【東方project】幻想郷の少女達   作:【キーくん】

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ルーミアとチルノの喧嘩

「ルーミアのバカっ!」

「バカって言ったほうがバカなんだ! チルノのバーカ!」

 

暑さが幻想郷を包む、 ある夏の昼下がり。

とても幼稚な痴話喧嘩が勃発していた。

その中心にいるのは氷の妖精チルノ、そして宵闇の妖怪ルーミア。

 

「ま、 まってよ、二人とも落ち着いて……」

「「大ちゃんは黙ってて!」」

 

大妖精こと大ちゃんが喧嘩を止めようとするも二人にその声を遮られてしまう。

 

「ふっ……、 とうとうアタイを怒らさせてしまったね!ルーミア!」

「怒らさせてしまったじゃなくて怒らせてしまっただよ! これだから⑨は……」

「なんだとっ!!?」

「殺る気なのかー?」

 

今にも戦闘を始めてしまいそうな二人に、 おろおろとする大妖精。

見た目は全員が少女だが、 ルーミアは妖怪、 チルノは妖精の中では随一といっても過言ではない強さは持っている。

二人が戦い始めれば辺り一帯、 大変なことになってしまうこと間違いなしだ。

と、 そこへ

 

「うっさいのよアンタらぁっ!!」

「あいたっ!」

「な、 なんなのだー?」

 

二人に突然拳が降り下ろされた。

拳の主は博麗霊夢、 超凶暴にて凶悪な博麗神社の巫女(文々。新聞アンケートより)で有名な少女である。

なんで博麗の巫女が!?

と、 二人して驚いているが、そもそも喧嘩している場所は博麗神社の敷地内。

霊夢が怒るのも、 ここにいるのも当然である。

 

「全く、 騒ぐならよそでやりなさいよ」

「うっせー貧乏巫女!」

「そうだ腋巫女!」

 

殴られて怒り心頭の二人は思わず霊夢に悪態をつく。

 

「あ゛?」

 

人間であるはずの霊夢に、 鬼のようなつのが見えたのは、 幻覚かどうなの

かは二人には判断できなかった。

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「……それで? なんでアンタら喧嘩してたのよ」

 

そこらへんに転がってる岩に寄っ掛かり、 腕を組ながら尋ねる。

ちなみにこの岩は数日前、 とある天人によって落とされたものだ。

 

「れーむには関係ない!」

「そうだ関係ない!」

 

と、 それに答えるチルノとルーミアの頭の上には大きなたんこぶが二つのほどついていた。

 

「……また殴られたいのかしら?」

 

ギロリ、 という擬音が似合いそうな目付きで二人を睨む霊夢。

 

「「ごめんなさい」」

 

正座させられていたため手を地面につけるのはとても素早かった。

 

 

「あ、 あのぅ……。 」

「なによ、 えーっと、大妖精……だったかしら?」

 

チルノはちょくちょく退治してるため知り合い程度の認識はあったが、 大妖精はその横にいるモブとしか見ていなかったので面識がほぼほぼない。

 

うろ覚えで名前(?)を尋ねる。

 

「はい。 その……、 チルノちゃんとルーミアちゃんは悪くないんです」

「ここで騒いでたのがすでに悪いことなんだけど」

「実はさっき……」

「意外と図々しいわね」

 

霊夢の言っていることを聞いていないわけでも、 そこまでバカなわけでもないのだが、 かなり天然キャラと妖精の間では有名な大妖精。 霊夢も呆れた表情をしていた。

いったいどんなしょうもないことで喧嘩してたんだろう、 と僅かながらも興味をもつ霊夢。

しかし、

 

「私のお嫁さんになるのはどっちかっていう話でもめてしまって!」

「は?」

 

その唐突に告げられた言葉を聞き、思わず声を溢す。

 

一瞬、 耳が飾りになってしまったのかと疑った霊夢は、 引っ張ったりして自分の耳が正常なことを確認する。

今一現状が理解できていない霊夢だったが、

 

