とある恋人達の日常   作:愛歌

2 / 2
ーこれは、まだ今の2人が付き合う前のとある日のお話。

※これは以前pixivに投稿させていただいたものです。


それが『恋』だと気づく前

▽▲▽▲▽▲▽▲

世界が歪む。

真っ直ぐに歩けず、ふらふらもたつきながらも、必死に前に進もうとする。

 

ー・・・苦しい。

 

ギリギリ保っていた意識も、もはや限界に限りなく近い。

震えるその小さな唇が、かすかに名前を紡いだ時、それは現れた。

最後の力を振り絞り、その手を伸ばす。

意識が途切れるその瞬間に聴いた声は、 どうしようもなく暖かく、そして優しかった。

 

▼△▼△▼△▼△

放課後。

まだ寮の門限まで時間があるこの時間帯。

街は学生であふれ返っていた。

 

そんな中を歩くとあるツンツン頭の少年。

彼は今すごく機嫌が良いらしく、鼻歌まで歌っているぐらいである。

まあ元々不幸体質な彼自身の『幸せの基準』は、割とハードルが低い。

おまけに大事そうに抱えている10個入りのたまごパック、そして彼が財政難であることを加えれば、彼がご機嫌な理由など、火を見るより明らかである。

 

そんな素晴らしき主夫・上条当麻は、流れゆく人の中に見慣れた人物を見つけた。

常盤台中学の制服に身を包み、明るい茶髪を肩まで伸ばした少女。

ー御坂美琴だった。

普段通りであればここで声をかける上条だが、今日は命にかえても死守しなければ

いけないモノがある。

せっかくスーパーセールで値引きに値引きを重ねた超激安たまご(10個入り)を、なんと2パックも手に入れたのだ。

これをやすやす危険にさらすなどという馬鹿な真似は、絶対にしない・・・

 

「(あれ・・・?)」

 

はずだったのだが・・・。

 

「(なんか、いつもと違くねーか・・・?)」

 

美琴の様子がおかしかった。

ふらふらとおぼつかない足取り。

耳まで赤く染まった顔。

荒い息づかい。

そしてなにより、彼女の能力の電磁波が、バチバチと火花を散らしていた。

 

「(なんだあいつ?なんかあったのか・・・?)」

 

思わず凝視してしまう上条だが、不意に彼女の体が大きく傾いた。

そこから先は何も考えずに上条の体は動いた。

先ほどまで頭を埋め尽くしていたたまごのことなど、すでに忘れさっていた。

ただがむしゃらに、美琴に手を伸ばす。

そして・・・

 

「御坂・・・!!」

 

伸ばされたその震える手を、掴み取った。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲

「ん・・・」

 

 

不意に、目を覚ました。

ぼんやりとした思考の中、今日の出来事を振り返る。

 

「(・・・ああ、そういえば・・・今日は朝から調子悪くて・・・)」

「(黒子は休めって言ってたけど、今日はクラスメートの子達に勉強教える約束してたから・・・無理やり学校行ったんだっけ・・・)」

「(勉強教えてる最中は大丈夫だったのに・・なんか帰る途中で、急に悪化して・・・)」

「(あれ・・・?私どうやって寮まで帰ったんだろ・・・黒子が途中で迎えに来てくれたとか・・?)」

 

不思議に思い、美琴は重たい体を起こして、部屋を見渡す。

 

「・・・?」

 

 

そして気づいた。

 

「(ここ・・うちの寮じゃない!?)」

 

まばたきをしても、目をこすっても、目の前の景色が変わることはない。

 

そんな絶賛困惑中である美琴の鼓膜を、いつもより優しげなその声が揺らした。

 

「御坂?起きたのか?」

 

美琴はとっさに振り向き、視界に映るその人物に目を丸くする。

 

「なっ!?あ、あんたっな、なんで!?」

「あーまあ・・・とりあえず落ち着けって、体調悪いんだろ?」

「・・・え?・・あ」

 

上条の言葉にふと冷静になる美琴。

そして徐々に、ここにくる前の記憶がよみがえってきた。

 

「(あ・・・そっか、私帰る途中で気失っちゃって・・・)」

「(じゃあ、あれはこいつだったんだ・・・)」

 

「思い出したか?とりあえず俺の寮に運んだんだけど、とりあえずもう少し安静にしとけ」

「う、うん・・・」

「お粥食うか?」

「・・・うん、食べる・・・」

「おしっじゃあちょっと待ってろよー」

 

引き際に頭を少しなで、上条はキッチンの方に駆けていった。

 

取り残された美琴は、熱で赤かった顔を余計に赤くさせ、一人悶える。

 

「(うわああああ//////あ、あいつに頭なでられた・・・////)」

「(しかも、初めてあいつの部屋にきた・・/////)」

「(やばい・・・なんかもう、すごい、しあわ、せ・・・//////)」

 

ふわふわした感覚を覚えながら、美琴はゆっくりと意識を手放した。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

「おい御坂ー出来たぞー、って、寝てんのか・・・」

 

タイミング悪かったなー、と頭を掻きつつ上条は美琴が眠るベットの横に腰を下ろした。

 

普段は会う度に電撃を浴びせて来るおっかない後輩だが、こうして見ると可憐な少女だ。

 

「(本当、黙ってれば可愛いんだけどなー)」

 

上条は心の中で呟きつつ、すやすや眠る後輩に優しく微笑む。

なんだかんだ言って憎めない存在なのだ。

 

「さて、このお粥はどうしよう」

 

上条は出来立てほやほやのお粥に視線を移し、とりあえずキッチンに戻ろうとする。

 

が・・・

 

「・・・え?」

 

何かに引っ張られる感覚に、上条は自分の服に目をやる。

Tシャツの裾を、小さな手が掴んでいた。

 

「あ、あのー御坂さん?」

「・・・行っちゃ、ダメ・・・」

「へ?」

 

我ながら情けない声だなと思いながらも、上条は仕方なく座り直した。

 

少し早くなった鼓動の音を聞きながら、恐る恐る上条はもう一度美琴の顔を見る。

 

「・・・・っ////」

 

とっさに視線を逸らし、小さくため息をつく。

 

「(反則だろ・・・////)」

 

今までとは段違いに早い鼓動。

耳まで赤く染まった顔は、下手したら病人である美琴よりも赤い。

 

「・・・ったく、幸せそうに寝やがって・・・////」

 

なんだか混濁した感情を追い払うように、上条は頭を横に振る。

それでも収まらないその感情は、もうすでに上条を染めきっていた。

 

「・・・くそ・・・/////」

 

ー・・・その感情を、上条が『恋』だと自覚するのは、まだまだ先のお話。

 

                        ー終わりー

 




最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回作も出せるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。