学園、使い魔召喚の儀
あの湖での事より早数年、モット家で教養に満ちた日々を過ごし、予てより念願であった魔法薬学の分野を確立し、薬品研究に勤しんでいたらいつの日か母より商会の立ち上げの話を貰い、研究をしながらに研究費用まで入ってくる素敵な社会貢献人となっていた。おかしい、依頼の数が中々に多くて実際は自身の研究は進まずに、前世のサラリーマン生活を彷彿とさせている。
「学園に入り、良かったと思えるのはそれから離れる事が出来た事だな……ほんとに」
朝、ひとしきりの研究を終えぽつりと呟き。そして、身支度をする。今日ばかりは心が弾む、生涯を共にする使い魔との契約の時、ゆえにである。研究室の扉を開け、食堂へと向かうさなかに顔なじみの少女を見つけ、声を掛ける。
「ルイズ、おはよう……ん、あまり元気がないようだけれど、どうかしたのかい?」
「えぇ……おはよう、クロード。少しね」
「ふむ。栄養ドリンクでも飲むかい?」
「遠慮しておくわ、また実験台にされても困るから」
「そうかい、いつかの試験ドリンクはお気に召さなかったようで」
そう、悪戯っぽく笑うクロードに消沈していた気持ちがどこかにいってしまったかのように、ルイズも笑うのだった。二人はそのまま談笑しながら食堂で共に朝食をとり、またお互いの部屋へと別れた後に、学園の二年生時最初の試験が行われる広場へと向かったのだった。その時、昔懐かしく会話が弾んだ黒髪で黒い瞳のメイドの娘と一幕あった事は割愛する。
「生徒諸君、本日は未来を共にし、成長を支えてくれる使い魔召喚の儀でございます。期待や不安に心を震わせていることでしょう!……それでは、早速順番にコントラクト・サーヴァントの詠唱、召喚をして頂きます」
広場では、試験監督のコルベール先生がおり、早速と召喚の儀が始まった。生徒それぞれが自身に見合う系統の使い魔を召喚しており、中でも圧巻だったのは青髪の少女タバサが召喚した使い魔だった、それは雄々しく理知的にも見えるドラゴンだった。クロードが召喚したのは水の精霊の系譜の妖精である、水のニンフであった。安易ではあるが、名をアルタと付け触れ合っていた。そんな中、爆発したかのような音が彼の耳に響いた。
「ちょっと失敗しただけなんだから……」
音の方向に目を向ければ、広場に小さい穴を開けていた少女が悔しそうに呟いていた、ルイズだった。そのルイズの小さい呟きを拾った者から悪意ある声が彼女を襲っていた。けれど、クロードは知っている彼女がどれ程の努力家で魔法にこれまで真摯的に向き合ってきたのかを。故に、彼女と目があった時に微笑みながら大丈夫だと言った。
「始祖ブリミルよ……お願いします。5つのペンタゴンよ、我が名はルイズ・フランソワーズ・ルブ・ド・ラ・ヴァリエール、来たれ我がしもべよ、我が呼び掛けに応えよ!」
しん…っとなった広場だったが魔法陣がルイズの正面に展開したかと思うと、鏡のようなものが出現した、その瞬間、広場は爆風に見舞われた。砂煙が晴れたと思えばそこには召喚されたのか人がいた。
「……日本人、か?」
クロードの呟きは誰に聞かれることもなかったが、クロードは驚き、動揺を隠せずにいた。然し、クロードの召喚したアルタが側により気が付いたかのように落ち着き払い、ひとまずは様子を見ることにした。
「あんた何?」
「ここは……どこだよ、てかこれはなんなんだよ。お前ら、同じような格好して宗教じみてやがるな、俺を帰せよ、元いた場所に!」
「あぁ、もう。うるさいわね。コルベール先生、やり直しを要求したいのですが」
コルベール先生曰く、使い魔召喚の儀は生涯に1度の事でやり直しなど以ての外との事。ルイズは覚悟を決めたのか、召喚した少年に向き直り。
「いい?あんたなんかには一生ないことなんだからね!」
そう言って、半ば強引にコントラクト・サーヴァントの契約の証、キスを交わした。
「初めてだったんだぞ!?……って、いっつ、ぐぐ」
そのツッコミはなかなかのユニークと思いながらも、使い魔がルーンを刻まれた時に起こる痛みはなかなかのようで、少年は気絶していた。今夜にでも、彼とは話したいものだなぁ、と考えつつ彼をルイズの部屋まで取り敢えず運ぶ事にした。
「ルイズ、周りの声は気にするなよ。確かに君は召喚をしたんだ、それもきっと特別な者を、ね」
「……ありがとうクロード。けど、今は素直に受け止める事が出来そうにないわ、ごめんなさい。でも、これを運ぶのを手伝って貰ってもいいかしら?」
「あぁ、もちろん喜んで」
クロードは魔法を使わずに、少年を背負いルイズの部屋まで運んだ。運び終わった後に、彼はルイズに起きたら呼んでくれ、彼と話してみたいことがあると伝え、部屋を後にしたのだった。
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ありがとうございます。非常に嬉しく思いながらも、楽しんで頂けるよう頑張る所存です。