魔道の世界に巻き込まれた一般人(笑)の物語   作:安全第一

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どうも、不定期更新に定評のある安全第一です。

今回も更新が遅くなりました。申し訳ありません。

年末なので更新せねばと思い、書き上げました。

今日は12月25日、クリスマス。黒い軍服を着たアマッカスというとっても優しいサンタさんが良い子のみんなに「リトルボォォォォォイ!!!」をプレゼントするめでたい日なので私もまたぐらがいきり立って書いた所存。

では、どうぞ。


3.ツンデレさんと邂逅した。逃げる様に私は一般人を自称する。

 どうも、おはこんばんにちは。カール・エルンスト・クラフトである。

 

 いよいよ既知感を覚え始めて来た自己紹介だが、そこまで気にする程でもない。既知によって得た知識では那由多の彼方まで回帰し続けた者がいるらしい。全く、それはどれ程の変態だったのだろうか。まあ良い。

 

 私がこの魔道学園に転校し、二週間が経過した。今の所はトリニティセブンによる襲撃も無く、平穏に過ごせている。

 

 初日に盛大にやらかしてしまった私はそれ以来あの教室に馴染めないでいる。とはいえHRには参加しており、そこからは図書館で大量の書物を漁るのが日課になっているのが現状だ。

 

 私としては魔道学園にもHRがあるとは思わなんだ。メイガスを育成する場であり、学園でもある訳だからそこら辺は普通の学園とは何ら変わりは無いのだろう。

 

 今日も現在進行形でぼっちの道を突き進んでいる訳だが、何も悪い事ばかりではない。私は元々静かな場所を好んでいるから今の環境は最適と言って良い。それに他人に自分がどのような魔道を研究しているのかを探られたくないというのも理由の一つだ。トリニティセブンに対抗する為に魔道の基礎を築いているなど向こう側は思いもしないだろう。

 

 そういえば昨日から浅見リリスの姿が見えない。何処かにほっつき歩いているのだろうか。まさかあの豊満な胸と見事なまでのスタイルで男を籠絡しているのではないだろうか。

 

 ……駄目だ。浅見リリスのナイスバディを想像し、自身の身体を見る。胸はぺったんこ、身体はちんちくりんな私では相手にならない。

 

 ま、まあしかしこの身体にも利点はある。例えば胸が邪魔で出来ない動きを可能にするとか、肩が凝らないとか。インドアのイメージが強そうな私だが、実はアウトドア派だ。こう見えて運動は人並み以上に出来ると自負している。この学園に編入する以前は趣味でCQCを勉強していた程だ。勿論独学である。ベースはダンボールの人。

 

 それはさておき。浅見リリスの姿が見えないのには理由がある。何でも崩壊現象の調査に向かっているらしい。

 

 確かに私も妙な力を感じ取った。あれは一昨日の時だったかな。私がこの学園に来るきっかけになった崩壊現象とほぼ似通っているようにも思えた。

 

 そして昨日から浅見リリスが崩壊現象の発生した地点へ向かったのだろう。これはトリニティセブンの持つ使命の一つなのだから崩壊現象の解決に尽力するのは当たり前だ。

 

 浅見リリスは強い。あの時私が発動した計都彗星を消し飛ばしたのだから。崩壊現象の解決も時間の問題だろう。

 

 それにトリニティセブンが一人でも学園に不在であった方がこちらも気が楽になるというもの。浅見リリスと同等のメイガスが七人いるだけで気が滅入りそうなのに、一斉に敵に回られたら一溜まりもない。

 

 もしそのような状況になったら自害してやる。自害せよ、ランサー。ゲイ・ボルクは今日も必中(笑)扱いされて不憫です。

 

 とはいえ、トリニティセブンから仕掛けて来る気配はなさそうだ。この二週間の平穏は私の心を癒してくれる良い時間になった。

 

 しかし油断は出来ない。私にとっての平穏がいつ崩れるか分からないのだ。

 

 トリニティセブンだけではない。一般的なメイガスでさえ油断ならない。何故ならみんなが狂人で戦闘狂のヒャッハー集団だからだ。(※違います)

 

 ふむ、この二週間図書館に籠もりっぱなしもあってか、身体が鈍っている。今日は気分転換に走りに行くとしようか。

 

 

 

 ……支給された体操服を着てみたのだが案の定だぼだぼだった。やはり私の身体はちんちくりんである。悲しいかな(泣)

 

 

 

 やはり娑婆の空気は美味いものだ。……ただ外に出ただけなのだが気にしない。

 

