「貴様、偽名を言ったのか!」
「普通は気付くがのぅ」
騙された事に顔を赤くしながら怒り心頭と言った様子で春蘭は太公望に大剣を構えるが太公望は、のほほんとしていた。
「止めなさい春蘭。自ら名乗れぬ者に名乗る名は無いって事ね?私の名は曹孟徳。この街を治める者よ」
「やはり、お主が曹操であったか」
春蘭を止めた華琳は太公望に名を名乗る。
対する太公望は得心がいったという表情になっていた
「私が曹操と知っていたの?」
「そこの赤いのと青いのが敬意を祓い、身分を隠そうともせぬ上に、その覇気。それとなく感じておったわ」
華琳の問いにカカカッと笑いながら答える太公望。
因みにではあるが半分は推理だが半分はカマ掛けである。
それとなく知った風な口振りで話すことにより相手から情報を引き出す太公望の手口だ。
「そう……中々面白いわね。どう、城に来ない?話がしたいわ」
「折角のお誘いだお受けするとするかのう」
華琳は太公望を城に誘い、太公望はそれに乗る。
短いやり取りだが腹の探り合いをする気なのは明らかである。
「っと、その前に……」
太公望は先程から会話に加われず置き去り状態だった凪の下へ歩み寄る。
「籠を一つ貰えるかのう」
「は、はい。ありがとうございます!」
一瞬呆気に取られた凪だが太公望に籠を渡す。
「曹操殿の側近も買った籠だ、買わねば損であろう」
太公望は籠を受け取ると同時に先程、籠を買った秋蘭をチラリと見ながら必要以上に大きな声で主張する。
「姉さん、一つおくれ」
「私にも」
「俺も買うぞ」
太公望の声を聞いた者達は続々と凪の籠を買いに殺到した。
「では、後は頑張るがよい」
「ま、待って下さい!お礼を……」
太公望は凪に激励を送るとサッサッと華琳達の下へ行ってしまう。
凪は追いかけようとしたが、お客が次々に来るために追いかけられなかった
「優しいのね」
「ワシやお主が原因で籠が売れなかったのでは浮かばれまい。少しばかり後押しをしただけよ」
華琳の言葉にニョホホと笑う太公望。
「なあ、秋蘭……私の目の錯覚か?私には奴が縫いぐるみの様に見えるんだが」
「いや、私にもそう見えるぞ姉者」
「師叔……どうやったらそんな姿になるんですか……」
先を歩く華琳と太公望だが後ろを歩いていた雛里、春蘭、秋蘭は太公望のディフォルメ化がやはり気になるようだ。
「ねえ、私はまだ貴方の名を聞いていないのだけれど?」
「そうであったのぅ、ワシの名は呂望だ」
太公望は改めて華琳に名を告げる。
賢君と覇王の出会いであった。