ソードアート・オンライン ~銀~   作:六尺様

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どうも、六尺です。
今回長いです。

それではどうぞ。


《デスゲーム》

「これが……『ナーヴギア』……」

 

彼女は手元にあるヘルメット型の機械を眺めながら呟いた。

少しの感動に耽り、それを頭にセット。そして電源を入れる。

 

……私の望んだのVRMMO……

 

そんなことを思いながら口元に小さな微笑を浮かべた。そして、ナーヴギアの準備完了を察すると同時に言い放つ。

 

「……リンクスタート」

 

 

 

 

 

 

Welcome to Sword Art Online !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一層 はじまりの街

 

 

 

「うあ……すごい……」

 

口をついて出たのがそれだった。それ以外の表現の仕方を彼女は知らない。

彼女、白井舞桜ことSAOプレイヤー《リーシャ》はそれほどに感動に打ち震えていた。

 

「ほら、何ぼーっと突っ立ってんのよ」

 

不意に後ろから声を掛けられる。振り向くとそこには見慣れない女性が立っていた。

 

「加奈子……今度は女性キャラなんだ」

「まあね……女だと色々めんどくさいから男でやってきてけど、今回は画面じゃなくて本当に人と対面して話すからね。会話でボロとか出たら余計めんどくさいことになりそうだしさ……それと、加奈子じゃなくてこの世界では《リア》ね」

 

そう言って、彼女、加奈子ことリアは腕を組む。以前から加奈子はオンラインゲームの多くでは男性キャラでプレイしてきていた。理由としては「女性キャラ使ってると一部の人間からプレイを平等に見てもらえない」からだそうだ。要するに相手が女性キャラだと先入観で女性として接するプレイヤーがおり、それらのプレイヤーから「俺がやります」だとか「女性に任せられない」などと差別されるのが嫌という理由だ。

 

「そっちは……不思議ね。現実の世界の舞桜の方が可愛い気がするんだけど」

「そ、そんなことないよー」

 

嫉妬と感心を交えた視線でまじまじとリーシャを見るリア。元が美少女であるがゆえに、ゲームである程度美化されようと変わらなく見えるのだろう。

 

「そんなことよりさ、早く街周って武器買お?今日中に戦闘のやりかたぐらいはしておきたいし」

「……そうね、そうしましょうか」

 

半分話をはぐらかしつつ、リアの背中を押して急かすリア。そして彼女たちの街の探索が始まった。

 

 

 

 

 

―――街の広さはかなりのものだった。

店などを周りつつ、地形などを把握し、どこの店が損か得かなどを調べることができた。前述したように街はかなり広かったのでそれなりの時間がかかったのではあるが。

 

 

その後武器を見ながら自分好みの初期武器を選び、街の外のフィールドに出る。そこで探り探りの戦闘を行い、SAOの醍醐味の1つ、『ソードスキル』を発動させる程度には体を慣らした。そして、あっという間に時間は過ぎ……

 

「何だかんだでレベルが1上がっちゃったねー」

 

現在の休憩に至る。フィールドの木の下に座り、体を休めている。

 

「そうね……でも、流石オンラインなだけあってそう簡単には上がらないわね」

 

それも大規模VRMMOの醍醐味ともいえるだろう。恐らく今日1日だけでも1万以上ものユーザーがダイブしているはずなのだ。今後も増えていくのだから規模は今までのオンラインゲームの常識を覆すほどになるのは容易に想像がつく。

 

「……でも、この世界を作った人……茅場晶彦はどうしてここまでの情熱を注げたのかな」

 

リーシャが素朴な疑問を口にする。それに対してリアは呆れつつ、そして苦笑しながら顔を彼女に向ける。

 

「はぁ……アンタがそれを言う?」

「え?」

「じゃあ、どうしてリーシャはこのゲームのために高校過程の勉強をぜーんぶ終わらせたの?」

「どうしてって……それは単にゲームが……」

「そう、そういうことよ」

 

リアは立ち上がりながらVRの空を仰いで、手を伸ばした。そして自分の手を見つめながら続ける。

 