「大ちゃんはアタイのお嫁さんになるんだ!」

「違うのだ! わたしのお嫁さんになるの!」

 

と、 口々に詰め寄る二人をみて、 自分に詰め寄られても困るんだけど……。 と内心面倒くさくなった霊夢。 だが、 一応誤解というか、 色々間違っていることを教えることにした。

 

「「ええええええっ!! お、 お嫁さんになれないってどうゆうこと!?」」

 

「別にお嫁さんになれないとは言ってないわよ、 ただね、 女の子同士は結婚できないのよ、 幻想郷じゃ」

 

驚愕の事実に芸人も顔負け、 見事な反応を見せる二人。

 

「そ、 そんな……だって、 アタイ、 最強なのに……?」

「最強なのは関係ないとおもうぞー?」

 

ただ単純にバカなチルノに対して冷静なツッコミを入れるルーミア。

彼女のほうがいくぶんかおつむはいいらしい。

 

「じゃ、じゃあ! アタイらはどうすれば大ちゃんのお嫁さんになれるんだ!?」

「だからなれないっつの! ……そうね、 お嫁さんは無理だけど、 “親友”なら、 なれんじゃないの?」

「親友?」

「親愛なる友達ってことよ、 あれ? 違ったかしら……まぁいいや。 ようするに一番の友達ってことよ」

 

霊夢のその説明に、 『おおっ!!』と目を輝かせる二人、 そして、

 

「「じゃあ大ちゃん! どっちが一番の友達!?」」

 

二人して大妖精に問いかけた。

霊夢は(しまった……)と心の中で後悔するがもう遅い。

 

大妖精は、 ほぼ悩むことなく、 こう言った。

 

「ルーミアちゃん」

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「……寒い」

 

ここは極寒の山中……ではなく博麗神社。

先の大妖精の発言に嫉妬と怒りを露にしたチルノが博麗神社の一帯に吹雪を吹かせてどこかに行ってしまったのだ。

 

こうなってしまうとチルノを退治するか、 本人に止めてもらうかしかもとに戻す方法はない。

……が、 よくよく考えてみると霊夢も少し軽率な発言だったかもしれない、 と反省をする。

一番の友達なんてニュアンスを使えば二人が再び争いを始めることなど容易に想像はできたはずだ。

 

「…………アンタは、 どうすんのよ」

 

そう尋ねた先はルーミア。

大妖精はチルノが飛び去ったあとすぐにそれを追いかけてしまったのでこの場には彼女と霊夢しか残っていなかった。

 

「わたしは…………、 悪く、 ないもん」

 

うつむいて呟くルーミア。

それを見て霊夢はため息をついて、

 

「……そう、 そうね、 アンタは悪くないわ、 ていうか、 誰も悪くないわね」

 

わりと原因は自分にあったりするのだが、 さりげなく無かったことにする霊夢。

 

「でも、 だからってそのままでいいの? アンタら、“友達”なんじゃないの?」

「……!!」

 

体を少し震わせるが、 ルーミアは答えない。

 

「……まぁいいわ、 ともかくこの吹雪をなんとかしないと」

 

そんなルーミアを気にもとめてないのか、 さっさとチルノを探しにどこかへ飛んでいく霊夢を見ながら、

 

「…………チルノ……」

 

そう小さく呟く、 宵闇の妖怪がそこにいた。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「チールーノー、 いないのかー?」

 

腕を伸ばして空をふよふよと舞うのはルーミア。

結局、 なにか案を思い付いたわけでもないがチルノを放っておけないと考えた彼女はとりあえずチルノを探すことにした。

 

(……チルノ、 怒ってるかな。 わたしだって、 大ちゃんがわたしを選ぶなんて思ってなかったのに……。 だって、 大ちゃんとチルノは昔から一緒で、 わたしじゃ知れない、 知ることもできない“何か”を感じてたのに、 なんでなのー、 大ちゃん……)