 走るルートは既に確保してある。この魔道学園の敷地面積は非常に広く、学園から見下ろすと街並みが一望出来る。そして学園と街を合わせた学園都市の全体図を見ると周りを囲うかの様に壁があるのだ。その壁の上の通路をランニングのルートとして利用している者はそこそこいるとか。

 

 今の私は風だ。風邪じゃない、風だ。気分はセリヌンティウスを身代わりにして「イィィィィィヤッッッヒィィィィィwwwww」と叫んでいるメロスである。……あれ、メロスはこんな性格だっただろうか。まあ良い。(※良くないです)

 

 ランニングコースを駆け抜けて行く。一歩ずつ前進し、風を身体で感じ取る。あぁ、なんと心地良いのか。素晴らしい。生への躍動、魂の底から歓喜に打ち震える様だ。これこそ正に至高である。

 

 

 

 私は今、生きているッ!!!

 (※ただのランニングです)

 

 

 

 ランニングを始めて少し経過した頃、私は街並みを眺めつつ感慨を覚えていた。

 

 因みにこの学園都市は広く、街並みが入り組んでいる故に初見だと迷いやすい。私も地図と直に住んでいる人への聞き込みと案内が無ければ確実に迷っていただろう。

 

 元々学園都市の入口から入らず、不法侵入という形で学園に来た私の場合、下着を購入する為に初見で学園から街へ向かうという通常ミッションとは違う裏ミッションを受けている気分になった。

 

 初めて見たが、美しい景色だ。この学園都市は田舎に存在しているからか、とても自然が似合っている。ただ魔道は一般世間において秘匿にされている為に、知る人しか知らない景色でもある。

 

 いつメイガス達に襲われるか分からずビクビクして余裕が無かったが、運動しているお陰もあってリフレッシュ出来た。

 

 あぁ、とても良い場所だ。休日はここで丸一日景色を眺めて過ごそうかな。風景画を描くのも良いかも知れない。因みに私の美術の成績は5だ。

 

 半刻ほど走り込み、給水をしつつ休憩していると、妙な気配を感じた。

 

 ふむ、この気配。なんというか禍々しいものを感じる。あれだ、良く有るバトル物の漫画で出て来る魔物とか悪に属している人物の発している闇の様なものだ。だがヤンデレだけは闇とか愛とか血とかをねるねるねるねしたドロドロの液体だからNG。School Day'sはもう見たくない(ガクブル)

 

 さて、気配が発せられている位置は此処から少し離れた廃墟か。走って行けば一刻は掛かるだろう。

 

 しかし私には既知感から得た知識がある。それには当然空間跳躍の魔術もある訳で。以前使用した『素粒子間時間跳躍・因果律崩壊』が世界を自身ごと素粒子化して過去に跳躍する秘術故、それと比較すると空間跳躍の難易度は然程難しくない。寧ろ魔道を学ぶ上では誰でも習得出来る難易度イージーな魔術だろう。

 

 では、魔物がいるであろう地点を目標に空間跳躍しよう。

 

 

 跳べ! マークニヒトォ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 着いた。そして金髪のアホ毛が特徴の少女がいきなり危機に陥っていた。どういうことなの……(困惑)

 

 私には全く状況が理解出来ない。しかし金髪の少女が見た目ツンデレ属性をお持ちになっている事だけは瞬時に理解出来た。

 

 ふふ、この私の観察眼の鋭さよ。間違いなくあの少女はツンデレである。面白そうな少女だ。

 

 いやいや、待て待て。今あの少女はピンチに陥っているんだった。何を考えているんだ私は……。

 

 だがあの少女が持っている大きい水晶球なら鈍器として使っても勝てそうなのだが……。相手はたった一人、いや一匹しかいないのだから。

 

 ふむ、しかし本当に魔物が存在しようとは驚いた。これには青鬼界最速の男、ボ○トの異名を持つフワッティーも驚きの表情だ。空気抵抗を受けやすい体の何処からあの推進力が生まれるのやら。

 

 なのだが、魔物にしては妙だ。この魔物は単なる魔物ではなく、まだ意識を残しているかの様にも感じ取れる。

 

 すると、あの魔物から私に何か訴え掛けてようとしているのを感じた。何か話かけようとしているのか。一体何を話そうとしているのか……身体が震える震える。

 

 仕方なく私は意識を集中する。そうすると言葉が聴こえてきた。

 

『……す……て』

 

 うぅむ、これでは良く聴こえない。もっと集中しなくては。

 

『た…す……て』

 

 ……これは。

 

『た…す……け…て』

 

 ……成程。どうやら私に救いを求める声だった様だ。声からして女性の様だ。

 

 人の意識が残留している、という事はつまりあの魔物は元々は人だったという事。そうすれば色々と辻褄が合う。

 

