GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜   作:霧斗雨

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第12話です。
ついに極東へ。


第12話 極東支部

「よ、久しぶり」

 

「……お久しぶりです」

 

懲罰房の中から、レイはシエルに手を振った。

あの後、救助隊に神機兵から引っ張り出されたレイは、そのまま懲罰房送りとなった。

当の本人は、仕方ねぇと一言だけ言って苦笑すると、抵抗すること無く素直に懲罰房に入った。

一週間の謹慎処分。

それが、シエルを助けたレイへの懲罰だった。

面会することも可能だったが、シエルは面会に行くことが出来なかった。

行ってどうしたらいいのかわからなかったのだ。

それを見かねたジュリウスは、シエルにレイの食事を渡し、持っていくように言った。

食事と言っても、栄養を補給するための物であるだけが目的に作られたペーストの様なもので、量もスープ皿の半分程度という見るからに少ないので腹が膨れるようなものではないのだが。

初めは断ろうと試みたが、隊長命令だと言われてしまい、シエルはそれに従った。

懲罰房のレイは、元気そうだった。

 

「食事をお持ちしました」

 

「お、サンキュ。丁度腹が減ってきた頃合だったんだ」

 

懲罰房にある唯一の窓から食事を受け取ると、レイはサッと口に運んで大して噛むことなく飲み込む。

ただでさえ少ない貴重な食事の筈なのに、そんな食べ方で大丈夫なのだろうか。

 

「その食べ方で足りるのですか?」

 

「まぁね。むしろこれを味わって食う方が地獄。これだったら前いたところの方がまだ……いや、飢えない分まだこっちの方がマシか?いや……うーん、どっちもどっちだな」

 

無味無臭ってのは不味いんだ、そう言ってレイはシエルに笑顔を向けた。

 

「そうですか……」

 

「そういや、シエルは前に神機兵に乗ったことがあるんだっけか?あれ、すげぇな。自分の手足みたいに動かせるし、手のひらの感覚まで伝わってきてさ」

 

「!」

 

これを聞いて、シエルは赤くなった。

そこまで伝わっているということは。

 

「それは……私の重みまで伝わっていたということでしょうか……」

 

「いや、伝わってたのは伝わってたはずだろうが、俺が実際それどころじゃなくてさ。わかんなかった」

 

「そ、そうですか……」

 

そんなに真面目に答えられるとは思っていなかった。

シエルはレイの顔から目を逸らす。

今、レイと話すのが辛かった。

 

「で、大方ジュリウスに言われてきたんだろうけど、何か、言いたい事でもあるか?あるなら聞くぞ」

 

レイは笑顔でシエルに問いかけた。

ビクリ、とシエルの体が震えたのが見えた。

 

「……君の行動は……理解に苦しみます」

 

震えた声音で、シエルは喋り始める。

あの日から今日まで、怖くて聞けなかったことを。

 

「こんな結果になることが分かっていて、あんな無茶を?神機兵の搭乗だって、入念な事前検査が必要なんですよ。最悪命を落とす事だってありえるのに……ホント……命令違反だらけですね、君は……」

 

「だろうなぁ。でも、シエルには言われたくないかな」

 

「え……?あ……」

 

そう、人のことは言えないのだ。

シエルは、ジュリウスの命令を無視したのだから。

 

「そう、ですよね……」

 

力なく呟き、シエルは俯く。

レイは、シエルをジッと見つめた。

 

「シエル。お前、何でジュリウスの命令を無視したんだ?俺も、お前のこと言えねぇ事をしたけど、ちゃんと理由がある。俺は、もうあの雨のせいで、人が死ぬのは見たくねぇ。それが、仲間ならなおさらなんだ。だから、ここまでしたんだ。シエルにはねぇのか?そういう、意思っていうのかな、そういうもん、あるんじゃねぇの?」

 

「え……」

 

シエルは、レイが何を言っているのか理解するのが大変だった。

あの時は、それが最善だと思ったから私は。

 

『隊長……隊長の命令には従えません』

 

言うことを聞かなかったのだ。

でも、どうしてそれが最善だったのか。

だってそれは。

 

『不十分な装備での救援活動は、高確率で、赤い雨の二次被害を招きます』

 

何故、あの時こんなことを言ったのだろう。

ジュリウスの命令を無視してまで、どうして。

ここまで考え、シエルはハッとした。

嫌だったのだ。

自分のせいで、ナナにロミオ、ギルやレイが赤い雨に濡れてしまうのが。

それなら自分だけで済めば、と思ったのだ。

 

