GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜 作:霧斗雨
キャラエピ消費も、もうすぐ終わります。
リッカからリンクサポートデバイスの改良が終わったから実験に付き合って欲しいと連絡が入り、レイはさっさと準備をしてリッカの元へ向かった。
今日1日、朝から幾つものミッションをこなしている。
流石にそろそろ疲れていたが、あと1戦位どうということはない。
相手はザイゴートとグボロ・グボロ、油断しなければ余裕の相手である。
リンクサポートデバイスの効果もあり、余裕で倒すことが出来たが、時間が時間だった為、アナグラに戻ってきた時には既に夜中になっていた。
自動販売機の前で2人並んでジュースを飲む。
「今日も大変だったね。お疲れさん」
「そっちこそ」
あはは、と笑いあった。
ふと、リッカがレイの顔を見つめて言った。
「レイってさ、ゴッドイーターの仕事、どう思う?……好き?」
「んー、ま、仕事は仕事だな。好きも嫌いも無ぇや。楽しいけどな」
「そっか……私みたいな技術職と違って、ゴッドイーターの人は、職業を選べないから」
リッカは少し寂しいような、悲しいような、そんな表情を浮かべる。
「ほとんど強制的に適合試験に連れて来られてさ……気になるんだよ、彼らは幸せなのかなって」
そういうリッカの顔は、真剣だった。
レイはそんな事考えたことがないので、なんとも答えられないが、ギルやシエル、ナナ、ロミオ、ジュリウスといったブラッドのメンバー達はどうなのだろう。
幸せなのだろうか。
それとも、不幸に思っているのだろうか。
そもそも、幸せの定義は人によって様々だ。
考えたところで、聞いたところできっとわからないだろう。
では、目の前の少女はどうなのだろう。
幸せかどうか聞いてきた本人は、幸せなのだろうか。
レイは、リッカに問い返す。
「そう言うリッカはどうなんだよ、幸せなのか?」
「私は……うん、幸せだよ。気付いたらこの仕事してたんだけど、気に入ってる」
クク、とリッカは笑った。
「子どもの頃から、遊び場は研究室と工作室、私の玩具なんか、顕微鏡にリベット銃だったからね。そのまんま大人になっちゃっただけ……あははっ!」
「……すげぇ子供時代だな」
ーーーー
リンクサポートデバイスの検証実験の次の日、シエルに声をかけられた。
おそらくブラッドバレット関連だろうと察すると、レイは笑顔で頷いた。
ラウンジのカウンター席に移動し、席に座るとシエルは話を始めた。
「これまで……ずっとスナイパーをベースにバレットエディットをの検証を行っていたのですが……より理解を深めるためには、他の銃身タイプについても同様に検証する必要があると思ったんです」
「うん。アサルトはまあ、俺が使ってるからいいとしても、ショットガンとブラストに関しては分かんねぇもんな」
「はい。それで早速、全ての銃身タイプのバレットを作ってみたんですが……非常に勉強にはなったものの、使い道に困っていまして……」
シエルはすっ、とバレットを取り出し、レイに差し出した。
「良かったら、受け取ってもらえませんか?」
「マジか。そういうことなら是非欲しいね!」
「はい、では……アサルト、ブラスト、スナイパー……あと、ショットガン……全部差し上げます!」
シエルはパッと顔を輝かせ、嬉しそうにレイの手にバレットを握らせる。
正直な話、ショットガンとブラストに関しては使わないのだが、ありがたく貰っておくことにした。
貰えるものは貰っておく主義である。
それに、レイはバレットエディットができなかったので、バレットに詳しいシエルの作ったバレットがどんなものになっているのか非常に気になるところなのだ。
