GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜   作:霧斗雨

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第4話です。
歌姫、登場。
まだ歌いませんがね。


第4話 葦原ユノ

「いやー、うちの娘もあなたのファンでして」

 

フライアのロビーに、野太い男の声が響いた。

普段なら聞くことの出来ない、猫なで声である。

彼はグレゴリー・ド・グレムスロワ、通称グレム局長。

このフライアの局長である。

そのグレムのそばには、赤い髪が印象的な女性、レア博士と、まだ幼さを残した少女、葦原ユノが立っている。

 

「ありがとうございます、拙い歌で恐縮です」

 

「いえいえ、そんなご謙遜を」

 

ユノに歩み寄りながら、レアも口を開く。

 

「フェンリルの広報活動にもご協力いただいて大変感謝しています」

 

「いえ、周辺地域への物資配給はフェンリルの方々のご支援でかろうじて継続できている状況です。私にできることがあれば、是非」

 

そう言って、ユノは2人に向けて笑顔を作った。

 

「もしよろしければなんですけどね、本部の方で慰問コンサートとかは……」

 

「あ、すみません……先ほど申し上げた通りできればもう少しの間極東からはなるべく離れたくなくて……。サテライト拠点の食糧事情がもう少し改善されてからお伺いできれば、と思います」

 

グレムが控えめに提案したが、ユノは即答した。

 

「なるほと……そういう事情だったのですね。承りました、本部に掛け合ってみましょう」

 

やんわりと断られたグレムだったが、ユノの事情を聞き、新たに提案をする。

ユノは、パッと顔を明るくした。

 

「助かります!ありがとうございます」

 

「ところで、立ち話もなんですから……」

 

レアが、優しい笑みを浮かべながら、グレムとユノを促し、役員区画へ向かうためのエレベーターへ向かい始めた。

 

ーーーー

 

ロビーにある階段の、すぐそばにある自販機の前で、ロミオとナナ、レイはミッション時の行動について議論をしていた。

もう数回一緒にミッションをこなしているが、どうも連携というか、戦い方がなんとなくちぐはぐであるからだ。

 

「だいたいお前らさー、前に突っ込みすぎなんだよー。敵の動きちゃんと見極めてからさー」

 

「そうかぁ?俺にとっちゃあ、あれが普通だぜ」

 

「いやいや、お前のやつ傍から見てたらすっげーひやひやするんだぞ!もうちょっと下がれって!」

 

「えー、ロミオ先輩がビビりすぎなだけなんじゃない?」

 

ナナが、ロミオの顔を覗き込むように詰め寄った。

 

「ちょっ、ちょっ、ナナ、近いよ!」

 

それに合わせてロミオが後ずさる。

が、足がもつれたのかこけそうになってしまい、すぐ近くにいたレイを軽く突き飛ばしてしまう。

 

「うおっ!?」

 

まさか、こんなことになるとは思っていなかったレイは、思わずよろけてしまった。

そして、階段から降りてきた誰かに当たってしまう。

 

「きゃっ」

 

「あ、悪ぃ!」

 

「あ、すいません……うあっ!?」

 

レイとロミオはほぼ同時に、謝罪の言葉を口にする。

その衝突した相手は、薄い茶の髪を長く伸ばした美少女だった。

少女を見た瞬間、ロミオが変な声をあげて固まる。

 

「全く、貴様らは……ユノさん、本当にすみませんねぇ」

 

「いえ、そんな……」

 

グレムがレイたちを軽く怒鳴り、猫なで声でユノというらしいに謝罪をする。

ユノは、少し困ったような顔をしていた。

 

「フフッ、あんまりロビーでは、はしゃがないでね?大事なお客様にご迷惑でしょ」

 

クスリと笑いながらレアが3人に注意する。

 

「すいません……」

 

「はーい……すいませんでしたー」

 

ナナと素直に謝罪する。

こればっかりはこちらが悪い。

いいのよ、とレアが笑顔を浮かべ、ユノとグレムと共にエレベーターへ向かう。

 

「いやー不躾ですみませんね、戦うしか能のないヤツらで……」

 

3人にも聞こえるように、グレムがサラッと嫌味を言った。

レイは、少しイラッとしてしまい、ナナに相談する。

 

「おい、あの腹立つおっさん殴っていいか」

 

「えー、だーめ。あれー、先輩、どーしたのー?」

 

レイの相談を却下し、ナナはロミオに話しかけた。

先程固まった時から、ほぼ動いていない。

ナナの問で、ロミオは動き出した。

 

「ばっか、お前……アレ、アレ……ユノっ!」

 

エレベーターを待つユノの背中を指さしながら、ロミオは必死になって言った。

 

「ユノ?知ってる?」

 

「知らねぇよ。なにそれ」

 

しかし、ナナもレイも、そんな人は知らないので、2人して首をかしげた。

そういえばさっきグレムがユノって言ってたな。

 

「マジで?葦原ユノだよ!ユノアシハラ!超歌うまいの!有名人!あー、カメラ持ってきてれば良かった!くっそー!」

 

「へぇ、有名人」

 

