更新遅れてスミマセンでしたーーーッ‼︎
活動報告にもある通り、一時的にスランプにハマってましてねー。克服した訳じゃあ無いんですが、ほぼ無理矢理書き上げましたww
もう途中から何がしたかったのかは分かりませんが……もう良いやww
薄暗い闇の中、ボンヤリと照らす蝋燭の焔。
無彩色の着物を着た初老の男性は部下に指示し、部屋にある資料を探させていた。
確か、その資料の名は『ジャポネジア自治国における魔力の揺らぎ』だ。
そして、“あの”情報と組み合わせれば–––––
「(邪魔な《穏健派》を排除出来る訳だ)」
「ソウマ様、御命令の品を発見致しました」
闇から現れる黒装束。それは正に忍者そのもの。
「うむ、よくやった」
ソウマと呼ばれた初老の男性は渡された紙束をペラペラと捲る。
魔力の揺らぎが確認された場所は疎らに点在している。
一見、共通点など無い様に見えるが––––ソウマは気付いた。
「(大きな反応が確かに疎らだが………小さな反応に関しては密集している様に見えるな。やはり––––ここに女狐が居るのか)」
そして、黒装束に命令を下す。
「《穏健派》の奴らに命令だ。––––明確にはキョウ、シホ、ハルの三人に、だ」
「内容は?」
「今から指し示す所にある物を破壊しろ。そこには––––結社の執行者達が集まっているはずだ」
「なっ⁉︎」
黒装束は驚きを隠せない。
結社といえば、裏社会を牛耳る最大勢力の一つ。しかも、執行者といえば、最強クラスの使い手。そんな化け物が集まっている所なんて––––
「(だが、忘れるな。あいつら《穏健派》は裏切り者なんだ)」
黒装束は思い至ると、
「御意に」
と短く返した。
―――*―――*―――
「ようやく登場かよ」
ラウラとフィーにシルフィードの件についての説明をしていたゼダスは荒野に現れた来訪者に言葉を掛ける。
枯れ果てた大地に潤いを齎す様な美女。金狐の様な尻尾と耳を生やした––––
「悪い悪い。ヴァイスを治療しとうたら遅れた」
––––シーナが居た。
「あいつ………死んだか?」
「そこで『生きてたか?』って聞かんトコがお前さんらしいなぁ。朗報か悲報かは知らんけど生きとるよ」
「そうか。まぁ、良かったんだろうな、うん」
ゼダスは一人合点する。
「と言うか、ゼダスッ‼︎ まだ説明は終わってないぞッ‼︎」
「まだ納得いってない………」
「師匠。早急にシルフィードの治癒を始めてくれ。欲を言えば、俺を次の空間に送って欲しい。こいつらの言及が面倒だ」
「ああ、アンタ戦闘中にどさくさ紛れて告ったモンなぁ。ようヤるわ。色々と感服モンやで」
「良いから早くしてくれ」
「ま、今回ばかりはアンタも休むべきやろ。良えで。先行っとき。次いでに言っとくが、次の間は温泉やから」
「温泉? 何でそんな場所が………」
「
「げ………」
「男同士積もる話もあるやろ。早よ行け」
さっきは休むべきとか言ってたのにシーナはゼダスを思いっ切り蹴り付け、強制転移させたとさ。
―――*―――*―――
「––––………本当に温泉なんだな」
転移した先に有った熱い湿気でゼダスはここが所謂温泉なのだと感じた。しかも、天井は開けていて、満天の星空を覗かせていた。俗に言う露天風呂だろう。
湯気が濃く、視界が鮮明では無いが、規模としたら十分広い。まぁ、シーナの魔術で作られているのなら、当然とも言えるが。
「––––またテメェとかよ」
自分に吐き捨てられたであろう狼の様な声。ゼダスにとって、その声は聞き覚えのある物だった。
体感的には数時間前。でも、現実には一時間と少し前に聞いた声。
「そうだな、ヴァイス。よく見えないが、風呂に入ってるのか?」
「まぁ、そんなトコだ」
温泉に先客としていたのはヴァイス。シーナに提供されていた情報通りだ。
「傷の方は大丈夫なのか?」
湯気の先から聞こえるヴァイスの声にゼダスは擬を唱える。