 

考えに更けながらいく場所も決めずにとにかく飛ぶルーミア。

しばらくそのまま浮いていると前方から、

 

「ルーミアちゃーん!!」

 

と、聞きなれた声が聞こえてきた。

 

「あ、 あれ? 大ちゃん、 チルノはどうしたのだー?」

 

チルノが飛び去ったあとすぐに後をおった大妖精がなぜか自分と合流したことに疑問をもつルーミア。

これがチルノであれば特になにも考えずに喜んでいたかもしれない、 と思うとルーミアは笑いが込み上げてくるのを我慢した。

 

「……っはぁ……はぁっ……、 ちっ、 チルノちゃんが! チルノちゃんが!チルノちゃんが変態なの!!」

「おちついてよ、 大ちゃん、 チルノは霊夢とちがって痴女じゃなかったはずなのだー」

 

友人ながら、 大妖精の慌てように少し呆れるルーミア。 そして彼女に言われて正気を取り戻した大妖精。

 

「ご、 ごめんね……えっと、 チルノちゃんが、 紅魔館の吸血鬼に拐われちゃったの!!」

「ええっ!?」

 

また悪戯でもして怒られたのかと思ったルーミアだったが、 それだけならわざわざ大妖精は帰ってこない。

 

「大ちゃん、 何があったの?」

「実はかくかくしかじかでね」

「そうなのかー……ってならないのだ! それで伝わるわけないよ!」

「ごめんね! ちょっとアヘってて……」

「意味変わってきちゃうからその辺にしよ? 大ちゃん」

 

普段とツッコミとボケが入れ替わっていたが、それを指摘する人がいないので二人は気づかない。

 

「実はね、 紅魔館の主の……れ、 レバニラ・ストーカーレッド? が、 チルノちゃんを利用して幻想郷をまた赤い霧で包むって……」

「なんだか色々おかしなところあった気がするけど……、 でも、 それよりチルノを使って異変を起こすってどういうことなのだー?」

「わかんないよ! どうしよう、ルーミアちゃん……」

 

涙ぐむ大妖精。

元来、 頭はよくないどころかバカルテットと呼ばれる三人衆に含まれてしまっているルーミアだが、 なぜだか今日は、 いや、 今は冴えていた。

何が起きているのかはわからなかったが、 自分のすべきことをきっちりと把握する。

 

「……大ちゃん、 1つ聞いていい?」

「うん。 いいよ、 なぁに?」

 

考えに考えた結果(3秒ほど)、 大妖精に1つ確かめることを決めた。

 

「大ちゃん、 どうしてわたしを親友に決めたの?」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「あら、 何かご用かしら、 宵闇の妖怪さん?」

 

ルーミアの眼前にいる相手は【レミリア・スカーレット】紅魔館の主であり、 運命を操る程度の能力を持つ、 500歳を越える吸血鬼だ。

 

ルーミアや妖精からすれば、 実は500歳など大した年齢ではない、 妖精に関しては年齢という概念そのものがないうえ、 ルーミアと同様にいつ生まれていつから幻想郷にいるのかすらわからないくらいである。

 

彼女はルーミアを待ち受けるかのように、 日傘をさして門の上を飛んでいる。

 

「……チルノを、 どうするきなのだ?」

 

ふよふよと浮かびながら、 静かに尋ねた。

 

「それを貴女に教える必要、 あるかしら? もう彼女から聞いてるのでしょう?」

 

不敵に笑うレミリア。

そして、

 

「まぁ、 生死は別としてね」

「………………そーなの、かー」

 

と、 答えになっていない返答を返すルーミア。

 

「……ごめん、 多分、 ここが“使わなきゃいけない場面”だから……、 『出す』のだ」

 

誰に対していっているのかわからないが、うつ向きながら 一人で呟くルーミア。

レミリアが細目で彼女を睨む。

 

