GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜 作:霧斗雨
ロミオの焦りと皆との衝突。
ロミオがなんだかおかしい気がする。
レイがそう思い始めたのはここ最近のことだ。
何がおかしいのかと問われれば、答えることは出来ないのだが。
今日、普段の通りミッションに行こうとした時、レイはロミオに声をかけられた。
「あのさぁ、副隊長。ここだけの話、血の力に目覚める前に、何か特別なことした……?」
そう言われて、レイは腕を組んで目覚めた時のことを思い出す。
あの時は、マルドゥークに殺されてたまるかと必死になった訳で、その前に何をしたかと言われると、はっきりいって何も無かった。
「んん……いや、憶えはねぇな。特に何もしてねぇかな」
「いや、そんなことないだろ?何かあったはずだよ、スイッチになるようなことがさぁ……あ、俺がこんな質問したって、みんなには内緒だぜ!信じてっからな、副隊長!」
「お、おう……」
レイは戸惑いながら返事を返す。
その日の任務で、ロミオはナナのような立ち回りをした。
つまりは引きつけ役だ。
たまたまナナがいなかったから上手くいっていたのだろうが、あまり良くない。
ロミオは血の力に覚醒していないし、元々被弾率が高い。
その為、たとえアラガミを引き付けられても、振り切れない可能性が高いのだ。
とはいえ、今日は上手くいったのにあれでは駄目だと言うのは如何なものなのか。
「なっ、なぁ、今日の俺いい動きだったと思わない?」
「……んー、まあまあ、かな」
任務終了後、何を言われたいのかわからないが、グイグイと迫ってくるロミオに、レイはそれだけ言った。
そっかー、と言うとロミオは少しがっかりしたような顔をして、どこかへ走っていってしまった。
迷っているうちに言いそびれてしまったレイは、はぁ、とため息をつきながら書類を作成し、それを提出してから神機保管庫へ向かった。
自身の神機パーツの出来具合を確認しに行ったのだが、そこで、リッカが苦い顔でレイに言った。
「ロミオ君は、むやみに神機をいじりすぎなんだよなぁ……パワーアップしたいらしいけど、かえってロスが出てるんだ。それを調整するのが私の仕事なんだけどね……レイからも、ちょっとアドバイスしてあげて欲しいな」
普段から世話になっているリッカの言う事を無碍にできない。
そろそろロミオのミッション時の行動に対して、はっきりいってやらねば。
そう思ってレイはとりあえずラウンジへ向かった。
リッカがロミオはラウンジに行ったと言ったからであったが、既にラウンジにロミオの姿はなかった。
「……どこ行ったんだ、ロミオの奴」
「ロミオ先輩なら、深刻な顔してサカキ博士の所に行ったよ」
「うおぅ!?……ナナ、聞いてたのかよ。サンキュな」
自分にしか聞こえないくらいの声で言ったつもりだったのだが、案外大きかった様である。
突然ナナから返答が帰ってきて、レイは飛び上がりそうになった。
いい加減、常に気を張ってなくても周囲の気配が読めるようになった方がいいのかもしれない。
そんなことを思いながら、レイはサカキのラボの前までやって来た。
ドアを叩こうとして、手を止めた。
中から、ロミオとサカキの話し声が聞こえたのだ。
それほど大きな声では無く、普通であればドア越しでは聞こえないような音量なのだか、レイの耳はそれをしっかり捉えていた。
「……ブラッドの「血の力」は、P66偏食因子によるものでね。ラケル博士しか、その本質を理解出来ていないんだよ」
「うーん、でもサカキ博士なら……何とかできませんか?こう……目覚める確率が上がる方法とか……?」
「「血の目覚め」を起こすためには、ラケル博士でさえ副隊長の「喚起」の作用に頼る他ない現状だからねえ……はは……困ったなあ。ロミオ君の気持ちも分かるが、こればかりは難しいね」
「くっそー、あとは俺というピースが揃えばブラッドは完璧になるってのに……!ま、まあ、今でも俺は充分強いけどさ……」
レイはドアの前で立ち尽くした。