記憶が確かであれば、ヴァイスはゼダスに深手を負わされていた筈。思いっ切り、剣を突き刺した覚えがある。
そんな状態で風呂なんぞに入れば、激痛が伴う筈なのだが––––
「ああ、《第零柱》の奴が最低限の治癒魔術を掛けたからな。風呂入る分には問題ねぇ………つーか、テメェも早く入れ」
「ぇ、お前ってそういう趣味の人………?」
「違ぇよッ‼︎ この風呂のお湯は多分、並外れた程の治癒能力が付随してやがる霊水だ。テメェも《聖王》の奴に負傷したんだろうが。だったら、サッサと癒すのに専念しやがれ」
一見、棘を含む言い草だが、言ってる事は確実にゼダスを労わる物。それにゼダスはクスッと微笑む。
乱暴そうな外見なのに、こうも気遣われたら、悪い気はしない。
「………そうだな。確かにシルフィード相手に苦勝だったからな。傷だらけだよ。何とか絞り出した魔力で《
そう言うとゼダスは執行者装備を脱ぐ。手短に身体の汚れを落とした後、風呂に入る。
高濃度の治癒加護が秘められた霊水はゼダスの内部へと染み渡り、所々砕け、裂けた臓器を目紛しい速度で回復し始めた。この速度で回復を続けるのなら、三十分やそこらで完治可能だろう。
「ふー、ようやく一息吐ける………」
ゼダスが風呂に浸かると急に襲う疲労感と倦怠感。
よくも生きて来れたものだ。自分でも感心する域である。
「………」
「………」
………さて、どうしようか?
ゼダスもヴァイスも高濃度の治癒加護が秘められた霊水に浸かっても、治癒には時間が掛かるのは自明の理。
だが、このまま話す事も無く、過ごすのは胃に悪い。だって、凄く気不味いのだから。
沈黙は少なくとも、一分は続いた。
その間、ゼダスは天に散りばめられた星を眺めて、時間を潰していたが、不意にヴァイスから声を掛けられる。
「おい、コレ」
謎の言葉にゼダスは視線を落とす。霊水を流れてきたのは、赤い杯。
「何だ?」
「風呂入ってる間は暇だろうから、酒に付き合え」
「いやいや、俺未成年。禁酒なんだが」
「《第零柱》の空間内で法律も秩序も有ったモンか。つーか、お前、結社に居た頃に飲んでたじゃねぇか」
「あれは諜報とか潜入捜査で仕方無くに決まってるだろッ‼︎」
「あ? 俺の酒が飲めねぇって言うのか?」
「(完全に酔っ払ってる奴の言い草だよ、それ………ッ‼︎)」
内心、呆れ果てるゼダスは渋々と杯を受け取る。
そして、注がれたのは白濁の酒。多分、東洋の酒の一種なのだろう。詳しくは知らん。
同じ物をヴァイスも杯に注ぎ、差し出す。
杯同士を合わせて、乾杯しろという合図だろうか。素直に乗る事にする。
––––コツン………
水音さえも響かない空間に響く杯が合わさった音。
それを聞き届けた後、ヴァイスは一気に飲む。杯自体の容量が少ないから、一口分しか入らないから飲み干すのを見るのは一瞬だった。
ヴァイスは酒を飲み干した後、視線でゼダスに促す。––––サッサと飲め、と。
「はぁ………」
一思いに覚悟を決め、ゼダスは酒を身体に流し込む。
口の中で弾けた味、香りは––––
「………苦い」
今まで飲んだ酒の中でダントツに苦かった。
飲めないレベルでは無いが、わざわざ好んで飲みたい物ではない。
「ヴァイスは何でこんなに飲み難い物を飲むんだ? もっと飲み易い酒なら幾らでもあるだろう」
「ああ、そうだな。だが、別に俺は飲み難いとは思わねぇんだよな」
人の好みは千差万別という事だろうか。
ゼダスがそう理解していると––––
「––––だって、この酒には少々、異能が混じってるんだからな」
「は?」
「この酒を普通に飲める奴は特に問題無し。苦いって思った奴は––––何らかしらの悩みを抱えてるって話だぜ」
「ぇ………」
本人には、悩みの種なんぞ存在していない様に感じている。
だが、ヴァイスが言う風に何かの悩みを抱えているとしたら––––?