「多分、茅場晶彦もゲームが好きで好きでたまらないゲームバカだったのよ。好きなものに理由なんてほとんどない。だからここまでゲームという世界にここまで打ち込めた……」

 

唐突に振り向きながら無邪気な笑顔でこう言った。

 

「―――私たちみたいにね!」

 

その笑顔に対してリーシャも自然な笑みが漏れた。楽しいことに対して理由なんて要らない。リアのおかげで確かにそうであったと再確認できた。

 

「ゲームは楽しんだ者勝ち……だったね」

 

RPGに限ったことではなくゲームには広い意味での敗北が必ず存在する。それは客観的な感覚のみならず主観的なものも含むことを指す。他人から見て「あのプレイヤーは戦いで負けた」と見れたとしよう。確かに戦いに負けたのは客観的な事実だ。だが、その戦いで負けたプレイヤー自身が負けたと思っているとは限らない。リーシャの場合、彼女の勝利条件が「楽しむ」ことであるように、勝ち負けという概念は人によって相対的に大きく変化するものなのだ。

 

「ま、色々考えることもあるけど、今はこの世界を存分に楽しみましょ!それがプレイヤーが創作者に対する最大の礼儀ってものよ!」

 

そう言って走り出すリア。そして前方にpop(出現)したmobに向かっていく。

 

「せぇいッッ!!」

 

先ほどまで練習しものにしたソードスキル、《リーパー》を繰り出す。剣戟が一直線の軌跡を描いてmobを貫いてポリゴン化させた。

 

「うん、だいぶ発動がスムーズになったわね。いい調子」

 

簡単に倒しているように見えるが、実際このソードスキルを発動させ、攻撃するのに20分以上の時間かかっていた。発動条件をかなり感覚的な部分でしか理解できなかったからだ。発動させる姿勢をとり、体の中でスキルの立ち上がりを感じたら、それを解放させる……といった感じらしい。

 

「習うより慣れろ派のリアは割とすぐコツ掴めてすごいね……私ももう少し練習しないと」

「なーに言ってんのよ。こんな感じかなとか言って一発で発動成功させた人がよく言うわ」

「あはは……あれは偶然だよー」

「ぐぬぬ……やっぱり私よりゲームセンスが上か……」

「り、リア……」

 

1人で悔しそうにするリアに置いてけぼりにされるリーシャ。そんなことよりそろそろフィールドを移動しようと声を掛けようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

ゴーン…ゴーン…ゴーン………

 

 

 

どこからか鐘の音が鳴り響いた。2人ともその音の場所の把握はできた。どうやら始まりの街から聞こえてくるらしい。

 

「なに?この鐘の音?」

「さあ……時間がある程度経ったら鳴る仕様なん―――」

 

そこまで言いかけてリーシャは言葉を止めた……いや、止められた(・ ・ ・ ・ ・)。その続きを口にしようとした瞬間に彼女たちのアバターは青い光に包まれたのだ。咄嗟のことに目を瞑り、そしてもう一度目を開ける。次の瞬間に眼前に広がる光景は数時間前までの景色、つまり《始まりの街》の風景だった。

 

「な、なに?強制ワープ!?」

「イベント……なのかな」

 

周りを見渡すと同じように青い光に包まれて出現するプレイヤーがいた。そして、その数は次第に増していく。数十秒もしない内に広場はプレイヤーで覆いつくされた。

 

「……何が始まろうとして―――」

『プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ。私は茅場晶彦。このSAOの世界の創造主でありこの世界を唯一操作できるものだ』

 

若干怒り気味のリアの声は遮られ、別の声が広場中に響き渡る。その声の方向、広場上空を見上げるとそこには巨大な赤いフードをかぶった人影があった。その声の主と思われる人影は悠遊とリーシャを含む全プレイヤーに向けて語りかけた。この世界にログアウトボタンが消失していること。そしてこのゲームをクリアしないと一生この世界から出られないこと、そして―――

 

『―――諸君らのライフポイントがゼロになったとき、諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。つまり本物の死を意味する』

