真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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活動報告にも書きましたが前話を一部修正しました


太公望、駄目っぷりを披露する

 

 

 

陳留を目指す太公望と雛里。

 

 

一頭の馬に二人は跨がる。

太公望が手綱を引き、雛里は太公望の腕の中に納まる形になる。

雛里は湯気が出るほど顔を真っ赤にしながら馬に揺られていた。

 

 

「陳留まではまだ掛かるのかのう?」

「ひゃ、ひゃい!?」  

 

 

 

太公望に話し掛けられたが雛里は恥ずかしさから思考が追い着かず噛みながら上ずった声を上げる。

 

 

「か、噛んじゃいまひた……」

「雛里はまず噛み癖を直さねばならぬのぅ」

 

 

口を押さえながら涙目になり、太公望は雛里の噛み癖を早めに直さなければならないと思い始めていた。

 

 

「ひたた……陳留まではまだ距離があります」

「そうか……まあ、のんびり行くとするか」

 

 

舌の痛みに耐えながら話す雛里と既に怠けモードに入ってる太公望。

 

 

「のんびりいくんですか?師叔は何かやることがあるんじゃ……?」

「確かにやるべき事はあるが、それだけではいかぬのだ。いつも気を張っていてはいざというときに力が出ぬ。だらけるのも必要なのだ」

 

 

立派な事を言っているが様はサボる口実である。

 

 

「師叔はもっと真面目な方だと思ってました………」

 

 

ハァーと長めの溜息が出る雛里。

 

 

「書物や口伝に伝わる太公望様の話は立派な物ばかりでした……」

「カカカッ……噂や伝承は間違って伝わる物よ」

 

 

伝承の太公望はかなり立派な人物とされていた。

しかし、この数日で雛里は太公望の人柄を把握していた。

マイペース且つ飄々とした性格

自分の欲には忠実(主に食欲と怠け)

実は労働が嫌い

 

と、太公望の駄目っぷりを見せ付けられたのだ。

しかも占い屋で稼いだ金が有るためか、その後は働こうともしない。

それを注意した所

 

「働くくらいなら食わぬ」

 

と最高に駄目な発言をする始末。

稼いだ金が無くなった時には更に駄目発言が出るんだろうなぁ……と雛里はちょっと嘆いていた。

 

 

「曹操か……商人達の話では他者にも厳しいが己にも厳しい君主と聞く。どれ程の人物かのう」

 

 

雛里が自身の思考に沈んでいる間に太公望は曹操の事を考えていた様だ。

 

 

「商人達の話を聞いていたんですか?」

「占いをやる傍らで行商人達から聞いといたのだ。噂でも聞き取れる情報は得るべきであるし直接会ったときの会話を引き出す手札にもなる」

 

 

雛里の疑問に答える太公望。

それを聞いた雛里はやはり師叔は凄いんだと感じた。

太公望は雛里を友人の下へ送る為の行動をすると同時に情報を得て、路銀を稼ぎ、商人達との交流を深めていた。  

自身も太公望の手伝いをしていたが太公望のやることの全ては把握できなかった。

一つの行動にいくつもの意味を含ませ、同時にこなす。

学ぶべきが多いなぁと雛里は振り返り、太公望を見上げる。

何かを考えている太公望の表情は自身が憧れていた『太公望』そのものだった。

 

 

「お慕いしてます……師叔……」

 

 

雛里が呟いたのは小さく誰にも聞こえない言葉。

 

 

「む、何か言ったか雛里?」

「いえ、何も……のんびり行きましょう師叔……」

 

 

雛里は手綱を握る太公望の手に自身の手を添える。

 

 

 

私は師叔と一緒に行きます。

 

 

 

雛里は言葉には出さずに静かに意思を示していた。




拠点話の様な話を書きたくなったので今回の話になりました

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