「たかだか“闇”を操る程度の妖怪が、 私に歯向かう気かしら?」

「……そーなのだー」

 

そう答え、自分の髪を結んでいたリボンを、 右スルリと取り外した。

 

 

“何かが壊れる音が響いた”

 

パキパキパキ、 と、 枯れ木を踏んだときのような音ににている。

だが、 それはそんな軽いものを壊しているようには聞こえなかった。

音源は、 ルーミア。

 

内部からか、 外側からなのかはわからない、 だが、 ルーミアの、 彼女の鎖のような何かが壊れていくようにレミリアは感じていた。

 

ほどなくして、 ほどいたリボンが青く発光した。

ルーミア本人は黒い闇に包まれている。

 

だんだんと発光が弱まる。

それと共に、 “夜”が現れた。

 

「……へぇ、 思ったより強そうじゃないの」

 

レミリアの前には、 白黒の洋服を着た自分より幼くみえた少女はいない。

代わりに、 赤と白黒の入り交じったドレスを着た漆黒の翼を持った女性が浮かんでいた。

そして右手には蒼い槍

ロッド

 

「ふふっ……、 随分とカラフルになったわね、 宵闇の妖怪」

「…………『私』は、 」

 

静かに、 告げる。

 

「“闇”の支配者」

 

音は、 無かった。

だが、

 

「っ……!?」

 

レミリアを引き寄せるかのような力が働いた。

よくみるとルーミアが槍の先に何か黒い塊を出している。

 

「……なるほど、 ね。 闇どころか宇宙でも操ろうってのかしら?」

 

その問いかけにルーミアは答えない。

元より、 レミリアも答えなど求めていない。

 

ただ、

二人の表情には、 笑みがあった。

 

「いいわ、 面白い。 貴女の力……見てあげる」

「…………あ、」

 

そして、

 

「あハははハハハはハ!!!」

 

ルーミアの笑い声と共に青黒い発光が現れる。

 

「“幻符”【蒼の幻想曲(ブルーシングイマジネーション)】」

 

それは巨大な塊だった。

しかし、 次々と分裂して行き、 最終的にビー玉程度の大きさがある発光体、 恐らく弾幕とそれに囲まれた、 中央にはレミリアと同じくらいのでかさの発光がある。

 

スピードはとても鈍いがだんだんとレミリアに迫ってくる。

だが黙ってやられるようなカリスマ吸血鬼ではない。

 

「“紅符”【スカーレットマイスタ】!」

 

とても密度の高い弾幕が現れる。

それは小さいものとそれより少し大きめの弾で構成され、 それぞれ時計回りと反時計回りで回っていた。

 

ルーミアの弾幕よりさらに圧倒的に見えるその弾幕。 だが、

 

「……なにが、 起きたの?」

 

だがあっさりと消え去ってしまった。

レミリアの弾幕が、 突然ルーミアのそれに引き寄せられたかと思うと、 次の瞬間消滅してしまったのだ。

 

(恐らく、 相討ち……ではなさそうね、 向こうの弾幕が1つも消えてない)

 

レミリアは少し動じたもののすぐに思考し始める。

ルーミアは動く様子はない、 弾幕も遅いためある程度考える時間があった。

 

(こんなの旋回しとけば簡単に避けられるけど……)

 

「それをしたら私の名が汚れちゃうものね、 見てなさい。 正面から受けてあげるわ」

 

そう言って、 一歩一歩、 空中を歩むレミリア。

だがしかし、

 

「…………っ、これは!」

 

レミリアの体が突然硬直した。

いや、 拘束された。

鎖とか、 見えるものにではなく、 見えないものにだ。

 

「……やっぱり、 貴女、 重力を操ってるわね」

 

自分の考えを吐露するレミリア。

 

「その小さい弾幕1つ1つが大きな重力をもつ弾。 それで入ってきた……もしくは近づいた敵をとらえて中央の巨大な弾で押し潰すって魂胆かしら?」

 

