GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜   作:霧斗雨

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第15話です。
ハルオミ登場。
ルフス・カリギュラ編スタート。


第15話 ハルオミとギル

ミッションに行く前に、腹ごしらえをしようとラウンジに入ったレイは、ふと、テレビの方に目をやった。

ロミオとコウタが、じっとテレビの前に待機している。

レイに気がついたロミオが、手を振りながら呼んできた。

 

「あ、副隊長!こっちこっち!」

 

「んあ?」

 

「なにボーっとしてんだよ!シプレ!シプレの新曲!」

 

「シプレ?何それ?」

 

ロミオとコウタが指さすテレビに目をやると、金髪をツインテールにした女の子が現れ、曲が流れ始める。

 

♪♪♪〜♪♪♪ ♪♪♪〜♪♪♪

 

『神機兵!シルブプレ?』

 

「……うん、と」

 

なんというのだろう。

何とも言えない違和感が満載だった。

テレビでシプレという所謂バーチャルアイドルが歌って踊っている。

ここまではいい、歌っているのが人間じゃないだけで、至って普通のCMだ。

自分のいたところではテレビなんて高価なものは持っていなかったが、フライアで見てからというもの、その手の番組がよく流れていることを学んだ。

その観点からいけば、CMに流れている事自体に違和感はない。

問題は内容だ。

女の子の恋とかなんとかという歌詞からして、恋などについて歌っている曲の筈なのに、何故か神機兵と合わせてあるという何とも言えないミスマッチ。

キレのいい踊りで踊るシプレの周りに立つ神機兵という物凄いシュールな絵面。

シプレの手から放たれた電撃が、神機兵を起動させ、決めセリフの後にバンッ、と現れる神機兵応募の文字。

このCMにこの曲を使うのは、明らかに間違っている。

というかこの方向性はおかしい。

 

「新曲……すげえ、いい……!」

 

「分かってますね、コウタさん……シプレの魅力……ガチで全開でしたね……!」

 

見終わったコウタとロミオが興奮しながら二人で話を始める。

 

「俺さ……大きくなったら、神機兵に乗るんだ……」

 

「マジっすか……ヤバイっすね……」

 

「全力でやめろと言っておく」

 

神機兵に無理やりだが乗り込んだことのあるレイは、割と真剣にコウタに忠告した。

というか、あのCMで応募するなんて馬鹿らしい。

 

「だって、すごかったよなあ!シプレの未来でレトロなかわいさ?バリバリでさー!」

 

「分っかる!めっちゃ分かる!」

 

「分かってくれるか!ロミオ、今日は語り明かそうぜ!」

 

「了解っす!とことん語りましょう!」

 

二人は意気投合し、レイをほったらかして語り始めた。

 

「おい、俺を呼び止めた意味はなんだったんだ?」

 

ほったらかされながら、レイは首を傾げるしかなかった。

 

ーーーー

 

もやもやしたものを抱えながら、ムツミに拵えてもらった軽食を平らげ、ギルとミッションをこなし、大型モニターの前でブリーフィングを行っている時だった。

 

「おお!ギルじゃないか!」

 

不意に、頭上から声が聞こえた。

二人して見上げると、そこには深緑の髪の青年が立っており、こちらを見下ろしている。

レイには見覚えがない。

さっきギルを呼んでいたし、あの青年はギルの知り合いだろうか。

 

「ハル……さん?」

 

「ギルの知り合いか?」

 

レイはギルの方を見る。

ギルは、驚きで声を失っていた。

ハル、と呼ばれた青年は、二人の前までやってきた。

 

「極東に来てんなら、言ってくれりゃいいのに」

 

「いや……ここにいるって、しらなかったッスよ」

 

「あれ?言ってなかったっけ……?いやあ、いろいろ支部を流れ歩いてたからさー。そっか、グラスゴー以来か。ずいぶん昔の気がするな……」

 

どうやら、ギルのグラスゴー支部時代の知り合いらしい。

ハルは、昔を懐かしむような顔をした。

 

「そうですね……ハルさん、そういや極東出身でしたね……。ああ、紹介する、真壁ハルオミさん、グラスゴー支部で、一緒にチームを組んでいた。ハルさん、今所属している「ブラッド」の副隊長です」

 

「ども。朽流部レイです」

 

「ああ、ブラッドかー!うっすら聞いた!なんかすごいんだってな、よく知らないけどさ」

 

ははは、とハルは笑顔を見せる。

レイは、極東に来て大して時間は経っていないのに、うっすらと耳に入っていることに驚いた。

話広まるのが早すぎるだろ。

しかも微妙に誇張されているし、なにより、そこまでのことをまだやっていない。

 

「俺は真壁ハルオミ、極東市部第四部隊の隊長だ。まあ、極東支部はユルくてなー、ブラッドみたいにしっかりした部隊編成でもないんだが……」

 

「ハルさーん、サカキ博士への報告、先に行ってますよー」

 

