真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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お待たせして申し訳ありません!
今回は短めです。


太公望、仙道を語る

 

 

 

 

建業を出発した太公望、雛里、凪は洛陽を目指していた。

その傍らで太公望が雛里、凪に仙人、道士、天然道士の違いを説明していた。

 

 

「では道士と天然道士では意味合いも存在も違うのですか?」

「うむ、道士は術を使ったり宝貝で戦える。じゃがその反面、身体が弱く体力も少ない。天然道士は術や宝貝は使えぬが体が頑丈で体力が有り余るのだ」

 

 

雛里の質問に答える太公望。凪はその隣で熱心に話を聞いていた。

 

 

「それとワシの見立てでは凪も天然道士の可能性が高い」

「わ、私がですか!?」

 

 

太公望の突然の発言に驚く凪。

 

 

「うむ。天然道士は一般人とは比べものに成らぬ筋力や気を発する。思えばこの国に来てから強き武将は皆、天然道士の様だのぅ」

 

 

凪に天然道士の説明をする最中、太公望は腕を組んで悩む仕草を見せた。太公望がこの世界に来てから天然道士と思われる力を持った者が妙に多いのだ。

関羽、張飛、趙雲、夏侯惇、夏侯淵、孫策、そして凪。

武人とは言えども人としての範疇を超えた強さを持つ者達が天然道士じゃないとは思えなかったのだ。

 

 

「逆に……この世界には仙道を極めた者は居らぬか……」

 

 

太公望は雛里からこの世界では仙人とは眉唾な存在で仙人と名乗る者の殆どがインチキとされていると聞いていた。

仙人が居ないから道士が居らず、天然道士が世に蔓延っている。太公望の下した結論は案外当たっていたのかも知れないが今は謎のままである。

 

 

「私が天然道士と言う事は私は宝貝は使えないのですか?」

「うむ、無理だ。宝貝は仙人骨から出る強大な力を吸収して奇跡を起こす。天然道士は仙人骨の力を筋力としてつかっているからのう。逆に道士はその力を宝貝に送り込めるが天然道士程の力は出せぬ」

 

 

太公望の言葉を聞いて凪は少し残念そうにしていた。

 

 

「一般人や天然道士から道士へなる事は出来ないのですか?」

「前例が無い訳では無いが……極希な事らしい。ワシもそんな事になったのは一人しか知らぬ」

 

 

凪の様子を見かねた雛里が太公望に問うが望みは薄そうだと凪はヘコんだままだった。

対する太公望は一般人から最強に近い仙人へとなった男を思い出していた。

殷の大軍師、聞仲。

彼は仙人骨を持たない一般人だったが体を鍛え抜いた結果、仙人骨が生まれ、天然道士となりやがては仙人となった。

 

 

「彼奴の様な例は他に聞かぬからのぅ」

 

 

太公望は思い出と共に一つ溜息を零した。

そんな時だった。

 

 

「む、なんだ……?」

「師叔、どうされました?」

 

 

溜息を零した太公望が急に顔を上げた。その仕草に雛里は小首を傾げた。

 

 

「力が……遠ざかる?何があった?」

 

 

太公望は女過の力を察知しながら旅をしていた。しかしその力が急に洛陽の方面から離れてしまったのだ。

 

 

「むう……何やら様子もおかしい気がする……」

「お師匠様?いったい何が……」

 

 

太公望が考え事をして、凪が様子を窺おうとした瞬間だった。

三人の周りが突然暗くなったのだ。

 

 

「え……急に暗く?」

「な、なんですかアレ!?」

「こ、黄巾力士?」

 

 

思わず空を見上げた雛里と凪は言葉を失った。空には三人を覆う様に。正しくは三人を見下ろすように一体のロボがいたのだ。太公望には見覚えがあったが雛里と凪は得体の知れない物体にしか見えず、雛里は脅えて、凪は戦闘態勢に入った。

 

 

『やっと見つけたよ太公望!』

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「くっ!?」

 

 

黄巾力士がズズン!と地面に着地すると余波が生まれ、太公望はそれに巻き込まれ、雛里は吹き飛ばされたが凪が庇う事で事なきを得た。

 

 

「こんな真似をするのは……太乙じゃな」

「僕等を心配させたんだから、ちょっとしたお仕置きさ」

 

 

太公望はデフォルメ化しながら頭から血を流しながらこんな黄巾力士を使い、無茶苦茶をするのは太乙だろうと確信を持っていた。そんな事を裏付けるかの様に太乙真人は黄巾力士の頭から身を乗り出すと悪戯な笑みを浮かべるのだった。




次回より封神演義のキャラが本格的に恋姫に絡みます。

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