真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

32 / 34
その頃、仙人界は④

 

 

 

仙人界・蓬莱島

 

 

 

蓬莱島の会議室では外に集まっていた。太乙作成の崑崙の最高幹部が乗る宝貝『黄巾力士』の前に仙人や天然道士、妖怪仙人が集まっていた。

 

 

「えーっ、では選抜された者がこれから太公望師叔を追って外史へと向かいます」

 

 

マイクを通して伝えられる楊戩の説明にその場に居た者達が頷く。そこに集められた者達の身体は包帯やら絆創膏やらで全員が怪我人だと言うのが解る。

 

それと言うのも蓬莱島全体で開催された『誰が行くのか力で勝負。仙人界バトルロワイヤル』で挙って皆が参加し、戦った結果である。

その枠は五名と少なく、四不象、武吉、太乙は既に決まっており残りは二名である。

しかもその内、一名は竜吉公主が名乗りを上げており実質はあと一名となる。

 

その後一枠を争って戦いが発生した。それはもう激しい戦いが。

 

 

「行ってくるッスよー!」

「お師匠様を見つけてきまーす!」

 

 

四不象と武吉は元気よく出発の挨拶を交わしている。

 

 

「うーん、外史か!楽しみだなぁ!」

 

 

太乙は太乙で未知の世界に心を躍らせていた。

黄巾力士に積まれた太乙の荷物は大量で、それを下ろせばあと二人くらいは乗れるのでは?と思うほどに。

 

 

「太乙、外史を楽しみにするのは良いが一番の目的は太公望の捜索じゃぞ?」

「わかってるよ竜吉公主。と言うか竜吉公主……その怪我は?」

 

 

太乙を嗜める竜吉公主だが、その顔や身体の至る所に擦り傷があった。

 

 

「うむ……私が外史に行くと知ってからビーナスが黙っていなくてな」

 

 

ビーナスとは太公望の婚約者を自称する女性であり、兄である趙公明が太公望に『妹を頼むよ』と遺言を残し、ビーナスはそれに従って太公望の婚約者と名乗るようになったのだ。

そんなビーナスが太公望の危機に黙っている筈も無かった。しかも竜吉公主の左手の薬指にはめられているのは太公望が竜吉公主に贈った宝石なのだ(後に竜吉公主が指輪に加工した)

 

そして竜吉公主とビーナスの外史行きと太公望を賭けた戦いは始まった。

その戦いは後に仙人界十大決戦として語られる事となるが、それは別のお話。

 

 

「では竜吉公主、貴女が来たと言う事は……」

「うむ、私が勝った。太公望の事も任されたしな」

 

 

そう言って微笑む竜吉公主の顔は晴々としたものだった。ビーナスと戦った後に何を話したかは不明だがビーナスとの折り合いは付いたのだろう。

 

 

「女の人って凄いね四不象」

「ご主人には勿体ない人ッスね本当に」

 

 

微笑んだ竜吉公主に四不象と武吉は女性の強さを見せ付けられていた。

 

 

「さて、そろそろ出発したいんだが……」

「奴はまだ来ていないのか?」

 

 

太乙がそろそろ出発すると言うのだが最期の一人はまだ到着していなかった。

等と話をしていたら最期の一人が歩いてくる。顔に傷が有り、バンダナを巻いた青年だ。

 

 

「っと……遅いぞ。もう出発するそうじゃ」

「悪かったさ、親父達に出発の挨拶してきたさ」

 

 

遅れてきた最後の一人はタバコを吹かしながら謝る。

 

 

「俺っちは前の戦いで途中退場だったから今度は俺っちが師叔を助ける番さ」

 

 

最後の一人、天化はタバコを咥えたままニッと笑った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。