GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜 作:霧斗雨
ナナちゃんイベ開始。
「続いて、今期の稼働状況ですが……」
「えーと?あ、これか……」
レイはシエルに渡された資料をめくる。
現在、ブラッドはジュリウスを除いてシエルの報告を受けていた。
ジュリウスが不在ということで、代わりに副隊長のレイが資料を見ているのだ。
その顔には面倒くさいと書かれており、後ろで見ているギルが呆れたように笑っている。
報告に飽きてしまっているロミオとナナはコソコソと話を始めている。
「そういえばナナ、なんかラケル博士に報告があるって言ってたよな?」
「うん、ちょっとさ、定期的に……」
ズキン、と。
突如走った痛みに、ナナは頭を抑える。
「あっ……やば……」
「ナナ……?大丈夫か……?」
ロミオが心配そうにナナの肩に手を置いた。
そんなナナの異変に、モニターを見て報告を続けるシエルとレイは気が付かない。
報告は途切れることなく続いていく。
「あとは先遣隊のさらなる有効活用に関して隊長に相談したいという打診が
ドサリ、と。
何かが倒れる音がして、シエルとレイ、ギルは振り返る。
「……ナナ!?おい、しっかりしろ!!ナナ!!」
ロミオの叫び声。
レイが慌てて駆け寄り、ナナを抱き上げ、そのままラボラトリへ駆け込んだ。
ーーーー
これは一体いつの記憶だろうか。
自分の正面には母が座っている。
目の前の机には沢山のおでんパン。
その一つを口いっぱいに頬張る。
「ナナ、おいしい?」
「おいしい!ナナ、食べてるときが一番幸せ!」
「ナナが幸せっていってくれると、お母さんも幸せよ」
おでんパンを頬張るナナの前には、優しい母の顔があった。
母は立ち上がり、家のドアを開ける。
出ていく前に、母はナナの方に振り返った。
「お母さん、出かけるね。いつものお約束、守れる?」
「はーい!泣かない!怒らない!寂しくなったら、おでんパン食べる!」
ナナは手を挙げて元気よく答える。
「うん、ナナは本当にいい子。お約束守って、待っててね」
「はーい!」
フッと場面が変わる。
辺りは一面の銀世界で、寒かった。
目の前で母が倒れている。
身体のあちこちから血を流していて。
私は、ただ泣くことしかできなかった。
ーーーー
「っ!」
ガバッと、弾かれたかのようにナナは起き上がった。
荒い息を整えながら視線を横にずらすと、レイとシエルが座っていた。
2人とも心配そうにナナを見ている。
「大丈夫か、ナナ」
「あ、副隊長……シエルちゃん……そっか……わたし、倒れちゃったんだ……凄いイヤな夢、見ちゃった……お母さんが……血まみれで……」
「もう少し、横になっておいた方がいいですよ?」
「うん……ありがと、シエルちゃん。そうするー」
シエルに支えられながらナナは再びベットに寝転がる。
ふぅ、と息を吐き出すと、普段はしようとも思わない昔話を始めた。
「お母さんが死んじゃって、ラケル先生に引き取ってもらったのすっごい、小っちゃい頃だったからね。色々、忘れちゃったんだけどさ……」
「ナナ?」
「わたし、お母さんと二人で住んでたの。どっかの山の中で……よく雪が降ってた……」
ふと、レイは以前蒼氷の峡谷での任務でナナの言ったことを思い出した。
確かナナは「なんか……懐かしい感じ……」と呟いていた。
あの辺はよく雪が降り、山もある。
もしかしたら、ナナが住んでいたという場所はあの辺なのかもしれない。
「お母さん、神機使いでね。あんまり家にいなかったんだけどさ……泣かない!怒らない!寂しくなったら、おでんパン食べる!……ってのが、お母さんとの約束でね。お腹いっぱいになったら、あんまり寂しくなかったし……それに、おでんパンたくさん食べると、お母さんが喜ぶんだ!」
「フフッ」
「フフフッ」
笑顔でナナが堂々と言う。
思わず、レイとシエルは笑ってしまった。
言い出しっぺのナナまで笑っている。
「だから……おでんパン食べると、お母さんを思い出して……すごい幸せな気分になるんだ……よっし、もう大丈夫!二人ともありがと!何か、色々しゃべってたら、お腹すいてきちゃった!」