 

リーシャたちがその言葉の意味を理解するのに数秒ほど時間がかかった。

彼は言った。この世界の死は本物であると。そんな現実をすぐに受け入れることが出来なかった。そして同時に脳裏にあの言葉がよみがえる。

 

 

 

 

―――これはゲームであって、遊びではない。

 

その本当の意味を彼女はたった今理解した。本当に遊びではない。この世界は自分たちにとってのもう一つの現実になるということを。

 

「そんな……ことって……」

「嘘だ……嘘だ!!」

「だ、出せよ……ここから出せよぉぉぉおお!!!」

 

周りから叫び声が聞こえる。他のプレイヤーも非情にも突きつけられた現実を受け入れがたいようだ。

 

「ウソ……帰れないの……?」

 

リアもその例外ではないようで、怯えたような顔で空を見上げている。声を掛けようと口を開くがまたもやリーシャの声は遮られる形となる。

 

『そして最後に、諸君らのストレージにプレゼントを用意させてもらった。確認してくれたまえ』

 

周囲のプレイヤーがそれを確認しようと、手を縦に振りメニュー画面よりアイテムストレージを開く姿が見える。リーシャもそれに従いアイテムストレージを開く。これがドッキリか何かのアイテムであったらとも願ったが、そんな思いもいざ知らず出てきたのは一つの手鏡だった。

 

「これにいったい何が……?」

 

そう言いながら鏡に映る自分の顔を覗く。少し眉間にしわを寄せている表情の《リーシャ》の顔が映った。だが次の瞬間それは違ったものへと変化した。それは恐らく自分が一番よく知っている顔―――

 

「ッッ!?」

 

思わず手鏡を放してしまい、鏡が割れる。その瞬間またもや青い光に包まれた。またワープかとも思ったが、今度はさっきと変わらない光景が映し出された。何事も変化していないと思ったその刹那……。

 

「え……舞…桜……?」

 

唐突にリアルネームを呼ばれ、後ろを振り向く。そこにはリアがいるはずであったがその期待は違った意味で裏切られた。

 

「か……加奈子……」

 

思わずリーシャも彼女に対してリアルネームを呼びかけてしまう。無理もないそこにいたのは―――

 

「うそ……その姿……ま、まさか!」

 

急いで落として割れた鏡の破片で自分の顔を覗き見る。嫌な予感は的中してしまう。

 

「わ……わたしの顔?」

 

そこに映ったのは、紛れもない現実世界のリーシャの―――舞桜の姿だった。どうやら周りでも彼女たちと同じ現象が起こっているらしく、混乱の声が上がっていた。

 

『これにてチュートリアルは終了となる。プレイヤー諸君、攻略に励んでくれたまえ』

 

事態が収集を見せないままそう言い残し、茅場の影は消えていった。非常にふざけたプレゼントだと心の中で毒づくがそんなことをしている場合ではないとリーシャは立ち上がる。そして再びリアの―――加奈子の元まで歩み寄る。

 

「ねえ……リア」

「……嘘よ……こんなこと」

 

声が聞こえていないのかそれとも無視されているのか……どちらなのか分からないがリアは下を向きへたり込んだまま途切れ途切れに言葉をつないでいた。

 

「リア……リア………!」

「あるわけない……死ぬなんて……」

「こっち向いて、ねえ、リア!」

「嘘よ……絶対に嘘よ!!」

「ッッ!!加奈子!!!」

 

その言葉でやっとリーシャの方を向くリア。その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。解っていた……解っていたのだ彼女も。これが現実であると。だからこそ否定をした。否定の言葉を紡いで自己の精神を守ろうとしたのだ。そっと抱きしめながらそれではダメなのだとリーシャは諭す。

 

「怖いのはわかるよ……。でも認めないといけない……この現実を受け入れて……」

「うっ……うう……」

「そう、私たちは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――この世界を生き抜くの……絶対に………」

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。
ようやくSAOが始まりました。

今後のお話にご期待……頂けるほどのものを
書くよう善処していきます。

それでは失礼します。
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