「それでは、そろそろ検証実験に向かいましょう……今回は君と私の「血の力」の呼応によって……このバレットが「ブラッドバレット」に変異するかを確かめたいと思っています……準備の方は大丈夫ですか?」
「ああ、いつでも大丈夫だ」
「はい!それでは、よろしくお願いします」
ーーーー
シエルの用意した任務は、オウガテイルとその堕天、コクーンメイデン堕天とドレットパイクという、所謂雑魚の群れとの交戦という、検証にはもってこいの気楽な任務である。
しかし、あまりにも気楽すぎるので、レイは今回近接攻撃を封印しアサルトだけで交戦した。
そもそも、血の力によるブラッドバレットへの変異実験なのだから、普段の近接ゴリ押しスタイルは使うべきではない。
アサルトは一撃一撃の火力は小さいが、それをカバーする連射とOP回復弾がある。
Oアンプルを持っていっていたのに、撃つほどOPが回復してくれるのでほぼ使わずに任務を終えた。
「……おかげ様で、戦闘中に「血の力」の発現を感じました。おそらく、新しい「ブラッドバレット」を手に入れることができたと思います」
シエルが嬉しそうに自身の神機を見つめた。
レイも、シエルと同じ手応えを感じている。
「そして推論通り、君の戦闘時の感応波に呼応して変異する確率が高まるようですね……」
「へぇ。シエルと一緒だから……かな?ま、何にせよ実験成功だな」
「フフッ……ありがとうございます!」
レイの言葉に、シエルは一瞬驚いたような顔をしたが、それはすぐに眩しいほどの笑顔に変わった。
ーーーー
シエルの検証実験が終わった頃、通信機にリッカから連絡が入っていた。
要件は例に漏れず、リンクサポートデバイスの検証実験だ。
今回は、戦闘の後メディカルチェックを行いたいという依頼も来ていた。
ということで、レイは即効で終わらすべく任務に出た。
相手はオウガテイルとドレットパイク、ラーヴァナだ。
ラーヴァナは、ヴァジュラ神族のアラガミで、背中についた砲塔からの高火力の弾丸、謎の毒攻撃、素早い動きが特徴である。
はっきりいって苦手なタイプのアラガミだが、普段通り飛び回る。
高火力の弾丸をステップで回避、毒霧は回り込んで避け、動きは堂々と張り合った。
今回は即効で終わらすというのが目標だったため、いつも以上の力を込めて神機を振るう。
胴体、顔をパワーで粉砕し、向けられた砲塔に回し蹴りをぶちかまして蹴り飛ばす。
レイよりもはるかに重いラーヴァナが、ありえない勢いで壁にぶち当たった。
ラーヴァナが悲鳴を上げる。
その間にレイは既に懐に飛び込んでおり、ブラッドアーツのキラービースタッブを放った。
その一撃は、ラーヴァナの胴体に穴を開けた。
そのままコアを回収し、さっさと帰投する。
アナグラではリッカが待ち構えており、レイは戻って来るなりラボラトリの一室に直行となった。
「今から、君の体のデータを取るよ。項目は多岐に渡るし、脳波も調べなきゃいけないから……君はここで眠って、その間、私はデータ収集。レイには睡眠薬を投与するからね」
「うえぇ……俺、薬系苦手なんだよなぁ……。ま、いいや、りょうかーい」
「じゃ、おやすみ。ゆっくり休んで……といっても、2時間くらいね……」
リッカの言葉が遠ざかる。
睡眠薬が入ったのだろう。
まぶたが重くなり、自然に目を閉じる。
だんだんと意識が遠ざかり、暗闇に落ちた。
ーーーー
建物が燃えている。
走る自分の横を、大勢の人が追い越していく。
後ろで悲鳴が聞こえる。
助けてくれ、嫌だ、なんで俺が。
耳を塞ぎたくなるが、そんな事をしている余裕はない。
母が自分の後ろを守るように走り、父が妹をおんぶしている。
自分の少し前を、ユウが走っている。
全員の服が、血に濡れていてその臭いと息切れで吐き気がする。
グシャリ、と真後ろで人間の潰れる音がした。
ゾクッとして、少しだけ振り返る。
