GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜   作:霧斗雨

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第18話です。
サテライト拠点のお話。


第18話 葦原ユノ護衛任務

ギルとハルオミの因縁の相手、ルフス・カリギュラを倒してから数日が経った。

ギルが血の力「鼓舞」に目覚め、その効果により普段の戦闘が随分早く終わるようになっていた。

そんな中、レイ達は新たな任務に当たった。

クライアントの護衛。

ただでさえ珍しい内容の任務である。

それに護衛の対象は葦原ユノと高峰サツキの2名。

内容は、サテライト拠点への慰問だった。

ブラッド全員、ピッタリとした制服に着替え、砂嵐の中を二台のトレーラーが進む。

途中でアラガミの反応があり、ブラッド隊は即座にトレーラーから降りて戦闘に移るのだが、砂嵐が酷過ぎてまともにアラガミを視認できない。

無線で連絡を取り合いながら応戦を試みるも、ノイズが混ざりまくっており何を言ってるのか分かりにくい。

これでは、いくらシエルの「直覚」でアラガミの状態が分かるようになったとはいえ、そもそも攻撃が当たらないうえに連携が取りにくい。

今までにない最悪のコンディションである。

 

「ロミオ、ザイゴート行きましたよ!」

 

「こう視界が悪くっちゃ当たんねぇよ!」

 

「いだッ!砂が目に入ったぁ!!」

 

「ゲッ!ナナ、後ろ後ろ!!」

 

視認できる範囲にアラガミが入って来た時にはもう、ギリギリ攻撃が避けられるか喰らうか、又は攻撃を当てられるかスカするかというそんな状態での戦闘の中、一人だけ的確にアラガミを倒すレイがいた。

 

「よっと」

 

見えないならもう目を閉じればいいじゃないとばかりに、目を瞑ったまま飛び回っては切り裂いては貫く。

普段の戦闘から視聴覚よりも第六感ともいえる感覚に頼るレイだからこそできる芸当である。

 

「なんでお前そんな事できんだよ!」

 

「え、そりゃ慣れでしょ。皆もやってみ、意外とできると思うぜ」

 

「できるかぁ!」

 

「はは、だよな」

 

ロミオに怒鳴られ、レイは苦笑しながらザイゴートをナナの前に落とした。

 

「ナナ、落としたぞ!」

 

「おりゃあああ!」

 

落とされたザイゴートは、ナナの気合の声とともに振り下ろされたブーストハンマーによって見事に粉砕される。

しかし、少しずつしか倒せていないため中々終わらない。

 

「チッ、うぜぇな!響け!」

 

ギルが、血の力を解放する。

 

『ギルさんの感応波の影響によりみなさんの攻撃能力が一時、増幅されます!』

 

「一気に叩くぞ!」

 

「ギル、ナイス!」

 

ギルの血の力「鼓舞」は、全員の攻撃能力が上昇するのだ。

何度も攻撃しないと倒せない相手でも、少ない手数で倒すことが可能になる。

お陰で先程よりは楽に倒せるようになり、殲滅を完了する事ができた。

神機をアタッシュケースに詰め、各々が護衛するトレーラーに乗り込む。

乗り込んだ2号車の中には、ユノが待っていた。

運転手はサツキだ。

全員が乗り込んだ事を確認すると、トレーラーはゆっくりと走り出した。

 

『……あ、2号車、2号車聞こえる?』

 

「おっ、回線回復したみたいだな」

 

『おー?よかった。えー、こっちは特に問題なく機材をちゃあんと護衛してるけど、そっちのユノさんの護衛はどんだけ楽しくやってやがりますかオーバー?』

 

ロミオの刺々しい声が聞こえた。

当たり前だ、ロミオはユノのファンなのだから。

機材の護衛よりも、ユノ本人の護衛をしたかったに違いない。

サツキの人選によって外されたけれども。

 

「はーい!お歌を歌ってもらってまーす!」

 

『ギィイイイ』

 

『ロミオ、うるせえぞ』

 

