自分で期限決めといて遅れてしまった……。
今回は少し難産でしたが、鎮守府海域4番目の海の攻略をします。
雪風が復帰して、数日が経った。雪風は本調子を取り戻し、先の出撃の間に建造されていた艦娘たちも基地へと溶け込み、訓練等を行っていた。
新たに建造された艦娘は、那珂と響、雷と睦月。那珂には申し訳ないが、第2艦隊として主に遠征任務を行ってもらっている。那珂は最初こそ渋っていたが、幽が『第四水雷戦隊旗艦』と『遠征のプロ』で煽ったところ、苦虫を噛み潰したような表情で快諾してくれた。まあ、流石にちゃんと主戦力として出撃することも約束したが。
また、響と雷が建造されたことで、この廿日市基地に第六駆逐隊が勢揃いすることとなった。再開を四人はとても喜び、今まで電と雪風のみだった秘書艦サイクルに、新たに雷が組み込まれた。
睦月は、すぐに吹雪と仲よくなった。御簓の所でも最初に睦月と仲良くなったのは吹雪だったらしいので、何か感じるところがあるのだろう。それは、姉としての共感かもしれない。
とりあえず、新たな仲間が着任したことにより第1艦隊と第2艦隊が揃い、一人一人の負担を軽減することができるようになった。
話は変わって、幽たち廿日市基地の面々は、間宮さんを除く全員が基地内の特殊会議室に集まっていた。特殊会議室は外への音漏れが完全にシャットアウトされており、通常特殊機密についての会議を行うための場所なのだが、この基地にいるからには知っておいて欲しいと幽がこの場所を使うようにしたのだ。
「皆揃っているわね?始めるわよ。」
幽はまずこう告げ、全員に今回の作戦会議で用いる書類を配布した。全員に行き渡ったのを確認して、幽は再び話し始める。
「皆が実力上げを頑張っていたから、全員がそれなりの練度を持ってきたわ。まだ過信はできないけれどね。」
前口上を述べ、幽はさらりと本題を切り出した。
「そろそろ南西諸島防衛線へ再び出撃しようと思うの。もちろん、艦隊をきちんと整備した後だけど。」
「南西諸島防衛線、ですか。確かにもういいかもしれませんね。」
「南西諸島っていうと……、どこだったっけ、響?」
「大隅、奄美、沖縄、宮古、八重山の方だよ、暁。この前も司令官に聞いてなかった?」
「う、うるさいわね!ちょっと忘れちゃっただけよ!」
わいわい皆が話しはじめてしまったので幽が止めようと思ったとき、雪風がふとある言葉を発した。
「坊ノ岬……。」
「そうか、雪風は坊ノ岬の経験者か。」
沖縄、と聞いて、かつて雪風の戦った坊ノ岬沖海戦を思い出してしまったらしい。あれだけ自軍が悲惨な目にあっているのを見たのであれば、決して忘れられることの無いものだと思うが。
とにかく、坊ノ岬を連想して少し暗くなってしまった雪風に対して、幽はこう声をかけた。
「……大丈夫よ、雪風。かつての海戦のようには、絶対にしないから。」
「しれぇ……。……はい!」
「ふふ……。とにかく、第1艦隊を出撃部隊、第2艦隊を基地護衛部隊として作戦を行うわ。」
『はい!』
全員の返答を確認した後、幽は今回の出撃の各部隊の面々を発表した。
「第1艦隊は、金剛、赤城、神通、電、雪風、暁。貴女たち6人は主戦部隊として、南西諸島防衛線に直接行ってもらうわ。旗艦は電、よろしく。」
「了解なのです!」
「絶対に勝利するネー!」
「役目を果たせるよう、頑張ります。」
「雪風、全力で行きます!」
「やーーっと、暁の出番ね!しっかり皆と動けるよう、頑張るわ!」
第1艦隊に指名された全員が各自の抱負を述べた後、少し不貞腐れている那珂を確認しながら、幽は第2艦隊を発表した。
「次に第2艦隊だけど、羽黒、那珂、吹雪、響、雷、睦月。……那珂、不貞腐れないの。基地待機ではあるけど、第1艦隊に何か起きたりとか、基地に直接深海棲艦が攻めてきた場合は防衛のために、出撃してもらうんだから。頼りにしてるのよ?」
「……本当?本当に本当?……よし、那珂ちゃん、頑張っちゃうよー!」
「私も、頑張ってみせます!」
「雷が、絶対に基地を守ってみせるわ!」