母の足が変な方に折れ曲がっており、その背中の上に、アラガミが乗っていてゆっくりと母に噛み付いて。
その先は見れなかった。
妹の泣き叫ぶ声が聞こえる。
母の食われる瞬間を見てしまったのだろう。
不意に、後ろから突き飛ばされた。
あまりの勢いに、ゴロゴロと地面を転がり、壁にぶち当たり、うつ伏せに倒れる。
意識が飛びそうなほどの激痛が襲ってくる。
喉の奥から上がってきたものをたまらず吐き出す。
さっきよりもひどい血の匂いがする。
父が名前を叫んでいるのが聞こえる。
逃げろと言っているのが聞こえる。
なんとか顔を動かし、父の声のする方を見た。
自分の方に駆け寄ってくる。
次の瞬間、父と妹が、頭からアラガミに食われた。
上半身を食いちぎられ、残された下半身から血が広がっていく。
それに、アラガミが群がってさらに食い荒らしていく。
やめてくれ、頼むから、お願いだから。
声が出ない。
涙が零れる。
フラフラと、ユウが歩いてきて、すぐ横に座った。
その右肩からダラダラと血が滴り落ちている。
肉が抉るように無くなっているのがちらりと見えた。
こっちにくる前に、やられたのだろう。
レイ、とユウが肩を叩いてきた。
レイが生きていることがわかったのか、ユウがホッとした表情をした。
その顔は、涙と血でグシャグシャになっていた。
きっと、今の自分も酷い顔をしているのだろう。
目の前で、知った顔が食われていく。
優しかったおばさんも、厳しかった老人も、頼りなかった青年も。
皆、平等に、食われていく。
このままここにいれば、自分たちも食われる。
ユウに、置いて逃げてと伝えようとしたが、ヒューヒューと空気が漏れるだけだった。
ユウが手を握ってきて、一緒にいるよ、と言った。
1匹のアラガミが、近付いてくる。
一緒にいなくていいから逃げてくれ、必死で言おうと口を動かすのに、どうしても声が出てくれない。
大丈夫だよ、とユウがそっとレイを抱き抱えた。
さっきよりユウの顔がよく見える。
何故だろうか、その顔は笑顔だった。
アラガミの口が、ユウに迫る。
見たくない、お願いだ、やめてくれ、俺を置いて、逃げてくれ。
それでもユウは笑っていて、ゆっくりと眼を閉じる。
アラガミの口が、ユウの頭を砕こうと閉じていく。
必死で、体を動かそうとする。
動いてくれ、お願いだ!
「ああああああああっ!」
ガバリとレイは飛び起きた。
ラボラトリのベッドの上、グッショリと汗をかいている。
荒い呼吸を落ち着けながら、レイは頭を抑えた。
「……クソッ」
アレを見たのは久しぶりだった。
いつ見ても、なれない夢だ。
あの後、ユウの頭が食いつぶされる寸前にゴッドイーターが到着、あのアラガミを殺したのだ。
だからこそ、ユウは生きているし、自分も今ここで生きている。
それでも、いつもあの場面なると発狂しそうになる。
何も出来なかった、無力だった自分が憎くて仕方が無い。
「……いつまで引きずってんだ、俺は」
「……大丈夫……?」
「うおっ、冷たっ!?えっ!?リッカいたのか!?」
「おはよ、夜中だけど。最初からいたよ」
クスリ、とリッカが笑っていた。
リンクサポートデバイスの為の検査で寝ていて、悪夢を見て叫びながら飛び起きた。
それを、見られていた。
その事実を理解した瞬間、レイは恥ずかしさと情けなさで死にたい気分になる。
が、もう仕方が無い。
尋常でない自殺衝動を必死に押さえ込みながらリッカに問う。
顔は見れなかったけれども。
「嫌な夢見ちまった……。寝てる間に、何をしたんだ……?」
「検査中に悪夢を見るっていう事例は、よくあるみたい。ごめんね……。検査してたよ、あんな検査や、こんな検査をね。詳しく話してもいいけど、退屈な説明でまた寝ちゃうよ、きっと」
あはは、とリッカが笑った。
「そっか。で、結果はどうだったよ、成功したのか?」