 あの金髪の少女からは浅見リリスと同等の力を感じる。もしかしたらトリニティセブンなのかも知れない。もしそうだったら私はジョースター家による伝統的な戦いの発想法にしてひとつだけ残された戦法、『逃げる』を即座に使うだろう。まあ逃げるにしても人を見捨てるのは流石に気分が悪いので最終手段だが。

 

 浅見リリスと同等の力を持っている金髪の少女なら魔物一匹を倒す事など造作もない筈だ。しかしそうせず危機に陥ったのはあの魔物が異形に堕ちる前に彼女と有効な関係を築いていたのだろう。

 

 それ以外なら……あれか、百合百合しい事をしていたとか。十八禁の行為をしていたとか。もしも男性だったら十中八九エロいシチュエーションになっていただろう。おっと危ない、鼻血が出そうだった。

 

 さて、あの魔物をどうにかして元に戻したいのだが……。ん? 金髪の少女が何か言っている。

 

 ……え、魔物になってしまった者は二度と元に戻れない?

 

 

 

 なん……だと……?

 

 

 

 どういう事だってばよ。それでは助けたくても助けられないではないか。ファフナー並みに絶望したぞ。

 

 いや、待て。ファフナー……。ファフナーといえば同化現象。確かフェストゥム絶対殺すマンことマークザインがルガーランスでシャイニーして周りを同化し、コクピットごと同化されたパイロットを元に戻したシーンがあった。

 

 

 

 その手があったか。

 

 

 

 善は急げ。既知感から得た知識を応用し、人の大きさに合わせるよう調整したルガーランスを無から精製。

 

 おぉ、本当に無からルガーランスを精製出来た。既知感の知識が万能過ぎて辛い。寧ろ全能かも知れない。

 

 ではルガーランスのご開帳。ぱかっと開いたルガーランスから光が溢れ出る。光が綺麗過ぎて逆にこっちが同化されそうだ。まぁ冗談だが。

 

 するとどうだろう。魔物が苦しそうに蠢いているのが分かる。人だった時の残留意識は大丈夫なのだろうか。これで失敗したら笑えない。

 

 あ、ヤヴァイ。今更緊張して来た。寧ろ今まで緊張しなかった自分を褒めてやりたい。

 

 そして今回もお馴染みの突然口から謎の言語が発せられる。何の意味なのかさっぱりだ。

 

 謎の言語が発せられると同時に魔物がファフナーに出て来る同化現象と同じ様に翠の結晶と化した。宝石の如く綺麗だ。幾らぐらいで売れるだろうか。

 

 瞬間、結晶が砕け散り、そこには魔物ではなく一人の少女が倒れていた。どうやら気絶しているだけで他の部分に支障は無い。

 

 や っ た ぜ(ドヤァ)

 

 金髪の少女の危機と魔物の両方を救えた。もう此処に用は無い。ルガーランスを消してすたこらさっさと退散しよう。

 

 しかしそうは問屋が卸さない。すぐさま金髪の少女に呼び止められた。アイエエエエエエ!? ナンデ!? キンパツナンデ!?

 

 わ、私が何か悪い事をしたのか? 彼女の癪に触る事をしてしまったのか?

 

 ハッ!? まさか百合百合しい事を!?(※違います)

 

 いや、違う。きっと私がツンデレ属性だと見破った事に気が付いているのだろう。それを他のメイガス達に広められてしまえば黒歴史は確実。それを阻止するには口止め又は始末するしかないだろう。

 

 拙い、これは拙いぞ。秘密を暴露されるのを阻止しようとする人間はみんな恐ろしい程の力を発揮する。つまり私は此処で始末されるという事か。ヤメロー! 死ニタクナイ! 死ニタクナァーイ!!

 

 ……え、私の名前?

 

 あぁ成程、どうやらこのツンデレ金髪少女は私を始末するのでは無くただ名前を聞きたかっただけの様だ。安心した。

 

 まず私は他人の秘密を周りにバラしたりはしない。平穏に過ごすのが私の目的なのだから、そのような厄介事の種になりそうな話題をバラすなど愚の骨頂だ。

 

 そしてツンデレ金髪少女の名前を聞く。互いに自己紹介するだけなら何の問題も無い。

 

 

 

 え、『傲慢(スペルビア)』のトリニティセブン、山奈ミラ?

 

 学園の秩序を守る王立図書館主席検閲官?