「へいよー」

 

ハル、もといハルオミの話の最中、ひょっこりと1人の女が顔を出した。

長い赤毛をポニーテールにしていて、どこか頼りない感じがした。

きっと自分よりもベテランなのだろうけれども。

 

「ハルさん、彼女は?」

 

「今のが、第四部隊の唯一無二の隊員、台場カノンちゃんだ……まあ、いろいろ頼りないんだが……出るとこ、出てるからまあいいかなー、的な」

 

「……また、セクハラで査問会に呼ばれますよ?」

 

「……またって」

 

前科があるのかこの人は。

レイは軽蔑の眼差しをハルオミに向ける。

この前の神機兵無断搭乗及び無断使用事件で査問会にかけられそうになっているため、人のことは言えないが、理由がセクハラとは。

何をやってるんだ。

 

「まー、そういうわけだ。ギルが何かやらかした時は、遠慮なく言ってくれ。斜に構えてるコイツの扱い、俺は相当プロだぜ?」

 

「ハルさん……」

 

「うっす、覚えときます」

 

「おい」

 

ギルが困ったような顔をした。

今のところは乗るところだと思ったのだが、違ったのだろうか。

そもそもギルがそういうのが好きじゃなかったか。

 

「ハハッ、冗談だよ。さて、ちょっと失礼するわ。近々飲むぞ、またな」

 

ニコリといい笑顔を見せ、ハルオミはヒラヒラと手を振ると、サカキ博士の部屋に向かって行った。

 

「悪い、先に部屋に戻る」

 

「え?あ、おう」

 

ギルは、一言だけ残して部屋に戻っていってしまった。

普段より帽子を深くかぶり、表情がほぼ見えなかったのだが、ちらっと見えた顔色は、普段よりも悪く見えた。

 

ーーーー

 

部屋に戻ったギルは、ソファに腰掛けてグラスゴー支部での出来事を思い出す。

彼女は、いつも笑っていて、前向きで。

 

「でも、まあ失敗してもいいじゃない。諦めなければ、きっとそのうち成功するでしょ」

 

あの日もそう言って笑ったんだ。

 

「こんな風に、お互いが支えられるだけ、支え合うのって相当素敵なことだと思うんだよ……ね?ギル」

 

彼女は、確かに自分を支えてくれたのに。

それなのに、俺は。

 

「ギル……わかってるよね……私を……」

 

壊れた腕輪から、黒い煙が立ち上る。

自分の腕の中で、彼女は懇願するように言う。

 

「だから、お願い……ギル……私を……」

 

必死に願う。

やめろ、言わないでくれ。

 

「殺して……」

 

「っ!」

 

気がつくと、そこはグラスゴーではなく、極東支部の自室だった。

どうやら、うたた寝をしてしまってその中で夢を見てしまったらしい。

夢の中の彼女の最後は、いつまでも色鮮やかで。

 

「ケイトさん……」

 

ーーーー

 

歓迎会明けから、怒涛のミッションラッシュをこなし続けて二日が経った。

思っていたよりも回されるミッション量が多く、片っ端から片付ける日々が続いており、最初は戸惑っていたブラッドの皆だったが、高い適応能力を見せ、極東支部に馴染んでいた。

そんな中ギルはハルオミに誘われ、ラウンジで2人ゆっくりと酒を飲んでいた。

 

「こうやって飲むの、ホント久しぶりだな〜」

 

「そうっすね。ホント……久しぶりですね」

 

「どうだ、今のチーム」

 

「悪くないっすけど……年下は苦手です」

 

「ハハッ、お前もそんなことを言うようになったのか。老けたなあ」

 

「ハルさん……」

 

ハルオミがギルを茶化す。

ギルは、少し困ったようにグイッと酒を煽る。

 

「あ、そういえば、アイツ……ほら、あの……お前んとこの副隊長!アイツ、面白そうなヤツだよな」

 

「ああ、何というか……柔らかい感じがして、不思議な奴です。いつだって前向きで……」

 

レイのことをハルオミに説明する。

普段は、ぶっきらぼうな喋り方で、どことなくやる気がなさそうにしている。

なのに、いざという時自分の身も顧みずに一番に飛び出していける。

思いつきで行動する。

こっちに歩み寄ろうとしてくる。

危険な目にあっても、どこまでも前向きで、まるで。

 

「あれは……ケイトと同じ匂いがするな。人から好かれて、何でもかんでも、すぐに背負っちまう……」

 

「そうっすね……それで、つい……一度、説教じみたことをしてしまいました」

 

「ああ、無駄だよ、無駄無駄。ケイトもそうだったろ?」

 

ハルオミに笑われ、ギルは、苦笑した。

実際、そのとおりだったからだ。

反省しているような素振りをしていたが、次同じ事が起これば、きっとアイツは同じことをするだろう。

ケイトも、そうだった。

 