あんまり興味ねぇけど、と思いながらユノの方を見た。

ユノも、こちらを振り返り、レイたちに軽く会釈をする。

なんというか、感じのいい人のように思える。

レイも、軽く笑って会釈をし返す。

 

「んー、何かまだユノの香りが残ってる気がするよ。今日は風呂に入らないようにしとこう……」

 

「えー……先輩、お風呂ぐらいは入ろうよー」

 

ロミオの発言に、ナナが呆れたように言った。

レイも、同じく呆れながらロミオに言う。

 

「ナナの言う通りだぜ。つーか、当たったのロミオじゃなくて俺な」

 

「いやいや、だってさ!今日というこの日は、もう二度と戻ってこないんだよ?」

 

「へーへー、さいでっか」

 

「なるほど、頑張ってください。よし、先、行こう!」

 

「りょうかーい」

 

最早手遅れ。

相手にする気もおきず、ナナとレイは適当にロミオをあしらい、階段に向かう。

 

「おい、待てよ!」

 

置いてけぼりにされたロミオも、慌てて2人の後を追った。

その様子を、ずっと見ていたユノは、クスクスと笑い、やってきたエレベーターの中へと消えていった。

 

ーーーー

 

「待てって!」

 

「うおっ、危ねっ!」

 

ロミオが、階段を登っている最中のレイの背中にタックルを決めて、ガッシリと肩を掴んだ。

 

「あのさロミオ、俺こんなとこで戦場みたいにバリバリ警戒したくないんだけど。落ちたら俺でも怪我するんだぜ?あと離せ」

 

さっきから不意打ちとはいけ突き飛ばされ、今回はタックルを食らい、流石にそろそろレイ自身警戒心無さすぎかな、と思い始めている。

何処かしこでも普段の警戒心バリバリの状態でいると疲れてしまうので、今は戦場以外ではできるだけ力を抜いているのだ。

というより、嫌な感じがしなければ反応しないようにしているのである。

今後は、もう少し考えた方がいいのかもしれない。

 

「こんくらいじゃ落ちないだろお前!なあ、ユノに会いに行こうぜ!グレム局長の部屋にいる筈!」

 

「……考えといてやっから離せ」

 

「そう言わずに!考えてる時間も惜しいだろ?」

 

そう言って目を輝かせるロミオ。

 

「全く惜しくねぇ」

 

「そうだよ、よし、これはミッション連携の訓練だ!お前は局長室に奇襲してグレム局長に入室許可をもらってくれ。入室許可が出たら俺が一気に突入する!」

 

「俺がすんのかよ!お前がやれよ!」

 

何故付き合わされた挙句一番嫌な役目をやらされねばならないのか。

レイは助けを求めるようにナナの方を向く。

 

「ナナ、お前もなんか言ってくれよ」

 

「私はいいよー。あのオジサンちょっと苦手だし、遠慮しときます」

 

「裏切りやがった!そういうこと言って欲しいんじゃねぇよ!」

 

レイはナナの思いがけぬ裏切りにショックを受ける。

ロミオの背後からのキラキラした視線が痛い。

もう引けないし、もう逃げられない。

 

「ったく、わーったよ、行きゃいいんだろ、行きゃあよ」

 

盛大にため息をつきながら、レイは脚をエレベーターの方に向ける。

運良くこの後はミッションも無ければ訓練もない。

ナナの方を向く行ってらっしゃーい、という声に、片手をあげてヒラヒラと振って返し、エレベーターに乗り込んだ。

 

「めんどくせぇ……」

 

「あー、楽しみだなぁ!」

 

尋常でなく喜ぶロミオを、呆れたような目で見ながら、レイはため息をついた。

ここまで来てしまったら仕方ない。

諦めて最後までやってやるしかない。

とはいえ、全然乗り気になれないレイは、もう一度ため息をついた。

その時、エレベーターの扉が開き、局長室が見えた。

ドアの手前まで行き、ノックをする為に手をグーにして胸のあたりまで持ってきて止まる。

ええと、こういう時はなんて言うんだっけか。

少し考えてから意を決してノックし、大きめの声で挨拶をする。

 

「……ブラッド隊、朽流部レイとロミオ・レオーニです。入っても宜しいですか」

 

「……入れ」

 

しばらくしてからグレムの野太い声が聞こえ、レイはドアを開けた。

 

「し、失礼します」

 

「失礼します」

 

恐る恐る入った部屋の中には、グレムとレアの2人のみで、ユノの姿はどこにも見えない。

あ、これはまさか。

 

「あ……あれ?ユノさんは!?」

 

たまらず、ロミオが声に出す。

 

「ヘリで飛行中、かしらね。極東市部へ向かって」

 

「ええっ!遅かった……!」

 

どうやら、既に帰ってしまった後のようだった。

落胆した声が、局長室に響く。

 

「ん?貴様は見ない顔……いや、思い出した。ブラッドの第二期候補生だろう、写真通りの顔だな」

 