「了解だよ、司令官。……誰も傷つけさせやしない!」
「にゃはは、頑張るにゃしい!」
「皆さんと一緒に基地の護衛、頑張ります!」
「明石と壱華は装備と出撃ドック面での補佐、大淀さんは出撃通信の管制、それぞれよろしくお願いね。」
「はい!完璧に整備します!」
「ドックでのことなら、うちに任せろ!」
「精一杯、幽さんの補佐をしてみせます!」
同じく第2艦隊と補佐の全員の抱負を聞いたあと、幽は後ろを向き最後にこう付け加えた。
「今回の目標は南西諸島防衛線の深海棲艦を制圧する事だけど、あくまで第1は『全員生きて、基地に戻る』事よ。無理だと思ったら、戻ってきても構わない。私は、戻ってきたからって責めはしないわ。」
幽は再び全員の方へ向き直る。
「廿日市基地、総員活動体制に入るわよ。」
『はい!』
直接出撃する者、基地に残り基地の護衛に当たる者、出撃に関係はしないが補佐で皆を支える者、それぞれがそれぞれで必要だと思われる装備をし、作戦へと臨んでいった。
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「敵影はありませんね。」
「どこから来るかわからないし、むしろ気を抜きすぎると危険なのです。気を付けるのです。」
電ら第1艦隊は、南西諸島防衛線への進軍をしていた。
しかし、今まで電達は一度も深海棲艦に遭遇していなかった。この事に、第1艦隊の面々は少し不安になる。
「道を間違えたのかしら……?」
「それは無いのです。電達は、この海図の中の一番南の航海路を通っています。妖精さんに確認しました。」
「なら、このまま進めば大丈夫ですね。」
このように話ながら、しかし集中は解かず艦隊は歩を進めていた。
南航路上を少し行ったところで、艦隊前方にいた雪風は、左前方に一瞬黒い影を見た。ほんの一瞬であったため、雪風はそれを判別することが出来なかったが、直感的に嫌な予感がしたので赤城に索敵してもらうことにした。
「艦隊左前方に間違いないですね、雪風さん?」
「はい。一瞬だけだったから詳しくはわかりませんけど……。」
「敵がいるかもしれない。それが分かれば今は十分です。準備が出来ますから。」
赤城は弓に矢をつがえ観測機を飛ばす。矢として放たれた観測機は、飛行機の形へと変化し雪風の言っていた方角に向かってゆく。飛んでからしばらくたって、観測機から通信が入った。
「艦載機から入電……、雪風さんの言っていたとおり、敵艦発見です!」
「雪風、ビンゴ!」
「艦種は分かりますか?」
「軽母2、軽巡2、駆逐1です!」
「司令官!」
『聞いてたわ、電。全員針路を11時の方向へ。敵艦隊と接触するわ。』
「「「「「「了解!」」」」」」
電達は、深海棲艦のいる方向へ舵を取り、戦闘準備をしながら向かっていった。途中で観測機を降ろした赤城は、新たに矢をつがえ射出した。
「第一次攻撃隊、発艦してください!」
赤城は流星、天山、彗星、零戦21型を放つ。この前述の3機は明石の趣味の開発によって生み出されたもので、特に流星のときは珍しく幽が明石を褒めたらしい。
暫くすると、攻撃へ向かった妖精から通信が入った。
「艦載機より入電……、敵艦船攻撃成功!駆逐及び軽巡1隻轟沈、軽空母1隻小破です!」
「この調子でいくのです!総員、突っ込んで行くのです。」
「「「「「了解!」」」」」
艦隊は深海棲艦に向かって進んで行く。そして、真っ先に敵が射程圏内に入った金剛が、35.6cm連装砲をぶっぱなした。
「 撃ちます!Fire!」
「グガアアアアアア!」
金剛の砲撃は、真っ直ぐに旗艦ではない方の軽空母に向かって飛んでいく。その弾は、そのまま直撃して軽空母を撃沈させた。
「軽空母一隻落としたようです!」
「電たちも行くのです!」
残りのメンバーも装備を構えつつ、二手に分かれて攻めていく。
雪風と暁は右側へと少しそれ、軽巡を狙っていた。
「暁ちゃん、私が先にいきます!」