「命令よりも……自分よりも……守りたい、大事なもの……」

 

シエルは、窓枠に置かれたレイの手をそっと触った。

その、人の温度を感じる。

 

「……ちゃんとあるんだな」

 

「はい……とっても……暖かいですね……」

 

そう言って、シエルは微笑んだのである。

 

ーーーー

 

「朽流部副隊長、本日より謹慎処分は終了。現場復帰を許可する」

 

「へーい」

 

シエルが面会に来てから二日後、レイはようやく懲罰房から出ることが出来た。

自分的には悪いことをしたとは思ってもいないが、ジュリウスに謝っておくことにした。迷惑をかけたことに変わりはない。

 

「えーと……悪かったな」

 

「命令違反は時として取り返しのつかない事態を招くことがある。ましてお前はブラッドの副隊長…………ほかの隊員たちの模範となるべき存在だ。まだ少々自覚が足らないようだな」

 

「……以後気をつけます」

 

レイがバツが悪そうに俯いた。

それを見て、ジュリウスが吹き出すように笑った。

 

「フッ、よもやあそこまで大胆な行動に出るとはな……頼もしい限りだ」

 

「お、おう……?」

 

「おまえがいないとどうもブラッドの連携が上手くいかなくてな……今日からしっかり働いてもらうぞ、副隊長」

 

レイの肩を軽くポンと叩き、ジュリウスは微笑みながらロビーに戻っていった。

 

「……あいつにゃ適わねぇな」

 

その背中を追いかけようと足を出した瞬間、ジュリウスがバッと振り返って言った。

 

「うおぅ!?」

 

「ああ、その前に今からメディカルチェックを受けてくれ。その後、ブラッド全員にラケル先生から話があるそうだ。仕事はその後からだな」

 

「……それ先に言えよ。今の怖いわ」

 

ーーーー

 

ジュリウスに言われて仕方なくメディカルチェックを受けたレイは、ラケルの部屋に入った。

既にブラッド全員が揃っており、気まずく思いながらも一箇所不自然に空いてある席に腰を下ろす。

というかそこしか空いていなかったのだ。

 

「私はレイを誇りに思っています。愛する家族を守ってくれて本当にありがとう……」

 

「はあ……」

 

「ただ……神機兵への搭乗は褒められたものではありませんね。アレは搭乗者の精神に大きな影響を与えかねません」

 

「……すいません」

 

静かに怒ったあと、ラケルは話し始めた。

まず、神機兵の無人運用のテストは極東支部につくまで一時凍結されたこと。

レイのメディカルチェックに異常はなかったこと。

シエルが血の力「直覚」に目覚めたこと。

後、レイの「血の力」について。

 

「貴方は……萌芽を待つ種の、土であり、水であるもの……「喚起能力」……とでも呼びましょうか。レイ……貴方には心を通わせた者の「真の力」を呼び覚ます力がある……血の導き手は、来れり……ってことね。フフッ」

 

「なるほど、だから今までよくわかんなかったのかー。サポート系?だったんだなー」

 

「……喚起能力、ね」

 

レイは内心、少しがっかりしていた。

分かったのはいい。

でも、なんというか、できたらもっとわかりやすい派手な力の方が良かったなと。

そう考えるレイに、ナナが声をかけた。

 

「ねぇねぇレイ。シエルちゃんに一体どんなことをしたの?」

 

「え」

 

シン……と空気が固まった気がした。

話をしたことくらいしか何もしていない。

固まったレイを見かねたジュリウスが助け舟を出した。

 

「相手の意志や感情の爆発に共鳴して感応し、触媒となって血の目覚めを促す……それでシエルの「血の力」が覚醒したんだ」

 

「じゃあシエルちゃんも感情がバクハツしたってこと?シエルちゃんでもバクハツすることなんてあるんだねー」

 

「えっ!?あ、は、はい……そうですね……」

 

「なんだこれ……」

 

ナナの能天気な声がラケルの部屋に響く。

それが、皆の笑いを促した。

クスクスと皆が笑う。

 

「たしかにおまえが来てからブラッドは随分変わった……これもきっとおまえの「力」のなせる業かもしれないな。そろそろ極東に到着する……今以上に忙しくなるだろう。頼りにしているぞ副隊長」

 