ナナが楽しそうに言ったせいで、ロミオが嫉妬の唸り声を上げた。

ギルがロミオを諌める。

 

「みなさん、今回は無理を言ってすみません。護衛をお願いしてた方々が突然来られなくなってしまって」

 

「全然いいよっ!ユノちゃんとちゃんとお話してみたかったし!」

 

『俺も話したいよぉぉぉっ!』

 

『うるせえぞ』

 

全くだ、そう呟きながらレイは無線機を外す。

デカイ声で喋りやがって。

 

「あれ、無線機、外しちゃっていいんですか?」

 

「ん、ああ。戦闘のために音量上げてたからなぁ。普通の時は音量、もうちょい下げないとつけてらんないんだ。ちょっと弄るだけ」

 

そう言って、無線機の音量を最小の音量まで抑える。

 

「レイ、いっつも思うんだけどそれ、聞こえるのー?」

 

「余裕」

 

音量を抑えた無線機を耳につけ直し、上手く聞こえるかどうかを確認する。

いつもの通りしっかり聞こえた。

 

「レイ耳いいもんねー」

 

「あんまいいことないけどな?聞こえすぎるのも困るもんだぞ?」

 

レイは苦笑を浮かべた。

普通の人からして普通の音量が、時々爆音に聞こえたりするし、新しい住処に入った時には嫌に物音が気になったりする。

多大な情報をもたらしてくれるが、不便も多い。

視覚にしても叱りである。

 

「ハイハイ、雑談はそれぐらいにしてくださいねー。そろそろ着きますよー」

 

サツキの声に、レイはトレーラーの窓から外に目をやる。

 

「……あれが」

 

独立支援部隊(クレイドル)の方々に中心になっていただいて建設を進めているミニアーコロジー……サテライト拠点です」

 

ユノが中央の建物を指差した。

 

「中央のシェルターはアラガミと「赤い雨」の脅威に対処するために設置されたものですね」

 

ーーーー

 

サテライト拠点に着くと、ユノはすぐに用があると言う事で、別行動になった。

護衛が終わった為、暇になったブラッドの全員を、サツキが案内する。

 

「ここがサテライト拠点、「アナグラ」にこもれない人々が寄り添ってやっと生きてる、辺境の地」

 

サツキがガイドをしながらサテライト拠点の案内をする。

その後ろを、ブラッドの全員がついていく。

時々すれ違う人々は、警戒の眼差しをこちらに向けて来ていた。

 

「俺、こういうとこ初めて来た……ニュースとかテレビで、存在は知ってたけど……」

 

ポツリとロミオがそう言った。

 

「世界中の人口は確かに少しずつ増えてるんですよね。それは間違いなくフェンリルのおかげ……でも、役に立たない人間は切り捨てる、と言わんばかりにここにいる人達を放置しているのもまた、フェンリルなんですよ」

 

「外壁の対アラガミ装甲……フェンリルマークの備蓄食料……この施設を提供し、維持しているのはフェンリルなのでは?」

 

チラチラと目に付くフェンリルマークを見たジュリウスが、サツキに反論する。

サツキはピタリと足を止めた。

 

「貴方がブラッドの隊長さんでしたっけ、フライア所属の。ちょっと聞いてみたいことがあったんですけど……」

 

ゆっくりと振り返りながらサツキが笑う。

 

「あの玩具の戦車みたいな、移動要塞を作るコストで、ここみたいなサテライト拠点が、いくつ作れると思います?」

 

グッとジュリウスが黙る。

 

「それに、ここの人たちに手を差し伸べてくれたのは、ユノのお父さんと極東支部の人達だけなんですよー。そもそも本部からの支援が少ない、極東支部が一生懸命血を流している一方で、本部はどうして黙ってみているんですかね?」

 

サツキが首をかしげる。

その顔は笑っているが眼は全く笑っていない。

 

「貴重な意見をありがとう……可能な限り、対処することを約束する」

 

ジュリウスの返事を聞いたサツキは、しまった、という顔をした。

 

