真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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今後の展開に悩んでいたら間が空いてしまいました。


太公望、見せ場を失う

 

 

太公望の突撃に野盗は慌てた。人質が居るのに太公望が迷い無く突っ込んできたからだ。

 

 

「テ、テメェ!?刺すぞコラァ!」

 

 

慌てた野盗は人質に刃を突き立てようとしたが空振り。人質が居たはずの場所には誰も居なかった。

 

 

「さ、もう大丈夫ですから」

「お、おお。ありがとう」

 

 

少し離れた場所には凪が人質になっていた老夫婦を既に助けて兵士達に保護を頼んでいた。

 

 

「な、いつの間に……って仲間は既にやられてるっ!?」

 

 

野盗の足下には人質を捕まえていた筈の仲間が倒れていた。

 

太公望が突っ込んだ瞬間、凪は迅速に背後に回り込み人質を捕らえていた野盗を手刀で倒す、そして即座に移動を開始していたのだ。

 

これらの動きを凪が即座に対応できたのは雛里が凪に『師叔なら、こう動く筈です』と数パターンの状況予測を伝えていたからだった。今まで太公望の事を学んだ雛里なりの予測だったが見事に的中していた。

対する太公望も雛里の指示と凪の武を信じての行動だった。最悪の場合は打神鞭で風壁を起こし、老夫婦を守るつもりだったが杞憂だったらしい。

 

 

「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

半ば自棄になった野盗は持っていた剣で太公望に斬り掛かる。周囲の人間がざわめく中、刃は太公望に迫っていた。

 

 

「師叔!」

「お師匠様!」

 

 

雛里と凪の心配する声も聞こえ、周囲の人間も太公望か斬られると思った。

しかし太公望は違った。コレをチャンスだと思ったのだ。

ここ暫く活躍が無かったのだ。ならば野盗を華麗に倒し、主人公らしさをアピールしようとすら考えていたのだ。

そして太公望がいざ野盗を倒そうと打神鞭をグッと握った瞬間、桃色の閃光が走り抜けて行った。

 

 

「望ちゃん、危なぁい!」

「ぶげふらぁ!?」

 

 

桃色の閃光の正体は雪蓮だった。雪蓮は太公望を追い越し、野盗に華麗にドロップキックを食らわせていた。

その後、雪蓮は野盗をマウントでボコボコにした後に兵士に引き渡していた。

 

 

「結局……ワシの出番は無くなったのぅ……」

「師叔……出番と活躍の場を失った哀愁と虚しさが漂ってますね……」

 

 

遠い目をした太公望に雛里が同情しかけていた。

 

 

 

 

この後、太公望達は城に招かれていた。雪蓮がこの土地の領主『孫策伯符』だった事も有り礼をしたいとの事だった。

兵士達に強制連行されていく雪蓮に太公望達も苦笑い。更に城に着くと同時に。

 

 

「雪蓮!お前は仕事をサボって居なくなったと思ったら何をしてるんだ!」

「良いじゃない。結果的に街の人達を救ったのよ」

 

 

雪蓮を書簡の束でバシバシと叩く黒髪の女性。雪蓮は馴れているのか叩かれながらも笑っていた。

 

 

「お・ま・え・はぁ~」

「い、痛いってば冥琳っ!」

 

 

冥琳と呼ばれた女性は『周瑜公瑾』。呉の軍勢で軍師をしている女性である。雪蓮とは幼馴染みらしくえらく砕けた口調で雪蓮に接していた。

 

雛里と凪は苦笑いでその光景を見ていたが太公望は目を細めて、そのやりとりを懐かしんでいた。

思い出すのは武王姫発と周公旦の二人。

 

周公旦は武王が仕事をサボったり女に絡んでいた際にハリセンで叩いたり、飼っていた象の下敷きにしたりと厳しかった。それでも懲りない武王はサボる度に周公旦に叩かれていたがそれが西岐での当たり前と化していた。

 

思い出センチメンタルは先程で終わりにせねばと思っていた太公望だったが、ここに来てまた思い出してしまった様だ。

 

 

「ほ、ほら……お客さんも来てるし、ね?」

「まったく……仕方ないんだから……」

 

 

太公望がふと思考を戻せば雪蓮と冥琳の戦いも終わっていたようだ。終わったと言うよりは冥琳が諦め折れたが正しいかも知れないが。

 

 

この後、太公望達は城に貴賓として招かれた。街の人達を救ってくれた礼と雪蓮を見つけて城に連れ戻した功績らしい。

夜になると宴になり大騒ぎをした。

太公望と雪蓮は酒を飲み、雛里と冥琳は象棋で対決し、先程までは居なかった呉の武人黄蓋も宴に参加しており、酒を飲みながら凪に武を語っていた。

 

宴も盛り上がっている最中、太公望は静かに席を立った。

 

静かにさり気なく離れたために誰にも気づかれなかった太公望は城の城壁に来ていた。

太公望が誰も居ないことを確認すると太公望の身体は淡い光に包まれた。

 

 

「待たせたのぅ」

『遅せぇんだよ、まったく……』

 

 

太公望から離れた光は人型になっていくと同時に太公望に悪態を放つ。見た目は不健康そうな容貌とシルバーアクセサリーが特徴で、とにかく邪悪な印象が目立っていた。

 

 

「久し振りだのぅ……王天君」

『ああ……久し振りだな』

 

 

ニィと笑った太公望の姿も変わっていた。今までの服装ではなく伏羲になる以前の『道士太公望』だった頃の服装になっていた。

 

 

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