それからしばらく談笑した後解散となり、できるだけ自然に見えるようにレイはすぐにラケルの部屋から出て、ロビーに向かった。

どうも、あの博士は胡散臭くてならないのである。

さっきの話の時だって、ずっとレイの方を見ていた。

全く視線が外れないのだ。

意識して見ないようにしていたが、気になって仕方がなかったし、その視線に違和感を感じてしまっている。

おかげで警戒しかしていない。

 

「あの博士……なんか変な感じがするんだよなぁ……。とはいえ気のせいかも知んねぇし……。で、俺になんか話でもあるのか?ギル」

 

「副隊長……シエルを助けに行った件……なんで、あんな無茶をした?」

 

レイが笑顔でくるりと振り返ると、そこにはギルがいた。

ジッとレイを見つめ、レイに問う。

 

「いやぁ、ああするしか思いつかなくてさ。心配かけて悪かったよ」

 

レイは素直にそう答えた。

ギルが何時に無く真剣であったので、レイも真面目に答えたのだ。

 

「あんまり独断で無茶はするな……万が一があった場合、残されたヤツは一生、お前の命を背負い続けるんだ……。お前の前向きなところは嫌いじゃない。だが、「自分だけは大丈夫」とは思わない方がいい」

 

ギルの表情に、後悔の色が浮かんだのをレイは見逃さない。

ここに来るまでに、ギルに何かがあったのだ。

レイはそれを知りはしないが、それはギルにとって辛い出来事だったに違いない。

だから、レイにわざわざ忠告してきたのだ。

 

「ギル……。忠告、ありがとう。悪かった」

 

レイはギルに頭を下げる。

 

「いや……説教くさくてすまなかった……じゃあな」

 

レイから目を逸らし、ギルは去って行った。

レイはその背中を見つめる。

その背中は、とても辛そうに見えた。

 

ーーーー

 

『現在フライアは「赤い雨」を抜け極東地域を南下中……繰り返します。現在フライアは「赤い雨」を抜け極東地域を南下中です……』

 

フランのアナウンスがフライア中に響く。

ブラッドが去り、ラケルはパソコンのデータを整理し始める。

 

「ラケル。そろそろ教えてほしいのだけど、極東に来たホントの狙いは……何?」

 

レアが、訝しげにラケルに問う。

どうも、何か裏があるような気がしてならないのだ。

 

「グレム局長にお伝えした通り、神機兵とブラッドの運用ですわ、お姉様」

 

レアの思いとは裏腹に、しれっとラケルは答える。

 

「なら、いいのだけど……。神機兵は私達の悲願。何があっても、認めさせなくては……」

 

「ええ、その通りですわ、お姉様。彼らにはしっかり働いてもらいましょう……。あら?もう極東支部が見えるようですよ。お姉様、ほら」

 

パソコンのモニターに映し出された外部カメラに映る極東支部を、レアに見せながら、ラケルは微笑んだ。

 

ーーーー

 

 

極東について、支部長に挨拶に行くと言うことでブラッド全員で支部長室に入った時、レイはハっと息を飲み込んだ。

レイはこの博士を知っている。

 

「ブラッド隊長、ジュリウス・ヴィスコンティ以下隊員各位、到着しました」

 

「ようこそ極東支部へ!私がここの支部長、ペイラー・サカキだ。エミールが世話になったそうだね。できれば直接会いたいと思っていたんだ」

 

「あれでしょ、マルドゥーク!撃退したのコイツですよ、コイツ!」

 

ロミオがレイを指さした。

サカキと目が合い、慌てて逸らした。

 

「なるほど、君か!ありがとう、私からも礼を言うよ」

 

「……あ……どうも」

 

「さて、すぐにでも任務に入ってもらいたいところだけど……まずは改めて極東支部が置かれている状況について説明するよ?」

 

クスリ、とサカキが笑って、話題に入ったので、レイはそっと視線をサカキに戻す。

その視線が、チラチラとレイを見てくるのが、非常に不快である。

 

「いま極東支部は、いくつかの大きな問題に直面している。ひとつは「黒蛛病」……「赤い雨」を浴びることによって発症する未知の病だね。そしてもうひとつが……」

 

「「感応種」ですね」

 

「そう、いわゆる接触禁忌種と呼ばれる、新種のアラガミだ。……君ら「ブラッド」は交戦経験があるんだよね?知っての通り、感応種は「偏食場」、つまり強力な感応波を用いて、周囲のアラガミを従わせる、特異な能力を持っている。神機もオラクル細胞のかたまり、要するにアラガミの一種だ。普通なら感応種の影響で、機能停止してしまうけど……君たち「ブラッド」はその感応波の干渉を押しのけてこれを撃退した。……実に素晴らしい、とても心強いよ」