そう言った雪風は、少し前に出て弾を発射する。弾は一直線に軽巡の方へ向かっていったが、弾が少しそれてしまい少しずれて着弾した。結果、当たりはしたものの中破にする程度で留まってしまった。
「ちょっとそれちゃいました!暁ちゃん、お願い!」
「任せなさい!やぁ!」
暁の撃った弾が一直線に飛んでいく。砲弾は吸い込まれるように軽巡へと迫り、直撃した。砲弾のあたった軽巡は、深手を負い轟沈した。それを確認した暁は、間髪入れず電に通信を入れる。
「電!軽巡を倒したわ!」
「了解なのです!神通さん、私たちもいくのです!」
「了解です。」
電と神通は、敵艦隊の少し奥の方にいる軽空母を目指し進んでいた。軽空母は、先程の赤城の艦載機による爆撃で少破程度の傷を負っていた。
軽空母が二人の射程圏内に入ると、まず神通から撃っていった。
「撃ちますっ!」
「グッッ……。」
弾は直撃し、かなりのダメージを負わせていた。それに対し、電はさらに追い撃ちをかける。
「命中させちゃいます!」
「グガアアアアアアアアアアア……。」
電の砲弾の直撃によって、軽空母は相当のダメージを負う。多大なダメージを負った軽空母は、沈んでいった。
「とりあえず、全艦倒せたわね。」
「このまま先に進むネー!」
「ちょっと待ってください、通信しますから……。」
「O,oh...。Sorryネ……。」
一人テンションを爆上げしてしまった金剛をよそに、電は淡々と通信機を基地に繋げた。
「司令官、敵艦隊全艦撃沈を確認したのです。こちらの被害は0なのです。」
『見てたわ。了解。そのまま進軍して。』
「了解なのです。……進軍許可が出たのです。雪風ちゃん、羅針盤はどうなのです?」
「えーっと……、北東ですね!」
「じゃあ、北東方向に進みましょう。行きますよ、皆さん。」
「「「「「了解!」ネー!」」」」
艦隊は、一路北東方向へと向かっていく。
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北東方向に進んでいた電たちは、急に嫌な予感がすると言った雪風のため観測機を飛ばし、周囲を偵察していた。
「……特に敵艦隊の情報は入ってきませんね。」
「外れましたかねぇ?」
「そうと決めつけるのは早いのです。胡散臭いけど、的中率は90%なのですから。」
「何かさらっと貶してませんか!?」
見つからなくても、しばらく観測機を飛ばし続け根気よく待つこと20分、艦隊前方を飛んでいた観測機から連絡が入った。
「艦載機から入電!空母ヲ級を旗艦とする艦隊が接近中だそうです!」
「編成はどうなのネー?」
「ちょっと待ってください……。……空母1、軽空母2、重巡2、駆逐1です!」
「何その編成!?見せてもらった統計資料には、そんなの無かったわよ!?」
「でも空母ヲ級が旗艦ってことは、彼女らがこの海域のボス艦隊に違いありませんね。」
「司令官!」
『空母1、軽空母2っていうのが痛いわね……。赤城、可能な限りでいいから制空権を狙ってみて。』
「了解です、提督。」
『対空装備持ってる3人は、赤城を補佐してあげて。』
「「「はい!」」」
『皆、今回制空権はとれるかわからないわ。各自対空見張りを厳として。』
「「「「「「了解!」」」」」」
通信を終えた後、電たちは敵艦隊の方へ向き直り各自戦闘準備を行う。赤城は弓と矢を揃え、金剛は艤装を少々点検する。神通と暁は万が一を想定して装備していた10㎝連装高角砲を準備する。電と雪風は、明石が少し改造した12.7㎝連装砲を準備した。この12.7㎝連装砲は通常の物よりも命中精度が上がっており、狙った所を撃ちやすいよう改造されている。
全員が準備を終えたのを確認した電は、全体に指令を出す。
「……今度の敵艦隊は、この海域で恐らく最後の敵なのです。」
「そうだネー。でも、私たちならやれるデース!」
「そうですね。……一航戦の実力、見せてやります!」
「まずは、暁たちが敵艦載機をおとしてあげるわ!」
「ふふ、腕がなりますね。二水戦旗艦の実力見せてあげましょう。」
「雪風、精一杯頑張ります!」
