真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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太公望、象棋を指す

 

 

華琳に招かれ、城に来た太公望と雛里。

 

 

「お帰りなさいませ華琳様!」

 

 

するとネコ耳フードを来た少女が華琳を出迎える。

 

 

 

「出迎えご苦労さま桂花。何か変わった事は?」

「ハッ、何事もありません」

 

 

華琳の問い掛けに桂花と呼ばれた少女はキビキビと答える

 

 

 

「我々が華琳様に付いているのだ問題なぞ起きるものか」

「違うわよ、私が華琳様に付いてるから問題が起きないのよ」

 

 

春蘭の言葉に桂花は先程まで華琳に見せていた懐柔的な態度は変わりツンツンした態度になる。

 

 

「偉く変わった性格だのう」

「棲み分けがハッキリ分かれているのだ。優秀なのだがな」

 

 

太公望の呟きに秋蘭が答えた。

 

 

「確かに優秀そうではあるが……ちと、頭が固そうだのう」

「あら、桂花の見定めかしら呂望?」

 

 

太公望の言葉に反応したのは華琳、その顔は面白い物が見れそうだと期待している笑みだった。

 

 

「見定めほどでは無いわ。才に溺れる者にしか見えぬわ」

「な、なんですって!」

 

 

太公望の挑発にアッサリと激昂する桂花。

この辺りは春蘭と変わらぬと思った太公望であった。

 

 

 

「あら、この子は我が国の筆頭軍師なのよ?」

「其処が限界なのであろう?」

 

 

ニョホホとディフォルメ化で笑う太公望。

それに黙っている桂花ではなかった。

 

 

 

「アンタ、生意気よ!それに何よその姿!?」

「落ち着きなさい桂花」

 

 

太公望を指差して叫ぶ桂花に華琳が待ったを掛けた

 

 

「呂望、そこまで言うなら桂花と象棋でも指してみなさい。それで優秀なのか貴方の言うとおり才に溺れた物なのかがハッキリするわ」

「カカカッよかろう」

 

 

太公望の了承を得た華琳は兵士に命じて象棋盤を用意させる。

 

 

「師叔……大丈夫なんですか?」

「任せておくがよい」

 

 

雛里は心配して不安そうになっていたが太公望はニョホホと笑うばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆数分後◇◆

 

 

 

 

 

 

 

パチンと太公望が駒を動かす。

 

 

「これで詰みだのう」

「そん、な……私が象棋で負けるなんて……」

 

 

目の前に起こった結果に信じられないと呆然とする桂花。

 

 

 

「ん……呂望が勝ったのか?」

「ああ、そうだ姉者」

「なんだ、今まで負けたことないとか言って、大したことないではないか」

 

 

太公望に桂花が負けたことに大したことが無いと言う春蘭。

 

 

 

「それは違いましゅ……荀彧さんは十分強いですよ、ただ師叔が強すぎるんです……」

「そうね……あそこまで鮮やかな打ち筋は始めて見たわ」

 

 

春蘭の言葉を否定する雛里と太公望の打ち手を感心した風にコメントを零す華琳。

 

 

「完敗ね、桂花。これはあくまで象棋だけど、自分の力を過信し、実力の解らぬ相手に無闇に戦いを挑めば、本当の戦であっても、敗北は必至」

「かり、ん様……」

 

 

呆然とする桂花に話し掛ける華琳。

 

 

「何か言い分はあるかしら」

「…何も、ござい、ま、せん」

 

 

呆然としたまま華琳に言葉を返す桂花。

 

 

「恥じることではあるまい。若いときには己が才を見誤る。お主の場合は他人を見下す傾向が有る気がするがの」

 

 

太公望は桃をモシャモシャと食べながら告げる。

 

 

「そうね、自信が過信になり、慢心となれば、その才は発揮されないわ」

「う……ううっ……」

 

 

太公望、そして華琳からの指摘に目に涙を溜める桂花。

将棋で敗北した手前、反論も出来ない。

 

 

「でも、私としては配下の者が負けたのは我慢ならないわ。春蘭」

「ハッ!」

 

 

 

華琳はニヤリと笑みを浮かべると春蘭の名を呼ぶ。

 

 

「次は私が相手だ。構えろ呂望!」

 

 

 

春蘭は大剣を太公望の鼻先に突き付ける。

太公望は魏の大剣に勝負を吹っかけられるのだった。


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