俯いて、ギリ、と歯を食いしばる。
これは聞いてはいけなかったのではないかと直感的に思い、レイははあ、と息を吐くと、そのままロビーに戻った。
ラウンジの端の方の席に座り、そこで以前ナナが覚醒した時にロミオが言っていたことを思い出した。
『ジュリウスが「統制」、副隊長が「喚起」、シエルは「直覚」でギルは「鼓吹」、そんでもってナナの血の力は「誘引」かあ……!俺の中には、どんな血の力が眠ってんのかな!このねぼすけを、ガツンと起こしてやらないと……な、副隊長!』
あれは、自分も早く覚醒しないといけないという僅かな焦りから来たものなのだろう。
だからといって、どうしろというのか。
悶々としながら考えていると、ジュリウスに聞きたいことがあると声をかけられた。
「つかぬことを聞くがロミオに……最近おかしな言動は無いか?」
「……いや、わからねぇな」
「そうか……俺の考えすぎかな。人の心の問題は、誰にとってもデリケートで難しい。副隊長も、いちおうロミオの様子に気を付けておいてくれ……」
レイはひとまずとぼけることにした。
普段の会話からはそこまでおかしなものは感じられないし、サカキへの相談の内容も意図せずに知ってしまったもので、本来なら知らなかった会話である。
あまり気持ちのいいものではないし、ジュリウスをさらに心配させてしまうような気がするのだ。
レイの返事に、ジュリウスは何かを察したのか少し寂しそうに笑う。
そして、少し暗い表情をしながら言った。
「そういえば、ナナが奇妙なものを開発しているらしい。そちらの方も、できれば気を付けておいてほしいな……」
「残念だがジュリウス、そっちは既にほぼ完成してるよ……ご愁傷さまってやつだ……」
「そうか……」
レイの返答を聞いたジュリウスの顔に影がさしたような気がした。
それが何故なのかを察し、レイは心の中で手を合わせた。
ーーーー
「状況報告、素材搬送のため俺だけフライアに戻ることになった。感応種から採取したコアだが、十分な数が確保できたのでな。あれが、黒蛛病治療の鍵となるかもしれないそうだ。少しの間、ここを開けることになってすまないがよろしく頼む」
「……あんたなぁ。しゃーねぇ、どうにかやっとくわ」
唐突なジュリウスの離脱に、ブラッドは最初少し戸惑ったものの、何とか元の状態まで持ち直した。
が、ここへ来てさらにロミオの行動が悪化し始めたことをレイは感じ取っていた。
しかし、なにがおかしいのかと突っ込まれると答えられない。
具体的に何が悪いのかなんとも言い難いのと、人の事を言えないからだ。
なぜなら、突っ込むなと言われてもひたすら突っ込み続けるのがレイの戦闘スタイルなので、お前もやるじゃん、と言われてしまえば言い返せないのである。
悶々としながらレイがラウンジに足を踏み入れると、ロミオとナナが何かを話し合っている様だった。
レイが来た事に気がついたロミオが、大きく手招きをしたため、レイは2人に側に行き話を聞く。
「おぉーきたきた、今さ、ナナと一緒に次の任務の作戦を考えてるところでさ!」
「へー、どんな?」
「俺のバスターと、ナナが使うハンマーって、似たようなもんだろ?動きには多少制限は出るけど、その分、高火力ってところとかさ!そこでだ!お前がアラガミを相手している内に俺たち二人が隙を狙ってズバッとやるわけ!」
「……成程ねぇ。けど、それだとなぁ……」
普通ならこれでいいんだろうな、とレイは思う。
しかし、それがブラッドとなるとそうはいかないのである。
「でも私の場合、ブラッドアーツを発動すると「血の力」で敵が寄って来るよ?」
そう、ナナがいるからである。
血の力により、アラガミを引き付けてしまうからだ。
いくらレイが頑張ったところで、血の力「誘引」を発動したナナにはどう転んだって適わないのである。
「あ、そっか……まあ、いいや!そこからは流れで行こう!」
「えっと……結構、いつも通りな感じ?」
「まあ、そういうことかな……よし、終わり!とっとと準備して、出撃しようぜ!」