「すみませんねー、八つ当たりしちゃいましたよ。まだ、出会ってから日は浅いけど……貴方達には、期待しているんですよ?」

 

くるりと振り返り、再びサツキは歩き始める。

全員、黙ってついて行った。

 

ーーーー

 

サツキに連れられ、ついた場所はテントだった。

中には沢山のベッドがあり、寝かされた人々と完全防備のスタッフがいた。

その1つのベッドにいる少女の所で、ユノが本を読み聞かせており、こちらに気がついたようで、パッと笑顔を見せた。

 

「あ、サツキ!ブラッドの皆さんも!」

 

「ここは……?」

 

ギルの問にサツキが答える前にレイが口を開く。

 

「……全部、黒蛛病の罹患者だろうな。これは、空気感染は無いが接触感染で、強い感染力を持っている」

 

「あら、詳しいんですねー」

 

「……まあ、な」

 

レイは顔をしかめながら答える。

ブラッドになる前、突如発生したこの病でバタバタ人間が死んでいくのを見ている。

当然、どうすれば感染するかも見てきている。

丁度金が無く、治療を手伝ったことがあるからだ。

詳しく等なりたくなかったが、ならざるを得なかったのだから仕方ない。

 

「奥に行くほど、重い患者さんなんです。できるだけ早く、治療法が見つかるといいんですけどね……」

 

「ねえ、おねえちゃーん、つづきはー?」

 

「ごめんね、もうちょっとだけ待ってね」

 

読み聞かせを途中でやめてしまったユノを、少女が急かした。

 

「後で合流します。サツキ、皆さんをよろしくね」

 

サツキはゆっくりと頷くと、出ますよ、と一言だけ言って引き返し始めた。

レイは途中で一度振り返る。

その時、その少女と目が合った。

少女は、レイにニッコリと笑いながら手を振って来たので、レイも微笑みながら手を振り返してやる。

その左腕に、蜘蛛のような痣が浮かび上がっているのが微かに見えてしまい、レイは顔をしかめる前に全員を追った。

あの子をわざわざ不安がらせるようなことをしたくなかったのだ。

 

「どこまで読んだかな……あ、そうだった。次のページ、めくって」

 

そんなレイを見て、クスクスと少女は笑っていたが、ユノの声に促され目を本に戻した。

 

ーーーー

 

ユノの慰問が終わり、トレーラーの中で合流した時、ユノは普段よりもラフな格好になっていた。

 

「みなさん、今回は護衛していただきまして本当にありがとうございました。みなさんとお話できて楽しかったってサテライトの方々もおっしゃってましたよ」

 

「……」

 

「ユノさん、そのシャツは……!」

 

「え?これですか?かわいいですよねー」

 

そう言って、ユノは自分の着ているシャツをシエルに見せる。

真ん中に、大きくカピバラがプリントされたTシャツだ。

 

(か、わいい、のか……?)

 

残念ながら、レイには微塵も可愛いとは思えながったが、シエルはそれに同調しているようだった。

まあ、本人達が気に入っているのならばそれはそれで可愛いのかもしれない。

 

「みなさーん、このユノのことは他言無用でお願いしますよー?イメージってもんがあるのわかりますよねぇ?もー、ユノ!そういうだっさいTシャツで人前に出るなって言ったでしょ!?」

 

「え?ださい?」

 

やはり可愛くはなかったらしい。

サツキがユノに忠告するが、ユノは首をかしげるだけでまるで効果がなく、レイは思わず苦笑した。

なんとなく横を見ると、深刻な顔をしてジュリウスが黙り込んでいる。

 

「ジュリウス?」

 

「ん?なんでもない」

 

「もー、なんですかねこの辺は!ノイズしか聞こえないんですけど!」

 

サツキの怒鳴り声が運転席から聞こえた。

咄嗟に無線機の電源を入れる。

激しいノイズが響き、思わず顔をしかめた。

これでは、1号車と通信ができない。

嫌な予感がした。

一方、1号車ではロミオが暗い顔をして呟いた。

一緒に乗っているナナ、ギルも暗い顔をしている。

 