幸せそうな表情を見せたあと、ナナは勢いよくベッドの上に立ち上がった。
「あまり無理しないようにしてくださいね。一応、ラケル先生に診てもらった方がいいですよ」
「了解でっす!ご飯食べてから、ラケル先生のとこ行くね!んー、よく寝たー」
ナナが笑顔で伸び上がる。
ベッドからひょいと降りると、ナナはラウンジへと一目散に駆けていった。
ーーーー
ジュリウスの右ストレートを左手で弾き、顔面を狙って右ストレートを打ち込む。
それはジュリウスの頬をかすめ、ジュリウスはたまらず距離を取った。
「ゴッドイーターチルドレン?なんだそりゃ?」
レイが口を開く。
さっきまでの組手の間にも、ジュリウスの留守中にあった事を報告していた。
この2人からしたらいつものことである。
こういう時は、だいたいジュリウスから誘われる。
鈍ってしまうから相手をしろと言ってくるのだ。
レイも、報告ついででいいのならと受ける。
滅茶苦茶に打ち合うのだが、一応ルールはある。
先に背中をついた方の負けで、負けたら勝った方の1回分の飯を奢る、これだけだ。
喋りながらこれをすると大層疲れるのだが、慣れとはすごいもので、今ではこれが二人の普通である。
「神機使いを親に持ち……生まれながらにして体内に偏食因子を宿した子供のことだ。ハッ!」
「うおっと。じゃあナナも」
ジュリウスの右蹴りを身をくねらせて避ける。
尚もジュリウスの猛攻は続くが、レイはそれを避けるか弾くかして躱していく。
「ああ。特にナナは成長した今でも偏食因子を安定させるため薬を投与しているとラケル先生から聞いている」
「へぇ、フッ!」
「クッ……!今回の件はメディカルチェックの結果を待つとして……どうした?」
低い位置に潜り込んで、突き上げるように右肘を顔面に向けて打ち込む。
ジュリウスは顔をずらして避けたが、僅かに頬をかすった。
「いや、ナナは薬とか縁が無さそうだなと思ってたからさ」
「……そうだな。とにかく、ナナのミッションについては調整を打診しよう」
「OK。セイッ!」
「ウグッ!?」
ジュリウスの繰り出した正拳突きをしゃがみこんで回避し、その姿勢のまま強く踏み込んでボディブローを当てる。
一瞬動きの止まったジュリウスの腕を掴み、背中から地面に叩きつける。
「ッグッ……」
「っし、俺の勝ちだな。ジュリウス」
「また負けた……」
ジュリウスが悔しそうに言った。
レイはニヤリと笑って言う。
「今日の晩飯よろしく」
ーーーー
2人がくだらないやりとりをしている間に、ナナはフライアのラケルの研究室にやってきていた。
ついさっきご飯をたらふく食べ、ラケルの所に来た時にはミッションに行くすぐ前だったりするのだが。
「ミッション前にごめんなさいね。具合はどう?」
「ときどき頭が痛くなる以外は、いつも通りです。ただ……」
ナナは普段よりも少し元気のない声で応じた。
「ただ?」
「最近、急にお母さんのことが頭に浮かぶんです。だけど……ちゃんと思い出そうとすると、頭が痛くなって……」
「そう……お薬は飲んでるの?」
「はい」
ナナがうつむいて答える。
ラケルは、少し考えると言った。
「それなら、きっと……血の覚醒の進行が、影響しているようね」
「覚醒……?」
不思議そうにナナが顔を上げる。
ラケルは、優しくナナの手を握った。
「血の覚醒とは、意志の力の表出。感情を抑えれば、ブラッドの血に目覚める日は来ない……ナナ、貴方は強い子です……恐れずに、過去と、貴方自身に……向き合いなさい」
「過去と……わたしと……うっ!?」
強烈な頭痛がナナを襲う。
思い出させる昔の記憶。
「ナナ、こっち!」
「お母さぁん!」
「くっ、ここも囲まれてる!」
「うわぁああん!うわあああああん!お母さん!お母さぁん!」
大好きだった母の慌てた声と、泣き叫ぶ自分。
これ以上は思い出せなかった。
「あ……」
「大丈夫?」
「は、はい……大丈夫、です……」
荒げた息を落ち着かせ、ナナはラケルの問に答える。
「落ち着いて。無理してミッションに出なくてもいいのよ?」
