明石、間宮の二人が廿日市基地に来てから、早一月がたった。そして、その間にいくつか変化したところがあった。
まず一つ目が、更に新たな仲間が加入したこと。二人が来たあとに幽が打ち出した廿日市基地戦力増強作戦により、新たに3隻の船が建造され三人が仲間になった。
「電ちゃん、明石さんから今月の総額明細表を受け取ってきたよ。」
「あ、吹雪ちゃんありがとうなのです。」
まず、特型駆逐艦一番艦の吹雪。彼女はあの後一回目の建造で、この基地に着任した。彼女は、秘書艦である電のことを手伝っていることが多い。
「えーと……、あ、明石さんまた勝手に改修とかしてるのです……。」
「あ、あはは……。大丈夫かな、怒られそう……。」
「まあ、いい装備造ってくれるので、大丈夫だと思うのです。」
「あ、そろそろ出撃の時間だよね。」
「なのです。準備しに行くのです。」
二人は読んでいた書類とバラバラになっていた書類をまとめて、出撃ドックへと向かって提督室を後にした。
そこへ向かう道中で、二人はある艦娘を見つけていた。
「あれ?あそこにいるの雪風ちゃんかな?」
「みたいなのです。声かけてみるのです。雪風ちゃ~ん。」
「あ、吹雪ちゃんに電ちゃん!二人ともどうしたんですか?」
彼女が、二人目の駆逐艦雪風。吹雪の次の建造で造られ、この基地に着任した。
実は、雪風は着任した直後に出撃することになったのだが、その時相手の弾が自分の前で90度曲がったり、戦闘中にくしゃみをしたら偶然相手の弾を避けられたりと幸運艦の実力を遺憾なく発揮していた。
「出撃ドックに行くとこだったんだけど、こんなところで何してたの?」
「じ、実は道に迷ってました。」
「迷ってた?どういうことなのです?」
雪風の話をまとめると、最初は工厰にいたのだが、激怒した幽が突然工厰へと入ってきてその怖さに工厰からにげてきたら道に迷ってしまったとのことだった。
「すごく怖かったですよぅ。なんで怒ってたんですかね?」
「あー……、あれかな。勝手な改修。」
「多分違うのです。この前明石さんからの報告書見てたら、この基地に戦艦一人もいないのに35.6cm連装砲造ってたから、多分それなのです。」
「明石さん何やってるんですか……。」
明石は趣味で勝手に資材を使って開発・改修してしまう癖がある。しかも無駄なもの等も造ったりするため、資材の浪費だと幽が怒ることがある。
「ねえ、とりあえず出撃ドックに行かない?出撃の準備しないと。」
「そうなのです。雪風ちゃんも一緒に行くのです。」
「はい!一緒に行きましょう!」
三人は向きを出撃ドックへと向け、出撃準備へと向かって歩きだした。
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「あら、皆さん早かったですね。どうしたんですか?」
「おー、皆おーっす。」
出撃ドックへと入ると、中で神通と壱華が話し合っていた。
この神通が、新たに入った三人目の艦娘である。雪風の次の建造で造られた彼女は、軽巡洋艦であるため水雷戦隊であるこの第1艦隊の中核を担っている。旗艦は電であるが。
「出撃前の準備をしに来たのです。」
「あら、そうなんですか。それはいいことですね。」
「そういうわけなので、ちょっと装備を見させてもらいますね。行こう、電ちゃん、雪風ちゃん。」
「はい!」
「あーちょっと待って。」
装備置き場に向かおうとする三人を、壱華が呼び止めた。三人は何事かと壱華の方に向き直る。
「明石さんが昨日新しい装備持ってきてさ、電探とか新しく装備できるようになったから。」
変わったところその二、使える装備が増えたこと。前述した通り、明石が趣味だったり幽からの依頼だったりで造ったり改修したりするため、装備できるものが以前より多くなり質も良くなった。
新しく電探が使えるようになったり、12.7cm連装砲の命中精度が上がったりと、これは艦娘にとって結構嬉しい変化であった。
「電探ですか!?」
「そうそう、13号と21号の二種類の対空電探が新しく入ったから。」
「うちの艦隊にも、とうとう電探がきましたね!」
「うん!これがあれば、少し対空の精度が上がるね!」
「明石さんもたまにはいいことするのです。」
明石の預かり知らぬところで、勝手に株が上がり下がりしていた。
「奥にあるから、誰が装備するか決めてきなー。」
「わかったのです。行ってくるのです。」
三人はまとまって、出撃ドックの少し外れたところにある装備品置き場へと向かっていった。
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「まさか、もう暁お姉ちゃんがいたとは思わなかったのです。」
「扉開けたらいきなりいて、びっくりしちゃったね……。」
「本当にびっくりしました!」
「な、何よ!別にいたっていいじゃない!」
「ほらほら、静かにしないと打ち合わせ出来ませんから。」
全員が今回持っていく装備の確認を済ませ、出撃水路の前に集合し今回の作戦の確認をしていた。
この出撃先も吹雪たちが来る前より増え、出撃環境も変化してきている。
「今回出撃するのは製油所地帯沿岸なのです。それなりに実力をつけているので大丈夫だとは思いますが、気を引き締めて行くのです。」
