すみません
次に俺が起きた時は、まだ乾き切っていない血が辺りに散っており、俺の体にも傷が残っていた。
───団長は、そう思った瞬間目に入ったのは
切断され、へし折れている腕と、赤黒く蠢く何かだ。
そしてその何かは2つある。
2つ…?
待てよ、まさか…
団長と団員なのか?
このおぞましい何かは、かつて人だった物なのか…?
「っ…うっ」
反射的に口元に手を押さえる。
吐き気を催し、胃と喉が熱い。
どうして、団長達がこんな目に…
そう思っていると、頭に激痛が走る。
その瞬間、ある光景が脳に映る。
何者かの一人称視点となる。
その目から見えるのは、団員と団長だ。
「なんだお前は?」
団員が、こちらに向かって言う。
しかし団長は、何かに気がついたようだ。
「…武器を構え笛を吹け、例の殺人鬼だ」
流石団長だ。歴戦の戦士の勘だろう。
団長が槍を構える。
それに続き、団員も槍を構え笛を吹く。
いや、吹けていなかった。
何故なら、吹く前に金棒らしきもので叩き潰されたからだ。
「おいおィ、自警団つってもこの程度かよォ
ハハハ、こんなんじゃ遊びにもなんねェわ」
この体の主であろう男の、だらしのない口調で喋る声が聞こえる。
聞くだけで人をイラつかせるような、そんな声だ。
「な───
団長が何か言いかけたその時、団長の右腕が、男の振りかざした刀によって宙へと飛ぶ。
その飛んだ腕を、男はボレーシュートのように蹴り飛ばし、団長に当てる。
それを直撃した団長は、腕がぶつかっただけというのに、数m後ろへと吹っ飛んでしまった。
「ぐはっ…!」
「なんだよ、お前も強さは見た目だけってか?」
「や、やめてくれ、命だけは見逃してくれ…!」
いつもなら、想像できないくらいの情けない声を、団長が出す。
とても、他人に命をかけろと言った本人とは思えない。
団長は静止の言葉を他にも言うが、男はその言葉に何の反応もせず、団長へと向かう。
「お願いだ…助けてくれ……」
「あァ、助けてやるよ」
「ほ、本当か!?」
「本当だ、俺は嘘をつかない」
「まあ、腕の痛みからだけどなァ!!」
「え?」
団長は、男の金棒によって肉塊へとなった。
そして記憶は、ここで途切れる。
「なんだ…今のは……?」
考えようとしたが、俺はこの事を他の誰かに伝えなければならない。
それに気付き、考えるより先に足を動かした。
まず、向かったのはフランと慧音のいる班だ。
フランがいる限り、負ける事はないと思うが、それでも心配だからだ。
これは俺のエゴにすぎない。
それでも俺は、安否を確認したかった。
しかし、他の班の団員と出くわしてしまう。
「おい、お前持ち場離れてどうしたんだ?」
時間が惜しいが説明しないわけにもいかない。
「団長が───
気が付くと俺は首を吊っていた。
そして、他の団員も。
死なずに、意識があり、首吊りの苦しみを味わうのはここまで苦しいのか。
何とか、懐に入れておいた短剣で脱出する事が出来る。
「ごほっげほ………くっ……」
他の吊るされた団員も降ろす。
案の定とも言えるが、手遅れだった。
俺はこの遺体をどうすることも出来ず、そして、向かうところがある。
苦渋の決断をし、俺かの遺体を放置し先に向かうことにした。
そして、フラン達の持ち場に着く事ができた。
「ど、どうしたの勇人!?」
「何だその索状痕は?…何があった?」
他の団員2人もざわつく。
流石慧音と言ったところか、観察眼が優れている。
しかし今は
「俺の事は後だ!団長と団員6名が殺された!」
「何!?」
「ゆ、勇人は大丈夫だったの…?」
俺の事は後って言ったばっかりなんだが。
「俺は生きてるから大丈夫だ!」
一度冷静になるため、一呼吸する。
「そして理由はわからないが、犯人の視点を見る事ができた」
「犯人の視点だと?」
「ああ、犯人は人間と予想されていたが
俺が見た視点からだと、人間では考えられないパワーを持っていた」
「金棒で人間を肉塊にしたり、斬り飛ばした腕を蹴り、その力で団長のようなガタイのいい人間を数m吹っ飛ばす奴は、人間なんかじゃない」
「蹴った物だけで人を飛ばすなんて私でも難しいよ」
「そうなのか?」
「ああ、そもそもそんな威力で蹴ったら腕の方が耐えられないだろう」