「(––––心が破綻しているのは変わってないって事か………ん? いや、アレって悩みか………?)」
ふと思い付いたのは、悩みと言うよりかは疑問だった。
しかし、これを口にして良いものなのだろうか………
熟考に入りかけた寸前でヴァイスは声を掛ける。
「何か思い当たる節があるみてぇだな。折角、時間が有り余ってるんだし、話してみたらどうだ?」
「………ありがとな。多分、それは––––」
―――*―――*―――
–––同時刻–––
荒野の上でシルフィードの治癒を終えたシーナは、ここに居ない馬鹿弟子に毒突く。
「––––あん奴………こんなにシルフィを無茶させおって。おかげでウチの魔力も一割ちょっと減ったやんけ」
「………すみません、シーナ殿。思いの外、手厚く負けました」
「別にアンタの敗北を責めとる訳やない。––––つーか、疲れた。風呂入りたい」
げっそりとしているシーナ。
この空間を維持する魔術に魔力を割いてる上、ここにいるラウラ、フィー、シルフィードの三人に応急処置程度の簡易魔術を施したのだ。働き過ぎである。
「………というか、風呂自体は空間として確立させとったな」
シーナの言葉通り、風呂場自体の空間は設立済み。現にゼダスとヴァイスが入っているはずだ。
「じゃあ、アレを複製して………ほいな、出来た」
まさに息をするかの如く、平然と新しい空間を組み上げた。
入り口として、形成されたのは光の扉。
そこにシーナは身体を潜らせ––––
「––––先行っとくから、落ち着いたら来いや。アンタらも霊水で身体を癒しとけよ〜」
別空間に消えた。
そして、訪れるは沈黙。先まで殺し合ってたと言うのに、何を話す事が有るのだ………と思ったが、そういう訳には行かない。
ラウラとフィーは応急処置を受け、荒野に横たわっているシルフィードの近くに立つ。
「………何ですか? 殺されかけたから、報復をしに来たのですか?」
「別にそういう訳では無い」
「ん。それだけボロボロでも私たちに遅れを取る様には思えない」
普段から
例えば、この騎士王が丸腰で一切の魔力を帯びず、寝ていたとしても勝てる気がしない。
「………観察眼には長けている、と?」
「多少は。………そんな事よりもゼダスからそなたの事を聞いた」
ゼダスはシルフィードが気を失っている間に全てを話した。
どうやって出会い、どう過ごし、どう想っていたか。そして、その美しい思い出がどうやって終息したかも。
明確な恋慕感情が分からないゼダスにとっては当時は気付いていなかったらしいのだが、シルフィードに抱いていた想いは間違いなく“恋”そのものだ。
「彼が………話したのですか?」
「本人の許可を取らずに聞いたのは悪かったと思う」
ラウラは申し訳無さそうに頭を下げる。
そういった感情が間に挟まる思い出を無許可で聴くのは流石に無礼が過ぎる。
もし、ラウラがそんな事をされたとすれば、しばらくは恥ずかしくて顔を伏せたままになるに違いない。
「その上で一つ質問。––––貴方はゼダスの事をどう想ってるの?」
歯に衣着せぬ物言いとはこの事。フィーは一切、包み隠さずに直球で尋ねる。
このいつも変わらないフィーの傲慢不遜というか自己中心というか………という態度にラウラは少しばかり顳顬を掴みたくなったが、シルフィードは別に意に介さず答える。
「どう、と言われても………戦闘中に話した気がしますが?」
「違う。私は今の貴方の口から聞きたいの。………あんな闇堕ちした状態での言動なんて信じるつもり無い」
「そうですか。ならば、隠さずに話しましょう。ええ、彼、ゼダス・アインフェイトは私の最高の恋人です」
最早、隠す気も無く、完全に言い切ったシルフィードはどこと無く誇らし気な表情を浮かべていた。
「やっぱりか………ったく、何であのゼダスは色んな女に目を掛けるのだ。私だけを見ていてくれれば万事解決だというのに」
「ラウラ、それは違う。ゼダスは私の物。他の誰にも渡さない」
「なっ………‼︎ そ、それは抜け駆けにも程があるだろうッ‼︎」