推理を披露する間にも中央に引き寄せられるレミリア。 彼女は、 まだ笑っていた。

 

「いいこと? “闇”の支配者だかヤブ医者だか知らないけど……私は夜の帝王。 王が敗北することなど絶対にないわ」

 

「ほざくな! 吸血鬼の分際で!!!」

 

初めてルーミアが激昂する。

そして、 レミリアが中央の蒼光に触れた瞬間、

 

無音の爆発があった。

 

黒煙がルーミアをも包み視界が失われる。

手応えはあった。

弾幕ごっこといいつつも、 当たれば痛いし普通に死ぬことだってある。

でも、 だけど、

 

「…………」

「あら、 不服そうね」

 

今は不要物となっている日傘をさしてルーミアの目の前に浮かぶ、 夜の帝王の姿が、 そこにあった。

その身には焦げ目1つない。

 

「知らなかった? 吸血鬼って結構頑丈なのよ。 ……こんなものかしら? “闇”の支配者さん」

 

「……………………死ね」

 

レミリアの挑発に反応したルーミア、 槍を横に凪ぎ払う。

すると空間に裂け目が現れた。

そして、

 

「もう弾幕ごっこは終わりってことね……、 久しぶりに楽しめそうだわ」

「永遠に“楽”しませてやるよ」

 

夜と闇が、激突する。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「それにしても……、 隙間妖怪みたいね、 あの裂け目。 なんなのかしらあの黒い霧」

 

レミリアは上からルーミアの様子を見ていた。

その視線の先にはルーミアによって作られた裂け目から漏れ出す黒い霧のようなもの。

 

「……っていうか、 別に待ってやる必要ないわね」

 

そう言ってレミリアは彼女のもつ吸血鬼元来の、 銃弾と同等のスピードでルーミアを後ろに回り込む。

 

「避けてみなさい」

 

岩を砕くパワーを持つ拳を、 弾丸レベルのスピードでルーミアに向けて放つ。

だがその拳はルーミアに届くことはなかった。

いや、厳密には通り抜けたのだ。

 

「……これは」

 

驚きの声を隠せず思わず口からこぼれる。

確かに目の前にルーミアがいる。

だが攻撃をするとまるで光が歪んでいるかのようにルーミアの形が崩れた。

 

(私みたいに霧になってるわけじゃなさそうね……どちらかと言えば、 光が屈折しているような……!!)

 

何かに気づくレミリア。

 

「そう言うこと……、 貴女、 重力で光を歪めてるわね?」

 

その問いかけに答える物はいない。

レミリアは言葉を続ける。

 

「大方“闇”を操るっていうより……“黒”を操るって感じかしら? しかも、 実際の色に関係なく。 イメージさえ黒なら重力だって操れるものね」

 

別に答え合わせをする必要はなかった。

レミリアは自分の考えが間違っているとも思っていないし、 間違っていてもどうでもいい。

要は自分が勝てばいいだけだ。

彼女は運命を操る程度の能力を要しているが、 明確にこれが使われたことはない。

とういうより、 使えないといったほうが正しいのか。

 

強大すぎて彼女にも強弱がつけられず、 暴走してしまうからだ。

 

もちろん彼女はその力を使うつもりはない、 そんな“程度”の能力、 所詮おまけにしか考えていない。

 

「1つ、 教えてあげる。」

 

空中を散歩するように歩くレミリア。

 

「4秒後、 貴女は負けるわ」

 

彼女は運命を操ることはしない。

でも、 そこにいるだけで運命を曲げることはできる、 というより曲がる。レミリアの意思に関係なく、だ。

 

そして、 その運命を見ることができる。

 

レミリアにはそれが必然なのか、自分がいる結果からなのかわからなかったが、 見えたのだ。

 

 

自分がルーミアの槍に貫かれるビジョンが。

 

「1……」

 

カウントダウンを始めるレミリア。

 

「2……」

 

その時は刻一刻と迫り、

 

「3……」

 

残り一秒となる。

そして、

 

「4!!!」

 

真後ろに振り向き拳を振り抜く!!!