ナナの言葉に、ロミオは少し焦ったように笑うと、一人でさっさと出撃ゲートに行ってしまった。
レイは少しの不安を覚えながら、ロミオの背中を追いかけた。
結局、任務はつつがなく終了した。
ロミオが普段以上に前に出て、サリエルに強烈な一撃を喰らってしまったが。
どうも、ギルのようなヒットアンドアウェイの戦法をやろうとした様に見えた。
「ロミオのヤツ……どうも、空回りしている感じが気になるな。杞憂だといいんだが……」
「うーん……ロミオ先輩、妙にソワソワしてない?さっきの任務もなんか動きが……気のせいかなぁ……」
どうやらレイ以外にもロミオに違和感を持っているものが出始めているようで、ブラッド内の不和が僅かにだが広がり始めていることを感じた。
そろそろなんとかしないといけないと思い、レイは自販機の前でジュースを飲んでいるロミオに声をかけた。
「なぁ、ロミオ。最近さ、前より突っ込んでる気がすんだけど。……なんかあったか?」
ロミオは少し驚いたようにレイを見たが、すぐに満面の笑みを浮かべて言った。
「……何か、最近絶好調でさ!今なら何でも、できちゃいそうな気がするんだよなー。感応種だろうがなんだろうが、どんなアラガミが出ても俺のバスターブレードで、一発って感じ?次の任務も、バッタバタ倒してやるからよ!期待しとけって!」
「……そっか。……無理して突っ込みすぎんなよ」
ロミオの答えに、レイは無理やり笑みを作って応じた。
ロミオはへへっと笑うと、グッと一気にジュースを飲み干し、レイの肩を軽く叩いてエレベーターに乗り込んだ。
レイはギリ、と歯噛みするとロミオに続いてエレベーターに乗り込む。
その日の任務、ロミオは終始ぼんやりとしていることが見受けられた。
それをギルに注意されて喧嘩になりそうになるが、シエルにミッション中だと嗜められていた。
そんなことを何度か繰り返しながら討伐対象を倒しきり、帰投準備に入る。
そこでギルがロミオに声をかけた。
「ロミオ」
「なんだよ?」
ギルは真剣な表情でロミオを見つめた。
「お前に言っておくことがある」
「「勝手に前に出るな」……だろ?」
「状況を把握して、自分の役割を考えて、動け」
「さっすが、歴戦のギルバートさんの言葉は、重みが違うねー」
ギルの注意に、まるでロミオはおどけているかのように答えた。
ギルの眉間に幾本かのシワが刻まれる。
「ふざけてるのか……?」
「俺は真面目だけどー?」
そういいながら、ロミオはフイっとギルから視線を外す。
ギルははぁ、とため息をついた。
「まあ、なんでもいいが……仲間として言っておく。ブラッドは連係してこそ、だ……一人で戦おうとするな……偉そうなこと言えた義理じゃないが、俺も努力はしてる。ロミオ、お前も気を付けろ」
「はいはい、分かってるって……!」
ひらひらと手を振り、ロミオはギルに離れるように促す。
チッ、と舌打ちをしてギルは例たちの方に戻っていった。
ロミオはギルが去ってからも一人佇み、うつむいてポツリと呟いた。
「……俺だって、ブラッドだからな」
ーーーー
「最近、連携がややうまくいってない気がします。なにか解決策を考えなくては……」
そうレイに訴えかけるシエルの顔は不安げだった。
シエルと話をした後、レイはラウンジでナナに軽く愚痴られた。
「なんか、ギルもイライラしてるし……もっと、みんなで仲良くやろうよー。せっかく今までいい雰囲気だったのに、どこでおかしくなっちゃったんだろ……」
「……なんでなんだろうな」
レイはそう答えることしかできなかった。
どうすればいいのか、レイにはもうさっぱりわからなくなっていた。
ギルのように突っかかって来てくれたらまだなんとかなるし、ナナのように理由がわかれば手を差し出すことが出来る。
しかし、ロミオはレイに何もしてこない。
ぶつかってこないし、何を聞いても大丈夫だとしか答えない。
ここでレイから突っ込んでもいいものか、レイにはわからなかった。
ーーーー
ブラッド内に不和がいくら広がろうが、任務は通常通りにこなさなければならない。
今回の討伐対象はヴァジュラだった。