「それを言うならラウラも同じ」
一人の男を巡って、美少女二人が討論を繰り広げる。普通なら、その光景を微笑ましく見る事が出来るのだが、渦中の人物に恋をしているとなれば話は別………なのだが、シルフィードは傷を労わりながら、立ち上がり、扉の方へと向かう。まるで、ラウラとフィーなんぞ眼中に無いと言った様に。
「別に何とでも言い合っていてくれて構いませんが、ゼダスは私が貰っていきます。それだけはゆめゆめ忘れぬ様にお願いしますよ」
非常に柔和な笑みを浮かべ、言い残すはシルフィード。扉の先へと消え、次の空間へと飛んだのだと二人は遅れて理解した。
「………なぁ、フィー」
「……言いたい事分かるよ、ラウラ」
「一時期、休戦協定を結ばないか?」
「ん。ちょー同意」
ともすれば、シャロンの超重量の愛と同等以上の危険性を感じた二人は休戦及び結託。
ここに世界でも類を見ない様な同盟が出来上がったそうな………
―――*―――*―――
「成る程なぁ」
霊水に浸かったまま、言葉を漏らすのはヴァイス。ゼダス曰く、苦いと言わしめた酒を煽っており、正直なところ、出来上がり始めて来ている。
「(こいつ………悩みを聞くって言ったのに、酔っ払う寸前とか巫山戯てんのか?)」
とゼダス自身は思っていたりする。
「で、テメェは何で学院に送られたかが気掛かりな訳だ」
ヴァイスの一言にゼダスは頷く。
そう、これがゼダスの悩みっぽい物。––––何故学院に送られたか、である。
ゼダスから見て、結社の戦力は確かに多い。だから、少しくらい遊ばせても問題は無いのだろう。
だが、結社から見れば、ゼダス程扱い易い奴もそうそう居ない。
記憶を失っていて、ただ貪欲に力と記憶を求めていた執行者の頃は、誰の目から見ても当然の如く、
そんな優秀で忠実な駒をわざわざ管理下から離すか? どう見ても、他の思惑が関わっている様にしか思えない。
そして、もう一つ気になっているのは《盟主》の考えである。
あの人外魔境の超絶人が名を連ねる結社で長の座に着く《盟主》。間違い無く、執行者は勿論、使徒でも勝つ事が敵わないに違いない。
そして、《盟主》自身も何らかの異能を保持している、とゼダスは思っていた。その異能が《盟主》の強さの根源なのだ、とも。
他聞の話だが、《盟主》は前の大規模計画、《福音計画》の際に結社の第三柱《白面》のゲオルグ・ワイスマンの死去を予知していたと聞く。ここから察するに、《盟主》の異能は未来予知の類いなのだろう。
ならば、何故ゼダスを学院に放り込んだのかが尚更分からなくなる。
ゼダスが心の底から欲していた記憶は、体内に宿している《輝く環》が持っていた。この事も《盟主》は知っていたのだろう。
「どこからどう考えても矛盾点が発生する。………まぁ、悩みというかは分からないが」
「一応、悩んでるに入るんじゃねぇのか?」
「………つーか、俺に悩みを言わせておいて、お前はどうするつもりだったんだ? 全く助言もしないし………まさかと思うが、ただ聞きたいだけだったのか?」
「ま、そんなトコだ」
「なんじゃそりゃ………」
落胆するゼダス。結局、ヴァイスはゼダスの弱さが知りたかっただけなのだ。本当に根が捻じ曲がっている奴である。
「でも、多少は楽になったろ?」
「………否定はしない」
確かに心に突っかかっていた何かが取れた感じがしなくもなかった。その点のみではありがたい。
「なら、良かったじゃねぇか。それじゃあ、俺は一足先に上がらせて貰うぜ。傷も粗方治ったしな」
「おう、了解」
「先に上がるついでにテメェが欲していた助言とやらでも授けてやるよ」
温泉から立ち上がり、新たに増えた扉の先へと向かうヴァイスは言葉を掛ける。
「気になるなら学院を辞めたらどうだ? そうすれば、《盟主》の事も少なからず分かるかも––––「却下だ」」
ヴァイスの言葉が耳朶に響き終わるよりも速いゼダスの返答。
「今の俺にとって、学院は切っても切り離せない場所だ。手離す訳にはいかない」
「………ハッ。なら、迷うんじゃねぇ。その信念を貫け」