レミリアは見えていた、 ルーミアが自分の後ろに現れてその手に持つ槍で自分を貫く様子が。

なら自分がその瞬間を狙ってやればいい、 運命は操るものじゃない、 壊して自分で作り替えるものだ。

 

……と、 レミリアは考えていた。

が、

 

「…………え?」

 

キョトン、 と、 何が起きたのかわからないといった表情で汗を額ににじませるレミリア。

 

「バーカ」

 

瞬間、 真上から声が聞こえた。

 

「がっ……う!?」

 

即座に腕をクロスし、 防御しようとするレミリアだったが、 呆気なく吹き飛ばされてしまう。

紅魔館の一部を巻き込む形で壁に叩きつけられるレミリア。

 

ぐったりと力なく、 人形のようになった彼女に対しルーミアはとても冷たい目でこう言った。

 

 

「貴女は運命を操る。 それ以外に予知まで出来ると聞くわ……、 だったら、 それをこっちも操れば簡単な話。 無理じゃないわよ? 貴女も言ってたじゃない、 私は“黒”のイメージさえあれば好き勝手に設定を変えられる。 貴女が予知した『夜においての私との戦闘』その内容を適当にいじらせてもらったわ。」

 

レミリアに意識があるのかは定かではないが、 一応説明という名の冥土の土産を聞かせるルーミア。

 

 

「閻魔様へ土産の肴にでもしなさい。 夜が闇に勝てると思ったのが悪いのよ……、 ね? 帝王……さん」

 

意趣がえしのつもりなのか、 目はそのままに嘲笑の表情を見せるルーミア。

そして、

 

「あいつの生死は関係ない、私の……私の友達を 利用しようとしたこと、 後悔させてあげる」

 

蒼槍が、 漆黒に代わる。

赤い模様も混じっているのが見えた。

 

「これは【紅血槍(フルンティングロッド)】、 刺されば血を吸い尽くすまで抜けることはない、 紅の名がつく、 貴女の最後に相応しい剣……」

 

槍を構えるルーミア。

 

「死になさい」

 

小さい体だった時と変わらぬ赤い目を見開き、 闇を周囲に展開させ、 槍を放つ。

 

そして、

そして、

そして、

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「それで? 結局レミリアはどうなったの? 死んだの?」

「なら貴女のまえにいる私はなんなのかしら?」

 

ここは紅魔館。

丸いテーブルの上に紅茶と御菓子をのせてお茶をする少女二人。

一人は博麗霊夢。

 

もう一人は、 レミリア・スカーレット。

 

 

「冗談よ、 で? そのあとどうなったの?」

「まぁ、 大体予想はつくでしょうけど……」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「ルーミアー!!!すとーっぷ! すとーっぷ!!」

 

今にも槍を投げようとしていたルーミアの手がとまる。 聞こえてきた声の主が自分のよく知ったものだったからだ。

 

「ち、 チルノ!? 大丈夫!? 怪我ない?」

「大丈夫、 アタイは最強だからね! それよりルーミア、 レミリアを殺しちゃダメ!」

 

自分と同じく宙に浮くチルノに外傷がないことに安堵するルーミアだったが、 なぜチルノがレミリアを擁護するのかわからなかった。

 

「チルノ? 貴女あの吸血鬼に何かされたんじゃないの?」

「違うよ、 アタイがレミリアにどうしたら“一番の友達になれるか”聞きに来たんだ!」

 

(一番の……友達?)

