ソードアート・オンライン ~銀~   作:六尺様

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どうも、六尺です。
少し時間が空きましたが、なんとか完成に至りました。

それではどうぞ。


《ボス攻略開戦》

「……ボスの特徴?」

 

キリトはそう聞き返した。現在、森の中を46人の大人数でピクニック……のはずもなく、ボス部屋までの移動中である。

 

「そう、見た目とかじゃなくてAIの話よ。ヘイトの溜まり方とかその他もろもろを教えてほしいのよ」

「……えっと……特徴も何も今日初めて挑むんだから俺が知るはずもないだろ?」

 

弱冠困った顔で答えるキリト。それに対し質問者のリアは彼が思いもよらない事を口にする。

 

「え?だってあなた、ベータテスターでしょ?」

「な……」

 

自分の耳を疑う。流石に直球過ぎないかと彼は内心思った。だがリアは悪びれる様子もなく変わらずキリトの顔をじっと見ていた。その表情が半分真顔なので、何を考えているかも読めない。これがベータテスターを炙り出すゆさぶりであるなら、即座に「違うよ」と否定するべきだが既に数秒の間ができている。切羽詰まったと思いながらも必死に思考を凝らす――――

 

「リアー、持ち場を離れすぎー」

 

数メートル先より声がする。その方向にはフード姿のプレイヤーが見えた。

 

「分かってるわよー」

 

それに対してそう返すリア。そして嘆息混じりにキリトの方を再度眺めた。

 

「まあ、情報を開示するのが嫌なら無理には聞かないわ。ボス攻略はこれを含めて100回あるんだし気長に待ってるわね」

 

そう言い残すとスタスタと前方に早足で歩いていった。

なんだったんだと言わんばかりに顔をしかめる。「まさかアスナが?」とも考えたが他人のプライバシーを人にベラベラと喋るようなことは流石にないだろう。

 

「……いや、ボス前にパーティメンバーを疑うのはよそう」

 

そう言って首を振るキリト。だが、心に残る不安は拭いきれないものがあった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――数日前の夜、とあるNPC宿にて

 

「ベータテスター?キリトが?」

「うん、恐らくね」

 

そんな話をする少女が2人、対を成して座っていた。リーシャとリアである。

 

「彼は攻略会議のときにベータテスターの話をしているときに、少し複雑そうな顔をして聞いていたし、攻略本の話が出たときに驚いたような顔をしてた」

「そりゃ驚くわよ。ほとんどのプレイヤーがそうだったでしょ?ベータテスターが書いていたって聞いた時―――」

「いや、彼はその前から既に驚いてた。攻略本という者があることを知ったときから……恐らく攻略本の存在自体知らなかったのかもしれない」

「知らない人もいるんじゃない?」

 

その返しに肯定するようにうなずくリーシャ。だが、一つの疑問が生まれることを指摘する。

 

「デスゲーム開始してから数日の間に本は配布された。それを読まないで命を落とした人もたくさんいる。けど、彼は違う。見たでしょ?リアも彼の戦い方を」

「……まあ、確かに強かったわね」

 

―――強い。

確かに彼の方がレベルは少し上だ。この世界においてレベルの値が強者の明確な数値と言っても過言ではない。だが、どのゲームにもそれを覆す別の「強さ」が存在する。それはプレイヤースキル、プレイヤー自身の腕である。

 

「このゲームを始めてまだ1ヶ月だけど、それでも動きに無駄がないのがわかるっていうか……」

「もちろん、元からアクション系のゲームが得意だったのかもしれないけど、そんな人のほとんどが命を落としている。己の腕に対する慢心でね」

「……彼が例外っていう可能性は?」

 

そう言われると、少し苦笑してリーシャは続けた。

 

「あるよ、十分に。けど、本当にそんなプレイヤーが都合よくいると思う?」

「……天文学的確率ね」

 

慢心せずに自分の力量がどこまでかを見切った上で、このゲームの中を生きる。更にどのアイテム屋にも置いてあるはずの攻略本を知らないまま前線を突き進んできたプレイヤー。ベータテスター以外がこんな芸当をやってのけるだろうか。