 

 

 

 なんてこった、パンナコッタ(白目)

 

 SAN値直葬である。まさかとは思ったが本当にトリニティセブンだったとは。本当にありがとうございません。

 

 彼女に一言伝えると空間跳躍で学生寮の自室に帰還する。足取りがおぼつかないままベッドにダイブ。

 

 トリニティセブンを助ける行為をしてしまったとは、一生の不覚である。顔を見られた、名前も知られた。つまりこれから彼女に絡まれる可能性がエッフェル塔くらい高くなったという事。イコール、トリニティセブンとの接触回数も増えるだろう。

 

 人助けをして良い事をしたと思って内心ドヤ顔をしていたら無意識に死亡フラグを建築していて尚且つ全力で地雷を踏み抜いてしまった件について。

 

 あぁ……私が何か悪い事をしたのだろうか。良い事をしてドヤ顔したのが悪かったのだろうか。泣けてくる。

 

 明日が怖い……。身体がガクブルである。生きた心地がしない。この気持ちを表すならこうだ。

 

 

 

 私ガデー! ダレヲ助ゲデモ! オンナジオンナジヤオモデェー!

 ンァッ! ハッハッハッハッー! この生活ンフンフンッハアアアアアアアアアアァン!

 アゥッアゥオゥウアアアアアアアアアアアアアアーゥアン!

 コノセイカツンァゥァゥー……アー! 嫌な日常を……ヴッ……ガエダイ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山奈ミラは苦悩する。

 目の前にいる魔物がかつて彼女の数少ない友人である事に。

 

 山奈ミラはトリニティセブンになる以前は強大な魔力を持つ一人の少女である。

 何か特別な才能が有った訳ではない。魔術に秀でている技術があった訳でもない。ただ魔力が強大なだけの少女だった。

 メイガスは魔力が強大であればあるほど暴走した時のリスクが大きくなる。彼女はそれに怯えていた。

 魔道を志し、メイガスとなった後もそれは消えず、自己主張があまり出来ない引っ込み思案な性格も相まって、他人から距離を取る毎日を過ごして来た。

 それこそが山奈ミラの美点であり、欠点でもある。心優しい彼女は自らの魔力の暴走を危惧し、敢えて近寄らない選択肢を取る事で皆を巻き込まないようにしていた。

 浅見リリスは当時から教師をしており、彼女をとても心配していた。だがそれに対してさえ何も返せなかったのだ。

 しかしある日、苦悩の渦にいた山奈の手を取ったのが不動アキオであった。

 彼女、不動アキオは豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格で山奈を連れ出し、親しく接してくれた。面倒見が良く、他人の気持ちを先んじて察する繊細な一面を持つ彼女だからこそ山奈は彼女に懐くようになる。

 そしてもう一人、山奈がメイガスに成り立ての頃から心配し、いつでも優しくしてくれた者がいる。

 彼女の名は天瀬ナナオ。魔道士としての実力は高く、周りからの人気も高い人望のある少女だ。

 快活な不動アキオとも相性が良く、プライベートから魔道の研究まで、付き合いはかなりもの。山奈ミラの根幹を不動が支える者なら、天瀬は影から支えた者と言って良い。その際天瀬は山奈のサポートに回る為に王立図書館検閲官(グリモワールセキュリティ)第四席(フォース)に就いた。

 不動と天瀬、山奈が共に行動して数日後、ある実験で失敗した山奈を不動が励ます出来事があった。それ以降、彼女も真っ直ぐな性格の不動アキオの様に、そして自らの力に責任を持つ天瀬の様に『自分の力に責任を持つ正義の味方』になりたいと決意した時、天瀬は嬉しさのあまり号泣した。それを見た山奈と不動は相当焦ったのだがそれは置いておこう。

 山奈が研究する魔術のテーマは“正義(ユースティティア)”、『傲慢(スペルビア)』の書庫(アーカイブ)に属するものである。

 不動アキオは当時からトリニティセブンであり、天瀬ナナオも同じ『傲慢』の書庫に属する“総括(シンセンス)”をテーマにしており、山奈の魔術の研究をサポートする事が出来た。

 彼女ら二人の支援と山奈が持つ強大な魔力を以って魔道の研究に勤しめば、魔術に秀でている才能が無くとも問題はない。

 山奈ミラは天才ではなくとも秀才ではあった。一を知って十を学ぶのではなく、十を知って十を学ぶ。教えられた事、魔道の研鑽によって得た知識と技術を確実に我が物とする事こそ山奈ミラの真骨頂である。

 故に山奈が魔道士として頭角を現すのも時間の問題であった。水を得た魚のように魔術を極めて行くその姿を不動と天瀬は微笑ましく見守り、一年が過ぎる。

 遂に山奈ミラは『傲慢』のトリニティセブンとなり、王立図書館主席検閲官として就任。不動、天瀬、山奈の三人による新体制がここに開かれ、着々と任務を遂行する日々が始まったのだった。