「黒蛛病の罹患者施設とか俺初めて見たよ……。たしかさ、黒蛛病にかかった場合の致死率って……」

 

その時だった。

トレーラーの左側から、物凄い衝撃が襲ってきて、トレーラーはあっさりと横転してしまった。

 

「ってぇ~っ!なんだよ!?」

 

「うわっ!」

 

「ナナ?」

 

上半身が投げ出されそうになったナナが驚きの声を上げる。

ロミオとギルが見てみると、左側の崖にコクーンメイデンが群生していた。

レーダーに反応はなかった筈だ。

 

「チッ、レーダーがイカレてたみたいだな」

 

「砂嵐の影響ってやつかよ……!」

 

「あれ?2号車は?」

 

ナナが後ろを見て首をかしげる。

後ろには2号車がいたはずだ。

それなのに、影も形もなくなっている。

 

『ーちら、2号車、支給応援要せ……』

 

ザザッ、と激しいノイズに塗れながらシエルの声が無線機に届いた。

 

「シエルちゃんどこ!?どうしたの!?」

 

ナナが必死に呼びかける。

シエルは、普段なら出さない、感情的な声で言った。

 

『クライアントと隊長、副隊長の3名が崖下に転落、安否不明、通信、繋がりません……!』

 

ーーーー

 

コクーンメイデンの襲撃を受けた瞬間、レイ、ジュリウス、ユノの3人はトレーラーの外に投げ出されていた。

その際、レイは着地に失敗し、左足をくじいてしまった。

突然の痛みにグッと歯を食いしばり、周囲の様子を探るとコクーンメイデンが数体いることに気がついた。

こんなにいたのに気が付かないなんて。

あまりの情けなさにレイは、自分を殴りたくなったが、今はそんなことをしている場合ではない。

慌てて人機を取りにトレーラーに駆け込もうとしたが、視界の隅にユノが見え足を止める。

ユノは、崖の淵ギリギリに倒れていた。

今にも落ちてしまいそうな上に、崖がさっきの衝撃で崩れかけている。

レイは、足の痛みをきっぱりと無視して駆け出した。

神機を取り出して応戦しようとしていたジュリウスも、レイの応援をするためにユノに駆け寄る。

なんとかユノの手を取り、ここから離れようとした瞬間、崖が崩れてしまい3人揃って崖下に転落していまった。

ユノをかばいながらの転落だったため、レイはあちこちぶつけたりしていたが、崖下に着地した衝撃とさっきの無理な走りによって、くじいてしまった足が限界を迎えていた。

 

「いッ、た」

 

「……腱が切れているかもしれないな」

 

座り込んでいるレイの左足を、少しずつ動かしながらジュリウスが言った。

軽く動かす程度だったのに、だんだんグイグイ動かし始めたのでレイからしたら痛くてたまらない。

 

「だったらグリグリ動かすんじゃねぇよ痛いわ!切れてるもんか、ほら、自力で動かせてるだろ。切れちゃいないが、ひでえ捻挫の程度だろうぜ」

 

「ごめんなさい……私をかばったから」

 

ユノが申し訳なさそうに謝ってきたので、レイは苦笑した。

 

「いやいや、受身しくったの俺だから。ったく、鈍ってんなぁ」

 

「それはともかく、救援が来るまでむやみに動くのは得策ではないが……」

 

ガアア、というアラガミの声が聞こえた。

微かに気配を感じるが、砂嵐が酷く視認はできない。

ただ、気配が感じ取れるだけの距離にいるということはだ。

 

(近いな……!)

