主を守る盾となる
エミルはさやかがここに来たことで確かめたいことを思い付いた。
「そうだ、美樹さん魔法少女に変身してみて」
「いいけど…」
エミルに言われるがまま魔法少女に変身する。
「さやかちゃんの服装少し変わったね」
頭にはfの文字が二つある髪飾り。
マントには何か描かれている。
そして一番重要な物が無くなっていた。
「ソウルジェムが無くなってる!?」
魔法少女の魂であるソウルジェムがさやかのへそから消えていた。
「え、え、なんで!?」
「けど、さやかちゃんは動いているよ?」
「どういうことなんだ…」
「これは…」
テネブラエは眉にシワを寄せて考える。
「もしかしたら私と同じ存在になったかもしれません」
「テネブラエと同じ?」
「我々センチュリオンは肉体が消し飛ぶほどのダメージを受けるとコアという宝石になります。ラタトスク様が生きている限り何度でも甦ります」
「ということは…」
「グリーフシードは必要ないということになりますね」
グリーフシードが必要ないのはメリットが大きい。
魔女になることはなく魔力が使える。
「しかしデメリットもあるかもしれませんね」
「なんで?グリーフシードが必要ないし魔法が使い放題なんだよ?」
「いえ、使い放題ではないと思います。人には素質の問題がありますので魔力の上限はあるでしょう」
「上限まで使ったら?」
「指一本動かせなくなるかと思います」
「それは勘弁したいね…」
「それと人と同じように痛覚がありますし腕を吹き飛ばされたら二度と動かせません」
デメリットを聞くとエミルの配下になっても全てが良いことにはならなかった。
「(けど…)」
さやかの鼓動がはやくなる。
「(エミルが契約してくれたからあたしは…)」
複雑な感情になるがそれは決して不快なものではなかった。
その感情が嬉しいと理解するまでしばらく後になる。
「剣とは出せるの?」
手を前に出して念じるとさやかがいつも使っている剣がさやかの手に現れる。
「剣を出すのは問題ないわ」
「なら治癒能力は?」
「それは戦ってみないとわからないわね」
「エミル様。それよりも重要なことを確認しないといけません」
「重要なこと?」
「さやかさんがちゃんと召喚出来るか確認しないといけません」
魔物はテネブラエの召喚に応じて魔方陣から召喚させる。
さやかの場合も同じように召喚されるか確認が必要。
「エミル」
杏子は魔法少女になっており槍をエミルに向けていた。
「骨を折られたいか?」
「えっと…それは嫌だな…」
「そうだよな」
そう言うと笑って槍をエミルから離す。
「ということだ。後のことは明日やることにした」
「そうだね。エミル君変身しただけで倒れたから」
「ごめん…僕が倒れたばかりに…」
「今はゆっくり休んでエミル君」
まどかとさやかは家を出ようとしたが
「まどかちょっとお願いあるけどいいかな?」
「なにさやかちゃん?」
「実は…」
マミが家に帰宅すると杏子ともう一人が迎えてくれた。
「マミさん。魔女退治お疲れ様です」
「美樹さん?」
さやかがマミの家にいた。
まどかに頼んで彼女の家に泊まっていることにしてほしいと言った。
まどかはそれを了承して裏口を合わせてくれた。
「私のせいでエミルが倒れたんで…だから私もエミルの看病をしたいんです」
「そう…エミル君喜ぶと思うわ」
さやかはエミルの看病をすると意気込む
と思っていた。
「はい。エミル君あーん」
「あ、あーん」
スプーンですくったお粥をエミルに食べさせる。
「えっとマミさん。自分で食べれますので…」
「だーめ!エミル君は病人なんだから」
「いや、もう体調は…」
「佐倉さんから聞いたわ。変身しただけで倒れたのでしょ?なら今日も看病しないと」
マミがベッタリくっついてエミルから離れてくれなかった。
「ねぇ…あれなに?」
「見てわかるだろ?エミルの看病だ」