 そして検閲任務中に編入として入った一人の少女。その際に広まった噂や情報が山奈の耳に入らない訳がない。学園に戻り次第、少女が不浄な存在かどうかを確かめる為に接触しようと考えていた。

 だがそれ以上に気になる事がある。それは今回の検閲任務を遂行する少し前から先輩であり友人である天瀬ナナオの姿が見当たらないのだ。

 嫌な予感がする。彼女の胸中で胸騒ぎがしている。検閲任務を終えた彼女は焦燥に駆られつつ天瀬の安否を確認且つ捜索活動に専念した。

 

「先輩……無事でいて下さい」

 

 懇願する様に彼女の無事を祈る。早く、早く見つけ出さねば。このままだと取り返しのつかない大事になる。山奈ミラを支える根幹の一つが崩れ去ってしまいそうな気がしてならない。

 魔道の研究によって天瀬の魔力の色を知っていた山奈はその魔力を行方を辿りトリニティセブンとしての技術を総動員し、索敵魔術を使用して徹底的に捜索した。

 

「っ、居た……!」

 

 捜索して一刻、ようやく彼女の魔力が濃く残っている位置を発見。天瀬ナナオがそこにいる可能性は極めて高い。

 だが彼女から感じられる魔力が禍々しく感じられた。

 

 まさか。いや、そんな事は。

 

 トリニティセブンである山奈に彼女がどのような状態となっているかは察しがついていた。しかし山奈にとってその現実は忌避すべき現実である。彼女はその現実から逃げるように天瀬が無事だと信じて検閲任務へ赴いた。

 

「……先輩ッ」

 

 歪む表情。今まで不動と自分、そして天瀬の三人で過ごして来た日常。今更壊そうなどと思う事は絶対に有り得ない。山奈を変えてくれた二人に感謝し、恩を返してもこの関係は続けていたい。これからも、ずっと。

 その日常を壊され、奪われるなど認めない。絶対に認めない。もしもその大切な日常を奪おうとする敵がいるのなら、力の限りを尽くして相手の全てを奪う事に躊躇などしない。それ程までに彼女は不動と天瀬が大好きだった。

 

「………」

 

 目的地に辿り着く。そこには一つの廃墟。魔道書である『鏡の国の書』を取り出しメイガスモードとなり警戒しつつ中を探索、索敵する。夕暮れ時であり、辺りは暗くなりつつあった。

 靴の音だけが辺りに木霊す。魔力が濃く残る位置まであと僅か。

 

 そして。

 

「先輩! 無事でした……か」

 

 絶望する。

 

 そこにいたのは異形。魔力暴走を起こし、堕ちてしまったメイガスの成れの果て、魔物である。

 

「ッ…………ぁッ……」

 

 追い付かない非情な現実。理解したくない現実。嘘であって欲しい現実。今までの思い出が蘇り、儚く砕け散る。

 視界が揺れる。足元がおぼつかない。足の力が抜け、へたり込む。

 壊されてしまった。無くなってしまった。大切な日常が、大切な存在が、彼女の根幹の一つが根こそぎ抉り取られた感覚が襲った。

 何故、このような事になってしまったのか。天瀬がいなくなる前に自分が対処していれば、と思った所で山奈は気付く。

 まさか、嫉妬していたのか。当時からトリニティセブンだった不動と後から追い抜く様にトリニティセブンとなった自分。その事実に焦っていたのではないだろうか。

 天瀬ナナオは天才でもなければ秀才でもない。山奈の様に強大な魔力がある訳でもない。何も持っていない彼女は努力だけで高位の魔道士になってみせた。だからこそ隣にいた二人が遠い場所まで行ってしまう事が怖かったのだと。

 だからこそ悟られたく無かった。彼女達に対し、嫉妬よりも親愛の情が上回っていたから。心配をかけさせまいと気丈に振る舞っていたのだろう。

 確か、以前彼女の研究の一つを盗み見る形で閲覧した事がある。それには魔力を増幅させる魔術実験の内容が記載されてあった。

 トリニティセブンになるには強大な魔力を要する。努力だけで高位の魔道士にはなれても、限界がある。故に天瀬ナナオはこの実験に手を出した。成功すれば“枢機(カルディナリス)”クラスの魔力を得られるが為に。

