ソードアート・オンライン ~銀~   作:六尺様

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4000文字って結構疲れますよね……
このペースで行けるのだろうか……


《攻略会議》

第一層 トールバーナ

 

 

ヨーロッパ風の街並みを飾るこの街にて、「あること」が行われようとされていた。その「あること」に対して参加する二つの影があった。

 

「リーシャ、この後ショップいきましょ」

「え、どこの?」

 

そんなたわいもない話をする女子二人組、リーシャとリアはあることに……攻略会議に参加しようとしていた。

 

 

 

攻略会議、読んで字のごとくだ。茅場晶彦によるSAOのデスゲーム宣言から一ヶ月。その間、2000人もの死者が出た。それだけの死者を出したにもかかわらず、プレイヤーたちはいまだ第一層すらクリアしていない。そんな中、今回初めて攻略会議が開かれた。何でも重要な発表があるらしい。

 

「―――でね、そこのポーションがこの時間だとNPCが割引してくれるのよ」

「へ~、そうなんだ。割とお得かもね」

「でしょ?」

 

そう、現在その攻略会議の場所に集まり、主催者の登場を待っているところだ。かれこれ数分経つが現れる気配はまだない。

 

「……ところで、リア。このフードとっちゃダメ?」

「ダメ、言ったでしょ。アンタは人目引くに決まってるんだから」

「えー……でもなんか視界が狭まって……」

「文句言わないの。とったら男どもに囲まれてもっと視界が狭まるわよ」

 

リーシャは少し不満げに「う~」と言いながら俯く。彼女の美貌がさらされたら、確かに周りに会議で集まってる男たちの目は釘づけになることだろう。リーシャは慣れているからいいとは言うのだが、リアが頑として譲らないのだ。なお、そのフード付きの服はコートのように丈が長く、スタイルも見えないようになるという完全防備である。

 

「はーい!では攻略会議を始めさせてもらいまーす!」

 

2人が会話の終息と同時にようやく主催者が現れたようだった。見ると広場の中心に一人の男性が立っていた。

 

「今日は俺の呼び掛けに応じてくれてどうもありがとう! 俺の名前はディアベル、職業は気持ち的にナイトをやらせてもらってまーす!」

 

明るい声だ。彼、ディアベルと名乗る男が洒落の利かせた自己紹介を行うと周りから「SAOに職業はねーよ」などのマジレスや「本当は勇者って言いたいんだろー!」等のからかいの声が飛んだ。言うことは人それぞれではあるが、悪い雰囲気ではない。

 

「あの人……すごいね」

「ええ……大抵オンラインゲームで大きなクランを率いてる感じの奴よね」

 

そう言いつつ眺める二人。この狂気染みたたデスゲームの中で、あそこまで他人を気にかけたコミュニケーションを取れる彼に二人は素直に尊敬の念を抱いた。

 

「それじゃあ、早速本題に入るぞ!先日、俺のパーティーが迷宮区でボスの部屋と思われるものを発見した!」

 

広場にいる全員の表情が変わった。驚愕、困惑、興奮……様々な想いが混じった空気が広場を包む。

 

「遂に……」

「一層攻略に光あり、ね―――」

 

リーシャたちもそれに連なり想いを口にする。ようやくSAOクリアの第一歩が見えたのだ。体の引き締まる感覚を感じながら、改めて話を進めるディアベルに視線を戻す。

 

「―――俺たちは準備を整えて、第一層のボスに挑みたいと思う!攻略のためにはここにいる人たちの協力が不可欠なんだ!だから、どうか俺たちとボス攻略に参加してもらいたい!」

 

そう言って、頭を下げるディアベル。何をボス攻略を頼むだけでそんな……と普通のゲームだったらそう思うところだが、今やこの世界はもうひとつの現実。彼は自分の命を危険にさらすリスクを飲んで戦って欲しいとも言っているのだ。

 

「そんなの……とっくに覚悟はできてる」

 

沈黙の中からひとつの声が上がった。その声に全員の注目が向く。リーシャはすぐ横の声につられてその方向を見る。目に写ったのは立ち上がって弱冠仁王立ちぎみにしているリアの姿だった。

 