そう言い残し、ヴァイスは浴場から姿を眩ませた。
―――*―――*―――
ゼダスとヴァイスが居る浴場と瓜二つの空間。そこに訪れたラウラとフィー。
「これは………」
「完全に風呂だね」
思い思いに口にする二人。あんな荒廃した大地から、ここまで潤った場所にいきなり転移させられたら当然とも言えるが。
と、二人の視界に入ってきたのは、風呂に浸かる美女二人だった。
両方、眩い程の金髪で、世が世なら、絶世クラスの逸材である。
「おう、もう来たんかいな。んじゃ、早よ入り。身体冷めんぞ」
霊水に浸かった身体を一切動かさず、シーナは入場したての二人に声を掛ける。
故に表情を窺う事は出来ないが、声音では楽しそうである。
そして、そんなシーナに対称的な態度を貫くのはシルフィード。
同じく霊水に浸かっては居るのだが、瞳を閉じ、ジッと沈黙を保っていた。
寡黙という言葉が見事に似合う雰囲気は彼女の美貌を更に加速させ、登り切った月と何ら遜色無い程である。
その美しさに若干の嫉妬を覚え掛けた二人は、服に手を掛け、風呂に浸かる準備をする。
ものの数分で支度は終わり、ラウラとフィーは霊水に浸かった。
傷に多少は染みるが、霊水特有の治癒力が見る見る内に傷を塞いで行き、痛覚の痺れる感覚以外は少しの時間を代償に消え去るのだろう。
「ホント、凄い。このお湯が実際に戦場に普及したら、最強の武器になりそう」
絶大なる効力を前にフィーは何気に物騒な発言をするが、それは正鵠を射ている。
致命傷に近い傷でも、浸かれば忽ち再生を開始させる事の出来る物が戦場に普及すれば、文字通り、
どれだけ傷付き、戦闘不能に追いやられても、浸かるだけで全てを巻き返す事が出来る。戦意さえ喪失していなければ、無限に戦い続ける事が出来る燃料ガンガン増しの超特急となるのだ。
「ま、そやろうなぁ。でも、結局のところはウチの魔力で生成しとるモンやし、簡単に再現するのは不可能や」
如何にも誇らし気に言うシーナ。まぁ、こんな
「なんてったって、そっちの方がオモロいやろうしな」
カカカと嗤いながら言うシーナに同じ霊水に浸かる三人は苦笑せざるを得なかった。
使い様によれば、この世界の戦力図を一気に壊す事の出来る物を普及させずに「そっちの方が面白い」と言い切るのだから、如何にチート性能かは理解が及んで然るべき。
もう笑うしか無い。
「はは、それもそうか………」
ぎこちない笑みを浮かべたのはラウラ。こう言って、自分の表情を偽るのはきっと得意では無いのだろう。
「つーか、わざわざこんな温泉擬きに来といて、んな物騒な話はヤメようや。もうちょい盛り上がる話がしたい」
「ん。それは同意。で、何の話?」
話題を自分で叩き斬ったシーナに次の話題を言及するフィー。
そして、当然の如く、シーナは爆弾を投下した。
「––––じゃあ、
如何にも狙っていたであろう言葉にラウラとフィーはシーナを凝視し、真意を探る。
同時にシルフィードの眉も一瞬、ピクッと動いた気もするが気にしない方向で。
「何が狙いなのだ?」
「んなに大層な狙いは無いよ、ウチ。ただ単にアンタらが彼奴の事をどう思っとるかが気になっとるだけや」
「と言う事は、私たちにゼダスへの想いを語れ、と?」
「ま、そんなトコや。察しが良えやんけ。でも、出来るやろ?」
「確かに余裕。でも………」
「恥ずかしいってか? んな羞恥心ぐらいは捨てとけ。じゃなきゃ、他の奴に取られんぞ。なぁ、シルフィ」
「「ッ‼︎」」
シーナの一言にラウラとフィーは思い返す。
今、この場において、ゼダスへの想いを抱いているのは、もう一人居る事に………
沈黙を貫いていたシルフィードはスゥと眼を開き、三人の方に瞳を向ける。
「本来、雄と言う者は魅力的な雌を求める生き物です。そして、魅力的の概念は人によってそれぞれ」
ならば、ゼダスにとってのソレは何か。
その答えに………シルフィードは至っていた。
「彼が求めるは“心の温もり”。記憶を辿る為の力を手にする為に彼が手放した唯一の物」
そう、それは力を手にし過ぎた者の末路。