「いえ……行きます」
やんわりとしたラケルの静止を振り切り、ナナは立ち上がって研究室から出た。
ナナが出ていった扉を見つめ、ラケルはクスリと怪しく微笑んだのである。
ーーーー
レイとジュリウス、ロミオはナナと合流し、シユウの討伐のために鎮魂の廃寺にやって来ていた。
因みに、シエルとギルとは別行動になっている。
小型アラガミが集まっているため、これ以上集まる前にシユウを討伐しなければ厄介なことになる。
「向き合わなきゃ……」
ポツリとナナが言った。
「ん?ナナ、なんか言った?」
「うん……大丈夫……」
小型アラガミを切り裂きながらレイはナナの方を見る。
既に息が荒く、体調も悪そうに見える。
「ナナ、無理だと思ったら下がれ」
「ロミオー、ナナのフォローの準備しとけー」
ジュリウスとレイが2人に指示を出しながら動く。
だが、さっきからナナの動きが鈍い。
「ナナ、ほんとに大丈夫なのか?」
「うん……逃げないよ……」
そういうナナの声は虚ろだ。
ナナ以外の3人に緊張が走る。
「……ナナも具合悪そうだし、さっさと片付けて帰ろうぜ!」
「大丈夫……頭痛なんて……!」
「おーおー、わかったわかった。んじゃー、さっさと突っ込んでくっから、ザコ任せた!」
向かってくる小型アラガミの群れを、レイは廃寺の壁を走り抜けることで回避し、シユウに躍りかかった。
シユウの飛び蹴りをジャンプして回避、そのまま天井を蹴って急降下して右片手羽を切り飛ばす。
「グギャアアアアアッ!」
シユウの叫び声が廃寺に響く。
その口元に、レイのショートブレードが突き刺さる。
なんと、レイは神機を投げたのだ。
「るっせえんだよ!耳が痛くなんだろうがこの野郎黙って死ね!」
その神機を、以前カリギュラにしたように蹴って中に押し込み、強引に引き抜いた。
ブシャァ、とシユウから吹き出した返り血を浴びる前にバックステップで下がり、木製の床を思い切り踏みつけて跳躍し、シユウの首を切り落とし、コアを抜き取る。
跳躍の際、踏み込んだ部分に嫌な感触がしたのを思い出し、ふと、踏んだところに目をやると、木製の床は踏み抜けてしまっていた。
「過去の遺産の一部を損傷、しかし対象の討伐は完了ってとこか。さて」
シユウの死骸を放置し、小型アラガミの群れに飛び込む。
飛び込んだ瞬間に1体、踏み込んで別の1体を切り下げ、そのままさらに別の1体を切り上げる。
小型アラガミと交戦し続けているため、皆返り血で服やら顔やらが汚れてしまっていた。
「ちょっとさすがに数が多くない……?」
「そーだと思うなら体動かせロミオ!後ろがら空きなんだよ!」
「えっ、お前戻ってくんのはっやくねぇ!?助かるけど!?」
ロミオの後に迫ったオウガテイルをすれ違いざまに切り伏せ、別の個体に襲いかかる。
一向に数が減らない。
たまらず、ロミオがレイに聞いた。
「なぁ、あと何体くらい!?」
「それを今俺に聞くのかぁ!?まだまだいーっぱいだめんどくせぇっ!!」
レイは近寄ってくるアラガミを倒しながら怒鳴った。
いつもならレイならではの第六感である気配の読み取りによって視認に頼らない討伐が可能なのだが、今回は如何せん数が多い。
前後左右何処からも気配を読み取ってしまい、正確に探るのが非常に困難となっており、普段なら分かる個体数などもさっぱりである。
全くもってこの第六感は大事な時に役に立たない。
「くっ、キリが無いな……」
『さらに複数体のアラガミがそちらに向かっています!現在、第一部隊に応援を要請中……』
ジュリウスが顔を歪めながら言った。
ヒバリの切羽詰ったオペレーションの声が入ると、ジュリウスはブラッド隊全員に叫ぶように指示を出した。
「総員、各自退避行動を取れ!バラバラでもいい!極東支部に戻るんだ!」
これを聞き、ロミオがナナのそばに駆け寄った。
「ナナ!ラケル先生から無理しないように言われてるんだろ?」
「俺が退路を開く!ナナ、お前だけでも逃げるんだ!」
「逃げる……?私だけ……?」
ナナはこの一言を何処かで聞いたことがあるような気がした。
途端、頭に浮かんでくる鮮明な映像。
そう、丁度ここのように雪が降っている場所だった。