 

「私たちも数日は周辺のフィールドワークのためにはじまりの街にいたっていうのに、同じ初めてのプレイヤーがそんなことするとはとても思えない、か」

「そーゆーこと」

 

そう言って表情を緩め、リーシャは頬杖をついた。

 

「でも、彼がベータテスターだったとして……何か問題があるの?」

「ん、いや?そんなことはないけど、一応報告しておこうかと思ってさー」

「ふーん……」

 

そう聞いて「そうだ」と立ち上がるリア。そしておもむろにフレンドの欄をウィンドウで表示する。

 

「メッセージ?もしかして……」

「そ、ダメ元だけど聞いてみたいことがあって……送信っと」

 

数秒後、新着メッセージ音が鳴る。あまりの返信の速さに驚くが、前にも同じことあったなと2人で苦笑した。送り主の名前は《アルゴ》。その内容とは……

 

 

『悪いけど、その情報は売れないヨ。情報の売買はするけど、売った情報で恨みまでは買いたくないからネ』

 

「ま、わかってたけど、その類の情報は売ってくれないみたいね」

「そだねー」

 

―――鼠のアルゴ。

このSAOの世界で情報屋として名を馳せるプレイヤーの一人。その情報網はモンスターから武器、さらにはプレイヤーの個人情報をも取り扱ってるという。アルゴなら知っているかもしれないと思い、メッセージを飛ばしたリアだが、断られたようだ。

 

「しょうがない、直接本人に聞いてみるしかないわね」

「え?」

「確証がないならそうするのが一番でしょ?」

「いや、まぁ……そう簡単には首を縦には振らないと思うけど……」

 

それに対して、「まあ、見てなさいって!」と意気込むリアだがリーシャは大丈夫なのかと苦笑いする。話し込んで日付が変わりそうなのに気付き、二人とも睡眠に入りその日を終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局聞いたんだね……」

「まぁね」

 

リアの澄ました表情に対してリーシャはため息をつく。自分の言いたいことをはっきり言えるのが彼女の美点だが、それが同時に短所でもあるのだ。

 

「絶対キリトさん困ってたよね……知られたくない秘密は誰にでもあるんだから―――」

「そうね、でも知っている情報はできるだけ開示してもらった方が安心できるでしょ」

「うー……リアは聞き方が直球すぎるんだよー……」

 

本日2度目のため息。最近ため息ばっかだなとリーシャは思い返す。ボスに挑む前に命の心配よりも人の心配の方が多いのだから笑えてくる。

 

「ま、いいじゃない。それにリーシャの読みは当たってたっぽいわよ」

「……そうなんだ」

 

自分で予測したことではあるが、やはり複雑な気持ちになる。別に彼がベータテスターであることに嫌悪感などを抱いているわけではない。だが、どことなく彼は自分がベータテスターであることを嫌っている……そんな気がしたのだ。

 

「ともあれ、これ以上自分のパーティメンバーを疑ってたらキリがないわ。彼には彼なりの事情があるんだから気長に待つわよ」

「うん、それが一番だろうね」

 

後ろめたい気持ちがあるほど、物事には全力では撃ち込めなくなる。そのせいで彼が死んでほしくはない。そう思っていたが、特別親しいわけではない自分たちが何か言うのは筋違い。そう割り切って、彼女たちはボス部屋までに足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――午前11:00、迷宮区到着。午後12:30、最上階踏破。

 

「いいか、俺たちの仕事は取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》をE隊に近づけないようにすることだ。4人いるからそこまで大変じゃないかもしれないけど、ボスのタゲがこっちに向く可能性もある。十分に警戒して戦うんだ」

「わかった」

「OK」

「了解です」

 

ボス部屋前に到着し、改めて自分たちの役目を確認する。あくまで補助、それだけは頭に入れておくことにする。

 

「みんな!遂にボスの目の前まで来ることが出来た!」

 

声はボスの扉の目の前、レイドメンバーの一番先頭からだ。その声は言わずもがなこのレイドパーティのリーダー、ディアベルだ。

 

「ここまで来て俺が言えるのはこれだけだ!」

 

