織莉子の豪邸から脱出したテネブラエはほむらをおろす。
「なんでエミルを置いて行ったの?エミルが主なんでしょ。危ない目に遭ってる可能性があるかもしれないのよ」
「エミル様の命令です。ほむらさんと脱出しろと言われましたので」
「美国織莉子に続いて呉キリカも魔法少女になった。エミルが強くても二人相手じゃ分が悪い」
「なぜ戦う前提で考えているのですか」
エミルと同じことをテネブラエにも言われる。
「エミル様は二人と争う理由はありません」
「だけどあいつらは!」
「あなたが戦う意思があるから二人は臨戦体制をとるのです!それをわかっているのですか!」
核心を突かれたようにほむらは黙ってしまう。
「戦う意思がなくとも相手が武器をとれば誰でも警戒はします。二人は元々戦う気はありませんでした。ほむらさんが武器を構えたから仕方なく臨戦体制をとったのです。ほむらさん、あなたが戦いを生んだのですよ」
「…そうね」
不服ながらもほむらは認めた。
「エミル様はそもそも争いを好む人ではありません。エミル様は優しい性格の持ち主ですから」
エミルは優しい。
それはほむらにもわかっていた。
まどかもさやかもマミもなぎさもエミルの優しさに救われた。
ほむらも例外ではない。
エミルの優しさがほむらの孤独を解放した。
そしてエミルのことが好きになり始めた。
だからこそ織莉子とキリカを始末しないといけない。
あの二人がいればまどかが殺されエミルが奪われるかもしれない。
「ほむらさん。あなたはまどかさんの側にいなさい」
「エミルを助けに行くんでしょう?なら私も行くわ」
「また争いをしたいのですか?」
ほむらは口を閉ざす。
「今のあなたではまた争いを生みます。ほむらさんに出来るのはまどかさんを守ることです」
「あなただけでエミルを助けに行くの?」
「もちろんです。エミル様の僕ですから」
人の姿を解いて元の姿になったテネブラエは身体を透明にして織莉子の豪邸に向かった。
「どうすればいいの…」
エミルを助けに行きたいがまた戦いを生んでしまう。
争いをしないでエミルを助ける方法などあるのか。
「そんなの…」
あるはずがないと思ったがエミルのあの言葉を思い出す
「一人で解決出来ないな二人で。二人で無理なら三人、四人で考えれば必ず見つかる。そうだったわね…私はもう一人じゃない。相談出来る仲間がいる」
今のほむらは孤独ではない。
一緒に戦う仲間がいる。
ほむらがスマホを取り出すとある人に通話する。
中庭
バラ園
ほむらが客間の窓が壊して部屋が使えなくなり中庭にあるバラ園でお茶会を再開することになった。
「エミルく~ん」
キリカがエミルの腕に抱きついておりデレデレしていた。
何もなければ恥ずかしがっていたりしていたが今はそんな気分にはなれない。
「エミルさん。キュゥべぇがエミルさんのことをラタトスクと呼びましたがそれはなんですか?」
二人が魔法少女に関わらなければ普通のエミルとして過ごせたがキュゥべぇが話した以上、自分の正体を明かさないといけない。
「本当は二人には魔法少女とは関わってほしくなかったんですが仕方ありません」
「魔法少女に関係するの?」
「ある程度は」
「キリカ、エミルさんが大事な話をするから」
エミルの邪魔をしたくないキリカは腕から離れる。
「織莉子さん、キリカさん一つ言っておきます。この話は空想事だと思われるかもしれませんが」
「大丈夫よ、私は信じる」
「私も信じるよエミル君」
「ありがとうございます」
二人が信じると聞いて安心したエミルは自分の正体を明かす。
「僕の本名はラタトスク。この世界とは別の世界に住んでいる精霊。人間じゃないんです」
「精霊?」
「エミル君が人間じゃない?」
予想とは違うことを聞かされて驚くことが出来なかった。
「信じてませんか。まあ、当然ですね」
二人のことを無視して話を進める。
「僕の世界には大樹カーラーンというマナが宿った大樹がありまして、その大樹からマナを得ていました」
「マナ?」
「簡単に言えば魔力です。僕の役割は大樹カーラーンを守ることと魔界ニブルヘイムの進行を阻止することです。しかしシルヴァラントとテセアラの二つの大国の戦争で大樹は滅びて僕は消滅しそうなりました。その危機を救ったのは勇者ミトスです」
「その勇者ミトスはどんな人なの?」
「僕も姿は見たことはありません。勇者ミトスはシルヴァラントとテセアラを分離させ衰退と繁栄を交互に繰り返すように世界を維持させました。僕とセンチュリオン達は大樹の復活を願って眠りにつきました。そして800年という長い年月を経てようやく大樹が復活し二つの世界は再び一つの世界に戻りました」
遠い昔のことを思い出すように空を見上げる。