「では皆さん、敵艦隊と接触します!気を付けていくのです!」
「「「「「了解!」」」」」
電の掛け声の直後、全員が行動を取り始める。全体として進みつつ、赤城を最奥とした陣形を作る。赤城は矢を弓につがえ、敵艦隊へ向けて射出した。
「行きます!第一次攻撃隊、発艦してください!」
「ヲ級サン、艦娘デス。」
「ム、艦娘カ……。スグニ飛バセ。艦載機、発艦セヨ。」
「「艦載機、発艦。」」
赤城が艦載機を飛ばすのと同時に、電達に気が付いた深海棲艦も艦載機を発艦してきた。赤城の艦載機の総数に比べると、明らかに深海棲艦の艦載機の方が多いことがわかる。しかし、深海棲艦の艦載機に対して金剛、神通、暁が対空砲を構えていた。
「撃ち落とすネー!」
「全く、煩わしい羽虫ですね……。」
「な、なんか神通さんが怖いけど、暁は気にしないわっ!」
3人はそれぞれ機銃、連装高角砲を用いて敵艦載機を落としていく。しばらくすると、敵艦載機の数よりも赤城の艦載機の数が多くなっていた。二人より少し前に撃つのをやめ砲撃準備をしていた金剛は、赤城の伝達がくるのを待っていた。赤城の艦載機の一部が敵陣へ到達し、駆逐艦を潰す。そして、全体に伝達した。
「……っ!制空優勢までもってきました!」
「了解ネー!主砲、撃ちます!Fire!」
金剛の主砲から砲弾が放たれる。その砲弾は一直線に敵陣へ向かい、軽空母を1隻撃沈した。それと同時に敵に接近していた電たちも攻撃に入った。
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雪風は、2隻の重巡のうちの片方と戦闘をしていた。この重巡はいわゆるパワー絶対主義派らしくかなりの火力を持っているが、全体的に命中精度が甘いため雪風が本気で見極めれば避けられるような弾が多かった。言ってしまえば、今まで戦ってきた重巡の方がもっと命中精度がしっかりとしていて、脅威的であった。
「よっ……と。避けられました。」
「クソッ、ナゼ当タラナイ!?」
重巡は雪風に対してどんどん攻撃を加えてくる。しかし、そのどれも雪風には当たらず、宙を切っていった。雪風は自分が『完全に』当てられるタイミングを見計らうため、今は避けに専念していた。
「クソッ、タカガ艦娘ゴトキガ!」
「だから、その程度の命中精度じゃ当たらないですよ。て言うか、深海棲艦はやっぱり話せるんですか……。」
雪風は一度沈みかけたときに、深海棲艦の声を聞いていた。もしかしたら勘違いではないかと思っていたが、どうやら勘違いでは無さそうであった。これは確実だな……、と雪風が考えていると、一瞬とても悪い予感がした。それに合わせて、雪風はほぼ反射的に右へ動いた。
「コノッ、アタレッ!」
「っ!」
雪風がさっきまでいた場所に砲弾が放たれる。間一髪雪風は避けることができたが、左腕を砲弾がかすっていた。そこはパワー絶対主義の砲弾、雪風の左腕がかすっただけで少しイカれてしまった。恐らくどこかの筋をやられてしまったのであろう。
しかし、深海棲艦も自身の砲撃の反動で動きがかなり鈍っていた。そこを雪風は見逃さず、一旦イカれた左腕を放っておいてすぐさま攻撃に転じた。
「よし、今っ!」
「グアッ!」
「それっ!それっ!それっ!」
「ガッ、グッ、グアッ!」
雪風の連撃に、身動きのほとんど取れない重巡は為す術なく砲撃される。艤装、身体などに砲弾をくらい続け、あっという間に大破までもっていかれてしまう。
「ガッ、コノッ、クソガアアアアアア!」
重巡が死力を振り絞り、雪風へ多数の砲弾を放つ。しかし、冷静さを欠いた状態での砲撃は、もはや雪風に当たることはない。すぐに雪風は距離を詰め、砲を構える。その表情は先程まで見せていた普段のものではなく、非常に冷たいものであった。
「私だって元二水戦ですし、本当に短い間ですが艦隊旗艦を担ったこともあります。仲間を守る為なら、容赦はしません。」
重巡はその雰囲気の豹変に、完全に呑まれ動けなくなってしまう。重巡が最期に聞いたのは、この一言であった。