 

「せめてどこか身を隠せる場所まで移動しよう」

 

「だな。あ、いい、1人で立てるし歩ける」

 

支えようとしてくるジュリウスを止め、レイは一人で立ち上がると歩き始める。

左足がまともにつけないため、ひょこひょこと頼りない歩き方だ。

額に脂汗も浮いている。

見かねたユノがレイの肩に後ろから手を回した。

 

「腕、失礼します」

 

「っ!」

 

瞬間、レイはユノの手を払った。

 

「え?」

 

「あ……」

 

レイが動揺を見せる。

冷汗をかきながら、レイは平静を繕ってユノに笑ってみせる。

 

「わ、悪い……。大丈夫、だから」

 

レイはグッと手を握りしめた。

実のところ、あの日から今日までずっと後ろが怖いのだ。

正確に言うと、背後に立たれる、急に触れられることが嫌で仕方が無い。

そんな事言っていたら死んでしまうし、誰にも言ってないから皆後ろに立つし、ナナなんかはその位置からたまに飛びついてきたりするしで、その度に過剰に反応しそうになるのを堪えているのだが、それにも大分慣れたと思っていた。

しかし、今ユノに後ろから触れられた瞬間、恐怖が襲ってきたのだ。

 

(情ねぇ……)

 

「お前にも苦手なものがあったのか」

 

ジュリウスが不思議そうに言った。

レイはジト目でジュリウスを見る。

 

「ジュリウスの俺への認識がおかしいと常々俺は思ってんだけどな?苦手なもんくらいあるわ」

 

ーーーー

 

結局、ジュリウスとユノに抱えられながらレイは歩くことになった。

というのも、元々限界がきていたのにも関わらず、無理して歩いた結果最初よりも酷くなってしまい、歩くどころか足をつく事すらままならなくなってしまったのだ。

自業自得である。

再度見かねたユノとジュリウスが、強引にレイの肩に手を回して、ゆっくりと歩いた。

しばらく歩くと、廃屋にたどり着いた。

中にアラガミの気配はなく、ここで救援を待つことになった。

廃屋の中は、昔の娯楽施設のようなところであった。

沢山の椅子、天井から吊るすように設置された液晶、とても硬く重さの違うボールのような球体。

今は見る影もなく壊れてしまっているが、昔は人で賑わっていたのだろう。

その中の椅子の1つにレイを座らせると、ユノは背負っていたリュックの中から救急セットを取り出した。

 

「この救急セット、よかったら使ってください」

 

そして更に、いくつかの携帯食料も取り出す。

 

「お腹すいてませんか?携帯食料しかありませんけど」

 

その2つをジュリウスに手渡すと、ユノは廃屋の中を歩き回り廃材を集めてきて、あっという間に焚き火を起こした。

その間にジュリウスはレイの足の処置を終え、レイをうつ伏せに寝かせた。

 

「すげえな」

 

「ああ。見事な手際だな」

 

「各地をまわってたらいつの間にかできるようになってました。他にも色々……」

 

「ほー。壮絶だな……」

 

あはは。

そうユノは笑うと、再び廃屋の中を歩き回り、今度は小さなスタンドとポット、コップを3つ拾って来た。

それを使って、ユノは持ってきたのであろうミネラルウォーターをポットに注ぎ、火にかけると黙って座り込んだ。

誰も、何も喋らず、重い沈黙が広がった。

 

(気まずい……通信機、まだ繋がんねぇのか?……ん、ロミオからメール……)

 

内容はこうだ。

 

From:ロミオ

件名:【同報】ユノさん、ありがとうございました!

 

本文:忙しいのにサテライト拠点を案内してくれて本当にありがとうございました!

ブラッドが極東に来たからにはサテライトの問題もパパッと解決してみせるので期待しててください!

 

P.S.

ジュリウスが隊長だからって、ユノさんがかしこまらなくても大丈夫だよ!

もう呼び捨てとかで全然オッケーだから!!