「大成功だよ……!ここからもう少し研究を進めて、フェンリル本部の技術開発局に提出するつもり。それで予算が下りれば、正式に研究開発できる……!お父さんが計画してから、ずいぶん時間がかかっちゃったけどね」
リッカが嬉しそうに笑う。
念願の代物が完成間近なのだ、嬉しいのは当たり前である。
「でもまだ一般化への道は遠いから……まずはレイのデータを元に、レイ専用の試作品を作っていくよ。これからも色々と仕事をお願いしたいんだけど、また一緒にやってくれる?」
「ああ。勿論だ」
「ありがとう……!あ、最後に脈だけ取らせて!」
レイの手首にリッカの指が添えられる。
しばらく、静かな時間が続いた。
ーーーー
あの後、レイは自室に戻って眠った。
またあの悪夢を見るんじゃないかと少し怖かったが、寝ないと明日動きが鈍くなることがわかっていたので、無理矢理寝た。
結局、悪夢を見ることは無かった。
しかし、気分が重いままだったので、何か食べて気分転換しようとラウンジに入った時、リッカとギルがなにか話していた。
どうやら、神機のチューニングか何かの件でギルが何かをやったようである。
面白そうな話題だったのと、決して無関係ではないので、滅多に出さない野次馬根性を発揮し話題に混ざるべく2人に近寄った。
「……まったく、びっくりしちゃったよ。まさかギルにあんな才能があったなんてね」
「よ、お2人さん。どうした、何の話?ギルの才能?」
「あぁ、いや、別に大したことじゃないんだが……」
突然話に割り込んできたレイに2人は少し驚いていたが、リッカはすぐに聞いてよ、と話を始めた。
「いやさ、感応波受容体の製作過程を見せてくれって言うもんだから目の前で作って見せてあげたんだよ。そこまでは良かったんだけど、でもね、問題はその次!見様見真似で、自分ですぐ作れるようになっちゃったんだから!」
「マジで!?ギル、お前器用だったんだな」
レイは驚いてギルの方を見る。
ギルは、顔を隠すように帽子をさらに深くかぶった。
どうやら照れているようである。
「買い被りすぎだ……たまたま上手くいっただけだ。リッカの教え方が良かったんだよ」
「まぁ、自分たちで色々できるようになってもらえるのはこっちも非常に助かるよ……ギルは案外、技術者に向いてるかもね」
「何はともあれ、俺が感応波受容体を作れるようになった分……これからはもっと効率的に話が進められそうだ」
そう言うと、ギルはポケットから部品を取り出してレイに差し出した。
レイはそれを受け取る。
「これが、俺の作った感応波受容体、第一号だ……受け取ってくれ」
「サンキュ」
「これで早速、専用の神機を作ってくるといい……良い神機ができるといいな」
「ああ、ありがとな」
ーーーー
ギルにもらった感応波受容体を使い、レイはすぐに神機を作成した。
感応波受容体を使って強化したクロガネ刀身は、その刀身を黒からシルバーに変化させた。
もう、クロガネというよりシロガネである。
丁度コウタとのミッションにアサインされていたので、ついでに新しい神機の使い勝手を見るべく、レイはそのシロガネ刀身を装備してミッションに出ることにした。
「あのさ!ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ん、どした?……なんか顔疲れてるぞ、大丈夫か?」
「ああ、うん……わかる?でさ、ブラッドってさ……仲、良いよね」
「ん……まぁ、良いっちゃ良いな。悪いっちゃ悪いけど」
「あれってさ、なんか秘訣とかないの?いやあーうちの連中にも見習ってほしくてさ……」
「あー、成程な……」
エリナとエミールが原因か。
なんとなく察したレイは苦笑いを浮かべた。
「コウタさん、輸送班の準備整いました」
ヒバリがコウタに声をかけた。
