが、震え声で言葉を繋いでいた。そして、予測通り、もう言葉は止まらない。

 

「貴方がたは………ゼダス様に恋心を伝え、応えてもらったのでしょう」

 

 眼を伏せ、シャロンは思いの丈を打つける。

 

「なら………何でッ⁉︎ 何でゼダス様を放っておけるのですかッ⁉︎」

 

 歯止めの効かなくなったシャロンはフィーとラウラの胸倉を掴み挙げる。それに待ったを掛けるのは、アリサだった。

 

「シャ、シャロンッ⁉︎ 一体、何をやってるのよッ⁉︎」

 

 従者(メイド)として、許される事では無いのだろう。だが、今、二人に話をしようとしているのは、従者としてでは無く、執行者でも無い。純粋にゼダスという存在に恋したシャロン・クルーガーだった。

 シャロンはアリサの言葉に一切、取り合わず、言葉を発する。

 

「私は狂う程にまで、ゼダス様に想いを馳せました。でも、彼は応えてくれませんでした」

 

 それは恋を抱いた者にとっては、苦しい結果でしかない。

 想い人と結ばれない。それであって、他の人と結ばれている。

 見捨てられた人が持っていた恋心が大きければ、大きい程に苦しみを増す結果だ。

 

「それでも、私は彼を愛し続けました。どれだけ鬱陶しがられ、突き離されようとも彼を愛する気持ちに一片の曇りもありません。だから、応えて貰う事の出来た貴方がたが羨ましく、妬ましい」

 

 本心を言葉にするシャロンの表情は、本当に妬ましそうだった。

 

「でも、応えて貰うだけの資格が私には無くて、貴方がたには有った。ただ、それだけの話なのです。そして、その資格を持つ“権利”が有るのなら、それの対価である“義務”も有ると言う事です」

 

 権利と義務。切っても切り離せない二つの事柄。

 自由になる権利を持つなら、他人の事を考慮する義務が発生する様に。

 生きる権利を持つならば、育まれる義務が発生する様に。

 そんな離す事の出来ない事柄。それを––––––––––

 

「その“義務”を貴方がたは放棄している。愛した者が今も悩み、傷付いているというのに、側に居てやろうとしない(・・・・・・・・・・・)。そんな義務放棄に私は完全に怒っています」

 

 そして、聞きたかった事を躊躇いなく、尋ねる。

 

「貴方がたは本当にゼダス様を愛せているのですか?」

「愛せているに決まっているだろうッ‼︎」

「愚問過ぎ。当然に決まってる」

 

 即答で反論する二人にシャロンは質問で返す。

 

「なら、どこに惹かれたのですか? それぐらいは答えれるでしょう」

「何時も強くあろうとする姿勢に憧れたのだッ‼︎」

「ゼダスの底にある優しさ。それが私には必要」

「それならば、何故こんな所で油を売ってるのですか?」

 

 シャロンに宿る眼光は決意を滲ませていた。

 

「確かにゼダス様は人を外れた“修羅”となり、力を奮いました。現場は見させて頂きましたが、私でさえも恐怖を抱きましたよ。でも、心の中の恋は止まっていません。だって、どれだけ人から外れようともゼダス様はゼダス様なのですから」

「「–––––ッ⁉︎」」

 

 シャロンは当然の様な事を口にするが、フィーとラウラは驚きの表情………とは妙に違うが、それに類似する表情を浮かべていた。

 

「ゼダス様がゼダス様である限り、この恋心が尽きる事は御座いません。それは認められてない私でさえも断言出来ます。貴方がたはどうですか?」

「………」

 

 話を振られているフィーとラウラ以外のメンバーも固唾を呑んで見守っている。

 

「人じゃなくなったゼダス様でも愛せますか? そして、もしも無理ならば、もうゼダス様の前にはお立ちにならないで下さい。彼の覇道の邪魔となってしまいますから」

 

 その言葉にフィーとラウラは停止していた思考が急速に解凍され、加速させる。そして、答えを導き出し、言おうとすると–––––––………………

 

「その先の言葉は言わないでもらえますか? 私は言葉よりも態度で確かめたいので」

 

 普段通りの柔和な笑みに戻ったシャロンは立ち上がり、病室の扉に手を掛ける。

 

「少し………外に出ましょうか。そこで––––––答えを聞かせて下さい。貴方がたが導き出した答えの行く末を………………‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






はい、後書きは詳しく書きません。
次回はⅦ組vsシャロンです………と言っても、戦うのはフィーとラウラですけどww本当にこの作品では引っ張りだこだね、この二人ww
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