羨望や期待を寄せる者が居る一方、それ以上に恐怖、畏怖を抱く者が多いのが現状だ。
結果、誰も自分から力を持ち過ぎた者に近付かなくなる。
図太い感性の持ち主ならば、当然の事だ、と割り切るのも容易いのだろうが、ゼダスは力を持っているとは言え、未だに少年である。………まぁ、経てきた時間を鑑みれば、少年とは言い難いとも言えるが。
そんな少年がどれだけ気丈に振る舞おうとも、気付かぬ内に心が傷付き、いずれ悲鳴を挙げる。
ならば、彼が深層心理で求めるのは傷付いた心を癒す為の温もり。
事実、彼からの言質は取れている。
「彼は前に『私の“心の温かさ”に憧れた』と言っている。つまり、私は彼から求められていている訳だ」
「「ちょっと待てぇーーーッ‼︎」」
至極当然にゼダスから求められている論理展開をするシルフィードに猛然と異議を申し立てるラウラ&フィー。
「そ、それはどういう事だッ⁉︎ と言うか、今ゼダスと付き合っているのは紛れも無く私だぞッ‼︎」
「いやいや、私も。でも、うん。もうシルフィードは求められていない。だって、今は私たちが居る」
「………ふっ」
「そなた、サラッと鼻で笑ったなッ⁉︎」
「一体、どういうつもり?」
「いや、実に滑稽な理論だと思ってな。少し笑いを堪えれなかったよ」
口元を押さえ、本当に笑いを堪える様な動作を取るシルフィード。
「ああ、確かに付き合っているという関係性は重要だ。しかも、彼は責任感は強いだろうし、その重要性は更に増すだろう」
一度、肯定してからシルフィードは自慢気な視線を浮かべ、自己理論を展開する。
「しかし、男は『絶対に幸せにする』と言ったとしても、浮気をする生き物だ」
多少、偏見染みているがそれが絶対に間違っているとも言えないのが悲しい所。
思い返せば、全知全能の
「この理論通り考えれば、私にもチャンスは十分に存在する。ならば、後は簡単だ」
バシャと音を立て、シルフィードは立ち上がる。
濡れた肢体はスラッと細く、程良い官能さを滲ませるが、それに思わせ振りな表情を付け加え、
「彼が私だけを見るようにすれば良い。理論としては単純かつ明快だろう」
と言い残し、浴場の空間から抜けた。
そして、残るは沈黙。
ラウラとフィーは思う。
「「(
もう内心、大荒れ状態の二人。
それにシーナは………
「クックック………ほんま、オモロいわー。やっぱ、あん馬鹿弟子と引き合わせた甲斐があったわ」
………大笑い。
そんなシーナに視線を送る二人だが、同時に“ある”事に至った。
「………ん? 今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど」
「奇遇だな、フィー。私もだ」
聞き捨てならない言葉。それは––––
『あん馬鹿弟子と引き合わせた甲斐があったわ』
––––という所だ。
これでは––––まるでシーナがゼダスとシルフィードを引き合わせた様に聞こえてならない。
確かにシルフィードが《聖扉戦術》の独自派生系を使用していたのだから、二人が同じ環境下で切磋琢磨していたのは薄々感付いていた。が、そこに至る原因は分かっていない。
だからこそ、知りたいが、聞くタイミングが無かったが………思わぬ所からチャンスが来た。ならば、聞くべきだろう。
「とどのつまり、どゆこと?」
「………ああ、この話って誰にも話しとらんから、知らんかったんかいな。つーか、それならゼダスも知らんのやなぁ………ま、良えか。教えたるよ」
そして、シーナは語り始めた。
シルフィードは二年前にゼダスを師として仰ぎ始めた。
当時、執行者成り立てだったシルフィードは実力自体は十分に有っても、心構えが不十分だった。その事を危惧し、結社の長たる《
しかし、その《盟主》の指示は、実の所は
何故、その様な事をしたか。それは––––ある人から頼まれたから。
『貴女が口添えして、
あの時の光景は忘れようにも忘れられない。
まさか、表向きには結社最強の異名を手にしている《鋼の聖女》アリアンロード本人が頭を下げ、そう言ったのだから。