慧音がそう言う。
確かに、腕は折れていたが、腕を折る程度の力では団長を吹き飛ばすのは難しいと思う。
そうなると…
「「「能力か(かな)」」」
考えは皆同じのようだ。
「能力と考えると人間じゃないと考えるのは少し安直すぎたか」
「いや、外来人だ
人外のような力を、ほとんど目の当たりにした事が無い環境で育ったんだ
その考えも仕方ない」
こっちに来て、半年以上経ったからなれたと思っていたが、そんなことはなかったみたいだ。
「そういえば視点って事だから、犯人の見た目とかは見えなかったの?」
そういえば見た目を確認していなかった。
どこかに映っていないかを思い出す。
───あった。
「金棒を振りかざす瞬間、肌の色は確認できた」
「浅黒い肌の色だったな」
「浅黒い肌…幻想郷でそんな奴は見た事がないな……」
「私もないかなあ」
フランはそもそも、幻想郷の人里にしか来ていないわけだが。
「そうなると、そいつも外来人って可能性があるのか」
「人か妖怪かを決めるにはまだ少し情報不足だが、そうなるな
顔が割れていないだけに、見つけるのが困難かと思ったが
、褐色の肌がいない幻想郷だ
以前よりは特定がしやすくなるだろう」
「でも、これまで目撃談すらなかったのに見つけられるのかな?」
「無いよりはマシだフラン
外の世界じゃ一つの情報から全てに繋がる事だってある」
流石に外じゃ、浅黒い肌なんて溢れるほどいるので、それだけじゃ難しいだろうが。
「外はすごいな」
「異能力がある方が俺はすごいと思うよ」
「とりあえず、団員を訓練所へ戻そう」
「ああ、わかった」
団員を訓練所へと戻す。
どうやら他に犠牲者はいないみたいだ。
失った者は大きすぎるが…
そして全員が集まってから、団長の死や団員5名の死を告げる。
「………っ……団長……!」
「泣くな…皆堪えてるんだ…」
「でも、いつも厳しくて、優しかった団長が死ぬなんて俺には耐えられねえ…!」
こんなに人から慕われる団長のカリスマ性は、高かったのだろう。
俺も、団長を慕っていた。
だから、団長の最後は言わないことにした。
そして次に、犯人の見た目、人間か妖怪かは定かじゃないが、生身の人間では対処できない事も言う。
「それで、どうするの?
私とかは大丈夫だと思うけど、そこの自警団達は子どもが蟻を潰すような感じで殺されちゃうんじゃない?」
団員達は何か言いたげな表情だったが、何も言えなかった。
「ああ、俺は入ったばかりの新人で、先輩方を命令するなんてことはしたくないが
ただ、犯人の強さを目にした一個人として話させて欲しい
家族が大切なら、俺は先輩方に戦って欲しくはない…
でも、それでも、団長や団員、今まで犠牲になった人の仇を取りたい人は残ってくれ」
16人いた中の10人は、納得のいかないような表情をしつつ、家族の為へと帰っていった。
「俺は、家族は全員死んだ
だから、俺が死んでも残る者はいない
妻と妹の仇を取る」
他に残った者も、家族がいないなど、家族が殺されたためいなくなったが理由だった。
「新人が指揮を執るのもどうかと思うから、誰か他に指揮を執ってくれる人はいないか?」
「別にあんたで良いんじゃないの?」
団員達も頷いた。
「…わかった、最善に導く事ができるように努力する
それでだが班構成は、博麗の巫女「霊夢でいいわ」
「霊夢と慧音の班、俺とフランの班で分ける
異論はあるか?」
誰も無いみたいだ。
次に進めよう。
「待機させる位置が2つしか無いのが不安だが、これは里の人間にも笛を常備させることで改善しよう」
「笛を準備する時間もある、一週間くらいは笛無しで警備をする事になる
この期間が一番危険だ
絶対に死者を出さないようにしよう」
皆の意志が決まる。
To be continued…
漫画とかならモブの描写もしやすいのですが、どうも小説だとやりにくいですね(´-ω-`)
そしてこのSS内で今回が最多の文字数
まさか2話分になるとは…
書くのに時間がかかりました(;´∀`)
補足
本来なら、映るじゃなく写るです。
書き忘れていたのですが、会議をした場所は訓練所です
そして遺体処理は最後の会話が終わったあとしています
霊夢は渋々でしたが