ソードアート・オンライン ~銀~   作:六尺様

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どうも、六尺です。
ボス攻略戦の続きですね。

それではどうぞ。


《青髪の騎士》

「リア、スイッチ!」

「オッケー!」

 

お互いの動きを見切った上で、リアは短剣を《センチネル》の首に突き立てる。すると、HPが一気に削られ、0にまで至った。

 

「クリティカルヒット、ね。ラッキー!」

 

口元に笑みを浮かべ、ポリゴンと化した《センチネル》を横目に自分の持ち場へと再度戻る。そして、相方のリーシャと軽く手を打ち合ってお互いを称賛する。

 

「しっかしまあ、やっぱり変わり栄えはしないわよね。ボスの取り巻きを狩ってるだけじゃ飽きてきたわ」

「そう言わないの。一応需要はある役割なんだし、コボルドを倒せてるだけドロップアイテムは前線よりはおいしいでしょ?」

「そうだけどさぁー……」

 

やはりボスを倒しに来たのに、ボスと一度も対峙しないのは味気ないと感じるリア。今まで色々なゲームで最前線を走り続けてきたのだ。そう思っても仕方がない。

 

「けど、そろそろ本当に気を引き締めたほうがいいかも」

「え?」

「ボスのHPが一本になるよ」

 

ボスが一定以下までにHPが減らされると、特殊な行動を行ってくる場合が多い。このボス《イルファング・ザ・コボルドロード》も例外ではない。ベータのときの情報によれば、この《イルファング》はHPバーが4本中3本まで削られると、武器チェンジを行うらしい。今まで持っていた盾と湾刀を投げ捨て、さらに長い湾刀を粗雑に巻かれた腰布から抜くというものだ。更に攻撃の激しくなるバーサク状態になり、攻撃力や俊敏性が向上するとも書かれている。

 

「ま、攻撃力が上がるのは脅威だけど、怒りに任せた攻撃プログラムならむしろ戦いやすいかもしれないわね」

「まあ、気を引き締めるのに越したことはないよ。念のため、キリトさんたちと合流しよう」

「そうね」

 

今のところ、最後に沸いた《センチネル》を処理し、剣を抜いたままキリトたちのいるE隊の左側へと向かう。ぐるりと回り込む途中、E隊のリーダーであるキバオウが「もうすぐボスのHPバーが1本になるで!気ぃ抜くなや!」と叫んでいるのが聞こえた。それにつられて自分も確認しようとリーシャがボスへと目を向ける。するとちょうど前線の隊が3本目を削ったところだった。

 

「リーシャ、あそこみたいよ」

 

隣からそう言われてその方向を見る。確かにダークグレーのレザーコートと黒赤毛のレザー・チュニック、キリトとアスナのようだ。2人に呼びかけようと、息を吸う―――。

 

「キリ―――」

 

そこまで言いかけて口をつぐむ。何故なら必死な表情で彼が……キリトが前線に向かって何かを叫んでいるからだ。刹那、奥から《イルファング》の雄叫びが劈く(つんざく)

 

「なッ―――」

 

目を見開いた。奥で凄まじい衝撃波が起こり、ボスを取り巻いていたレイドメンバー5、6人が吹き飛ばされるのが確認できた。

 

「キリト!あれって……」

「り、リア!?いや、とりあえず話は後だ!前線の補助に回るぞ!」

「ッ!?キリト君、後ろ!」

「んな!?クッ……!!」

 

起こったことに気を取られすぎて、ポップした《センチネル》に背後をとられる。更に、厄はさらなる厄を呼ぶようでE隊も前線で起こっていることに気を取られ、陣形が崩れていた。結果、こちらに流れてくる《センチネル》も増えたという訳だ。

 

「そもそも、何が……ッッ!?」

 

言葉を失った。キリトが見たもの、それは《イルファング》の持っている武器だ。奴の手に握られていたのは凶悪な造形をした湾刀ではなく、美しい曲線を描き、湾刀にはない鉄の輝き……いわば野太刀だった。更に、事態は悪化の一途をたどるっていることが確認できた。前線のA隊のメンバーは異常事態に誰もが凍り付きスイッチもしていない。さらには攻撃を食らったプレイヤーたちはバッドステータスの《スタン》が付与されているのが見える。そして、ボスの誰よりも近くで膝をつく青髪のプレイヤーがいた。目の前で動けずにただ座り込む得物を逃す訳もなく無慈悲なコボルド王はニヤリと笑い武器を構える。

 

「逃げろーーーーーッッ!!!ディアベルーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」

 