 だがこの実験はあまりにもリスクが高過ぎた。失敗すれば魔物に成り果てる。成功率は天文学的数字。成功は不可能といえる無謀な実験内容である。

 それを分かっていて、天瀬ナナオは実験に手を出した。追い付きたいが為に。追い抜かれないが為に。停滞している自分を新生し、新たな一歩を踏み出す為に。

 だが失敗した。焦燥に駆られ過ぎたばかり失敗したのだ。その時は親愛を嫉妬が上回ったから。

 不動と山奈を想って自制していればこうはならなかった。成功率は天文学的数字の無謀な実験を前に諦めていれば良かった。そもそも二人が天瀬を置き去りにしなければ嫉妬などしなかった。

 山奈は天瀬を置いて行ったりはしない。不動も同じ考えだろう。寧ろ努力だけで高位魔道士になっているその実力、技術面でいえば二人すら凌駕している。尊敬の念を抱かざるを得ない程だ。

 だがそれを天瀬本人が知らなかった。なまじ己が凡才である事を自覚していた為に。

 

「あ………ぅぁぁ……」

 

 ぼろぼろと涙が零れ落ちる。山奈の優しい面が表に出てしまったのだ。

 

 (私が、先輩の苦しみに気付いていれば……!)

 

 濁流の如く押し寄せる後悔。あの時、他人の気持ちに敏感であったなら。

 しかし山奈が気付かないのも無理はない。他人の気持ちを先んじて察する繊細な一面を持つ不動でさえ気付かなかったその演技力は一流だ。魔道を研究している過程で得た技術の一つなのだろう。魔道士は心理戦によって勝敗を分けられるパターンが多いのだから。元々ポーカーフェイスを貫くスタイルが得意な彼女にとって心理戦は得意分野であった。

 そうまでして、自分達に迷惑をかけたくなかった。心配されたくなかった。こうなってしまった原因の一つとして彼女のプライドも挙げられる。

 だが山奈がそれを考えている余裕など無かった。

 

「先、輩………」

 

 心が軋む。今にも砕け散りそうだ。

 魔物に堕ちてしまった者を元に戻す方法は無い。人間が食屍鬼(グール)に成り果ててしまうのと同じ様に、人でなしの化物に堕ちてしまえば手遅れなのだ。

 敬愛し、山奈の根幹となった少女はもういない。この事実が精神を汚濁し続ける。

 

「誰か……」

 

 信頼関係を気付いてしまった為に山奈ミラは正義を実行出来ない。この魔物をどうしても不浄な存在だと思いたくない。そういう存在だと認識したくない。

 故に助けを求める。こんな悲劇を、理不尽を塗り潰してくれるだけの救世主を。願うだけ無駄であり不可能な救いを求めた。

 

 

 

「助けて、下さい……」

 

 

 

 瞬間、

 

「分かった」

 

 神威が体現する。

 

 

 

「え……」

 

 突然の出来事に呆然とする山奈。彼女の視線の先にいる存在を見た。

 

 妖精。

 

 誰もが見て美しいと、可憐だと言うだろう幼い容姿に体躯。そして誰もが恐れおののく神威を発している少女。

 救世主の様に現れた彼女はこちらに向かって悠然と歩いて来る。

 山奈は我に帰り、少女に向かって叫ぶ。

 

「な、何をしようとしているのですか!? 一度魔物に堕ちてしまった者は二度と元には戻りません! 人間に戻すなど不可能です!」

 

 あぁ、自分は何を言っているのだろうか。救いを求めたのは自分自身の癖に。それを否定しようとするとは、自分こそ何をしようとしているのか。

 叫びながら山奈は自虐する。それは不可能な事を目の前の少女が本当にどうにかしてくれそうだと思わされたから。救ってくれると希望を抱いたから。哀れだ、と自らを罵った。

 

「問題ない」

 

 しかしそれすら少女は一蹴する。何処からともなく槍の様で長剣の様な独特な形状をした近未来の兵器に似た武器を精製する。それを見た山奈は驚愕した。

 

(あれは魔道書ではない……。しかもあの武器は錬金術(アウター・アルケミック)で精製されたものではなく、百もの魔術を織り交ぜられて無から創られている……。あんな高難易度の魔術を息をするかの様に精製するなんて……!)