「ここまでが僕の存在です。次は魔法少女との関係について話します」
気持ちを切り替えて織莉子達に顔をむける。
「僕は戦えるのはラタトスクの力が宿っているからです」
ラタトスクの騎士に変身する。
「この服装が本来の格好です」
そう言って制服に戻る。
「僕は精霊であり魔を統べる王。センチュリオンを通して魔物を配下にしています。テネブラエがいれば魔物を召喚出来るんですが」
「一つ質問いいですか?」
「どうぞ」
「テネブラエさんとはじめて会ったとき人の姿でしたが」
「テネブラエ…センチュリオンは人に化けることが出来るんです。もちろん人以外にもなることが出来ます」
「テネブラエは魔物を出せるけどエミル君は出来ないのかい?」
「僕は出来るのは契約です」
「契約?」
「インキュベーターと同じ契約させる側の存在です。魔物とのネットワークを増やすために魔物に契約をさせています」
「それと魔法少女がなんの関係があるのですか?」
「これは偶然というかある意味奇跡ですね」
「奇跡?」
「僕の友達に魔法少女がいまして、ソウルジェムの穢れが限界を越えると魔女になるのは知ってますよね」
織莉子とキリカはうなずく。
「僕との契約が魔女…魔法少女にも出来るか。賭けたんですよ」
「それで契約は出来たの?」
「はい。契約には成功しました」
「ならまどかを魔法少女にしても問題ないじゃないの?」
「いえ、織莉子さんは言いたいのは契約以前の問題ですよね?」
エミルの言葉に織莉子は顔をふせる。
「契約するにはまず相手に力を証明しないといけません」
「つまり戦うってこと?」
「そうです。魔女と戦って勝つことで契約することが出来ます」
そこでエミルは織莉子に質問する。
「織莉子さん。まどかさんを殺す理由は僕が勝つことが出来ない。そうですね?」
「えぇ…そうよ。私が見たあの未来は私とキリカを含めた魔法少女とエミルさんがいて、世界を滅ぼす魔女…まどかと戦いました。魔法少女が一人残らず全員倒れてもエミルさん一人だけが最後まで戦ってました。身体から血が流れ、腕を吹き飛ばされて」
エミルの質問に観念した織莉子は自分が見たこと未来を語る。
「それでもエミルさんは諦めてませんでした。残った力を振り絞って契約をしましたが無理でした」
そう言って口を閉ざした。
「僕でも勝てない。それなら納得します。ですが人の命を奪うことは間違っています」
「だけどあの子がいたら世界が終わるのよ。あの子のせいで私の大切な人が居なくなる。大切な人が居てくれるなら私は犠牲を問わない」
彼女の意思は固くまどかを殺すのに躊躇しない覚悟だった。
「織莉子さん。僕に提案があります」
「提案?」
「僕はあなたに決闘を申し込みます」
言葉で解決出来ないなら戦いで証明するしかない。
エミル自身もこんなことはしたくなかったが何もしなければほむらと織莉子は衝突してしまう。
「明日、僕が修行として使ってる廃墟で決闘します。戦いは2対2で勝敗はソウルジェムの穢れが限界寸前までになるか負けを認めるかです」
「エミルさんが戦ったらこちらが不利なのでは?」
「それに関しては心配しないでください。僕は戦いません。その代わり別の人に戦ってもらいます。それと戦う前にグリーフシードを使ってソウルジェムの穢れを除去してもらいます」
これならお互いフェアな戦いが出来る。
ほむらがいたら敵に塩を送るどころか食料を送っていると言われるだろう。
「明日は僕が廃墟まで案内します」
これ以上いても意味はないと思ったエミルは立ち上がり帰ろうとしたが
「ごめんなさいエミルさん…」
織莉子の謝罪と共に頭に強い衝撃が走り意識を失う。
「織莉子…エミル君にこんなことして良かったの?」
魔法少女の姿をキリカが倒れたエミルを抱える。
「私もこんなことしたくなかったわよ。けど…エミルさんが帰ったら抑止力になるものがなくなるから」
自室の扉を開けてエミルをベットに寝かせる。
「明日までエミルさんはここで過ごしてもらうわ。キリカ、あなたにも悪いけど」
「わかった。親には織莉子の家に泊まるって言っておく」
「ありがとうキリカ」
織莉子は申し訳なさそうにしている。
「ごめんねキリカ、こんな危ないことに巻き込んで」
「織莉子、私は魔法少女になって良かったって思ってる。エミル君の力になれるって思うとすごく嬉しいんだ」
そう言ってベットに腰かける。
「大切な人を守れるなら私は何でもやるつもりだし」
「ありがとう…キリカ」
キリカの言葉が織莉子の罪悪感を和らいでくれる。
さやかが魔女になったときマミの家でエミルが正体を明かしたとき
この話の内容をまどか達に話しました
マルタにラタトスクコアを埋め込んだ話はほむらしか知りません
ややこしいと思いますがそう判断してください