真・恋姫†演義~舞い降りる賢君~   作:残月

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太公望、真名を考える

 

 

 

 

太公望と雛里は今後の話をしていた。

 

 

「ふむ、ワシの名はやはり世間に知らせるのは拙いか」

「は、はい。太公望様の名は大陸中に知れ渡ってますから」

 

 

 

一番最初に問題になったのは太公望の名だ。

雛里が言ったとおり太公望の名を出せば国で問題が起きかねない。

 

 

「ふむ、ワシは太公望以外にも名を持っておるからそれを名乗るか」

「ふえ!?太公望様は名を沢山持っているんですか」

 

 

太公望の名が複数有ることに驚く。

太公望とは道士になった時の名で有り、人間だった頃は『呂望』

最初の人と呼ばれていた時は『伏羲』

地上に残り、女禍を監視するために人間だった頃は『王奕』

様々な名を持つ太公望だが自身が嘗て告げて楊戩にも言われたが姿形が変わろうと太公望が一番自身に会う名だと思われるのだ。

 

 

「ふむ、では普段は『呂望』と名乗り、真名は『太公望』とするかの」

 

 

太公望は少し悩んだが名を呂望とし真名を太公望にした。

 

 

「呂望が名で太公望を真名にするのですか?」

「うむ。呂望はワシが人間だった頃の名じゃ。人里で名乗るなら丁度良かろう。真名を太公望としたのはワシがそう呼ばれるのが長かったからじゃ。おいそれと無くしたくはないからの」

 

 

雛里の問いに答える太公望。

 

 

「さて、雛里よ。ワシの真名は太公望じゃ。お主に真名を預ける」

「はい。真名をお預かりします」

 

 

太公望はこの大陸の礼儀に習い、雛里に真名となった太公望の名を預けた。

 

 

「うむ。だが普段は呂望の名で呼んだ方が良いかの」

「そうですね。太公望様の真名が知られれば混乱の元になりそうですし……でもそれじゃ太公望様の真名が呼べなくなっちゃう……」

 

 

太公望様と呼べなくなる事にショボンとする雛里。

そんな雛里を思ってか太公望は思案し、口を開く。

 

 

「ならば雛里よ。ワシの事は『師叔』と呼ぶか?」

「師叔……ですか?」

 

 

師叔(スース)とは師匠の弟弟子(血縁でいうところの叔父に該当)に対する尊称であるのだが、注釈では「師匠の弟子」になる。

 

 

「うむ。ワシは仙人界で一番の指導者『元始天尊』様の直弟子でな。皆はワシを師叔と呼ぶ事が多かったのじゃ」

 

 

その言葉に雛里はパァッと笑顔になる。

 

 

「はい、太公望師叔!」

「雛里よ。それでは意味が無いぞ」

 

 

嬉しそうに言う雛里だが太公望のツッコミに顔を赤くした。

 

 

「す、すみません……」

「うむ、これからは注意せねばなるまい」

 

 

太公望は立ち上がると軽く体を伸ばす。

 

 

「では、行くか雛里よ。最初はどこへ行く?」

「はい、師叔。始めは幽州啄郡。公孫賛様が治める地です。私も朱里ちゃんも最初に其処を目指す予定でしたから」

 

 

太公望と雛里は歩み出す。

 

 

 

乱世へに向かう世界への第一歩を。

 

 

 

 

 


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