「うんそれはわかるけど。マミさん昨日もあんな風に?」
「昨日はエミルは起きていなかったから寝るのを惜しんで看病してた。まあ学校行ってるときは私がしたんだけど」
「マミさんみたいにやったの?」
「しねーよ。エミルは自分で食べた」
二人は完全にアウェイ状態だった。
「 (あたしの出番が…)」
エミルの看病しようと意気込んでいたがマミが占領して入り込む隙がなかった。
「エミル君、昨日からお風呂入ってないから今日は私と一緒にはいりましょう?」
「ダメですよマミさん!」
さやかが間にはいる。
「さすがにお風呂はダメですって!」
「前にエミル君と一緒にはいったから問題ないわよ?」
「エミル…本当にはいったの?」
「ちが…いや、違わないけど。あのときマミさんは不安定な状態だったから仕方なく…」
「エミル…お前そんなやつだったとは…」
「な、なにもしてないから!」
エミルは弁明してなんとか一緒にはいるのを阻止しようとする。
その結果
「エミル君熱くない?」
「はい。大丈夫です。」
お湯の張った洗面器にタオルを浸けて絞りエミルの身体を拭いていた。
一緒にお風呂にはいるのはなんとか阻止したがマミはなにかしたいと言ったのでエミルの身体をタオルで拭くことで場は収まった。
「こっちほうが看病しているみたいでいいかも」
最初は不満だったがエミルの身体を拭いているうちにこれでもいいかと納得していた。
「エミル君ってけっこう筋肉あるのね。背中も大きい」
「旅していた頃より筋肉は落ちています。この世界だとほとんど歩くことはありませんから」
「エミル君の世界は車はないの?」
「馬車がほとんどで竜車というのがありましたね。あとは帆を張った船とか」
「なんか不便だな」
「けどクルーザーとかもあったよ」
「あるじゃねぇか。私達の世界にある船」
「といってもレザレノ・カンパニー製のクルーザーだから大半が帆船だね」
「レザレノ・カンパニー?」
「僕の世界にある大企業会社で色んな企業があるんだ。たくさんの会社があって、それらをまとめて『レザレノグループ』って呼ばれてるんだって。キャッチコピーは『ゆりかごから墓場まで』」
「なんかすごい会社ね」
「リゾートとかすごいよ。本社があるんだ」
「リゾート経営までしているの?」
「南国の土地だからリゾート経営に適しているんだ。この世界にくる前はマルタと一緒に行ったんだ 」
「マルタ?」
「えっと…僕の好きな人と…一緒に」
エミルは恥ずかしながら言う。
「それでその彼女となにしたんだ?」
杏子は棘が含んだ言い方をする。
「普通に海水浴したり遊園地に行ったりした」
「それだけ?」
「あとリーガルさんと一緒にクルーザーに乗って釣りとかしたな。楽しかったなあの釣り勝負。リーガルさんカジキマグロを釣り上げるなんて」
「そのリーガルさんって?」
「レザレノ・カンパニーの会長。その人が僕とマルタを招待してくれた」
「会長って…もしかして偉い人?」
「うん。リーガルさんの家系がレザレノ・カンパニーを運営しているんだって」
「エミルもなんかすごいね。そんな偉い人と釣りするなんて」
「はじめて会ったときは驚いたよ」
「驚いた?」
「囚人服を着て牢屋に閉じ込められていたんだ」
「えぇ!?なんで牢屋に!?」
さやかが驚いて食い付く。
「放火の容疑をかけられて。仲間と一緒に犯人を見つけたんだ」
「犯人は誰だったの?」
「犯人はヒッカリカエルだったよ」
「エミル様。ノストロビアです」
「あ、そうだった。ノストロビアだったね」
テネブラエに指摘されエミルは言い直した。
「犯人がカエル?」
「なんでカエルなんだよ?」
さやかと杏子がなんでカエルが犯人なのか疑問になった。
「イズールドという漁港があってカマボコグミが有名なんだ。ノストロビアそのグミを食べて発光した熱が火事の原因になったんだ」