強く握りしめられた拳が天高く突き上げられる。そして―――

 

「―――勝とうぜ!!」

 

 

 

「「「「「おおぉぉぉーーーーーーーー!!!!!」」」」」

 

ボスの扉の前で、開戦の狼煙が上がる。レイドメンバーの内2人が重厚な扉を開け、中の様子を確認した。中は暗く、様子はまだ見えない。が、全員が部屋に入り終えたところで扉が閉まった。同時に部屋脇に設置された松明に青白い火が一気に灯る。

 

「………!」

「あいつが……」

 

部屋奥の王座にどっしりと構える巨影。刹那、その巨影は飛び上がりレイド全体にその姿を晒す。

 

「ウグルゥオオオオオオオオーーーー!!!!!」

「来るぞ!全隊、前へ!!」

 

その言葉に待っていたかのように両者とも眼前の敵へと走り出す。そして、前方のA隊と数匹のコボルドが戦い始め、火花のようなライトエフェクトを散らした。遠目だが、戦いが始まったことをキリトたちも確認した。

 

「E隊に続け!回りこもうとするコボルドだけを処理するんだ!」

 

キリトがそう叫ぶと二人一組で左右に分かれた。同時にコボルドが左右の壁穴より出現するコボルドを確認する。今のところ後方に構えているE隊の周りにはコボルドは出現していない。

 

「グルゥアアアアアーーーーーー!!!!」

 

叫びながら得物である湾刀を薙ぎ払う第一層ボス、《イルファング・ザ・コボルドロード》。盾を装備したメンバー複数人がそれを受けきり、動作が止まった瞬間を他メンバーがソードスキルで攻撃。硬直が入る前に片手剣を装備した盾持ちがスイッチで前に入る。幾度かそんな光景が見られた。

 

ひとまずは、順調みたいだな……

このまま、何もなければいいんだが……

 

ボスとの交戦状況を確認しながらそう思うキリト。するとE隊脇にコボルドが出現する。対峙するべく相方のアスナとそちらの方向をむく。

 

「俺らにもお出ましか……アスナ!」

「わかってる」

 

冷静な声でそう返事を返す細剣使い。それを見て気を引き締めるように鞘から相棒であるアニールブレード+6を抜く。そして敵意をむき出しに突っ込んでくる《センチネル》の攻撃を剣で受けようと構える。

 

「せぇあッ!!」

 

気合を入れて相手の攻撃タイミングに合わせてはじき返す(パリィする)長斧(ハルバード)を勢いよくはじき返され、体勢を崩す《センチネル》。すかさずキリトは叫ぶ。

 

「スイッチ!」

 

すると、後ろから凄まじい勢いで突進する人影がキリトの脇を通り過ぎる。そしてその勢いに乗せたままソードスキルを発動させた。細剣突進系ソードスキル、《リニア―》。恐ろしくも美しい一直線のライトエフェクトを描き《センチネル》の喉元に剣を突き立てる。すると、《センチネル》の頭上に表示されたHPバーが一気にレッドゾーンまでに減るのが見えた。

 

「スイッチ!」

 

今度はアスナが叫ぶ。すかさず、パリィの反動から硬直の解けたキリトが残り少ないHPを通常攻撃で薙ぎ払った。HPを削り切られ、《センチネル》光を放って青いポリゴンの欠片と化し空中に霧散する。それを確認すると「ふぅっ」と息を吐き切り安堵する2人。

 

「ははっ……油断するなよ?」

「そっちこそ」

 

軽口を言い合うが、休息も束の間。すぐさま、また別の《センチネル》がポップする。

 

そう、このままでいいんだ……

何も起こらないでくれよ……何も……

 

そう思いながら剣を握りしめ、新たに湧いたセンチネルと対峙するキリト。ソロで戦っているときはまるでしないことだが、全身全霊でこの時は何者かにそう祈るのだった。

 




お疲れ様でした。

いよいよ始まりましたボス攻略。
この先に待ち受ける運命やいかに……果たして原作通りの展開になるのでしょうか?

それは次回までお楽しみです。
それでは失礼します。
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