「了解です!……じゃ、話の続きは後で、ってことで」
ーーーー
今回のミッションの内容はヤクシャの討伐。
オウガテイルとコクーンメイデンもいるが、そちらは大した障害ではない。
コウタの銃撃に合わせ、レイは普段通り突っ込んで神機を振るう。
作ったばかりのシロガネ刀身が、アラガミを切り裂いていく。
使い勝手はなかなか良い。
元がクロガネなので、そこまで性能に差があるわけではないが、十分に使っていけそうだった。
ミッションが終わり、アナグラに戻ってきた2人はラウンジのソファに腰掛けた。
コウタがガックリとうなだれながらレイに愚痴を漏らす。
ふと、コウタが顔を上げた。
「ん?」
「あーあ」
「またか……二人ともいっつもいっつも……」
視線の先では、エリナとエミールが言い争っていた。
またエミールがエリナの機嫌を損ねたのだろう。
「うーん、俺、やっぱり第一部隊を上手くまとめられてないのかなぁ……」
「きっと、あれはあれで仲がいいんじゃねぇか?時間が解決してくれるって」
「確かに、二人とも違った意味で不器用だもんなあ……」
「二人には二人の個性があんだよ。ちょっとアレだけどな」
これ以上コウタの気分が落ち込まないように、レイは必死でフォローを入れる。
ブラッドでいうとギルとロミオみたいな感じかと思うのだが、流石にあそこまで毎日毎日言い争ってはいない。
あんな風にされると、レイなら全力で張り倒す自信がある。
それを、何とかまとめてやっているのだから、コウタは凄いとレイは思うのだ。
「それはそうだな。ちょっと、個性が強すぎるけど……うん、第一部隊は第一部隊なんだからブラッドのやり方を聞いてもしょうがないかもな。まあ、時間はかかるかもしれないけど俺のやり方で、ボチボチやってみるよ。ありがとな、話聞いてくれて」
ニコリとコウタが笑った。
「参考にならなくて悪いな。ま、頑張れ」
ーーーー
「ふわ〜……お疲れさま」
「研究の方はどうだ?その様子だとまた徹夜か?」
寝不足なのか、欠伸をするリッカ。
こういう時、リッカ大抵徹夜をしている。
毎回徹夜してたんだ、と答えられるのでなんとなくわかるようになった。
「一度集中すると、切り上げるタイミングが見つからなくってさ。でもね、おかげで今日は、君に朗報を持ってこれたよ!」
「ほー。何だ?」
「なんと、出来ちゃったんだ!君専用のリンクサポートデバイスがさ!ターミナルにもデータを登録しておいたから素材さえあれば色んなデバイスが作れるはずだよ」
「色んな?種類があるのか?」
「うん、だってほら、すべての任務が同じ内容ってわけじゃないからさ。任務毎に、君の好きなように使い分けできるようにしたかったから。たっくさん種類用意しておいたから、ターミナルで確認してみて。きっと驚くと思うよ」
パッとリッカが笑った。
相変わらずの仕事の速さである。
一昨日やった検査結果から、ここまでやったのだろうか。
「あっ、そうそう、それとね……はい、コレ。たくさん協力してくれたお礼に、サンプルを一つだけあげる。こうやって技術者から個人的に渡したりするのって本当はダメなんだけどさ……どうしても君にお礼がしたくて」
そういいながら、リッカはレイに1つのリンクサポートデバイスを渡した。
「……みんなには内緒だからね?」
「……ああ、ありがとな」
レイはニコリと笑い返した。
ーーーー
リッカにリンクサポートデバイスを貰ったすぐ後、シエルにブラッドバレットの件で呼ばれ、レイはいつものラウンジのカウンター席に向かった。
既にシエルは待っており、レイにやってきたことに気がつくと、嬉しそうに笑った。
「遅くなって悪いな。で、どんな感じなんだ?」
「いえ、私も来たばかりです。えと、うーん……ブラッドバレットは、すべて同じ性質を持っているというわけではないみたいですね……」
