闇影の軌跡   作: 黒兎

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まだヒロイン決まってないけど投稿なのだ!





見つかるかな?


第一章
朝の戦い ラウラの弱さに気付く《天帝》


「ふあぁぁ。眠みーな。」

 

 自室の布団から這い上がって最初に発した言葉が「まだ寝たい」と言う願望だった。

 昨日のサラ教官との戦闘が終わった後、日が傾き始めていて、さっさと寮に帰ったのだが、すれ違った生徒からは奇異の眼差しを向けられた。分からんでもない。だって、生徒が教官を担いでいたのだから。そして、

 

「なんか体がおかしいと思ったら、昨日の晩メシ食ってねぇからか。ったく、朝早く起きちまったし、全員分の朝メシ作っといてやるか。」

 

 と言い、一人、僅かな朝日が指す厨房へと向かった。

 

―――*―――*―――

 

 

 ラウラは故郷のレグラムでも行っていた早朝の素振りをしていたので此処、トリスタでも行おうとしていた。厨房から気配がしたので確認してみた。すると、そこで見た光景は中々シュールだった。あの底の見えないような強さを持つゼダスがエプロン姿で朝食を作っていた。元々、女顔に近い為か様になっていた。ゼダスもラウラの気配に気付き、

 

「おはよう。朝早いんだな。」

「あぁ、日頃から朝は素振りをする習慣でな。そなたは何をしているのだ?」

「全員分の朝食作り。朝起きて暇だったからな、雰囲気的にやってたって訳。もう作り終えたし、素振り付き合わせてもらって良いか?」

「別に構わんが……。ゼダス、少し胸を貸してくれないか?」

 

 その言葉にゼダスは心の中である事に気付く。今の発言に恋愛感情は一切無いだろう。

 そう、ラウラはゼダスの強さを直に触れ自分の強さの糧にしたいのだ。そう思う事には別に問題無いというか当然だろう。剣士である以上強くなりたいと思うのは至極当然。だが、

 

「お前の父親は《光の剣匠》だろ。普段から立ち合ってたんなら、俺と立ち合う意味が無い気がするな。多分、俺より強いだろうし。」

 

 此処でゼダスはある嘘を吐いた。というか不確証だが今のゼダスなら《光の剣匠》相手に引き分けぐらいまでに持ち込める自信はある。アリアンロードの元で修行していたのだからそれぐらいでき無いと困る。しかし、ラウラは

 

「それでも良い。未知の相手に挑める。それだけで立ち合う意味が存在しているのだから。」

 

 その言葉にゼダスは溜息を吐いた。悪い意味ではなく良い意味で。

 

「……良いよ、立ち合ってやる。が、全員が起き始める前までな。朝食は作り終えてるとはいえ、盛り付けとかしなきゃなら無いしな。」

 

 と言い、エプロンを外した。自室から《魔剣レーヴァテイン》を持ってきて、

 

「場所は、すぐそこの街道で良いよな?」

「あぁ、問題無い。」

 

―――*―――*―――

 

 

 街道にある二つの影。一方は真紅の大剣を携え、もう一方は蒼き大剣を構えていた。蒼き大剣を構えるラウラは中々の闘気を発するのに対し、真紅の大剣を携えているゼダスは一切闘気を発してい無い。

 

「そなた、まさか本気を出さぬつもりか⁉︎」

 

 とラウラが問うてくるのでゼダスは

 

「まだまだの未熟者に本気なんて出さねぇよ。下手っすると死んじまうしな。」

 

 と笑いながら答えた。

 やはりズレている。

 それがラウラから見たゼダスの第一印象だった。「死ぬ」という言葉を平然と使う奴が少なくとも、まともな奴な訳が無い。ゼダスは

 

「ま、そんなに気張らずに気楽にいこうぜ。別に殺しあう訳じゃねぇんだから。」

 

 といい、真紅の大剣を構える。「胸を貸す」ゼダスがする事はそれだ。

 ならわざわざ、こっちから仕掛ける必要は皆無だ。

 

「ほら、とっととかかって来い。相手になってやる。」

「挑ませてもらう!」

 

 その気迫溢れる言葉を機に立ち合いが始まった。

 ラウラが必死に立ち向かってくるのに対し、ゼダスはその全てをのらりくらりと避ける。しかし、全く反撃し無い。

 その行動にラウラは無意識にイラっときた。全く戦う気の無いように見えるゼダスに。その時

 

「そんなに熱くなんなよ。」

 

 とゼダスは声を掛けた。軽いアドバイスを掛けたつもりが、その言葉が更にラウラのフラストレーションを加速させる。そして、攻撃がより単調になる。

 

「おいおい、ちょっとした挑発に乗るとか、実戦で心配だな。そんなんなら、命は何個あっても足らないぞ。」

 

 といい、ラウラの上段からの大剣の叩きつけを避け、足を引っ掛け転ばせた。そして、ラウラは顔から見事に地面に激突した。すると、

 

「そなたは何故、反撃しなかった⁉︎」

 

 と怒声混じりの声がゼダスを襲う。それに対して

 

「馬鹿か?俺が剣を使うまでもねぇんだよ。いちいち、挑発に乗って攻撃の単調化。その時点で俺に勝てると思うな。勝ちたいんなら精神面で俺と同等ぐらいにまで鍛え上げるんだな。」

 

 と言った。

 戦闘中に冷静さを欠くのは自殺行為に等しい。現にゼダスとラウラでは潜り抜けてきた修羅場の数が山ほど違うのだ。その時点で差は歴然なのだ。

 

「そろそろ起き始める頃だよな。んじゃ戻って、朝食の盛り付けしとくから、後で来いよ。」

 

 といい、ゼダスは第三学生寮に帰っていった。

 

―――*―――*―――

 

 

「上手すぎじゃない⁉︎この料理。」

 

 と驚きの声を上げたのは、アリサだった。

 朝食のメニューはパンにコンソメスープ、目玉焼きという簡素なものだった。が、簡素な物こそ腕の違いが試される物なのだ。

 

「お褒め頂き嬉しい限りだ。」

 

 とゼダスは素直に喜んだ声を出した。確かにこの料理の出来はプロ顔負けだった。ゼダスは

 

「味わって食うのはいいけど、学院に遅れねぇようにな。入学式の次の日に遅刻とか洒落になんないからな。」

 

 と一人早く朝食を済ませて学院へと向かっていくのだった。

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