真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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太公望、真名を知る

 

 

太公望と鳳士元は先ほどの場所から川辺に移動していた。

話をするに森の中は不便と感じたし先ほどの人攫い三人組がまだ居るかも知れないからだ。

 

 

 

「さて、道すがらお主の話を聞いたが……災難じゃったのう」

「……あう」

 

 

太公望の言葉に鳳士元は帽子を深く被ってしまう。

人攫いに有った上に友人と離ればなれになり、更に逃げたはずの人攫いに再度遭遇してしまった。

災難以外の何者でもなかった。

焚き火に拾い集めた小枝を火にくべる太公望。

 

 

「うむ、でだ。お主の知り合いの『朱里』であったか?その者と合流出来れば良いが……」

「っ!?駄目です!!」

 

 

太公望の呟きに鳳士元は立ち上がり、怒鳴り付ける。

先ほどまでのビクビクした様子とは違って威圧感も有るので太公望も面を食らった。

 

 

「なんだ、その友人とは会いたくなかった?」

「ち、違います!朱里は私の友達の『真名』なんです!」

 

 

太公望に詰め寄る鳳士元。

 

 

「訂正してください!」

「う、うむ……すまなかった」

 

 

剣幕に押され謝罪を口にする太公望。

それと同時に太公望には疑問がわき上がる。

 

 

「ところで鳳士元。聞きたいのじゃが」

 

 

「な、なんでしょう?」

 

 

真面目な太公望の顔付きに先ほどの剣幕は何処に行ったのか鳳士元はビク付く。

 

 

「真名とはなんじゃ?」

「……………………え?」

 

 

太公望の質問に目を丸くする鳳士元。

 

 

「真名を知らないんですか?」

「聞いたこともないのぅ」

 

 

質問を質問で返す形になった鳳士元。

 

 

そして驚愕する。

真名とは神聖な名であり、許された者しかその名を呼んではならない。

破れば殺されても仕方ないとすら言えるこの大陸の常識だ。

それを知らないとは不思議にも程がある。

 

 

 

「聞いたこともないんですか!?」

「皆目見当もつかぬ」

 

 

確認の為に再度聞き直す鳳士元。

 

 

「…………真名とはその人に心を許した時、初めて呼ぶことを許す名前なんです。本人の許可なく呼ぶと、何をされても文句はいえない。それ程の失礼にあたる行為なんです」

「ふむ、ではワシは無礼を働いたようじゃな。すまぬ」

 

 

鳳士元から真名の説明を聞き終えた太公望は納得すると頭を下げる。

 

 

「あ、あわ!?頭を上げて下さい!?」

 

 

対する鳳士元も慌てた。

真名の事が有ったにせよ年上男性にこんなにもアッサリと頭を下げられるとは思わなかったからだ。

 

 

 

「いやワシも迂闊で有った。知らぬ土地故にその風習にも気を配るべきであったが全てはワシの不徳の至すところよ」

「わ、わかったから!許しますから頭を上げてー!」

 

 

謝罪を続ける太公望に鳳士元は悲鳴にも近い声で太公望の頭を上げさせた。

 

 

 

「それで……ええっと……」

「ああ、そう言えばワシは名乗ってなかったのう」

 

 

何かを問い掛けようとする鳳士元に太公望は名を名乗って無かったと思い付く。

対する鳳士元も同様のようだ。

 

 

「うむでは、名乗るとするかワシの名は『太公望』じゃ」

「そうでしたか。では太公望様はなんでこの大陸に?」

「うむ、調べ物が有ってのう。先ほど来たばかりなんじゃが、着いたと同時に悲鳴が聞こえての。今に至るわけじゃ」

 

 

 

太公望が名乗った事で会話がスムーズに流れ始めた。

 

 

 

しかし其処で鳳士元の動きが止まる。

 

 

「太…公望……太公望様!?」

「うむ、太公望じゃ」

 

 

鳳士元は太公望に詰め寄り名を確認する。

太公望もしっかりと肯き間違いでないことを告げた。

 

 

 

「ふぅー………きゅう」

「 おっと!?」

 

 

 

鳳士元は目眩がしたかのような仕草の後に倒れてしまい太公望は慌てて鳳士元を抱き支えた。

 

 

「ワシの名は気絶するほどに珍しかったかのう?」

 

 

その問いに答える筈の少女は目をグルグルと回し、何故か頭の上にはヒヨコがピヨピヨと飛んでいた。

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