魔法少女まどか☆マギカ ラタトスクの騎士   作:如月ユウ

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28話 人魚姫の初恋は甘酸っぱい

目を覚ますと時間は昼頃になっていた。

 

「起きたか」

 

「ごめん。佐倉さんの話を聞いていたら眠くなっちゃって」

 

「説法しているのに寝ているとはいい度胸だな」

 

エミルのおでこをつつく。

 

「マミが飯作ったから食うかい?」

 

「うん。食べるよ」

 

杏子は立ち上がってベットから離れる。

 

「エミル様。具合はどうですか?」

 

「大丈夫だよ。明日になれば動けるから」

 

「そうですか」

 

「持ってきたぞ」

 

お盆には土鍋が置かれており蓋を開けるとお粥だった。

 

「マミが作ったやつだから味は保証する」

 

「頂きます」

 

お粥をお椀によそって食べる。

 

「マミの飯食えるなんて幸せ者だな」

 

「ならマミさんはエミル様の料理を食べていますから幸せ者ですね」

 

「エミル料理出来んのか?」

「旅をしていた頃からずっと料理担当だったからね」

 

「エミル様が料理なさると大根が白鳥になったりカボチャが亀になったりします」

 

「芸当じゃねぇか」

 

「一度やったら止まらなくなってね」

 

「こりゃ料理人になるしかないな」

 

「佐倉さんもお母さんと同じことを言って」

 

お互いに笑ってお粥を平らげる。

 

「ねぇ、佐倉さん」

 

「なんだ?」

 

「もし佐倉さんが良ければさ。僕の家に住まない?」

 

「へ?」

 

エミルは一緒に暮らさないかと言ってきた。

 

「僕達まだ中学生だから学校は通わないと」

 

「いや、その…」

「大丈夫。お父さんとお母さんにはちゃんと説得するよ。僕の両親は理由が分かればちゃんと住まわせてくれるから」

杏子は突然のことで黙ってしまう。

 

「(私が一緒にいてやるって思ったからエミルが感づいたのか?)」

 

杏子は内心ドキドキしている。

だがエミルが望んだことだから一緒に住んでもいいかと考えたが

 

「いや、今は断っておく」

 

「どうして?」

 

「家族がいないから同情しているんだろ?」

 

「僕は…」

 

「言ったろ?もう割りきってるって。しばらくはマミの家にやっかいになろうと思ってる」

 

「そっか。なら僕からは何も言わない」

 

「けど、ありがとう。私を心配してくれたんだよな」

 

杏子は笑み浮かべた。

まるで聖母のような微笑みだった。

エミルはその笑みを見て頬を赤らめる。

 

「大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫だよ」

 

「顔赤いぞ?熱か?」

 

杏子は手を額に触れた。

 

「あ、あの…」

 

「熱はないな。まあ、寝てれば大丈夫だろ」

 

「う、うん。そうだテネブラエ、学校に行って僕は大丈夫だって言ってくれないかな」

 

「わかりました」

 

「それと美樹さんが謝るようなことを言ってたらこう言っといて。美樹さんが元の姿に戻ったのならそれで十分だって」

 

「はい。それでは行ってきます」

 

テネブラエはベランダから外に出ると姿を消して学校に向かった。

 

「起きたのかいラタトスク」

 

ベランダからキュゥべえがはいってきた。

 

「キュゥべえ…!」

 

杏子は魔法少女に変身してエミルを守るように槍を構える。

 

「僕を殺しても意味がないことは知っているだろ?」

 

「ならストレス発散代わりに殺ろうか?」

 

槍の矛先をキュゥべえにむける。

 

「やれやれ僕達の扱いはかわりないね」

 

「なにしにきたんですか?」

 

「ラタトスク、君は大変なことをしたよ。まさか魔女を契約するなんて驚いたよ。しかも元の姿に戻すなんて」

 

「僕は精霊であり魔を統べる王。魔物と契約は出来て当たり前のこと。だから魔女と契約出来るか賭けをした」

 