「この1ヶ月の間たくさんの死人が出た……。この戦いでも死人が出ないとは言い切れない……。けれどこの戦いに勝利し、第一層を攻略できることが出来れば!未だこのデスゲームに絶望し、怯えている人たちに希望を見せることができる!」

 

そう熱く語るリアの目は本気だった。その言葉で周りの目の色が次々に変わっていく。

 

 

「そうだよ……俺たちがやるんだ!」

 

「こんだけの人数がいるんだ!負けるかよ!」

 

「ああ!勝って一杯やろうぜ!!」

 

「おま、それ死亡フラグwww」

 

 

彼女の激励により広場にいるほぼ全員の闘志が高まる。女性プレイヤーだったということもあり、場のほとんどが意気揚々としている。そして、その闘志の渦のなかでリーシャも心を昂らせていた。だがそれと同時にひとつの懸念も抱いていた。オンラインゲームだろうと現実だろうとほぼ確実に現れるもの。それは――――

 

 

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

 

そんな声が広場にこだまする。やはりかと言わんばかりにリーシャはその方向を向いた。そこには一人のプレイヤーが立っていた。

 

「わいはキバオウっちゅーもんや!仲間ごっこで攻略する前にこいつだけは言わせてもらわな納得いかへんな」

 

そう言うと広場を見渡してこう言い放った。

 

「こんなかに詫びいれなアカンやつおるはずや!今まで死んでいった2000人のプレイヤーたちにや!」

 

広場が静寂に包まれた。この言葉の意味を理解できた人間は少なからず半数というところだろうか。この場の全員に自分の真意を伝えるべくキバオウは更に口を開いた。彼が言うには、このデスゲームが始まった瞬間から、このゲームにおける経験値効率のいい場所、コルが多くもらえるクエスト、隠し要素の宝箱などを熟知していたプレイヤー……つまり『ベータテスター』は今まで死んでいったプレオヤーに対して謝罪をしろと言うのだ。ベータテスターたちが自分の事のみを考え、そのすべてを独占したがゆえに2000人のもの人が死んだのだ。だから、攻略に参加したいならそれなりの誠意をもって、アイテムやコルを寄付しろ……と言いたいらしい。

 

「こんなかにもおるはずや!わいらを放り出して、はじまりの街を飛び出していったベータテスターがなぁ!」

 

一人、息を荒くして言い切ると、ベータはどこだと言わんばかりに周りを見渡し始める。広場に広がっていた鬨の声は見る影もなく、全員が困惑したような表情で顔を見合わせていた。リーシャはこの静寂の中で不意に周りを見渡してみた。言葉にはできないが、キバオウの話を聞いて後ろめたい何かを持っているような……それらしい表情(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)をする者ちらほら見えた。

確かに彼の言うことは正しいようにも見える。だが、これは決して謝罪の場という雰囲気ではなかった。ゲーム的に言い合わらすのならば"晒し"と言ったところだろうか。

「はあ……」とため息を吐いて、相方に並んでリーシャは立ち上がった。

 

「あの……いいですか?」

「んぁ?なんや、自分」

 

静寂の中、すべての視線が集まるのを感じた。だが、既に慣れてしまったことに事実以上のものは感じられない。少女は淡々と続けた。

 

「死者2000人を出したのは、全てベータテスターの責任……だから持っているお金とアイテムを全てこの攻略に寄付しろ、ということをキバオウさんは言いたいんですね?」

「……そうや、それがどうしたっちゅうんや。何も間違っていることを言ってるつもりはないで」

「……いいえ、それは違います」

「なに……?」

 

どういうことだ、といわんばかりの表情を確認すると、とあるアイテムをストレージから出した。

 

「この本……知っていますか?はじまりの街で無料配布されているガイドブックです」

 

そう言って、キバオウに差し出す。その本をキバオウは確認すると訝しげな顔をして再びリーシャの方を見る。

 

「―――貰たで、それがなんや」

「……これは次の街や村に行っても必ずと言っていいほど無料で売られていました。行く先々でこんなにも早く情報がまわっているなんて早すぎると思いませんか?」

「だから早かったらなんや。それがどうしたっちゅうんや!」

 