 

「なんでこれをみんなにも送ったんだ……」

 

思わずレイは疑問を口にした。

二人も通信機を確認し、クスクスと笑う。

 

「フフ、ブラッドのみなさんは仲がいいんですね。なんだか兄弟みたい」

 

「ん、そうかぁ?」

 

「そうですね……ブラッドは私にとってかけがえのない家族です」

 

「……」

 

ジュリウスの発言に、レイは思わず黙った。

言ってて恥ずかしくないのだろうか。

 

「あなたさえよろしければこのように呼んでいただいてかまいませんが」

 

「でしたらみなさんも私のことは呼び捨てで。じつはユノさんってあんまり呼ばれなれてないんです」

 

「俺達がユノって呼んでたら、ロミオびっくりするだろうな……目に浮かぶわ……」

 

「だな」

 

3人は驚くロミオを想像し、笑った。

 

「そういえば二人は何歳なんですか?」

 

「俺は17」

 

「え、17歳!?同い年だったんだ!?」

 

「俺って老けて見えんの?」

 

ユノの反応に、レイは遺憾の意を示す。

それを見て、ユノはまたクスクスと笑った。

ついでなので、全員の年齢を教えてやることにした。

 

「ナナも17、ロミオは19でギルが22、ジュリウスは確か20くらいじゃなかったか?」

 

「よく覚えてるんだな」

 

「まあね。どうでもいい事ほどよく覚えられるもんだ」

 

「皆さん若いですね!」

 

何のこともない、ただの雑談だがユノは楽しそうだった。

ジュリウスも笑顔だし、レイ自身も結構楽しんでいたりする。

途中で飲み物を飲み、携帯食料を食べた。

 

「あ、そうだ。なぁ、ユノはなんでこんな危険な目にあっても慰問を続けるんだ?」

 

レイは、ふと思ったことを聞いてみた。

ユノがゆっくりと語り出す。

 

「……後悔したくないから、かな。おじいちゃんがアラガミの襲撃で亡くなったときに思ったの。自分だっていつ死ぬかわからないのに自分には何もできないって、うじうじしていてもしょうがない……やりたいと思ったことをやれるだけやってみようって。でも、実際に外に出てみたら私ができることなんて本当に些細なものだったの。少しずつ力を貸してくれる人も増えてるんだけど、物資も人の手もまだまだ足りなくて。もっともっと頑張らないと!」

 

凄く立派な理由だと、レイは思った。

 

「ご両親は反対されなかったのですか?」

 

ジュリウスの問に、ユノが笑顔で答える。

 

「父は……本心では私の活動をやめてほしいのだろうと思いますが……私が言っても聞かないので渋々ながらこの活動を支えてくれています。母は既に亡くなっていますが……」

 

「失礼!」

 

「あ、いえ。母は、私の歌を最初に褒めてくれた人でした。「ユノの歌は元気になるね」って……ですからきっと今も応援してくれていると信じています」

 

ユノが空を見上げた。

亡き母を思っているのだろうか。

 

「おふたりのご家族は……」

 

ジュリウスと顔を見合わせ、先にレイが口を開く。

 

「俺の家族ならもういない。皆、目の前で食われちまった」

 

「私の両親はすでに他界しています」

 

「……そうだったのか」

 

「ごめんなさい」

 

レイは驚きながらジュリウスを見た。

そういえば、レイはこの男の事をよく知らなかった。

この前は、自分のことをある程度はぐらかしながらだったが答えさせられはしたが、ジュリウス達のことは何一つ聞けていない。

 

「いえ、記憶もおぼろげなほど昔の話です。……ですが、両親の口癖は今でもよく覚えています「ノブレス・オブリージュ」……「富める者は人類の未来に奉仕する義務を負う」」

 

ジュリウスは、力強い声で語る。

決意した者の言葉だった。

 

「私は幼少期よりこれを行動規範としてきたつもりでしたが……サテライト拠点で黒蛛病患者たちの現状を目の当たりにし、自身の認識の甘さを痛感しました。しかしこうして知り得た以上は可能な限り我々……ブラッドとして支援できる道を模索していく所存です。いいよな副隊長?」

 

「勿論」

 

「おふたりとも……」

 

ユノが驚きの声を上げる。

そして、何かを言おうとした瞬間だった。

 

『……ス、きこえ……』

 

通信機から救いの声が聞こえたのである。

 

ーーーー

 