「あー、確かに。俺の所では「連鎖複製」、「識別」とかだったかな?あれ、違ったっけか?どうだったかな……」
「成程。こちらの二つ目のブラッドバレットを解析した結果、「残留」という全く異なる性質を持ったタイプだということがわかりました」
「「残留」?それは何が出来るんだ?」
「そうですね、簡単に説明すると……」
そう前置きすると、シエルは説明を開始する。
「たとえば狙撃弾ですが、発射後は着弾時に効果を発動しそれで消滅してしまいます……貫通力はありません。そこでレーザーや貫通弾が持つ、貫通力を取り入れたい所ですがそれらの弾は接続することが出来ず、効果の追加は望めません……」
「お、おう」
「ところがブラッドバレット「残留する狙撃弾」は、まさに貫通力を付与したもので、それが自然に生成されるのはまさに奇跡と……」
「……シエル、一応言っとくぞ。あんまり、簡単じゃねぇ……」
大分勉強したのである程度はわかる。
しかし、どうも頭がついていかない。
シエルの言う簡単とはどこまでをさすのかわからないが、流石にこれは難しい。
まぁ、簡単にと言うのが難しい技術なのだろうが。
レイが苦笑しているをのをみて、シエルは少し困ったような顔をした。
「あ……すみません……要するに……そうですね、例えば、「複数の敵を貫通し、かつ、その全てに爆発を与える」。そんな、今まで実現できなかったバレットができるかも……ということなんです」
「ほぉ……強そうだな、それ。エディットはできないんだっけ?」
「そうですね……ブラッドバレットもいくつか入手できたので是非、そうしたいんですけど……ブラッドバレットのモジュール結合が、固定化されていなければエディットできるらしいんです。でも、あまりにも強固な結合なので、今までの方法ではモジュールに、分解できないみたいなんですよね。リッカさんが、「絶対壊れないタワーシールド」みたいだって嘆いてました……」
「「絶対壊れないタワーシールド」、ねぇ……。あ……矛盾、みたいだな」
「えっ……?」
ポソ、と呟いた一言に、シエルは眼を丸くした。
レイはほんの冗談のつもりでシエルに説明してやる。
「矛盾だよ。知らねぇ?何でも貫ける矛とどんなものでも貫けない盾、それをぶつけ合わせたらどうなるかって話。絶対に壊れないものと壊れないものが同時に存在すると辻褄が合わなくなるっていうやつ」
「あ……ブラッドバレット同士を……衝突させる……」
「ん、なんかひらめいたのか?」
「あ、あの!ちょっと待っていてもらえませんか!今の話、すぐに試してみようと思います……すぐに戻ってきますから!」
そういうなり、シエルはラウンジを飛び出していった。
さっきのは本当に冗談のつもりで言ったので、何かヒントになるようなことではないだろうし、どういうことなのかさっぱりわからない。
待っていてくれと言われたので、さて次は一体どのブレードの素材を集めようかなどと割とどうでもいいことを考えて待つことにした。
しばらくすると、シエルが全力ダッシュでラウンジに飛び込んできた。
レイにぶつかる寸前で九ブレーキをかけ、荒れた息を落ち着かせる。
「はぁ……はぁ……できました……」
「ああ、うん……お疲れ」
「2つのブラッドバレットを、射出してぶつけ合わせました……いくつかは破損してしまったんですけど……ブラッドバレットを構成していた「変異モジュール」の抽出に成功したんです……!ブラッドバレットが……カスマタイズできるようになったんです……!」
「おめでとう、よかった……な!?」
「君は……ホントにすごいです……」
ガバッと。
シエルが抱きついてきた。
突然の出来事に、レイはパニックに陥っていた。
なにか柔らかいものが体に触れている。
鼓動と呼吸が一気に早くなる。
「……あ、の……シ、シエル……?」
