また、少しずつ投稿していきたいと思いますので宜しくお願い致します。プロローグは今回が最後になります。
クロードが目標を見つけ、それに邁進してから二年の歳月が経ったある日の事である。クロードは父の執務室に呼ばれていた。
「父上、話とは何でしょう?」
「いや、なに。モンモランシ家の娘が誕生日を迎えるらしくな、そのパーティーに出席するかどうかを聞こうと思ってだな」
「珍しいですね、政治がそろそろちらつく貴族の社交場ゆえに遠慮しているのですか?」
「それもあるが……今回は水の精霊の契約関係のこともあってか、王族の方もいらっしゃるらしいのだ。我々、モット家は下位貴族ではないが当日の来賓の顔ぶれは恐らく稀に見る上流層の方々ばかりだろう」
「つまりは、粗相があってしまうと大変であると。ふむ。……いや、然し中々そういった場所に巡り会える事も少ないでしょうし、出席させて頂いても宜しいでしょうか」
「うむ、了解した。期日は二つの月が重なる日である」
現在からおよそ、一週間後である。
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〜side of Rake the Lagdoryan〜
結果から言えば面白いものはなかったと評するべきか、とクロードは思案していた。現時点では、実績はおろか年端もいかないクロードは貴族の政治の裏舞台でもある社交場に相手にされなかったのである。ただ、挨拶を交わした貴族も少なからずあるいたので、まるで、とは言えないが。
「政治の話や研究の話が上手く円滑に出来ないのはやはり、成果もなければ実績もない、そして年も若すぎるからだろうが……だが、強心薬や内部魔力生成血清が上手くいけば」
ぶつぶつと独りごちながら、パーティー会場をふらふらと後にしていたクロードはいつの間にかラグドリアン湖の辺の木にもたれていた。思案を続けていたクロードの耳に飛沫が上がるような音が聞こえた。
「ん、こんな時間に誰か……ようせいか?」
湖に目を向けるとそこにいたのは一人の女性だった。月の光に当てられて輝いて見える彼女は非常に美しいと誰しもが感じ入るだろう。肩まで伸びたブロンド、幼さは些か感じるが端整だといえる目鼻、顔立ち。水浴びでもしていたのだろうか、その唇は湿っていて艶めかしい。クロードは見惚れていた、そしてそれは相手も同様だったらしく、お互いがお互いの顔を捉えて数瞬離すことはなかった。沈黙を破ったのは女性の方だった、それは先の問いかけのようなクロードの呟きに応えるように。
「えと、私は妖精ではなくて人よ?……ふふっ、貴方も喧騒が嫌になってこちらに来たのでしょう?今だけは、二人美しき水面に揺れませんか」
「あ、あぁ…済まない。そうだな、そうする事にしよう……ん」
「私のことはアンとお呼びになって」
クロードの唇に彼女の人差し指が触れながら、そしてクロードもまた彼女を抱きしめながら愛称と情愛の言を紡いでアンと名乗る女性の耳元で優しく囁いたのだった。
「ねぇ……クロード」
「なんだい、アン」
ふと、アンの顔が曇りながら口を開いた。
「私は今、寂しいだけなのかもしれない。けれど、貴方を見て胸が焦がれるこの想いは本物だと信じたい。でも、今遂げてしまったらそれは薄く脆いものだと感じてしまう、ごめんなさい。だから、この誓約を司る精霊が眠るこのラグドリアン湖の水のなかで約束をしたいの」
「あぁ、勿論。願わくはー」
「私と貴方がまた再会した時に二人の想いが離れていなかったその時は、私を貰って下さい」
彼女の表情が月明かりに照らされながらも、儚げながらも美しく、上気した顔でクロードを見上げながら祈るように言葉を発した。
「私は……いや、俺は誓おう。アンと再会したその時に、優しく抱きしめようと」
静かな湖畔にて、夜闇に紛れながらも二人の影は重なったように水辺に映ったのだった。