真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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始まり
恋姫の世界へ


プロローグ

 

これは遥か昔

 

 

 

ある物語の終わりから始まる物語

 

 

 

人が立ち入らない森の中

 

 

 

その森の中に流れる川の畔に一人の青年の姿があった。

 

 

 

彼は川に向けて棒の先に糸を垂らしている。

 

 

所謂釣りで有る。

 

 

 

青年は透き通る空や流れる小川の音に身を任せていた。

 

 

「………平和じゃのう」

 

 

あくびと共に出た言葉には爺臭さが垣間見える。

 

 

 

彼は見た目こそ十代後半から二十歳半ばだが実際の年齢は八十を超える老人で有る。

 

 

 

彼は『太公望』

 

 

 

嘗ては仙人界に属し、崑崙山の教主・元始天尊の命により当時最大の国『殷』の国をめちゃくちゃにしていた『妲己』の魂を封じる『封神計画』を任される。

 

 

仲間の道士や仙人の協力や地上の民の支援を受けて、妲己の支配に有る殷を滅ぼす。

 

 

これも封神計画の中枢と化していた

 

 

当初は妲己を倒すための計画とされていたが真実は違った。

殷を滅ぼした後に浮き彫りになった真実。

封神計画の真の目的は『歴史の道標』と呼ばれる『女媧』を倒すことだった。

女媧とは地球に降り立った最初の知的生命『始まりの人』と呼ばれる一人だった。

女媧は自身が望む世界(すでに存在する年表通りの歴史)を作るために介入し、歪みが生まれた場合には幾度と無くリセットされる世界。

 

繰り返される歴史を止めるために発動された封神計画。

 

女媧の居る世界へ攻め入り仲間や嘗ての敵達との共闘により遂に女媧は倒された。

 

そして当の太公望は実は女媧と同じく『始まりの人』の一人で名を『伏羲』

 

彼だけは女媧を止めるための抑止力となるために姿を変え、記憶を書き換え、地上に残っていたのだ。

 

戦いを終えた後に太公望は後始末を全て仲間に押し付け、自分は悠々自適の旅を満喫していた。

 

太公望を探すために嘗ての仲間や弟子は血眼になり探したが始まりの人と呼ばれる伏羲の力は伊達じゃない。

 

 

怠ける為に全力を尽くした太公望は見事に捜索の手から逃げ延びていた。

 

そんな彼は一息付く為と自身の趣味で有る釣りを満喫していたのだ。

 

 

そんな時、ふと違和感を感じた太公望。

 

 

周囲を見渡せば自分以外の時間が止まったように全ての動きが止まっていた。

 

 

「これは……」

 

 

危機感を感じ立ち上がる太公望。

 

 

それと同時に太公望の前に突如、光が差し込む。

 

 

 

「むっ!?」

 

 

 

太公望はこの光に途方もない力を感じた。

 

自身と同等かそれ以上の力を。

 

因みにだが太公望は見た目と言動から弱く見られがちだがそれほ間違いで有る。

 

 

崑崙の教主・元始天尊の一番弟子であり仙人界の重臣に位置する存在。

 

 

その実力は崑崙の最高幹部十二仙も認め、敵ならば最強の仙人『申公豹』ですら彼をライバルとしていたのだ。

 

 

 

その太公望と同等の力。

 

 

しかし太公望にはこの力の出所に察しが付いていた。

 

 

「………女媧」

 

 

 

光の中に感じるのは戦って討ち滅ぼした嘗ての同士。

 

 

 

光が納まると同時に目の前に現れたのは一つの鏡。

 

 

 

─────へ───

 

 

そして聞こえてくる僅かな音。

 

 

 

 

───外─の─へ──

 

 

 

 

その鏡から聞こえるのは女媧の声だ。

 

 

 

 

───外史の扉へ───

 

 

 

 

「なるほどのぅ………女媧め。保険を残しておったか」

 

 

 

声を聞き、鏡を見た太公望はコレが何なのか察した。

 

 

この鏡は女媧が作り上げた世界へ扉なのだと。

 

 

恐らく女媧は負けた時の事は考えてはいなかったが今まで作り上げた世界の失敗を予想していた。

 

 

その為に作っていた予備の世界。

 

 

そして、その世界へ行くための扉がこの鏡なのだ。

 

 

 

「やれやれ………厄介事の予感しかせぬのぅ」

 

 

 

溜息を吐きながら鏡に手を伸ばす太公望。

 

 

 

普段の彼なら厄介事への介入は死んでもゴメンと言って逃げるのだが今回はそうはいかない。

 

 

女媧は太公望=伏羲の仲間

 

 

彼女の暴走を止めるためとは言えど永遠の孤独に押し込めたのも始まりの人の自分達だ。

 

 

 

「ならばワシがやらねばな……」

 

 

 

太公望は鏡に手を翳す。

 

 

 

それと同時に鏡は眩い光を放ち、太公望の身体を包む。

 

 

 

「鬼が出るか蛇が出るか……女媧は出て来て欲しくはないのぅ」

 

 

 

 

そんな事を呟く太公望の体を包む光が周囲を完全に白くするほどの輝きを放つ。

 

 

 

 

 

 

そして、その光が収まった時。

 

 

 

 

 

 

太公望も鏡もこの世界から消えていた。

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