「チェックメイト、です。」
12.7㎝連装砲から砲弾が放たれる。砲弾は吸い込まれるように重巡と向かい、着弾する。重巡は爆炎に包まれ、水底へと沈んでいった。
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雪風が戦闘しているのと同時刻に、少し離れた場所では電がもう1隻の重巡と戦闘をしていた。
「どうやら雪風ちゃんは決着がついたみたいですね。」
戦闘中ではあるが、電は雪風の方にも気を配っていたらしい。爆発音が聞こえてきたことで、雪風の勝利を知った。電のこの様子に対して、相対している重巡は突っかかった。
「自分ガ勝ッテモイナイノニ、味方ノ心配カシラ?貴女、私ヲナメテイルノ?」
「なめてなんかいないですよ。それより貴女はどうなんです?仲間がやられて。」
「私トアノ子ノ間二仲間意識ナンテ無イワ。」
「仲間意識が無い……?」
仲間意識が無い。電の頭の中に重巡の言ったこの一言が深く残った。共に艦隊を組んでいるのに仲間意識が無いとは、あり得ないし信じられないことだった。
「……それは一体、どういうことなのです?」
「アラ、貴女興味アルノ?別二普通ノコトジャナイ。」
「普通では無いのです。本来そんなことはあり得ないのです。」
「アリ得ルワ。何テ言ッタカシラ、アノ人類ノ言葉……。ソウ、『呉越同舟』ッテ。私タチハ、タダ利害関係ガ一致シタカラ、力ヲ合ワセテルダケヨ。ムシロ私ハ、アノ子喧嘩ッ早クテ嫌イダッタシ。艦隊ッテソウイウモノデショウ?」
「……。」
この重巡の言葉を反芻し、電は激しい嫌悪感を覚えた。こいつは決して相容れない相手だと、そう感じた。そして、重巡の放った言葉に対してこう返答した。
「艦隊は利害関係だけで成り立つものではないのです。もしも貴女が艦隊だと言っていることが本当なら、それは艦隊として機能しないはずです。」
「……意見ノ食イ違イ。ドウヤラ貴女ト私ハ、相容レナイヨウネ。」
「貴女に言われるのは癪ですけど、激しく同意なのです。」
二人は話ながらも、互いに距離を詰めていく。いつのまにか空を飛んでいた鴎が一際大きく羽ばたいた瞬間、二人は動き始めた。
このときは、重巡の方が少々早く動き出した。重巡は、腕にある砲塔を定め電に対して砲弾を撃つ。
「沈メ!」
「当たらないのです!」
電は持ち前の観察眼を生かし、余裕を持って重巡の砲弾を避ける。そして、その後の流れを上手く持って行ける場所も既に見つけていた。
「よし……。」
電はあらかじめここまで移動すると考えていた点に移動すると、すぐに重巡に対して砲を構える。電の移動した場所は、少し離れたものの重巡からはまだ狙える場所であった。
重巡が彼女へ左手の砲を向けようとする。そのタイミングで電は砲弾を撃ち出す。はたから見れば重巡を狙った砲弾に見えるだろう。しかし、電が狙ったのは別のものであった。
重巡は、電が砲弾を撃った瞬間に電の狙いを理解した。しかし、すでに電に対して砲を向けようと動き出してしまっていた。それなりに重さのある砲だ。一度動き出せば止めるのは難しい。重巡は砲弾を避けられない状況に追い込まれてしまった。
「てやぁっ!」
「グアッ!」
電の砲弾が重巡の砲の中へ飛んでいく。砲弾は砲の中で爆発し、重巡の砲も誘爆した。砲を誘爆された重巡は左腕周辺に大きなダメージを負い、行動がかなり鈍くなる。そこを容赦なく電は追撃した。
「命中!させ!ちゃい!ます!」
「ガッ、グッ、グッ、グアッ!」
電の激しい連撃に、重巡は為す術なく攻撃を受け続ける。相当のダメージを与えた電は、両足の魚雷発射管を重巡に向け狙いを定める。重巡は、受けたダメージにより既に動くことすらままならなくなっていた。
「魚雷装填……。これで終わり、なのです。」
「グ……、グオオアアアア!」
電が魚雷を発射する。魚雷は水面に白い線を刻み、重巡に向かっていく。魚雷はそのまま重巡にぶつかり、爆発する。重巡は爆発に巻き込まれ、姿を消す。