 

サカキは笑みを浮かべたまま、ズラズラと説明を続ける。

ロミオやナナは、最早頭がついてけていないようで、退屈そうな顔をしている。

相変わらず、話が好きな人である。

 

「さて……「赤い雨」と「感応種」、この二つの問題の解決を君達にも協力してほしい、というわけさ……どうだろう?」

 

「ええ、承りました。最善を尽くしましょう」

 

「ありがとう、こちらも惜しみないサポートをしよう。ここを自分たちの家だと思って、くつろいでくれれば幸いだ。……さて、話が長くなってしまったね」

 

ようやく終わったとそう思った瞬間、支部長室のドアが空き、頭に黄色いバンダナを巻いた青年が入ってきた。

 

「博士ー!歓迎会のスケジュール、みんなに聞いてきましたよ……。あれ、もしかして、ブラッドの人達?」

 

「ありがとう、コウタ君。そうだよ、彼らがブラッドだ」

 

コウタと呼ばれた青年はニコリと笑った。

 

「極東支部第一部隊隊長、藤木コウタです。これから、よろしくね!」

 

「ブラッド隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。こちらこそよろしくお願いします」

 

ジュリウスが会釈をした。

コウタも会釈を返す。

 

「あー、今は歓迎会の準備してるからさ。その間、ゆっくり極東支部を見て回ると、イイよ!」

 

「ねえねえ、コウタさん!歓迎会って私たちの?どんな、ごちそうが出るんですか!?」

 

「ナナ、いきなりそれかよ!図々しいぞ!」

 

顔をキラキラさせながら聞くナナを、ロミオがたしなめた。

コウタはそれに笑顔で対応する。

 

「お、期待しといていいよ。極東支部のメシはうまいぞー!」

 

「え、ホントですか!?」

 

「やったー!」

 

「お前も期待してんじゃねぇかよ」

 

あはは、と笑いながらコウタは部屋を後にした。

 

「では、私たちもこれで」

 

「うん、これから、よろしく頼むよ。ああ、そうだ、マルドゥークを撃退したのは君だったね?少し話があるんだけど、いいかな?」

 

「……いいですよ。悪いな、先出ててくれ」

 

「了解した。失礼の無いようにな」

 

そういうと、ジュリウスはレイ以外を引き連れて部屋を出ていった。

レイは顔をしかめながらサカキに向き直る。

 

「久しぶりだね、体の調子はどうだい?」

 

「……お陰様で。その件はありがとうございました。そしてすみません」

 

「そう、警戒しないでくれたまえ。何も、脱走したことを怒ったりしようというわけじゃないんだ。あの後、みんなで探し回ったりしたし、色々大変だったんだけど、そのことじゃないよ」

 

「……」

 

怒ってるじゃねぇか。

レイは、サカキの顔をチラリと見る。

相変わらず笑みを浮かべていて、機嫌がよさそうに見える。

だが、それがレイは恐かった。

 

「本題に入るよ。と言っても大したことじゃないんだ。君にはメディカルチェックを受けて欲しいんだ、極秘にね」

 

「……なんで」

 

レイは思い切り顔をしかめてサカキを見た。

訳が分からない。

何故、ここでメディカルチェックを極秘で受けないといけないのか。

 

「昔、君の体の状態について説明したんだけど、覚えているかな?」

 

「……いえ」

 

「じゃあ、メディカルチェックの後にまとめて説明をするよ。言ってしまえば、それの経過を見たいんだ。普通に生活をしているから、大丈夫だとは思うけど、一応ね。ユウ君にも受けてもらってるチェックだ、安心して欲しい」

 

「……わかりました。何時ですか」

 

レイが了承すると、サカキは嬉しそうに笑った。

 

「今からだよ。話は通してあるし、ジュリウス君には連絡を入れておくから、安心して受けてくれたまえ」

 

「……了解しました、では」

 

レイはサカキに礼をすると、部屋を出た。

緊張の糸が切れたのか、身体中から力が抜ける。

恐かった。

 

「これからずっと顔合わせるんだよなぁ……」

 

はぁ、と溜息をつき、レイはメディカルチェックを受けに向かった。




ついに来ました極東支部!
ということで少しテンションが上がります。
ここからフランさんの活躍が極端に減るのが少し残念ですが、まぁ仕方ないと割り切ろう。
クレイドルのアリサとコウタとの絡みが書きたくて仕方が無いです。
そこまで早く行かないと行けないのですけどもね。
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