「結局、どこまでも前向きで、キラッキラしてて……そのくせすごい頑で、チットモこっちの言うこと聞きゃしないんだ……」

 

ギルとハルオミは、かつての仲間の神機使いを思い出す。

優しくて、強くて、前向きで、頼りにしていたかつてのリーダー。

今は亡きケイトのことを。

 

ーーーー

 

「まあ何とかなるよ、ギル!前向いていこう!」

 

そう言って、ケイトは笑った。

 

「人手はいつだって足りてないんだから、結局できる人が、やるしかないんだからさ。それに、私……多分もう少しこの仕事続けたいんだ、きっと。手の届く人たちだけでも、自分の手で守ることができるからさ……」

 

「それでも、自分はあんまり納得いってないです」

 

負けじとギルも言い返す。

 

「ウチに配属される予定の新型神機使いが極東に持っていかれてるのは、単純に支部長の怠慢っすよ」

 

「俺の故郷をバカにしてんのか〜?」

 

「してないっすよ!」

 

ケイトの膝枕の上で、ハルオミが言った。

この二人、夫婦だからこんな風に問題はないが、パッと見ただのセクハラである。

 

「極東は、新種のアラガミが集まる最前線じゃない。戦力を集めなきゃいけないのは、仕方ないでしょ」

 

そんなハルオミの頭を優しく撫でながら、ケイトはクスクスと笑う。

 

「でも、例のエイジス計画とかも結局失敗してるじゃないですか。そんな余裕があったら……」

 

「まあねー、エイジス計画、何で失敗しちゃったんだろうねえ。考え方はすごい良かったのにさ。でも、まあ失敗してもいいじゃない。諦めなければ、きっとそのうち成功するでしょ。私達、神機使いは、フェンリルの科学者達に支えられているんだし、そのフェンリルは、私達が支えてるんだし。こんな風に、お互いが支えられるだけ、支え合うのって相当素敵なことだと思うんだよ……ね?ギル」

 

事実、そのとおりだった。

フェンリルがいなければ、自分たち神機使いはやっていけず、科学者はサンプルをとってくる神機使いがいなければやはりやっていけない。

失敗しても、諦めなかった先人達のおかげで、今の世界があるのだ。

それでも。

 

「俺は……ケイトさんやハルさんを支えられるようになりたいだけです……そして……引退勧告を無視して、戦い続けてるケイトさんに……早く、ハルさんと……幸せな家庭を築いてほしいだけです」

 

それは、ギルの本心だった。

いつ、自分がアラガミになってしまうかも分からない。

それでも、ケイトは戦場に立ち続けている。

ハルオミだって、内心心配に違いない。

それをケイトもわかっている。

ギルが、支部長に直談判までしたことも知っている。

 

「ギルは、優しいね。分かったよ。人員の補充の件は、私から支部長にちゃんと伝えるからさ。ギルはもう、直談判とかしちゃダメだよ?」

 

「……了解です」

 

ケイトはギルの頭をそっと撫でた。

 

「うん。で……それはそれとして。その気持ちは嬉しいよ、ありがと、ギル」

 

「ギル〜、俺の目の前であんまりいちゃつくなよ?ケイトは俺の嫁だからな〜」

 

「いちゃついてるのは、そっちじゃないっすか!全く……」

 

ギルの頭を撫でていた手が離れ、ハルオミの頭に戻っていった。

その手が、二度と自分やハルオミを撫でてくれなくなるなんて、この時は誰も想像していなかった。

 

ーーーー

 

「いいヤツほど早く逝っちまうってのは……何でなんだろうなぁ」

 

手に持ったグラスを揺らしながら、ハルオミは言った。

話の途中から黙って俯いてしまっていたギルが、顔を上げてポツリと呟く。

 

「ハルさん……俺が、あの時……」

 

それを、ハルオミは遮る。

 

「あー、悪い!昔話はこのくらいにしとかないとな〜。ケイトに、「前向いていこう!」って言われちまう。……だよな、ギル」

 

いつまでも後ろを向いてはいられない。

ギルは、自分の代わりに、愛する人をアラガミにさせないように介錯を行った。

それを、いつまでも引きずる事を、ケイトも望んでなどいないだろう。

 

「……はい」

 

ギルは、再び俯いた。




ハルさん登場。
ここから、一気にルフス・カリギュラ編終わらせますよ!
次とその次くらいで終われたらいいなぁ。
その後、少しキャラエピを挟みます。
ここで私は失敗に気が付いた。
シエルのキャラエピやって無いようわあああ。
ということで、シエル、ギル、ハルオミ、リッカの四人をやっていこうと思います。
シエルは、場所がフライアから極東に変化してしまう為、どうやろうか考えていますが、まあほぼそのままやるでしょう。
文字数考えるとキャラエピが前後編になる件。
※シプレの歌は歌詞を削除しました。
教えてくださいました方、ありがとうございます。
感想、お待ちしています。
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