「「「「了解!」」」」
「では、各自水路の前に並ぶのです。」
それぞれが、自分の出撃する水路の前に並び、準備を整えた。全員が揃っているのを確認した電は、『艦娘特殊リンクシステム』に繋がっている幽へと通信を繋げた。
「司令官、出撃準備整ったのです。」
『了解したわ。電探は誰が持つの?』
「今回は吹雪ちゃんにおねがいしたのです。あと、魚雷は明石さんが造って数が揃ったので、全員61cm四連装魚雷になってるのです。」
『わかったわ。行くわよ、旗艦電、第1艦隊出撃!』
「了解なのです!電の本気を見るのです!」
「暁の出番ね!見てなさい!」
「私がやっつけちゃうんだから!」
「雪風、いつでも出撃できます!」
「神通、行きます。」
五者五様の掛け声の後、全員が目の前にある青く光る出撃パネルへ飛び乗る。艦娘艦名表示板が回転し、『電』『暁』『雪吹』『風雪』『通神』と表示される。各々水路へ飛び込み、その身に艤装を着けながら光差す出口へ向かい、出撃していった。
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「雪風ちゃんは運が強すぎるのです。強すぎて引くのです。」
「えぇ~……。そんなこと言われても。」
五人は出撃から帰投し、鎮守府へと戻ってきた。そのほとんどが小破なり中破なりの傷を負っているなかで、雪風だけはただ1人無傷で帰ってきた。
敵に狙われなかったわけではない。寧ろ一番危険な環境にいたのが雪風だった。製油所地帯沿岸のリーダー格と思われる艦隊と遭遇した際、雪風は戦艦ル級と何故か敵艦隊に紛れ込んでいた重巡リ級から狙われ集中砲火を浴びたが、何故か無傷で更にお返しとばかりに撃った弾が重巡リ級の装備を誘爆させリ級を轟沈させるという偉業を成し遂げていた。
「あれはもはや幸運なんかじゃないのです。超運なのです。」
「それは確かに言えてるかも……。」
「えぇ~……。」
「それより電、報告に行かなくていいの?」
「あ、そうなのです。ちょっと報告してくるのです。神通さん、あとお願いしますね。」
「わかったわ、電ちゃん。」
電は1人艦隊から離れ、報告するため提督室へと向かった。
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「……というわけなのです。以上で報告を終えるのです。」
「了解したわ、電。お疲れ様。」
幽への作戦結果の報告と新装備の様子について伝えるのを終えた電は、自分の部屋へ戻ろうとしたときに幽に呼び止められた。
電には特に呼び止められることに思い当たる節がないので、幽へと尋ねた。
「どうしたのです?」
「……いや、少し変だなと思って。」
「変……ですか?」
「ええ。こっちへ来て。これを見てほしいの。」
電は幽に言われた通り近くへと寄り、執務机におかれた書類に目を通した。
「わかった?」
「……敵深海棲艦の出現分布ですか?」
「それもあるけど、本題はこっちよ。」
幽は、分布図の隣に置いてあった同海域の過去の出撃記録についての資料を見せた。すると、その変化に電は驚いてしまった。
「……私たちの出撃記録と、過去の出撃記録が一致していない……!?」
「そうなの。貴女たちの出撃記録が、最初の戦闘から異なっている。」
幽はそう言ってから、先ほど電から渡された出撃記録を過去のデータと比較しやすいように置いた。
「まず、製油所地帯沿岸の通称A地点、過去のデータでは軽巡洋艦1と駆逐艦が2から3となっているけど……。」
「私たちが遭遇したのは、へ級とホ級の軽巡洋艦2と、イ級・ロ級・ハ級の駆逐艦3なのです。」
「そしてこの海域のリーダー格と思われる艦隊と遭遇した場所は、過去と比べると少し西寄りになってるわ。」
「敵深海棲艦も、重巡リ級が増えているのです。」
「明らかに深海棲艦が増加しているわ……。それに分布も変わってきて、少し様子がおかしいわね。」
「何かの前触れなのでしょうか……。」
「わからないけど、気を付けるに越したことはないわ。次の出撃から、今まで以上に注意する様にして。」
「はいなのです。」
「それに戦力の増強も必要ね。とりあえず航空戦力を増強させましょう。電、後で大淀と神通、明石に会議室に来るように言っておいて。もちろん貴女もね。」
「はい!」
幽の言伝てを預かって、電は提督室を後にし走っていった。一人残っている幽は使用した書類を一束のまとまりにし、今まで使用したことのなかった【最重要案件】のケースへと入れた。
一先ず書類を片付けた幽は、後ろの壁にある海に面した窓から外を眺める。
一見快晴で波も穏やかである様に見えているが、少し離れた場所を見ると所々波がたっていたりするような景色が見えた。
(最近の海は明らかに以前と変化し、おかしくなってきてる。……この先一体何が起こるっていうの?)
幽は不安を抱きながら、悩みを感じさせる瞳で広い海を見ていた。
次話は可能な限り早く出せるようにします!
鉄底海峡で書きたい話があるので、とりあえずそこへ向けて進めます。
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