真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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太公望、弟子を取る

 

 

雛里と街の外で待ち合わせをしていた太公望だったが雛里は籠売りの少女に詰め寄られていた。

 

 

「雛里よ、コレは何事だ?」

「あ、お帰りなさい師叔」

 

 

太公望が曹操の下から帰ってきたのを確認した雛里は笑顔を向けるが、少々引き攣っていた。

 

 

「あ、あの……此方の方が師叔に話があるそうなのですが……」

「この者は籠売りではなかったか?」

 

 

雛里の指示した先には籠売りの少女『凪』、太公望は見覚えがあったので指摘するが籠売りの少女は太公望の前で片膝を着く。

 

 

「お待ちしておりました、私の名は『楽進』お願いです、私を弟子にして下さい!」

 

 

勢い良く捲し立てるように凪は太公望に弟子入りを志願した。

 

 

「あー……お主、何故にワシの弟子になりたいのだ?」

「先程の泥棒を捕まえた時の手並み、私の籠の売り上げを手助けして頂いた時、更に曹操様に城に招待される程のお方とお見受けしました」

 

 

太公望の疑問に凪は迷い無く答える。

 

 

「うぅむ……お主がワシの弟子になりたいと言うのは判ったが……ワシは弟子を取る気はないのだ」

「お願いします!弟子に、弟子に!」

 

 

太公望の言葉を聞きながらも必死に頭を下げる凪に太公望は目を細めた。

 

 

「似ておるのう……武吉に」

 

 

ボソッと呟く太公望。

呟いた名は太公望が道士だった頃に弟子になりたいと志願してきた天然道士の少年。

実直で素直な良い子でとても太公望の弟子とは思えないほどの品行方正の少年だった。

天然道士故に宝貝は使えなかったが持ち前の体力と運動神経を駆使し、数々のバイト経験から仲間を何度も救った。

更に特筆すべきは師匠である太公望が死んだと思ったときには大仙人だった趙公明に戦いを挑み、並みの仙人や道士では傷付けることすら困難な趙公明を殴り飛ばし、更にマウントを取った上に何度も殴り伏せると言う快挙を成し遂げた。

そんな武吉に凪は似ているのだ。

真面目な態度も真っ直ぐな瞳も。

 

 

「楽進よ……ワシは……成さねば成らぬ事がある。仮にお主を弟子にしたとしても教えられる暇があるとは思えぬのだ」

「構いません。貴男のお供をしながら学びたいと思います」

 

 

本当に武吉に似ておるのうと太公望は再度思う。

 

 

「しかし、楽進。お主は村の籠売りとしてきたのだろう?このまま村を離れて良いのか?」

「そ、それは……」

 

 

今まで太公望の弟子になりたいと言っていた凪は初めてたじろいだ。

 

 

「あ、それなら心配はいらんで。ウチ等は村に戻るから村の皆には伝えとくわ」

「真桜ちゃん!?」

 

 

凪の付き添いで一緒に居た真桜がフォローに回り、沙和が驚いていた。

 

 

「ウチ等は凪が弟子入りしたいなら止めへんよ。でもウチ等も村の皆に伝えたら後を追うで」

「凪ちゃんを一人にはさせないのー」

「お、お前達……」

 

 

友情に花を咲かせる凪、真桜、沙和だが完全に太公望と雛里を置き去り状態だった。

 

 

「やれやれ……此処で断ったらワシが悪者だのう」

 

 

太公望はポリポリと頭を掻く。

太公望は文句を言いながらも既に凪を弟子にすると決めていたようだ。

正しくは弟子では無く旅の供を増やす感覚なのだが。

 

 

「楽進は天然道士の様な力を持っているようだからワシの旅に必要な力を持つかも知れぬのう」

 

 

太公望は凪の潜在能力に期待をしている様だった。

 

 

 

 

「………師叔」

 

 

雛里は太公望に対し、頬をプクッと膨らませて不満気にしていた。


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