元々、シルフィードが執行者になる前に属していたのは、アリアンロードが直接率いている結社最強の戦闘部隊《鉄機隊》。そこに正式に与する者は基本的に何らかの恩がアリアンロードにある者たちだ。そして、それはシルフィードも例外では無い。
故に《鉄機隊》の面々からはアリアンロードは崇拝するべき
だから、心配してしまうのだと聞いて、わざわざ頭を下げてきた。
この頃のシーナは今と変わらず、自分勝手で結社の事なんぞ顧みていなかった。
が、強靭な強さを持ち、背負う物がある“武人”が頭を下げてきた。ならば、断る必要性は一切無い。だから––––
『分かった。んじゃあ、チョイと面白可笑しくしといたる』
と答え、どうするかを考えた。
結果、同じく執行者成り立てのゼダス(一応、任期はシルフィードよりも早い)と一緒に過ごさせる様にした。
当時、己の記憶に渇望し、マトモな生活すら棄て去り、我武者羅に強さを追い求めていたゼダスにも良いカンフル剤に成り得るかも知れないし、シルフィードに対しても巣立ち出来る要因となるかも知れないと思っての事だと今なら言えるが、絶対に面白がっていたのだろうと思う。
「ま、んな事があって、ウチはあん二人を引き合わせる様に仕組んだ訳や。いやー、我ながら神采配。良い感じに修羅場ってる未来が視えるなぁ」
「「諸悪の根源はお前かあァァァァッ‼︎」」
遂に堪え切れなくなり、全力で吼えるラウラとフィー。
普通に聞いていれば、何もかもがシーナが仕組んでいる気がしてならない。もう、こいつを殺せば世界平和も簡単かもしれない位に色々と関わっているのは一体どういう事だ。
「そやなぁ………確かにそうかもしれんが、アンタらにとっても良え話やったやんけ」
「何処がだッ⁉︎」
「ウチが彼奴ら二人を引き合わせんかったら、アンタらはゼダスに愛される事は無かったんやから」
シルフィードと会ったから、ゼダスは《聖扉戦術》を会得出来た。
だから、《盟主》が直々に命を下すだけの強さと信頼を得た。
そして、記憶に渇望している事を《盟主》は知っている。
幾度の死線を越えても、戻る事の無かった記憶。
多分、《盟主》は気付いていたのだろう。《
だからこそ、本当の意味で彼への“支え”が必要だった。彼が心の底から認め、彼の強さも弱さも全てを受け止める事が出来る“支え”が。
そして、選ばれたのがラウラとフィー。
未だに未熟だと言っても、今のゼダスは全幅の信頼を置いているであろう二人。
「だからこその神采配。分かったか?」
「「………」」
ラウラとフィーは口をパクパクさせ、唖然としていた。
それならば確かにゼダスと会えたのはシーナのお陰とも言えるが––––それよりも重要なのは、それでは今のゼダスの根幹に存在するのは確実にシルフィードだという事。
何故かサーッと血の気が引いていくのを感じた。
それを見越してかはどうかは分からないが、シーナも先ほどのシルフィードと同じ様に立ち上がり、
「んじゃあ、そろそろ上がろうかいな。この空間も潰すし、アンタらもサッサと出ぇ」
と言い、呆然とする二人を担いで、浴場の空間から消えた。
―――*―――*―――
「何でこうなっているのだッ⁉︎」
叫ぶはラウラ。
何かさっきから叫んだばかりな気がするが、この状況ならば仕方無いのだろう。
風呂から出てきたラウラ、フィー、シーナの三人はいつの間にか存在していた浴衣を見に纏い、次の空間。武家屋敷風貌の空間に至り、その一室。明かりが灯っている部屋を覗いてみると––––
「私が来た時には彼が倒れていたからな。一応、応急処置をだな––––」
「そこの何処が応急処置?」
––––同じく浴衣姿のシルフィードが顔の赤いゼダスを膝枕していたのだ。
これは流石のフィーも半眼で対応せざるを得ない。
その光景にシーナは溜息を吐くと同時に状況の確認を開始する。
「ゼダス………アンタ、まさか霊水に浸かり過ぎたやろ」
「察しがいいな。その通りだよ………」
「因みに時間は?」
「あー………一時間くらい」
「はぁ………馬鹿か、アンタは」