「一応補足といて言いますがノストロビアは魔物です。一般的なカエルと同じにしないでください」
「魔物って何でもありね」
「それはそうとエミル君」
「つめたっ」
マミがタオルでエミルを拭くとタオルが冷たくなっていた。
「ほかの女の子の話をするのは関心しないわね」
「ま、マミさん?」
「羨ましいわ~私は魔法少女だからどこかに遊ぶ余裕なんてないし、彼氏も作る時間もなかったわ~」
笑顔でぬるくなったお湯に浸けて絞ったタオルでエミルの身体を拭く。
「マミさん!冷たい、冷たいです!」
「羨ましいわ~」
そう言ってやめないマミである。
「マミさん!魔女退治が落ち着いたらどこか行きましょう!」
「本当に?」
「はい!だから冷えたタオルで拭くのは!」
「わかったわ」
タオルで拭くのをやめる。
「約束だよ?もし嘘ついたらリボンで拘束して水風呂に突き落とすからね?」
「は、はい…」
マミは洗面器を持って洗面所に行く。
「エミルは将来、嫁さん尻に敷かれるな」
「敷かれるというか敷かれたかな」
「敷かれた?」
「マルタに」
さやかと杏子はあ~と言って納得していた。
「エミル君寒いと思うから一緒に寝てあげるね」
「いや一人で…」
「エミル君の身体冷えているから私が添い寝しないと」
「冷えたのはマミさんが…」
「なにか言ったかなエミル君?」
「ナンデモアリマセン」
マミはベットに入り込みエミルに抱き付いた。
「うん…エミル君の匂いがする」
腕に顔を押し付け深呼吸をして匂いをかぐ。
「あのマミさん…」
「なにエミル君?」
「なんで添い寝を…」
「エミル君を暖めるためよ」
「本当にそれだけですか?」
マミはなにも言わず腕に抱き付く力を強める。
「エミル君が倒れたときとても怖かった。もしかしたらこのまま起きないのかと思って…起きたって聞いたときは安心した。良かったエミル君が目を覚ましてくれて。私はまた一人になるのかと思って」
「僕は側にいますよ」
マミの頭を撫でる。
「僕はいなくなったり…」
しないと言おうとしたが口を閉ざす。
「エミル君?」
「いえ、なんでもありません」
そう言って笑顔をみせる。
さやかside
エミルの看病をしようと意気込んだけどマミさんがいて看病どころか全く手足が出せなかった。
なにしに来たんだろうあたし…せっかくまどかに頼んで裏口を合わせてもらったのに
「エミル…」
あいつがマミさんと笑っていたとき少し胸が痛んだ。
「少しエミルの顔みてこよ」
そう考えてマミさんが用意してくれた布団から出てエミルが寝ているベットに行く。
エミルが寝ているベットに行くとマミさんが一緒に寝ていた。
とても幸せそうな顔をしてる。
また胸が痛んだ。
なんで…なんでマミさんがエミルと一緒に…
「いいよね…あたしも…」
あたしもベットにはいった。
体温の熱が篭っているのか布団は暖かかった。
「暖かい…」
雨に打たれていたあの日みたいに暖かかった。
エミルってこんな匂いなんだ。
すごく落ち着くのにドキドキする。
「少しくらい…いいよね?」
エミルの腕に抱き付く。
男なのかガッチリして筋肉もあった。
もしこの腕で抱き締めてもらったら…
「(なんでエミルは…)」
なんでエミルは優しいのかわからない。
他人が傷付くのが嫌だからというのは本当だと思うけど普通はそこまでのことはしないと思う。
「(けどエミルはあたしの話をちゃんと聞いて。後押しをしてくれて…)」
初恋は終わったけどエミルは優しくしてくれた。
その優しさがとても嬉しかった。
「(あたしも甘えてもいいよね?)」
恭介がとられてつらいから甘えてもいいよね?
しばらくしたらあたし立ち直るから今だけ甘えてもいいよね?
さやかが看病すると思った?
残念、マミさんでした!
これでタイトルに人魚姫を付けるのは最後です
また付けるときがもあるかもしれません
お気に入り100件越えました
みなさんありがとうございます!