なんとかつながった通信機で、レイたちは救助を呼んだ。

救助のヘリはすぐにやってきて、3人はなんとか極東支部に戻ることが出来た。

極東支部につくと、ブラッドのメンバーとサツキ、救護班の人が出迎えてくれた。

ギルに支えられながら、救護班の持ってきたストレッチャーに乗る。

シエルが心配そうに見てきたため、一言大丈夫だと言ってやった。

ユノの方に目をやると、サツキに抱きつかれて困っているようだった。

 

「ユノ」

 

「あ、はい」

 

「えっ!?」

 

ジュリウスがユノに話しかける。

呼び捨てだったことに驚いたロミオが、ユノとジュリウスの交互に目をやっていた。

 

「このたびは危険な目に遭わせてしまい申し訳ございません」

 

「いえ。いろいろお話が聞けて楽しかったです」

 

「サテライト拠点、ならびに黒蛛病患者のみなさんが置かれている状況について早速持ち帰り検討したいと思います。無論、あなたのお父上やクレイドルの方々が尽力されている領域で私どもがすぐに結果を出せるとは考えていませんが、あなたの期待に沿うような働きができていなかったらその際はどうかご叱咤ください」

 

そう言って、ジュリウスはユノに手を差し出した。

ユノは、嬉しそうにその手を握る。

 

「……ありがとうございます、ジュリウス。こちらこそよろしくお願いします」

 

ーーーー

 

その後、ブラッドとユノ、サツキの間で一つのメーリングリストが作られた。

作ったのはロミオ、さすがの仕事の速さである。

内容は、以下の通りだ。

 

From:ロミオ

件名:【同報】サテライトML(ロミオ)

本文:サテライト拠点の支援強化にあたって、サテライトMLを新設しました!

メンバーはブラッドとユノさん、サツキさんです。

今、各方面の折衛はジュリウスに進めてもらっているんだけど、この状況もここで共有していくように伝えてあります。

ガンガンこのMLを活用してね!

サテライト拠点を、皆で盛り上げていこう!

 

From:ジュリウス

件名:【同報】Re:サテライトML(ジュリウス)

本文:現在進行中の案件を共有する。

・黒蛛病患者の診察:打診済み、ほぼ確定

・食料等生活に関する支援:極東から追加提供予定

・建材等設備強化に関する支援:調整中

極東支部は積極的に協力を申し出てくれている。

ありがたい限りだ。

それに加え、フライアからの物資提供をラケル先生に後押ししてもらっている。

動きがあったらまた知らせる。

不明な点があれば直接聞いてくれ。

以上。

 

From:ユノ

件名:【同報】ありがとう!(ユノ)

本文:すごい忙しいのに、こんなに早く支援を進めて貰えて、本当に嬉しいです。

黒蛛病の人達の収容の件だけじゃなくて、装甲壁の改修の話までしていただいていると聞きました。

患者の方々が、くれぐれもみなさんにお礼を伝えてほしいと仰っていました。

ありがとう。

何度でも言いたい気持ちです。

私も負けずに、改めて各方面に支援をお願いして回ろうと思います。

私なりに頑張ってきます!

ユノより

 

From:ロミオ

件名:【同報】(ロミオ)

本文:サテライト拠点護衛任務の第一弾が無事終了!

討伐が続く過酷な任務だったけど、皆の頑張りで見事敵を撃退できた。

参加メンバーの皆さん、本当にお疲れ様!

これからも安全確保の為に、一丸となって頑張ろう!




第18話でした。
いやぁ、まさかここまで長くなるとは……。
ギリギリ10000字いってないんですけども、行かなくてよかった……。
ああ、でもこの後何話かはいってしまいそうな気がする……。
先行きが非常に不安です。
大丈夫かなぁ。
今回、初めてレイが公に怪我をしました。
といってもただの捻挫。
無理が祟っただけという、自業自得をやらかしてくれました。
こいつの過去とかが、もっといろいろな所で出せたらいいなと思ったり。
感想、お待ちしています。
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