ブラッド全員で普段のとおりヴァジュラを切り裂いていく。
ヴァジュラの放った雷球が、ロミオに向かって放たれた。
しかし、ロミオは回避行動を取らない。
「ーロミオッ!」
レイの怒声によって、ロミオが顔を上げると既に雷球は回避不可能な位置にまで迫っていた。
タワーシールドを展開する時間も無く、ロミオは頭を庇う様にしながらギュッと目を瞑った。
ガンッという音がしてロミオがそちらに目をやると、そこにはバックラーを展開したレイが立っていた。
「ワ……ワリ……!」
「大丈夫だ!畳み掛けるぞ!」
「了解!」
ギルの感応波が上昇し、攻撃力が上がる。
ナナが血の力を使い、ヴァジュラを引き寄せるその横から、レイが突っ込んでヴァジュラを切り裂く。
ロミオはそれを歯噛みしながら見ているしかなかった。
ーーーー
「いやー、楽勝楽勝!もうブラッドに敵無しって感じ!」
ヴァジュラを倒しきり、戻ってきたアナグラの廊下でロミオが言った。
しかし、誰もそれに答えない。
ロミオが足を止めて振り返ると、そこには苦い顔をしたレイたちがいた。
「ん?何、この空気」
「先輩、なんか最近おかしくない?」
ナナがロミオに言った。
ロミオはキョトン、と目を見開く。
「え?……いやいや、そんなことないよー!だってさー、ジュリウスがいなくたって生還率100%でしょ?これは明らかに、ブラッドとしての実力だよ。あ、もちろん副隊長の指示もいい感じだよ」
「おい、ロミオ……さっきのミッション何なんだよ……全然なってねえ」
一気にまくし立てるロミオを遮るように、ギルが声を上げた。
「あんま固いこと言うなよ、ギルちゃーん。頼れる後輩もいるわけだし、もっとこう、余裕を持ってさー」
ロミオが普段のように軽く言った。
しかし、ギルはさらにロミオに言葉をぶつける。
「余裕と油断は違うだろ……後輩に抜かれまくってやる気がなくなったのか?だったらいっそ、やめちまえよ!」
「ギル!!お前っ!!」
ギルの言葉に、レイは思わず怒鳴った。
みるみるうちにロミオの顔が暗くなる。
「やる気が無いだと……?」
ギリ、とロミオは拳を握りしめた。
「ギル……取り消せよ」
「何……?」
そして、ギルの顔を思い切り殴りつけた。
思わぬ攻撃に、ギルはたまらず尻餅をついた。
「何しやがる!」
「お前なんかに、分かるわけないんだよ!後から来たやつに抜かれまくってるのなんか俺が一番分かってんだよ!それでも、何かできることは無いかって……俺は、必死で探してるんだ!」
ダン、と地面を踏み、ギルを指さしながらロミオは叫んだ。
溜め込んでいたものを、全て吐き出していく。
「俺には、お前やシエルのような経験はないし……ナナみたいに開き直れるほど大物でもない……」
グルッ、と振り返ってレイを指さす。
「ましてやコイツみたいに……さっさと血の力に目覚めて、怪物みたいなジュリウスと肩を並べるなんて……」
「……っ」
そういうロミオの顔を見て、レイはうっと息を飲み込んだ。
今にも泣きそうな、どうしたらいいのかわからないというような、そんな顔だった。
「俺だって、皆の役に立ちたいよ!胸を張って、皆の仲間だって……俺はどこに行っても……役立たずで……どこにも居場所なんか……無くて……」
だんだんと声も震え始め、尻すぼみになっていく。
誰も何も言えなかった。
この場にいることに耐えられなくなったのか、ロミオはレイを突き飛ばして、逃げるように走り去った。
書いてて悲しくなってしまった28話です。
私の文才ではここまでしか表現出来なかったので残念です。
こういうふうに言われると、私は何も言えなくなります。
レイが終始ロミオに強く言えなかったのは、以前の自分を見ているようだったからです。
このあたりは次回で少し触れようと思いますのでお楽しみに。
最後に、遅くなってごめんなさい!
投稿ペース、遅くなってしまっていますか、打ち切ったりする気は毛頭ありませんので、どうか気長に待っていただけると嬉しいです。
ほんと、すみませんでした。
感想、お待ちしています。