事故、そして神様との邂逅、旅立ち。
日本。
猛暑日が終わらないまま、この夏は続いていくのだろうか。今年はどうやら、経口補水液や天然水を謳う清涼飲料水がよく売れているらしい。駅のホームの自動販売機に目をやれば、人溜りが出来ていることから伺える。
「何年連続で色々な観測史上が出るんだよ……」
遠くのアスファルトを見ればぼやけている。ふと、視線を正面に向ければ足がおぼつかない女性がいる。熱中症だろうか。……危うさが見て取れる、そして電車が来るというアナウンス。嫌な予感しかしない。
ふっ、と女性がホームの下に倒れ落ちた。
「あ、おい!」
考えるより先に体が彼女のもとへと動いた。じゃりっ、じゃりっとビジネスシューズでは歩きにくい。女性のもとに辿り着き、乱暴だと思ったがホームに投げる、電車のライトが眩しく私を照らしていたからー
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「起きて下さい、名を失いし者」
「……あんた、は誰だ。いや、ここはどこだ?」
見渡す限り、白、白、白。奥行きというか壁がない。閉鎖されているような空間だが、開放感は凄い。
「ここは、輪廻転生を人だった者が為す場所」
「輪廻転生。あぁ、つまりあれで死んだって事か。いや、待て……転生だと?なんて非科学的な話だ」
「貴方の命数は彼処では終わらぬ宿命でした、然し自然の神によりイレギュラーが発生した。そこで、私が自然の神に代わり、貴方を他の世界へと転生させる事にしたのです」
「いや、よく分からん。説明が抽象的過ぎる」
「理解などしなくとも良いのです、これから貴方は第二の人生を歩む。その為に、生命の神である私が手を貸すのです」
なんて無茶苦茶なんだ。オカルトってのは、こんな酷い説明下手というか説明がつかないものなんだろうが。これは、酷い。
「ちなみに、どんな世界にどんな生き物で生命を与えられるんだ?」
「魔法や精霊、怪物や悪魔が存在する世界へと。そして、先程申し上げたように人生を歩んで頂きます」
「へ、へぇ〜。魔法ね、魔法。いや、ありか。ここが、既に魔法っていうか、不思議摩訶不思議だしな」
「転生するにあたり、こちら側から貴方にギフトを与えます」
「ギフト?なんだ、それは?」
「才能、能力、立場などになります。才能は底無し、能力は研鑽を積めばある程度は出来得る物としましょう。立場ですが、かの世界は貴族社会のようですので、貴方も貴族の家の出になります」
「理解はした……だが、色々と整理させてくれ」
転生するのは良い、このままであれば研究が完成するだろう。魔法がどういう物かは分からないが、特効薬はいくつも作れる様になるかもしれない。ただ、問題はリスクの説明がない事だ。ノーリスクハイリターンなんて甘い物がこの世にあるはずがない、もうあの世だったか。
「転生による、記憶の保持とリスクはどうなる?」
「記憶は前世を持ち越しになります。リスクは魔法世界という危険な世界で暮らすという部分がそれに該当するかと。それに、戦火に晒されている世界みたいなので」
「なるほど、リスクはノーではないと。記憶持ち越しは素晴らしいな。魔法薬学という分野で楽しめそうだ」
「それでは、宜しければ世界へとゲートを開きます」
「あ、あと住む家屋に本を大量にくれ。その世界の言葉を勉強するものから、専門書まで色々と」
「畏まりました、それでは前へお進み下さい」
淡い光の鏡の様な物が目の前に現れる、指で優しく突いてみる。触っているのに、触覚が感覚を脳に伝達しない。けれど、ぷにぶにしていると分かる。視覚でだが。
「色々とありがとう」
男、皆上聡一の第二の人生が始まりを告げる。
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荘厳な庭のある屋敷で元気の良い泣き声が聞こえた、が一瞬で止んだ。
(これが、転生したという事か。流石に、精神が歳を取っていると赤ん坊という立場であろうと恥ずかしいものだな)
「あなた!産まれましたよ、男の子が」
「おお!目元がロレーヌにそっくりだな。これは、良い男になるだろう」
「あなた、この子の名前はどういたしますか?」
「クロード、幼名はクリスが良いと占いに出ておった」
「まぁ、素敵。クリス、産まれてきてありがとうね」
(そうか、そりゃ日本人に再転生は虫が良すぎるよな。まぁ、でもこの二人が私の両親か。ふふ、私こそ産んでくれてありがとう、さ)
クロード・ド・モット、幼名クリスの転生物語はこうして始まったのだった。