「そして私達が勝ったんだよ」

 

杏子は勝ち誇ったように笑う。

 

「だが君のおかげで余計な手間を省けるかもしれない」

 

「余計な手間?」

 

「僕が魔法少女と契約して君が魔女と契約する。そうすれば僕達のエネルギー問題が解決して君は仲間が増えてお互い得するじゃないか」

 

「あなたは…どれだけ人を見下すんだ!」

 

エミルはゆっくりベットから離れて立ち上がると制服からラタトスクの騎士に変わる。

 

「人を何だと思っているですか!僕達はあなたの家畜じゃない!」

 

「君達も豚や牛や鶏を家畜としているじゃないか。僕達はこれでも譲歩しているつもりだよ」

 

「譲歩だと?ふざけるな!私達をこんな姿にしてなにが譲歩だ!」

 

「けど魔女になってもラタトスクに契約すれば元の魔法少女に戻るじゃないか」

 

怒りを抑えるのが出来なかった杏子はキュゥべえを突き刺そうとしたがエミルに止められる。

 

「インキュベーター。僕はあなたの考えを否定します。あなたがこれ以上人を…いえ、生命を侮辱するなら…」

 

剣を抜いてキュゥべえの顔に剣先を近付けた。

 

「全ての配下を使ってあなたという存在を消し去ります」

 

「これ以上居たら僕達を消し去りかねないね」

 

キュゥべえはベランダから立ち去る。

エミルは変身を解くと足の力が抜けるように崩れ落ちる。

 

「エミル!」

 

杏子はエミルの腕を肩に乗せてベットに寝かす。

 

「ちょっと無理しちゃった…」

「マミ達が心配を通り越して泣くぞ本当に」

 

「ごめん…」

 

「明日まで変身はするな。でないと手足折って動けなくする」

 

「それは勘弁してほしいかな」

 

エミルは苦笑いをして変身しないのを約束した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

学校

 

「エミルまだ寝ているんですか…」

 

「えぇ…佐倉さんと私で交代で看病したけどまだ目を覚まさないわ」

 

昼休みまどか達は屋上でお弁当を食べていた。

 

「契約はエミルにかなり負担かかるようね」

 

「そうね…エミル君はグリーフシードが必要ないうえに一番戦いに慣れているから」

 

「彼がいなくなったら戦力は大幅下がるわ」

 

「一応、佐倉さんに一緒に戦わないか聞いてみるわ」

 

「私も一緒に行くわ」

 

「ありがとう暁美さん」

 

「こちらもお昼時のようですね」

 

テネブラエが姿を現した。

 

「エミル様からの伝言です。明日から動けるとのことです」

 

「エミル君が起きたの!」

「はい。今はマミさんの家で安静にしています」

 

エミルが目を覚ましたことに安堵する。

 

「テネブラエ。エミルに謝りたいって伝えてくれないかな」

 

「ふふっエミル様はエスパーかもしれませんね」

 

「えっ?」

 

「いえいえ何でもありません。エミル様はさやかさんが元の姿に戻ったのなら十分だとのことです。何か伝えてほしいことはありますか?」

 

「なら、佐倉さんに一緒に戦ってくれないか聞いてくれないかしら?」

 

「わかりました」

 

テネブラエは姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

「さやかちょっといいかな?」

 

授業が全て終わると恭介はさやかの席に来た。

 

「なに恭介?」

 

「放課後、時間貰っていいかな?」

 

「う、うん…わかった」

 

さやかは恭介と一緒に学校を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園

二人はベンチに座りお互い口を開かない。

 

「話ってなに恭介?」

 

しばらくしてさやかが先に口を開いた。

 

「一昨日の告白なんだけど…」

 

さやかの心臓の鼓動は加速する。

 

「僕…志筑さんと付き合うことにした」

 

「そっか…」

 

期待はしていたがわかっていた。

恭介は仁美を選ぶことを

 

「ごめん…さやか」

 

「ううんいいよ。仁美喜ぶと思う」

 

さやかは立ち上がると恭介のほうを向く。

 