淡々とした答えの見えない会話に耐えられなくなりキバオウが叫ぶ。リーシャの方はどうかというと表情を変えずに(フードでほとんど見えないが)そのまま続けた。

 

「つまり、ベータテスター以外がこの情報を載せることは不可能ってことです」

「なっ……」

 

広場の沈黙が解かれる。プレイヤーたちが一斉にざわめいた。それとは対照的にキバオウはぐっと口を閉じた。完全に2人の独壇場となってしまったその後ろで、主催者のディアベルも「なるほど」と頷いた。

 

「この本があったのに2000人もの人が亡くなった……それらの多くはむしろベテランのプレイヤーだったと私は思うんです。戦闘のスタンス、ゲームのシステム、アイテムの使用タイミング……これらを他のゲームと同じ物差しで測って見誤った……ですが、今はそれを嘆いていても仕方ありません。この会議は、その死んでしまった人たちの弔い合戦でもあり、今もはじまりの街で怯えている人たちのために光を見せなきゃいけない戦いの第一歩にしなきゃいけないんです」

 

そう言い切った後に沈黙が流れた。そう言われたキバオウも黙っている。数秒後に周りのプレイヤーたちから肯定らしい言葉を含むざわめきが聞こえてきた。これで話はベータテスターたちへの誤解が解けたと思われたそのとき―――

 

「そんなこと―――」

「え……」

「そんなこと言うジブンこそベータテスターちゃうんか!?」

 

完全に論破された逆上もあってか、キバオウが大声で噛みついてきた。その言葉に、プレイヤーたちは再度ざわめく。当然の反応と言えば当然、リーシャがベータテスターで彼らの肩を持っていると考えるのは至極自然なのかもしれない。

 

「どうなんや!ベータテスターなんか!?違うなら違うなりの理由を言うてみぃや!」

 

もう言っていることがめちゃくちゃだった。明確ではない根拠が理由での言い合いは水掛け論以外何も生まない。

 

「そうですね……なら仮に私がベータテスターだったとします」

 

逆上した相手を止めるにはぐうの音も出ないぐらい論破するのが手っ取り早い。

 

「でも、彼らが何も知らない私たちにこの本を与えてくれた事実に変わりはありません。それに私がベータテスターと思うのならそう思ってくれて構いません。ですが、全てのベータテスターを恨むのは筋違いなはずです」

「うぐっ……」

 

論点がずれているという指摘に対して押し黙るキバオウ。だが、険悪なムードが2人を包んだままになっていた。

 

「―――キバオウさん」

 

そんな二人の会話の中に一つの声が割って入った。声の主はこの会議の主催者、ディアベルだった。

 

「確かに自己中心的な考えで動いているプレイヤーもいるけど、情報を送ってくれたのは結局ベータテスターなんだ。彼らが動いてくれなかったらもっと死人が出ていたかもしれない。だから、今はただこの情報に感謝しよう。」

 

情報への感謝が優先。あくまでベータではなく情報に、というころだ。ベータテスターの問題解消は後からにすべき、といったところか。

 

「………ナイトはんもそう言うなら、今はそういうことにしておくわ」

 

さすがにこれ以上何か言うと、部が悪くなると思ったのか。キバオウがようやく引き下がった。問題の後回しにはなったがとりあえず一件落着といったところか。

 

「君もそういうことでいいかな?」

「あ、はい……」

 

事態の収拾を修めたディアベルに会釈をし、リーシャは自分の持ち場に戻ることにする。戻るためにキバオウの

横を通り過ぎようとしたとき―――

 

「………ベータを許したわけやない。いつか白黒つけたる」

 

そう言い残し振り向くと、彼も自分の場所へと戻っていった。複雑な感情を感じながらもリーシャは歩みを進めた。

 

「まあ……悪い人ではないし」

 

自分に言い聞かせるように呟きながら、リアのもとへと戻るのだった。

 

そう……悪い人じゃない

少なくとも彼よりは(・ ・ ・ ・)……ね

 

そう付け加え、彼を(・ ・)眺めた。恐らく彼がこの広場で最も頼もしく、最も信用できないと、リーシャはそう思うのだった。

 

 




お疲れ様です
長すぎたと自分でも思ってます
もう少し要約して書かなくては……
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