※これは以前pixivに投稿させていただいたものです。
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世界が歪む。
真っ直ぐに歩けず、ふらふらもたつきながらも、必死に前に進もうとする。
ー・・・苦しい。
ギリギリ保っていた意識も、もはや限界に限りなく近い。
震えるその小さな唇が、かすかに名前を紡いだ時、それは現れた。
最後の力を振り絞り、その手を伸ばす。
意識が途切れるその瞬間に聴いた声は、 どうしようもなく暖かく、そして優しかった。
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放課後。
まだ寮の門限まで時間があるこの時間帯。
街は学生であふれ返っていた。
そんな中を歩くとあるツンツン頭の少年。
彼は今すごく機嫌が良いらしく、鼻歌まで歌っているぐらいである。
まあ元々不幸体質な彼自身の『幸せの基準』は、割とハードルが低い。
おまけに大事そうに抱えている10個入りのたまごパック、そして彼が財政難であることを加えれば、彼がご機嫌な理由など、火を見るより明らかである。
そんな素晴らしき主夫・上条当麻は、流れゆく人の中に見慣れた人物を見つけた。
常盤台中学の制服に身を包み、明るい茶髪を肩まで伸ばした少女。
ー御坂美琴だった。
普段通りであればここで声をかける上条だが、今日は命にかえても死守しなければ
いけないモノがある。
せっかくスーパーセールで値引きに値引きを重ねた超激安たまご(10個入り)を、なんと2パックも手に入れたのだ。
これをやすやす危険にさらすなどという馬鹿な真似は、絶対にしない・・・
「(あれ・・・?)」
はずだったのだが・・・。
「(なんか、いつもと違くねーか・・・?)」
美琴の様子がおかしかった。
ふらふらとおぼつかない足取り。
耳まで赤く染まった顔。
荒い息づかい。
そしてなにより、彼女の能力の電磁波が、バチバチと火花を散らしていた。
「(なんだあいつ?なんかあったのか・・・?)」
思わず凝視してしまう上条だが、不意に彼女の体が大きく傾いた。
そこから先は何も考えずに上条の体は動いた。
先ほどまで頭を埋め尽くしていたたまごのことなど、すでに忘れさっていた。
ただがむしゃらに、美琴に手を伸ばす。
そして・・・
「御坂・・・!!」
伸ばされたその震える手を、掴み取った。
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「ん・・・」
不意に、目を覚ました。
ぼんやりとした思考の中、今日の出来事を振り返る。
「(・・・ああ、そういえば・・・今日は朝から調子悪くて・・・)」
「(黒子は休めって言ってたけど、今日はクラスメートの子達に勉強教える約束してたから・・・無理やり学校行ったんだっけ・・・)」
「(勉強教えてる最中は大丈夫だったのに・・なんか帰る途中で、急に悪化して・・・)」
「(あれ・・・?私どうやって寮まで帰ったんだろ・・・黒子が途中で迎えに来てくれたとか・・?)」
不思議に思い、美琴は重たい体を起こして、部屋を見渡す。
「・・・?」
そして気づいた。
「(ここ・・うちの寮じゃない!?)」
まばたきをしても、目をこすっても、目の前の景色が変わることはない。
そんな絶賛困惑中である美琴の鼓膜を、いつもより優しげなその声が揺らした。
「御坂?起きたのか?」
美琴はとっさに振り向き、視界に映るその人物に目を丸くする。
「なっ!?あ、あんたっな、なんで!?」
「あーまあ・・・とりあえず落ち着けって、体調悪いんだろ?」
「・・・え?・・あ」
上条の言葉にふと冷静になる美琴。
そして徐々に、ここにくる前の記憶がよみがえってきた。
「(あ・・・そっか、私帰る途中で気失っちゃって・・・)」
「(じゃあ、あれはこいつだったんだ・・・)」
「思い出したか?とりあえず俺の寮に運んだんだけど、とりあえずもう少し安静にしとけ」
「う、うん・・・」
「お粥食うか?」
「・・・うん、食べる・・・」
「おしっじゃあちょっと待ってろよー」
引き際に頭を少しなで、上条はキッチンの方に駆けていった。
取り残された美琴は、熱で赤かった顔を余計に赤くさせ、一人悶える。
「(うわああああ//////あ、あいつに頭なでられた・・・////)」
「(しかも、初めてあいつの部屋にきた・・/////)」
「(やばい・・・なんかもう、すごい、しあわ、せ・・・//////)」
ふわふわした感覚を覚えながら、美琴はゆっくりと意識を手放した。
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「おい御坂ー出来たぞー、って、寝てんのか・・・」
タイミング悪かったなー、と頭を掻きつつ上条は美琴が眠るベットの横に腰を下ろした。
普段は会う度に電撃を浴びせて来るおっかない後輩だが、こうして見ると可憐な少女だ。
「(本当、黙ってれば可愛いんだけどなー)」
上条は心の中で呟きつつ、すやすや眠る後輩に優しく微笑む。
なんだかんだ言って憎めない存在なのだ。
「さて、このお粥はどうしよう」
上条は出来立てほやほやのお粥に視線を移し、とりあえずキッチンに戻ろうとする。
が・・・
「・・・え?」
何かに引っ張られる感覚に、上条は自分の服に目をやる。
Tシャツの裾を、小さな手が掴んでいた。
「あ、あのー御坂さん?」
「・・・行っちゃ、ダメ・・・」
「へ?」
我ながら情けない声だなと思いながらも、上条は仕方なく座り直した。
少し早くなった鼓動の音を聞きながら、恐る恐る上条はもう一度美琴の顔を見る。
「・・・・っ////」
とっさに視線を逸らし、小さくため息をつく。
「(反則だろ・・・////)」
今までとは段違いに早い鼓動。
耳まで赤く染まった顔は、下手したら病人である美琴よりも赤い。
「・・・ったく、幸せそうに寝やがって・・・////」
なんだか混濁した感情を追い払うように、上条は頭を横に振る。
それでも収まらないその感情は、もうすでに上条を染めきっていた。
「・・・くそ・・・/////」
ー・・・その感情を、上条が『恋』だと自覚するのは、まだまだ先のお話。
ー終わりー
最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回作も出せるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!