「恭介、お願いがあるけどいいかな?」

 

「なに?僕が出来ることならなんでもいって」

 

「少しでもいいから仁美と一緒にいる時間を増やして。仁美さ、家の事情であまり遊ぶ時間ないからせめて学校のときだけでも一緒にいて」

 

「もちろんだよ」

 

「ありがとう」

 

さやかは歩こうとした。

 

「さやか!」

 

恭介は呼び止める。

 

「明日…明日もまた学校で!」

 

「うん」

 

さやかは走り去る。

今は少しでも恭介から離れたかった。

 

「っ…」

 

一筋の涙が流れているから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さやかのマンション

まどか達はさやかが来るのを待っていた。

扉前で待っているてさやかがこちら側に走ってきた。

「さやかちゃん…」

 

「恭介…仁美と付き合うことにしたんだって…」

 

なんて声をかければいいかわからなかった。

 

「大丈夫よまどか。大丈夫だから…」

 

まどかはさやかに抱き付いた。

「もう我慢しなくていいよ」

「我慢なんて…」

 

「分かるよ。だって小さい頃からさやかちゃんの友達だもん」

 

「う、うぅ…」

「辛いこと全部吐き出そう?私がいるから」

「まどか…まどかぁ…うわぁぁぁぁあ!」

 

顔をくしゃくしゃに歪み涙を流した。

 

「きょうすけが…きょうすけがぁ…ひとみにぃ…ひとみにとられちゃったよぉぉぉぉ!」

一度流れた涙は止まらずそのまま溢れる。

まどかは何も言わずその涙を受け止めた。

 

「ありがとうまどか…」

 

「これ使って」

 

「うん…」

 

ハンカチを受けとり涙を拭く。

 

「さやかちゃん…昨日から疲れてるから今日は休んだほうが…」

「ううん、私も一緒にパトロールしないと」

 

「けど…」

 

「なら美樹さんにお願いがあるわ」

 

一歩も引かないと感じたマミは別のことをしてほしいと頼む。

 

「エミル君の様子を見に行ってくれないかしら?佐倉さんもいるけど念のために」

「でも…」

 

「私からもお願いするわ。今後、彼の力が必要よ。もしかしたら魔女になった魔法少女を戻せるかもしれない」

 

珍しくほむらがさやかに頼んだ。

 

「わかった…」

 

「鹿目さんも美樹さんと一緒にエミル君の様子を見に行ってくれる?」

「はい、わかりました」

 

さやかはまどかに手を引っ張られながら歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マミホーム

まどかとさやかがマミの家のインターホンを押すと杏子が迎えてくれた。

 

「エミル君の様子はどう?」

 

「キュゥべぇのやつが現れて一回変身したらすぐ倒れた」

 

「大丈夫なの!?」

「今は安静してるから-」

 

杏子を無視してエミルの所に行く。

 

「エミル!」

 

エミルはマミのベット寝ていた。

 

「今は寝てるから大丈夫だって」

「でもエミルが!」

「だから落ち着け。エミルが起きる」

 

「ご、ごめん…」

 

「マミに言われて来たのか?」

「うん。マミさんからエミル君の様子を見てって言われて」

 

そのまま三人で看病しているとエミルが目を覚ます。

 

「ごめんまた寝ちゃ-」

 

「エミル!」

 

「うわっ!」

 

さやかはエミルに抱き付く。

 

「良かった…」

「え、えと…美樹さん?」

 

「心配したんだから…エミルが倒れたって聞いたから…」

 

さやかの頭を撫でる。

 

「心配かけてごめん…それとありがとう」

 

自分のことを心配してくれたことが心から嬉しかった。

 

「ところでなんで二人はここに?」

「エミル君の様子を見てってマミさんから頼まれて」

 

「僕は大丈夫だよ」

 

「嘘つけ。変身しただけで倒れたくせに」

反論が出来なかったエミルは苦笑いをすると全員笑った。




初恋は終わった
けどそれは終わりじゃない
始まりでもある
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