「ナナ……あなただけでも……逃げて……」
目の前に血まみれで横たわりながらも、最後までナナを思って死んだ母の姿。
「お母……さん……?」
ナナは衝撃に目を見開いた。
正直な所、これ以上は思い出したくないが、溢れ出した記憶は、止む事を知らず色鮮やかに次々と思い出されていった。
ーーーー
目の前には横たわる優しい母。
アラガミの猛攻に耐えきれず、ついに倒れてしまったのだ。
ナナは泣くことしかできなかった。
そこへ、3人の神機使いが現れ、一人の旧型神機長刀型を持った男性がナナに駆け寄った。
「大丈夫か!?」
その時だった。
数体のヤクシャが現れ、その場にいた全員を囲んだのである。
「なっ……!」
「囲まれてます!」
「馬鹿な!さっきまで影も形もなかったはずだ!おい、オペレーター!どうなってる!」
ヤクシャを倒しながらリーダーであろう男がオペレーターに怒鳴る。
オペレーターの困惑した声が各員の無線から響いた。
『わ……わかりません!ただ、その地点から、強力な偏食場パルスを確認……アラガミが、そこに向かって……集まっています!』
キリがなかった。
片端から切り伏せていくのに、次から次へと湧いて出てくる。
ナナに近付いたヤクシャを切り倒し、男はナナの肩に手を置いた。
「大丈夫……君のことは……」
しかし、男は最後まで言いきることは出来なかった。
大きな足音を立て、ヤクシャ・ラージャが現れる。
ヤクシャ・ラージャは、その銃口をナナと男に向けた。
「ちっ……くっ……くっそおおおおお!」
男が絶叫しながらヤクシャ・ラージャに切りかかる。
だが、ヤクシャの猛攻に耐えきれず、1人、また1人と倒れていく。
終わる頃には、未だ泣き続けるナナしか生存者はいなかった。
「貴方が……呼んでいたのね……」
声をかけられ、ナナは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる。
そこにいたのは、車椅子に乗って怪しく微笑むラケルだった。
ーーーー
あの日、大好きだった母が死んだ日の事を思い出し、ナナはガックリと膝を折った。
「……私のせいだ。私のせいで、みんなが……お母さんが……!」
あの日、自分があの場にいなければ。
あの場に自分がいたから母とあの神機使いの人達は死んでしまった。
自分の力のせいで、みんな死んでしまった。
強い後悔と自責の念から、ナナはついに泣きだしてしまった。
その体から、赤いオーラのようなものが溢れ出ている。
「ナナ!?」
「!?」
『これは……偏食場パルスの乱れが……!』
その場にいた全員が驚いてナナの方を見た。
無線からヒバリの驚いた声が聞こえる。
「まさか……」
『ブラッドαへ、強力な偏食場パルスを確認!さらにアラガミが集まっています!』
「血の力か……?暴走している……」
「だろうな。ナナ!大丈夫か!」
寄ってくる荒神を片端から切り倒して、レイはナナに駆け寄った。
ナナは俯き、まるで子供のように泣きじゃくっている。
『第一部隊よりブラッドへ!退路を確保した!……って、まだ生きてるよなっ!?』
無線にコウタの声が響く。
第一部隊の応援が間に合ったようだ。
「あったりまえだよ!でもナナが……!」
『位置情報を送ります、ここまで来られますか?』
取り出した通信機に、合流する位置情報が送られてきた。
大して離れていない場所で、なんとか合流することが出来そうである。
「ああ、可能だ!救援、感謝する!副隊長、ナナを支えて退避しろ!」
「わかってんよ!」
レイは、ナナの右側に立ち、無理やり立たせて肩を組み体を支え、早足で歩き移動を始めた。
まず最初に。
遅くなってすみませんでしたああああっ!
私自身、学生という身分でついこの間まで編入試験に追われておりまして、執筆が中々出来ない状態でありました。
楽しみに待っておられました方(いらっしゃると嬉しいな)、お待たせしてしまって大変申し訳ありませんでした。
書くペースは今後遅くなるかもしれないですが、最後まで書ききりたいと思いますのでよろしくお願いします!
感想、お待ちしています。