 

チルノは続ける。

 

「アタイ、 大ちゃんはきっとアタイもルーミアも一番の友達だって言うと思ってた」

 

ドクン、 と鼓動が高鳴るのがルーミアには聞こえた。

 

チルノと思ってたことが違った、ルーミアはチルノが選ばれると思っていたから。

 

「でも選んだのはルーミアだった! アタイ、 ……悔しかった、 仲間はずれにされたと思った! ……だから……【カリスマ】で有名なレミリアに聞けばアタイも一緒に一番になれるんじゃないかって、そう、 思って………っ……」

 

ルーミアは自己嫌悪した。

自分とチルノでは考えていることが違う、 彼女のほうがよっぽど純粋で綺麗な考えだ。

ルーミアは、 どちらか一人しかなれないと、 そう思っていたし、 自分は友達だけど“枠”には入れないと思っていた。

 

だから、 選ばれなかったチルノに、 内心では同情していたことに今気がついた。

 

 

「チルノちゃーん!!」

 

下の方から大妖精の声がする。

 

「大ちゃん!? な、 なんでここに?」

 

どうやらとっく後ろからつけられていたことに気づいてなかった様子のチルノ。

 

そのチルノに抱きつき、 大妖精は、

 

「チルノちゃん! ゴメンね! あんな言い方したらチルノちゃん傷つくなんて当たり前だよね! ゴメンね!」

 

涙をこぼしながら謝罪の言葉を告げた。

 

「え? え? だ、 大ちゃんなんで泣いてるの?」

 

状況に理解が及ばず混乱するチルノ。

そのチルノの様子に気づいていないのか、 大妖精はチルノに真相を打ち明ける。

 

「私ね、 チルノちゃんとルーミアちゃん、 どっちか一人しか選べないと思ったから……だからルーミアちゃんを一番の親友にしたの、」

「……っ」

 

その言葉に、 顔をうつむけるチルノ。

だが、 次セリフでその顔が、

 

「でもね? 一番の家族は、 チルノちゃんだから!」

 

驚きの顔に代わる。

目をぱちくりさせ、

 

「そっかぁ、 大ちゃん……アタイを、 大事に思っててくれたんだね」

「当たり前だよ! チルノちゃんは私の妹みたいなものだもん!」

「妹!? それってフランみたいな感じ? 」

「フラン?」

 

 

仲直りした二人をみて、 ルーミアはよかったと、 そう思った。 だが同時に、 疎外感を感じる。

 

(あぁ、 これが、 誰かが誰かを選ぶってことなのかー)

 

寂しさををこらえて唇を少し噛む。

あの二人は妖精で、 自分じゃわからない……絆があって、 家族で……。

だから、 自分が入る余地はない。

 

そう、 思っていた。

だけど、

 

「ねぇ大ちゃん! さっきフランから教えてもらったんだけどね、 あ! ほんとはアタイわかってたんだけど。 一番をアタイと大ちゃんとルーミアの3人で分けたらいいんじゃないかな?そうすれば平等だ!」

 

馬鹿は、 そんな小難しいことなど、 考えない。

 

「…………あぁ! なるほど~、 チルノちゃん頭いい~」

「え? え? いや、 そういうもんだいじゃ……、 っていうか1を3で割ったら割りきれないけど!?」

「いいから! ほら、 手を出して」

「……うん」

 

言われるがままに、 妖精二人より明らかにサイズが大きい手を差し出す。

 

「あれ? ルーミア、 なんかおーきくなった?」

「え? 今さら?……っていうか、 なんでわかったの? 私、 今外見も中身も大人になってるんだけど……」

 

するとチルノは、 キョトンとした顔で大妖精と顔を見合わせ、 大笑いしながらてこう言った。

 

「そっ、そんなの……親友だからに決まってんじゃん! ルーミアはそんなのもわかんないのかー」

 

口調を真似され、 少しイラついたが……。

 

「そ、 そーなのかー」

 

と、 腕を伸ばしてその言葉に答える。

その目尻からは、 綺麗な水玉がこぼれ落ちていた。

そして、 その体が蒼く光出す。

 

「ルーミア!? ルーミア!!」

「ルーミアちゃん!」

「落ち着きなさいあんたら」

 