 

 少女を解析する事は出来なかったが、精製された武器を解析すると有り得ない程の技術が詰まっていた。

 百もの魔術、正確には一○三もの魔術構築によって精製される武器はかの魔王兵器に匹敵する。

 故にその武器の魔術構築は理解出来ても、構築方法や起源が一切理解出来なかった。

 

「………」

 

 その武器を魔物へ向ける。すると刃の部分が開き、そこから金色に輝く光が魔物を照らした。

 刹那、魔物が苦しみ出す。だが暴れる事はなく、異形の身体を震わせるだけに止まっている。

 山奈には感じ取れた。魔物から急速に不浄なものが取り除かれて行く事が。それと同時に少女の神威も増大する。

 

 ──あぁ、本当に。

 

 ──悲劇を跳ね除ける存在がいるなんて。

 

 

 

 ───Cogito, ergo sum.(我思う、故に我あり)

 

 ───Date et dabitur vobis.(与えよ、さらば与えられん)

 

 

 

 ──これこそが、『奇跡』なのですね……。

 

 少女から語られる理解不能の言語と共に魔物が翠の結晶と化し、砕け散る。そこには異形ではなく、人の姿をした天瀬ナナオが横たわっていた。

 奇跡は存在した。今ここに、少女が証明して見せた。

 

「先輩……ッ!」

 

 横たわる天瀬の下へ駆け寄る。彼女の様子を見た。息をしている。解析しても不浄な部分は何一つない。彼女が無事に元へ戻った事に安堵した山奈は俯き、目尻から涙が零れ落ちる。今度の涙は絶望からの涙ではなく、希望からの涙だった。

 そして顔を上げると、奇跡を起こして見せた少女は武器を消し、踵を返してこの場を去ろうとしていた。

 

「ま、待って下さい!」

 

 その呼び止めに足を止める少女。振り向きはしない。

 

「貴女の名前を教えて貰えないでしょうか!?」

 

 大切な存在を救ってくれた救世主の名を心に刻んでおこうと、名を訪ねる。

 

「……カール・エルンスト・クラフト=メルクリウス」

 

 背を向けたまま、自らの名を明かす少女。それに応え、山奈も名前を明かした。

 

「私は『傲慢』のトリニティセブン、山奈ミラと申します! 王立図書館主席検閲官です!」

「……そう」

 

 山奈の言葉に、一言応えた彼女は一瞬にして去って行った。空間跳躍というこれまた高難易度な魔術を目の前で使われ、再び驚愕する山奈。

 

「う、う〜ん」

「ッ! 先輩ッ!」

「おぉっ!? ビックリしアイタッ!?」

 

 カール・クラフトと入れ替わる様に目を覚ました天瀬を見て感極まった山奈は目尻に涙を浮かべて抱き着く。その行為に驚き、咄嗟に受け止めた為に倒れてしまい後頭部を地面にぶつけてしまった。

 

「あっ、すみませんっ。つい……」

「だ、大丈夫だよ〜……」

 

 痛みで少し顔を青ざめてさせている天瀬だがそこは何とか持ち堪えた。少しして痛みが引き、今だに抱き着いている山奈を包み込む様に背に手を伸ばす。

 

「ごめんね、ミラ。私、負けず嫌いだったから」

「先輩……」

「我慢ならなかったの。先輩として立つ瀬が無かったから。だけど反省してる。成功率が天文学的数字の実験に手を出してしまう程、焦ってた」

「私の所為で、先輩は……ッ」

「ミラが謝る必要なんてないよ。これは力を求めて危険すら省みなかった私の過失。自らの力に責任を持ちなさいって言ったのは私なのにね。先輩失格だよ……」

 

 困った表情で語る天瀬。かつて山奈に言った言葉を自分が守れず間違いを犯してしまった事を後悔していた。もしもカール・クラフトが救ってくれなければどうなっていたか。悲劇は免れなかっただろう。

 

「だから私、あの子がくれた二度目の生を無駄にするつもりはないから」

「二度目の、生?」

「うん、一度私は死んだ。魔道実験に失敗し死んで魔物になった。元に戻った今の私は二度目の生を貰った天瀬ナナオ。

 だからね、ミラ。今度は間違えないから。今度は貴女の先輩としてちゃんと格好良い背中を見せるから……」

「……先輩ぃっ……!」

 

 その言葉を聞き、抱擁を強くした彼女は泣き出す。声を上げて泣いた。それを天瀬は母の様に胸を貸して山奈が泣き止むまで背を優しく摩り続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 




今回もネタ十分。
特にファフナーネタが際立った回であった。
男根のメタファーに草不可避。

オリキャラ紹介

・天瀬ナナオ
オリジナルキャラクター。この回を1万文字以上書き上げる為だけに作られた扱いに困るキャラ。
しかしこの回のみならず、次回からも登場する。
というかロリニートと絡ませる予定。
つまり出演数がかなり増えるということ。やったねナナちゃん! 出番が増えるよ!()
実力は上の下。トリニティセブンには敵わなくとも、一対一かつ地の利と複数の条件さえ整えば勝つ事も可能という強キャラ仕様。
研究テーマは『傲慢』に属する“統括”。
それ故にサポートにおいてはトリニティセブンすら上回る。
大好きなのは山奈ミラと不動アキオ。
嫌いなのは過去の自分自身。
それなりに暗い過去を持つキャラでもある。

