真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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太公望、異世界に降り立つ

 

 

 

「ふむ、着いたようだのう」

 

 

鏡を介して女媧の作った異世界へと降り立った太公望。

太公望は周囲を見渡す。

 

 

「見た所……森の中か」

 

 

 

完全に見覚えのない森の中。

空間転移の際に場所の移動もあったようだ。

 

 

「ふぅむ……先ずは何をするか……」

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

太公望がこれからの方針を考えようとした瞬間、森に悲鳴が響く。

 

 

「な、なんじゃ!?」

 

 

太公望は思わず悲鳴が聞こえた方に視線を向ける。

森の中なので姿は見えないが少女の悲鳴は確かに聞こえたのだ。

 

 

「やれやれ、捨て置くのも気が悪くなるしのぅ」

 

 

太公望は面倒事を嫌うが非情ではない。

太公望は懐から打神鞭を取り出すとフワリと体を浮かせ悲鳴がした方へ飛んでいった。

 

 

 

少女は走っていた。

 

友人と共に街を目指していたが人攫いに遭遇し、急いで逃げた。

 

しかし逃げている最中に友人とは離れ離れになってしまい、しかも自身は人攫いに再度遭遇してしまったのだ。

 

 

「へへへっ……もう逃げられないぜお嬢ちゃん」

「に、逃がさないんだな」

 

 

人攫いの三人組は解りやすく言えばチビ、デブ、ヒゲだった。

内のチビとデブが少女を追いつめると下卑た笑みを浮かべながら躙り寄っていた。

少女は恐怖から尻餅をついてしまい更に恐怖で足が震えていた。

 

 

(誰か……助けて……っ!)

 

 

涙を流しながら目を閉じて身を固くする少女。

そして、チビとデブの手が少女に触れようとした時だった。

 

 

「疾っ!」

「な、なんだ!?」

「ぬわッ!?」

 

 

何かの掛け声と共に一陣の風が吹く。

突然の出来事に人攫い三人組は一瞬少女から目を離してしまう。

 

 

「い、居ねぇ!?」

「何処に行きやがった!?」

 

 

再び少女に視線を移した時には少女の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、なんとかなったのう」

「あ、あわ……」

 

 

太公望に抱き抱えられた少女は困惑していた。

人攫い三人組に追い詰められたと思ったら突風が吹き、更に突然現れた青年に横抱きにされてそのまま連れ去られてしまったのだ。

今は先程居た場所から随分離れた場所まで来ていた。

其処まで来てから少女は横抱きから解放されたが見覚えのない青年に少女は警戒をしていた。

 

 

 

「さて、先ほどの悲鳴はお主ので間違いなかったか?」

「ひゃ、ひゃい」

 

 

青年、太公望の問いに少女は噛みながらも返事をする。

 

 

「ふむ、人攫いに見えた故に助けたが迷惑であったか?」

「…………っ!」

 

 

太公望の問い掛けに少女はブンブンと首を横に振る。

 

 

「うむ、それは良かった」

 

 

太公望はそう言って少女の頭を撫でる。

少女は大きめの帽子を被っていたので少し撫でづらかったが少女は頬を染めて嬉しそうにしていた。

 

 

「さて、先ほどの事も有った故にまだ気が動転しているじゃろうが聞きたいことがある。良いか?」

「は、はい。大丈夫でしゅ」

 

 

先ほどから会話の度に噛む少女に太公望は苦笑いになっていた。

そして少女は地に尻餅を着いていたが立ち上がり太公望と向き合う

 

 

「わ、私の名は『鳳士元』です。助けて頂いてありがとうございましゅ!」

 

 

名乗った少女、鳳士元は噛んじゃったと顔を赤らめ、恥ずかしそうに帽子を目深く被るのだった。


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