霊水は確かに無双の回復薬だが、アレはあくまで体内の回復能力を数倍に引き上げるだけの物だ。
つまり、浸かる時間が長ければ長い程に体内の力を消費するという事。回復にだって体力は喰う。
しかも––––
「アンタの中には《輝く環》もあるやろが。空属性の治癒力も鑑みれば、十分で充分やろ」
––––ゼダスが体内に宿す《輝く環》は空間と治癒を司る空属性を膨大に内包している。
それをも霊水によって稼動すれば、シーナの指摘通り、十分あれば充分過ぎる。
なのに、その六倍。実時間にして一時間も浸かっていたのならば、体力低下でのぼせるのは当然の事だった。
「で、恋人差し置いて、弟子に膝枕、かー。こんリア充め」
「へぇ、師匠。恋人二人の冷ややかな視線が某鎧竜の熱線並みに痛いのにリア充と申すか? アンタの眼は絶対に節穴だな」
軽めに口を叩き合うシーナとゼダス。
発した言葉通り凄く、物凄く視線が痛い。
加え、スッカラカンの体力で怠さは天元突破状態。もう寝たい。
「あー、話は明日………つーか、もう日付けは変わってるし、今日か。に聞いたやるから、少しは寝させてくれ。眠過ぎる」
時計の針は確かに翌日を迎えたばかりの時刻を刺していた。道理で眠い訳だ。
「師匠。寝床は何処だ?」
「こん部屋出て、縁側沿いの廊下を少し行ったトコに二部屋分の空間があるやろから、その何方かで寝え」
「了解」
短く答え、部屋から出ようと襖に手を掛けた時、シーナから追随の質問が飛んで来た。
「そいえば、ヴァイスの奴はどした? 姿が見えんけど」
「あーあいつなら、『やりたい事はやったし、命令された事もやったんだから、もう帰らせてもらうぜ。赤髪の野郎共を怒らせると面倒だしなぁ』って言って、一人で帰ってったけど」
「随分勝手やなぁ………ま、良えか。確かに命じた事はやったんやし」
「それじゃあ、俺も適当に寝るわ。んじゃあ、おやすみ」
返答を待たず、ゼダスは部屋を後にした。
残された美女含め美少女四人。
流れる沈黙は何処となく重たく、早く退室したい気持ちを加速させる中、シルフィードは唐突に口を開く。
「それでは私も寝させてもらおう。シーナ卿、私の寝床は何処だ?」
「さっきも言った通り、二部屋中の一部屋を––––」
「了解した」
聞き終える前に駆けようとするシルフィードの脚をラウラとフィーはすんでの所で掴む。
「………一体、何のつもりですか?」
冷たい視線を二人に向けるが、たじろぐ様子は一切無く、理由を一瞬で開示した。
「何処からどう見ても、ゼダスの元に駆けるつもりだっただろうッ‼︎」
「シーナの話の途中で走り始めるんだから、今更隠し切れないでしょ」
「………そっか。こん三人はゼダスと同じ部屋で寝たいんか」
状況を冷静に分析し、シーナは納得。
それもそうだ。
何故なら、この三人は全員、ゼダスに恋い焦がれる敵同士なのだから。
別にそこから発展する修羅場は楽しそうだし、構わないのだが、明日の特訓に支障を来す様では困る。
ならば、せめて一緒に寝る人を平和的に選ぶのが彼の為なのだろう。
柄にも無く、師匠らしい思考を奔らせたシーナは妥協案を出す。
「んじゃ、ウチが魔力で編んだクジであんリア充野郎と寝る権利を賭けて勝負したらどや? ここに三本、作っといたったし」
と言葉を発し、手に光を編んだクジが三本出現していた。
最早、三人にとって、言葉は要らない。
引っ手繰る様にクジを引いた三人。
そして、満月昇る夜。
闇夜の中に二人の悲鳴と一人の歓喜が響いたそうだ………
と、何か変な切り方をしましたよ、今話は。
次話は何時投稿出来るか分かりませんが、早い内に投稿出来ると良いなぁと思ったり。
ああ、因みに次の話はR–18ルートの方の更新です。本編連動ルートの更新です。
相手は……お楽しみに?
その話を書き上げるついでにIFルートも何個か書き上げるつもりなので、ゆっくりと見守ってくれると幸いです
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m