↓以下解説やらなんやら



・全く、それはどれ程の変態だったのだろうか
あ な た で す(無慈悲)


・インドアのイメージが強そうな私だが、実はアウトドア派だ。
こういう運動が出来る水銀、ロリニートって未知じゃない?
CQC出来るロリニートとか萌えますわぁ〜(鼻血)

・もしそのような状況になったら自害してやる。
自害せよランサー(無慈悲)


・支給された体操服を着てみたのだが案の定だぼだぼだった。
大人ぶろうとしている背伸びしたがりのロリキャラに良くある傾向。悲しいかな(笑)


・気分はセリヌンティウスを身代わりにして「イィィィィィヤッッッヒィィィィィwwwww」と叫んでいるメロスである。
節子、それメロスやない。マリオや。
コインコイ〜ン♪


・私は今、生きているッ!!!
獣殿との最終決戦で放たれる名言の一つ。
今回は宇宙規模の大ゲンカとかではなく唯のランニング。


・Schoo Day'sはもう見たくない(ガクブル)
ようつべで見た最終話だけを見て作者は観たくなくなった。まだエルフェンリートの方がマシだよ(錯乱)


・跳べ! マークニヒトォ!!!
煽られ耐性がないニヒト。どうしたマークニヒト! 虚無の申し子がこの程度か!


・これには青鬼界最速の男、ボ○トの異名を持つフワッティーも驚きの表情だ。空気抵抗を受けやすい体の何処からあの推進力が生まれるのやら。
元ネタは青鬼ファンなら誰でも知っているであろうあの実況動画。梁山泊陸上クラブの超新星は格が違った。


・おっと危ない、鼻血が出そうだった。
十八禁耐性がないロリニート。どうしたカール・クラフト! 水銀の王がこの程度か!


・もしそうだったら私はジョースター家による伝統的な戦いの発想法にしてひとつだけ残された戦法、『逃げる』を即座に使うだろう。
ジョースター家に代々伝わる究極の戦法且つ最終手段、それが逃走。逃ぃげるんだよォーーーーッ! スモーキィーッ!


・アイエエエエエエ!? ナンデ!? キンパツナンデ!?
なお、金髪同盟を立ち上げている鬼畜こけしの場合、感極まって太極位を発現する模様。
しの「ーー太・極ーー
鬼畜曼荼羅・金髪至高天!」
アリス「シノーッ!?」


・ヤメロー! 死ニタクナイ! 死ニタクナァーイ!!
カーナーシーミノー


・なんてこった、パンナコッタ(白目)
よ○もと新喜劇でお馴染みの超人、茂造じいさんのネタ。最後の〆として使われる事もある。だが私は、
「すいませぇん!!!」
「いぃ〜よぉ〜」
のネタが面白かったです。はい。
あと舞台セットの仕掛けも。


・ハッ!? まさか百合百合しい事を!?
寧ろそういう展開が好みなのだろうか。それは彼女のみぞ知る。


・SAN値直葬である。
いあ! いあ!


・つまりこれから彼女に絡まれる可能性がエッフェル塔くらい高くなったという事。
最頂部324メートルの展望タワー。電波塔の役目も持つ。
高いといえば高いのだが、富士山とかキリマンジャロとかロッキー山脈とかK2とかチョモランマとかに比べれば圧倒的に低い為、可能性として高確率になったのかどうかさっぱりである。


・ 人助けをして良い事をしたと思って内心ドヤ顔をしていたら無意識に死亡フラグを建築していて尚且つ全力で地雷を踏み抜いてしまった件について。
ラノベのタイトルとかでありそうでないヤツ。というかタイトル長すぎィ!


・私ガデー! ダレヲ助ゲデモ! オンナジオンナジヤオモデェー!
やはりネタとして欠かせないのはあの某議員である。
至高のネタだ、密度が違いますよ。


・Cogito, ergo sum.(我思う、故に我あり)
 Date et dabitur vobis.(与えよ、さらば与えられん)
今回登場したオリジナル魔術。トンデモ占星術ではないが、それでもトンデモ魔術である。
元ネタはラテン語の名言。
追記:ノイズが無いように感じるのは読者様だけ。旧世界の知識を得ている前提です。トリニティセブンの住人にはノイズまみれで全く理解出来ません。
実を言えばルガーランスを用いずとも同化現象もどきを発生させる事が出来る。
要するにルガーランスはただのパフォーマンスである。
ルガーランス「えっ、嘘やろ?」
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