音が消え、重巡を倒したことを確認した電は、ひとまず息をつく。そしてまだ戦闘をしている暁たちの方へ戻ろうとしたとき、電は煙の中に人影を見つけた。電は最初は
「……貴女は……。」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
電が重巡を沈めたころ、暁ら4人も軽空母をもう1隻沈めヲ級にダメージを与え追いつめていた。暁が艦載機の射撃を受けてダメージを負ってしまったが、全体としては余りダメージを負っていない。対するヲ級は、赤城により艦載機を上手く動かせない上、3人の砲撃で甚大なダメージを負っていた。
「ガッ……、ハァッ、ハァッ……。」
「もう無理ネー。観念するネー。」
「逃げられはしませんよ。」
怪我を負ってしまった暁と暁を支えている赤城を除いた2人は、立っているのもままならないヲ級に対峙する。この状況に、ヲ級は逃走を諦め、観念した。
「フ、フフ。コノ状況ハ無理ダナ……。逃ゲラレハシナイ、カ……。」
「観念しましたか。でも、貴女は沈めさせてもらいますよ。」
「フッ、少シ待テ。一ツ聞イテオイタ方ガイイ話ガアル。」
「何の話ネ?」
「私達ガ、今日ココニイタ理由ダヨ。私達ハ普段ハコノ海域ニハイナイ。」
「……どういう事です?」
普段はここにいない。この言葉に引っ掛かりを感じた神通は、ヲ級に疑問を投げ掛ける。ヲ級は、それに対してこう繋げた。
「我々ハ、仲間ノ中デモ上位ノ者カラアル指令ヲ受ケテココニイタ。」
「指令……?」
「脱走者ノ捜索ト捕縛ダヨ。」
「「……!」」
「本来コノ海域ニイタヲ級ガ、失踪シタ。私達ハソイツノ捜索、場合ニヨッテハ捕縛ヲ命ジラレタ。」
そして、次にヲ級はこう繋げた。
「失踪シタヲ級ハ、艦娘ニ
「……忠告ありがとうネー。」
「デハ、モウイイ……。サア、沈メロ。」
「言われなくてもやりますよ……。では。」
神通と金剛は砲撃をヲ級に放つ。耐えきれるほどの体力を残していないヲ級は、爆撃の中沈んでいった。
ヲ級を沈めてから少しして、電と雪風が戻って来た。二人とも無事撃沈したことを伝え、電はさらに新たな仲間を連れてきた。
「重巡を撃沈したら、出てきたのです。」
「戦艦榛名です。よろしくお願いいたします。」
「Oh!榛名、久しぶりネー!」
「金剛姉さま!お久しぶりです!」
「久々の再会ですね。」
「ふふ……。そのようですね。」
「暁よ!よろしくね!」
「雪風です!よろしくお願いします!」
新たに仲間になった榛名の紹介が終わった所で、電は基地へと連絡を行った。
「司令官、電なのです。第1艦隊、南西諸島防衛線における戦闘を終了したのです。」
『了解よ。何か連絡はある?』
「榛名さんが新たに仲間に加わったのです。取りあえずはこんなところでしょうか……。」
『わかったわ。榛名は、帰還後に一度提督室に向かわせてちょうだい。入渠の後で構わないから。』
「わかったのです。では、今から基地へ帰投するのです。」
『了解。待っているわ。』
通信を終えて、電は艦隊の皆の方へ向き直る。旗艦として、今回の作戦の終了を伝えた。
「この海域の制圧は完了なのです。基地へ帰投するのです。」
「「「「「「了解!」です」ネー!」」」」
艦隊は基地へ向けて、歩を進める。一部雲はかかっているものの、青く澄んだ空が、一面に広がっていた。
本来、南西諸島防衛線では榛名はドロップしませんが、都合上ドロップさせてしまいました。
続いて、キャラ紹介です。
02 電
艦種 駆逐艦
役職 秘書艦兼第1艦隊旗艦
所属 廿日市基地
簡易紹介
最初の建造で造られた。以降第1艦隊旗艦と秘書艦をやり続けている。
最初に着任したせいか、廿日市の六駆の中では一番発言力が強い。たまに暁に負けるが。
茄子は比較的大丈夫なのだが、その影響か本気で怒ったときがヤバくなっている(基地内では「なのDEATHモード」と呼ばれている)。
目が良い上に視野が広く、観察力は基地一長けている。
最近は暁と一緒に大人のレディを目指していて、毎日牛乳を飲んでいる。
次こそは、間に合わせるよう頑張ります