その声は彼に届いたのかは分からない。だが、《スタン》状態が続いたまま動こうとしない。そして、無情にも彼の頭上にバーサク状態となった《イルファング》の凶刃がディアベルの体を浮かす。さらにソードスキルをもう一度放とうと《イルファング》の野太刀が輝く。それに反撃しようと《スタン》から回復したディアベルが無茶な体勢でソードスキルの構えをとる。だが、不安定な状態での構えはソードスキルとして認識されず、空しくも通常攻撃が空を斬った。

 

「ウグルゥオ!!」

 

《イルファング》が溜めていたソードスキル放つ。上下の斬り下ろしと斬り返し……そして一拍おいた突きがディアベルのチェストプレートを抉った。技の名は《緋扇(ひおうぎ)》。先ほどディアベルを浮かせたソードスキル、《浮船(うきぶね)》を放ち、ヒットした相手は高確率でこのコンボを食らう。当然、食らった相手は即時POTしなければHPは0になるだろう。

 

「ディアベル!」

 

《センチネル》を片づけ、キリトが駆け寄った。すぐさま自分のポーションを飲まそうと取り出すが、その手はディアベル本人が遮る。キリトは驚くが、その理由は元より察していたので次の瞬間には厳しい表情になる。

 

「ディアベル……やっぱりアンタはボスのLAを俺に取らせないように……」

 

キリトは歯ぎしりする。そう、ディアベルはベータテスターだった。そして同じベータテスターである彼、キリトをボスのLAから遠ざけたのだ。実際のところキリト自身もベータテスター時代にボスの体力を見測り、LAを取ろうとするプレイをしていた。それもプレイスタイルの1つであり、自分もしていたことを棚に上げてディアベルを責めるつもりはなかった。

 

「はは……悪いことをすると、罰が当たるものだね」

 

それだけ言ってキリトの手を掴むディアベル。そして、真剣の表情のまま続けた。

 

「……後を頼む、キリトさん。ボスを、倒」

 

言い終えることなく、目の前の騎士は青いポリゴンと化して空中に消える。最後の言葉には嘘偽りは感じられず、本心よりこれ以上の被害を出すことなくボスを倒してほしいという願いだけが、ただそこにあった。

 

………ディアベル、俺は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

 

リーシャもその光景を見て会話こそ聞こえなかったが、ディアベルとキリトの表情である程度の状況を察する。最も頼もしく、最も信頼できない騎士が目の前で死を迎えたことがわかると、口元をキュッと締めた。信頼こそしてはいなかったが、人の死を悲しまないほど彼女も無情な人間ではない。

 

「なんで、なんでや……ディアベルはん、リーダーのアンタがなんで最初に……」

 

その死は隊全体の士気を総崩れさせた。情報の食い違い、レイドリーダーが真っ先に倒れるというイレギュラーが2つも同時に起こったのだ。残された者たちはただただ怯えることしかできなかった。

 

「リーシャ……ディアベルが」

「リア、わかってる」

 

騎士より託された思いを、彼がどう形にするかを見つめる。その顔に確かな覚悟が宿ったとき、自分は動こうと、リーシャは決めていた。

 

「………ん」

 

その場より立ち上がり、こちらへと歩みを進めるキリトが見える。そして、近場まで来るなりキバオウの胸ぐらをつかんだ。

 

「しっかりしろ!E隊の隊長のアンタがへたってたらメンバーが死ぬぞ!」

「な、なんやと……」

 

その言葉を聞いて、少しホッとするリーシャ。どうやら彼も覚悟を決めたらしい。

 

「いいか、まだボス攻略は終わってない。センチネルだって追加で湧く可能性が……いや、必ず湧く!そのセンチネルをアンタらが捌くんだ、いいな!?」

「そ、そんなこと言って……ジブンはどうすんねん!一人で逃げるっちゅうんか!?」

 

失いかけていた、闘志を燃やし、キリトに敵意のある噛みつきを見せる。それに対して、話は終わりと言わんばかりに立ち上がる。

 

「そんなわけあるか、決まってるだろ………」

 

おもむろに自分のアニールブレードに手をかけ、そのまま抜きさった。

 

「―――ボスのLAを取りに行くんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

第一層クリアを懸けた攻防が、今、始まる―――。

 




お疲れ様でした。

ディアベルをどうするか迷ったのですが、
やっぱり、原作通りに進めようと思います。
ここでの出来事がキリトの覚悟をより強くしたと言っても過言ではないですしね。

というわけで、今回短いですがこれで失礼します。
また次回お会いしましょう。
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