いや、そりゃ俺の写真だからな、違う顔だったらどうすんだよ、怖いよ。

そういいかけて、言葉を飲み込む。

いらん事を言って、機嫌を損ねたらどうなるか分かったもんじゃないからだ。

 

「それで、なんだ?ラケル博士の使いか?ハッ、殊勝なことだ。命令に忠実なら、いずれ俺の身辺警護に抜擢してやらんでもない。フェンリルというのも、なかなか難しい組織だからな……俺のような主流派だけなら平和なものを。急進派の馬鹿な若者や、思い上がった本部の連中がときおり騒ぐものだから……まぁ、そういった話は、いずれ耳にするだろう。お前が順調に出世していれば、な」

 

そう、何故か語られた話を殆ど聞き流し、レイは苦笑いを浮かべる。

はやく帰りたい。

最早、それしか考えていなかった。

 

「で、何しにきた?まさか、用がないのに来たのではあるまいな?」

 

その通りです。

というわけにもいかず、レイはチラッと横目でロミオを見たが、ロミオも困ってしまっており、ピンチである。

 

「えー、あ、そう、あれだ!お2人にブラッド候補生としてご挨拶をと思いまして!」

 

レイは咄嗟に、そういった。

 

「そ、そーそー!あと、グレム局長はモテるんですね!」

 

ロミオも慌てて口を開く。

おいこら、それは今言ったらダメだろ!

 

「馬鹿者、仕事だ、仕事。俺が公私混同する男に見えるか?え?」

 

「見え……ないっす!」

 

「さあ、おしゃべりは終わりだ!貴様らは任務に戻れ!」

 

「失礼しましたあ……!」

 

「し、失礼しました!」

 

グレムに怒鳴られて、レイとロミオは慌てて外に飛び出し、ロビーに戻る。

そこでは、ナナがおでんパンを食べながら待っていた。

 

「おかえりー、どうだったー?」

 

「んぁ?ああ、いなかったぜ。行っただけ損だった」

 

「やっぱりねー!ガッカリな結果になるのは予想できたよ!」

 

「くっそー!!」

 

「くっそー、じゃねぇよこの野郎。いらんこと言いやがって、繕ったのがパァじゃねぇかよ」

 

ベシッ、とロミオの頭を叩く。

イテッ、と頭を抑えながらロミオがこちらを見た。

 

「……まぁでもおまえのこと見直したぜ。あのグレム局長の部屋に堂々と乗り込んでいくなんてさ!」

 

「行けっつったのロミオじゃん」

 

「まぁまぁ。ブラッドってこないだまで俺とジュリウスだけだったろ?のってくれてもなんかズレてるし。おまえたちがきて一気ににぎやかになったよな!仲良くやろうぜ!」

 

そう言いながら満面の笑みを浮かべるロミオに、レイとナナは頷いて見せた。

 

ーーーー

 

ラケルは、部屋でモニターに移された1人の男を見ていた。

レアが、ラケルの横までやってきて、モニターをのぞき込む。

 

「新しいブラッドのメンバー?」

 

「ええ、お姉様、今日からブラッドに編入してもらう予定です」

 

モニターには、一緒に男の名前も乗っていた。

 

「「ギルバート・マクレイン」……どこかで聞いたことが……」

 

「おそらく、本部の査問会議事録では?グラスゴー支部からの転属です」

 

そう言われ、レアはハッとする。

 

「思い出したわ、「フラッキング・ギル」……上官殺しのギル、ね」

 

確か、そう呼ばれていた筈だ。

どうやら、致し方ない事情の為だったと記憶しているが。

しかし、まさか、そんな人物まで引っ張ってくるとは。

 

「ねえ、ラケル……そこまでしてブラッドの増強って必要なのかしら。神機兵も完成に近づいているし、それだけでも十分……」

 

「いいえ、お姉様。それだけではちっとも足りないの」

 

レアのセリフが終わる前に、ラケルはそれを首を振って遮った。

そして、モニターから視線を外し、車椅子をうまく動かしてレアの方に体を向けた。

 

「「血の力」は、研ぎ澄まされた意志の力……強い意志が、新たな呼び水になるのです」

 

そういいながら、ラケルはレアの手を優しく、そっとつかむ。

 

「ねえ、お姉様、これからも二人で乗り越えていきましょう。人という種に与えられた試練のために……人類の新しい未来のために……」

 

「ええ、わかってるわ、ラケル……」

 

レアも、優しく、妹の手を包む。

そして、再びモニターに目を戻した。




読んでくれてありがとうございます。
やっとここまで進みました。
歌姫、葦原ユノの登場です。
原作のとおり、主人公は知らない状態にしました。
主人公の住んでいたというスラムは、極東のアナグラの外部居住区ではなく、アナグラの壁の外という設定なので、きっと情報なんて何も入ってこなかったと思います。
そんな気がしてなりません。
今回もロミオ先輩、残念でした。
この後、ちゃんと会えるのが救いでしょうか。
そろそろ主人公のキャラも定まって来ました。
なんというか、口の悪い、よくわからない人になりかけています。
因みに、私はこの手のキャラは好きです。
感想、お待ちしています。
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