心配してルーミアに駆け寄ろうとしたチルノを誰かが制止した。

 

「何すんだ霊夢!! はーなーせー!!」

「いいから止まれっての! ……時間制限

タイムオーバー

よ、また封印されてるだけ、 もとに戻るのよ 」

 

渋々引き下がるとほどなくして、 霊夢のいった通りルーミアの体は縮み、 服装ももとの白黒の洋服に戻った。

 

「ルーミアー!!」

「ルーミアちゃん!」

 

一目散にルーミアにダイブする二人。

突然の出来事にルーミアはバランスを崩してそのまま二人共々地上へ落下する。

 

「いてて……なんなのだー?」

「ルーミア、 大丈夫なの!? 」

「二人のせいで落ちたのだー」

「そっかぁ、 なら大丈夫だね~」

「大ちゃんそれなんかおかしくない!?」

「そーなのかー」

「あたしのセリフとるなー! チルノー!!」

 

色々不思議なこともあるし、 わからないこともあるけれど、 三人はそんなものは気にしない。

一番を分け合った三人なら、 どんなことがあったってその絆が消えることはないのだから。

 

 

空には、 幼い子供の声がこだましていた。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

「ここまでが事の結末よ……っていうか、 途中から貴女見てたでしょう?」

 

ティーカップを手に持ちながらレミリアは聞く。

 

「まぁ、 いくつかわからないことがあったし……、 ところでアンタ傷はいいの?」

「あら、 あの程度で私が傷つくとでも?」

 

頬をつきながらやる気のなさそうに聞いていた霊夢に気遣われて少しカチンときたのか意地を張るように答えた。

 

「エイっ」

 

「っ~~!!!」

 

突然、 霊夢がレミリアの腕をつつく。

本当に軽くつついただけなのだが、 レミリアは声にならない叫びをあげていた。

 

「なにすんのよこの淫乱巫女!!!」

「やっぱり痛いんじゃないの」

「…………っはぁ……。 全く、 私に傷をつけるだけじゃなくてダメージまで残すなんて、 あそこまでとは思わなかったわ」

「全部アンタの自業自得じゃないの」

 

紅茶に手を伸ばして、 ため息のような呆れる仕草を見せる霊夢。

 

「そ、 そんなことはないわ! 元はと言えば貴女が作った原因でしょう?」

「何いってるのよ、 アンタが『ルーミアの本気を見たい』なんて私欲を満たすがためにチルノを利用するからでしょうが」

「別に利用したわけじゃないわ、 元々フランの遊び相手になってもらおうと思ってたけど、 途中で面白そうなこと思い付いたから実行しただけよ」

「九割九分九厘アンタが悪いじゃない」

 

カリスマ吸血鬼は博麗の巫女相手となると少々そのカリスマが消えるようだ、 いいようにもてあそばれていた。

 

「それにしても、 一体なんなの? ルーミア……宵闇の妖怪って」

「わざわざ言い直さなくていいのに」

「別にいいでしょ! ……とても貴女が無関係とは思えないのだけれど、 あのリボンとい、 “封印”といい」

 

だんだん素のレミリアが見え隠れしているがあえて霊夢は突っ込まなかった。

というか、 この吸血鬼が実は結構中身が幼女であることなどとっくに知っていた。

 

「……………なんだっていいじゃないの、 平和だし」

 

紅茶を啜り、 そう呟く霊夢を見て、 レミリアは少し微笑む。

 

「……そうね、 フランにもいい遊び相手が増えたことだし、 よしとしてあげるわ」

「あれ? てっきりアンタも遊びに混じりたいとばかり思ってたけど」

「ぶっ! そ、 そんなわきぎゃにゃいでしょうがー!!」

「誰が腋ですって!?」

「言ってなぅにゃー!?!?」

 

 

幻想郷は、 なんだかんだ平和だった。




初、 東方の二次創作です。
曲解や二次創作ならでわの勝手な設定等ありますがご了承ください。
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