「あ……ごめんなさい!ちょっと……我を忘れました……ありがとう……ございます……」
パッとシエルはレイから離れた。
その顔は、少し赤らんでいる。
「あの……さっそくこのバレットを試したくて……仕方がないんですけど……」
「ああ、わかってる。行こうぜ」
そうは言うものの、シエルの顔が見れない。
必死になって何故か荒れた呼吸を落ち着かせるが、どうもうまくいかない。
今、どんな顔をしているのだろう。
きっとひどい顔をしているに違いない。
「君にはありがとうとしか言えないけど……何度でも、言わせてください……ありがとう……!……あの、どうかしましたか?」
「……す、すぐ元に戻るから……ちょっと待ってくれ……」
想定外のことには、滅法弱い。
自分がそういうやつだということを、レイは今この瞬間理解した。
ーーーー
黎明の亡都に、2つの銃声が響く。
一つは感覚を開けずにひたすらなり続け、一つは感覚を少しづつ開けながら。
音の主は、レイとシエルの2人組である。
今回は、ブラッドバレットがカスタマイズできるようになった記念のようなものなので、2人で銃のみでの戦闘を行った。
違いに背中をあずけあっての銃撃戦。
レイが弾幕を張り、シエルが敵のコアを確実に打ち抜く。
OPが無くなる頃には、すっかりアラガミの群れは全滅していた。
帰投準備に時間がかかるようだったので、二人はその場に腰を下ろす。
ふと、シエルがつぶやいた。
「最近、気づいたんですけど……私……君に、いっつも謝ってばかりなんですよね……」
本当に小さなつぶやき。
しかし、レイの耳はそれをしっかりと捉える。
「そんなことねぇと思うけど……急に、どうした?」
「ごめんなさい……あ……フフッ……」
クスクス、とシエルが笑った。
「多分……君にはいつも、「もらってばかり」だ……って、自分が思い込んでるからなんです……ブラッドに編入されたばかりで、馴染めなかった頃に声をかけてもらって……あの時、命令を無視してまで、助けに来てもらって……「血の力」に目覚めさせてもらって……そして……何より……」
す、とシエルが顔を逸らす。
「最初の友達に、なってもらって……もらってばかりだから、つい謝っちゃうんだろうな……って」
「そ、んなこと……ねぇよ。俺も、シエルに色々もらってる」
「フフッ……ちょっと前の自分なら、自信が無くて……多分理解できなかったけど……ブラッドバレットを一緒に作り上げた今なら……その言葉がどれだけ素敵なものなのか……よく分かります……」
シエルが優しく微笑んだ。
それをレイは、素直に可愛いと思った。
「ブラッドバレットは、バレットエディットの可能性を飛躍的に広げる、技術革新のようなものです。この技術をより深く理解し、多くの人に広めていくためには……君の力が必要不可欠なんです。ですから……私は、これからもずっと君と一緒に……ブラッドバレットの研究を進めたいです……付き合ってくれますか?」
「……ああ、勿論だ」
「そう言ってくれると、思ってました……ありがとう。私は……あなたにもらった以上の物を返していきたいと思っています……だから……そうですね……向こう100年ぐらい……ずっと仲良く……してくださいね」
(思ったより重い……!ま、いいか)
レイは優しく微笑みながら、差し出されたシエルの手を握り、握手を交わした。
第23話です。
初の!10000字超え!
こんなところで10000字超えって。
原因はレイの見た悪夢なんですけどね!
あそこで変なスイッチが入りました。
反省はしている、しかし後悔はしていない。
シエルさんに抱きつかれてパニックに陥ったレイが書けて良かったです。
これがきっかけになるといいな。
さて、次回は我らが誤射姫回だ!
それでキャラエピ消費回は終了の予定です!
感想、お待ちしています。